公開日:2022/11/28
手形は、ビジネスの取引で現金の代わりに利用される支払い手段です。現金がないときに支払いが延期できる資金繰りの手段として利用されます。近年では電子化が進み、2026年度には紙の約束手形が廃止される方針で、電子記録債権「でんさい」への移行が進められています。本記事では、手形の種類、取引の流れ、書き方・作成方法、メリットとデメリット、紙の手形の廃止と電子化についてご紹介します。
手形とは?小切手との違い
手形とは、専用の用紙に金額を書いて現金の代わりにビジネスの相手方に渡す証券です。指定の金額を支払期日までに支払うことを約束します。手形を発行することを振出、振り出す人を振出人といいます。ビジネスで似たように振り出して利用されているのは、小切手です。手形と小切手は、どちらも銀行に当座預金口座を開設して振り出すものですが、大きな違いがあります。それは、手形は預金口座にお金がなくても振り出せますが、小切手は残高がないと振り出せない点です。受取人は、小切手はすぐに現金化できますが、手形は支払期日にならないと現金化ができません。
【参考サイト】
手形とは|中小企業庁
手形と小切手の話|一般社団法人全国銀行協会
手形の種類
手形には「約束手形」と「為替手形」があります。「支払手形」と「受取手形」は、手形の振り出しや受け取りの際に使用する勘定項目です。
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約束手形
約束手形は、振出人が受取人に、指定の金額を支払期日までに支払うことを約束する手形です。振出人と受取人の二者間で行われる取引です。 -
為替手形
為替手形は、振出人と受取人の間に第三者の支払人が仲介します。振出人が支払人(第三者)に、手形の受取人に指定の金額を支払期日までに支払うことを依頼する手形です。 -
支払手形
約束手形の振り出しや、為替手形の引き受けの際に使用する勘定項目です。 -
受取手形
手形を受け取る際に使用する勘定項目です。
手形取引の流れ
約束手形の取引の流れです。
1)Aは銀行で当座預金口座を開設し、約束手形の交付を受けます。
2)AはBから商品を購入します。代金を支払うために、Bに約束手形を振り出します。
3)Aは支払期日までに、当座預金口座に商品代金を入金します。
4)支払期日がくると、Bは約束手形を銀行に持っていきます。
5)銀行は手形と引き換えに、Aの口座からBに支払います。
為替手形の取引の流れです。(金額は一例)
1)A(支払人)はB(振出人)に100万の債権があります。B(振出人)はC(受取人)に100万の債権があります。
2)B(振出人)はA(支払人)に為替手形を振り出します。
3)A(支払人)がC(受取人)に為替手形を渡します。
4)A(支払人)は支払期日までに、当座預金口座に100万を入金します。
5)銀行は手形と引き換えに、A(支払人)の口座からC(受取人)に支払います。A、B、C三者間の支払いがここで一度に済みます。
【参考サイト】手形と小切手の話|一般社団法人全国銀行協会
手形の書き方・作成方法
手形には「手形法」で定められた項目が記載されていないと、効力が生じません。手形に書かれていることは絶対とみなされます。手形には金額に応じて収入印紙と印鑑が必要です。
約束手形の必要的記載事項
①約束手形であることを示す文字
②一定金額の単純な支払い約束文句
③支払期日
④支払地
⑤受取人またはその指図人
⑥振出日
⑦振出地
⑧振出人の署名、印鑑
為替手形の必要的記載事項
①為替手形であることを示す文字
②一定金額の単純な支払い約束文句
③支払人(引受人)の名称
④支払期日
⑤支払地
⑥受取人またはその指図人、印鑑
⑦振出日
⑧振出地
⑨振出人の署名、印鑑
【参考サイト】
法律で決められた手形・小切手の記載事項|一般社団法人全国銀行協会
No.7103 約束手形又は為替手形|国税庁
手形取引のメリットとデメリット
手形は、銀行口座に残高がなくても振り出せて、現金の支払いを先に延ばせます。資金繰りにゆとりができ、現金不足による黒字倒産のリスクを軽減できる点がメリットです。銀行などから融資を受ける際は利息や保証料が必要になりますが、手形は利息が発生しないのも特徴の一つです。当座預金口座の開設には銀行の審査が必要のため、手形を振り出せる事業者は信用度が高いと評価され、取引先の信用度も上がります。
手形取引にはデメリットもあります。手形には金額に応じて印税が必要な点です。収入印紙代がかかりますので支出は増えます。もう一つのデメリットは「不渡り」のリスクです。支払期日に当座預金口座に残高がないと「不渡り」となり、引き落としがされません。不渡りとなった事実は金融機関に共有され、信用低下につながります。半年以内に二度目の不渡りを起こすと、2年間は銀行取引停止の処分を受け、倒産に追い込まれることもあります。現金が不足しないように管理の徹底が必要です。
紙の手形の廃止と電子化
経済産業省は、2026年度を目途に紙の約束手形を廃止する方針を決定しました。紙の手形は、インターネットバンキングを利用した電子化が進み、資金調達の手段が多様化してきたことで年々減少しています。また、印刷や郵送、保管のコストがかかり、紛失や盗難のリスクがあることも廃止の理由です。今後は、手形を電子化した電子記録債権「でんさい」への移行が進められています。「でんさい」は、紙の手形と比較して、コストが節約でき、紛失や盗難のリスクがない点がメリットです。
全国銀行協会は、2022年11月に、これまで金融機関の手形交換を行ってきた手形交換所を廃止し、電子交換所を設立します。紙の手形は「イメージデータ」に変換して送受信する仕組みに変わります。
【参考サイト】
一般社団法人全国銀行協会 電子交換所について
「電子記録債権」は手続きが簡単で便利!
東京商工リサーチ 手形交換所の交換業務に幕
NHK サクサク経済「約束手形がなくなる!?」
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手形に関するよくある質問
手形とは何ですか?
手形とは、専用の用紙に金額を書いて現金の代わりにビジネスの相手方に渡す証券です。指定の金額を支払期日までに支払うことを約束します。手形は、銀行口座に残高がなくても振り出せて、現金の支払いを先に延ばせます。資金繰りにゆとりができ、現金不足による黒字倒産のリスクを軽減できる点がメリットです。
手形にはどんな種類がありますか?
手形には「約束手形」と「為替手形」があります。約束手形は、振出人が受取人に、指定の金額を支払期日までに支払うことを約束する手形です。為替手形は、振出人と受取人の間に第三者の支払人が仲介します。振出人が支払人(第三者)に、手形の受取人に指定の金額を支払期日までに支払うことを依頼する手形です。
紙の手形はいつ廃止されますか?
2026年度には紙の約束手形が廃止される方針で、電子記録債権「でんさい」への移行が進められています。全国銀行協会は、2022年11月に、これまで金融機関の手形交換を行ってきた手形交換所を廃止し、電子交換所を設立します。紙の手形は「イメージデータ」に変換して送受信する仕組みに変わります。