ビジネス用語集

受取手形とは?売掛金や手形貸付金との違い、仕訳方法

公開日:2023/11/29

受取手形とは、商品やサービスを提供した売り手が、発注した買い手から代金額を指定の期日以降に受け取る約束を形にしたもので、印紙税法上の有価証券の一種です。
本記事では、受取手形の種類や特徴、2026年に原則廃止される約束手形などについて説明し、併せて、受取手形を入手した際の仕分けや記入について解説します。

受取手形とは?

受取手形とは、期日までの支払いが明示的に約束された支払いの手段です。はじめに、受取手形がどのようなものか、特徴や種類、手形とよく似た支払手段である小切手との違いについて、簡単に整理しておきましょう。

受取手形とは

受取手形とは、企業が商品やサービスを提供して商取引が成立した際に、買い手から代金として受け取るもので、印紙税法上でいう有価証券の一種です。有価証券とは、通貨と同じように財産的価値のある権利が表に記された紙(証券)で、権利の移転や行使がその証券をもってなされるものをいいます。身近なものでは、株券や出資証券、社債利札、郵便為替、小切手、商品券など多様な形態があります。
このうち受取手形は、金銭の支払いを指定の期日(支払期日)までに行うと約束または指示する権利が明確に示されているもので、次の特徴があります。

  • 指定の日以降に換金が保証されるため、受取る側は流動性資産(現金)の管理がしやすい
  • 手形を担保として使えるため、短期融資の手段になる
  • 証券は持ち主に対して特定の権利を認めることから、第三者に譲渡し現金化が可能

受取手形の種類(約束手形、為替手形)

受取手形には、振出人(手形を発行する者)と支払人(代金を支払う者)、受取人(代金を受け取る者)の関係性により、「約束手形」と「為替手形」の2種類に分かれます。約束手形は、振出人と支払人が同一で、買い手自身が指定の日までに売り手へ代金を支払います。買い手と売り手の二者間での約束となるのが約束手形です。

為替手形は、振出人と支払人、受取人がそれぞれ別になり、三者間での取引となります。支払人は主に銀行などの金融機関で、振出人が支払人に宛てて指定の期日に受取人へ代金を支払うよう委託します。銀行が支払いを保証することから、手形の発行者の信用度に依存する部分が小さくなり、取引の信頼性が高まります。

為替手形と小切手の違い

為替手形と同じく振出人が第三者の銀行に宛てて支払いを委託する証券に小切手があります。小切手は、支払いの期日はなく、通常発行日からすぐに換金が可能です。また、小切手の支払いは、振出人の銀行口座の資金を引き出して支払われるため、口座に残高がないと小切手の支払いを行うことができません。小切手は主に個人間での支払いに、為替手形は企業間の取引に用いられることが多いなど、利用状態も異なります。

【参考ページ】
国税庁 有価証券の範囲
中小企業庁 夢を実現する創業Q17 手形とは、どのようなものですか?
同志社大学伊東研究室 手形・小切手の基礎 意義と法的構造

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受取手形と売掛金・手形貸付金の違い

受取人にとって受取手形は、売上に伴う代金の回収方法のひとつであり、ひいては企業としての資金調達手段のひとつといえます。受取手形と売掛金の違いと、受取手形による手形貸付金との関係を整理しておきましょう。

受取手形と売掛金の違い

受取手形と売掛金は、どちらも代金を回収する方法ですが、支払い期日の拘束力が異なります。受取手形は具体的な日付が指定された有価証券で、法的な拘束力をもちます。これに対し、売掛金の支払い日は受取手形ほど明確に約束されているわけではありません。毎月特定の日付で締めを行って翌月の指定日に支払うなど、企業間の慣習や取引条件で決められるものが多く、事情により支払いが遅くなることもあります。ただし、下請法により、受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める義務は別途生じます。

受取手形と手形貸付金の関係

受取手形は有価証券ですから、第三者への譲渡が可能です。受取人は、振出人(手形の発行者)が指定した期日以降に現金化して受け取ることもできますし、期日までに現金として使用したい場合は、他の企業への支払代金として譲渡も可能です。また、銀行などの金融機関に対し、手形を担保にした融資を受けることもできます。手形を担保に金融機関から貸し出された資金を手形貸付金といいます。

【参考ページ】公正取引委員会 下請法 知っておきたい豆情報 その2 支払期日を定める義務について

約束手形は2026年に原則廃止される

受取手形のうち、振出人(支払人)と受取人の二者間で取引される約束手形について、経済産業省は、2026年までに原則として廃止する方針を打ち出しています。ここからは、2026年の約束手形の廃止に関し、約束手形の現状と廃止の方針に至った課題点、廃止までの主な流れ、約束手形の廃止後に代替となる決済方法について解説します。

なぜ約束手形が原則廃止となるのか(約束手形の現状と課題)

手形そのものは、江戸時代から行われている商いの習慣です。現在の約束手形の形態は、明治時代以降に法整備が進められ、制度が確立しました。高度成長期には、資金の回転が追いつかないほど活発な経済活動の中、原材料の買い入れや下請け事業者への支払いに約束手形を用いることで、企業間の信用取引を成立させつつ、資金を回していたのです。

1990年代以降は、資金の余剰や資金調達手段の多様化、インターネットの普及などを背景に手形の発行残高が減少してきました。手形を扱う業種としては、卸小売、製造、建設業などが多くなっています。客先から代金を受け取るまでに時間がかかる場合、手形だと支払い期日までの猶予ができるメリットから約束手形が用いられる傾向にあります。

期日まで支払いを延ばせるという振出人(発注者)にとって有利な約束手形は、受取人(受注者)の視点に転じれば、それだけ代金を回収するまでに時間がかかるということになり、資金繰りへの負担が大きくなる問題が生じます。

約束手形は、特に、以下のような取引慣行により、振出人(発注者)のメリットが多く、受取人(受注者)の負担になっている課題が指摘されています。

  • 現金振込に比べ約2倍、期日に振り出される取引だと約3倍も支払い期日が長い(中小企業庁が2020年度に行ったアンケート調査によると、振込だと平均50日程度なのが約束手形だと平均100日程度。最長で150日)。このため資金繰りが悪化してしまう
  • 外国企業の取引は銀行振込やクレジットカード決済が多いが日本の企業の設定する支払い期日が長く、ビジネス環境の魅力を高め国際競争力を上げる観点からも見直しが必要
  • 手形の割引料が受取人の負担になっていることが多く、料率も高い
  • 紙を発行するコスト事務負担、管理上のリスクが大きく、企業間取引の電子化の妨げにもなっている

政府の方針と約束手形の廃止への流れ

約束手形による支払いは、現金を入手するまでの期間が長く、また期日前に現金化すると割引料の負担が大きいなど、取引上で立場が弱い受注者側の企業の資金繰りを悪化させるなどの問題があることから、政府では、2026年までに約束手形の利用を廃止する方向を打ち出しています(2021年6月閣議会議「成長戦略実行計画」)。

2021年に産業界・金融界の18業種51団体における自主行動計画を策定し、2026年の約束手形の取扱い廃止に向け、可能な限り他の決済方法への移行を促すとともに、当面の約束手形の運用改善として、2023年度中には支払期日を下請法で定められている60日以内まで短縮する、利息・割引料を含めた取引の諸条件の改善を図るなどの取組が進められています。

約束手形に代わる決済方法

約束手形の課題である支払期日の長さ、現金化の割引料の負担、紙の証券の管理におけるコストや事務負担を解消するため、約束手形に代わる決済方法としては、キャッシュレス決済の普及に伴い、オンラインによる支払いが進んできています。

支払い方法には、振込などを含む現金によるものと、現金による支払いが困難な場合、紙の約束手形の機能をもつ支払手段としての電子記録債権の利用があります。

  • クレジットカード:クレジットカードの与信を受けての決済となるため、信頼性が高い取引を行うことが可能です。一定の利用料・手数料は発生しますが、支払いが月締めでまとめて行うことができ、取引ごとに個別に振り込む手間や事務負担が軽減されるため、小規模な取引では利用が浸透してきています。
  • 銀行振込:取引ごとに振込先を確認して振り込む伝統的な方法です。取引先や回数などが多いと事務負担が大きくなりますが、オンラインバンキングの普及により、振込手続きもデータ上で行えるなど負担が軽減されてきています。
  • 電子記録債権:手形と同様の取引の安全確保が図られた電子記録の金銭債権で、電子記録債権法により定められた制度です。期日前の現金化や、別の企業への譲渡で支払いに充当させることもできます。分割記録を行えば複数の支払いに充てることも可能です。また、電子記録債権の場合は印紙税や登録免許税は課されないというメリットもあります。

【参考ページ】
中小企業庁「約束手形をはじめとする支払い条件の改善に向けた検討会」報告書(骨子)
中小企業庁 第4回約束手形に関する論点について(令和2年11月6日)
閣議決定 成長戦略実行計画(令和3年6月18日)
一般社団法人日本貿易会 約束手形の廃止に向けた自主行動計画
中小企業庁 取引適正化に向けた5つの取組について(令和4年2月10日)
経済産業省 約束手形を振り出している発注者の皆様へ 紙の約束手形、やめませんか?

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受取手形を受け取った際にすること

ここからは、受取手形を受け取った際に行う、受取手形記入帳への記入と仕訳方法についてみていきましょう。

受取手形記入帳への記入と管理

受取手形記入帳は、受取人が振出人から受取手形を受け取った際に、手形債権の明細を管理するために記帳する記録帳簿を指します。振出人が手形債務の明細を管理するものは支払手形記入帳といい、受取手形記入帳と支払手形記入帳の2種類の手形記入帳により、手形の債権と債務の発生から消滅までの状況を把握することができます。

受取手形記入帳では、以下のような項目を設けて情報を管理します。

  • 取引発生の日付:受取手形を受け取った日付
  • 手形の種類:約束手形/為替手形の別
  • 手形番号:手形に記載された番号
  • 取引の摘要:売上や売掛金回収など取引の目的
  • 支払人:約束手形の場合は振出人、為替手形の場合は引受人
  • 振出人または裏書人:手形の発行者または譲渡した者
  • 振出日:手形が振り出された日付
  • 満期日:支払期日
  • 支払場所:支払いを行う金融機関など
  • 金額:手形に記載された額面
  • 顛末:当座入金、割引、譲渡など、最終的に手形がどのようになったか

受取手形の仕訳方法

一般的に、受取手形は流動資産として企業の財務諸表に記載されます。流動資産は、概ね1年以内に現金化することが期待される資産を指します。受取手形を受け取った際の仕訳は、約束手形・為替手形のいずれも受取手形という勘定科目で以下のように処理を行います。

売掛金を手形で受け取った場合

  • 借方:受取手形
  • 貸方:売掛金
  • 摘要:売掛金の回収

期日になり当座預金に入金された場合

  • 借方:当座預金
  • 貸方:受取手形
  • 摘要:受取手形の決済

受取手形(裏書き手形も同様)へ裏書きし、買掛金の支払いを行った場合

  • 借方:買掛金
  • 貸方:受取手形(裏書手形)
  • 摘要:買掛金の支払い

受取手形を期日前に銀行に買い取ってもらった場合

  • 借方:当座預金、手形売却損
  • 貸方:受取手形
  • 摘要:当座預金⇒手形の割引、手形売却損⇒割引料

支払期日を過ぎて未払いだった場合

  • 借方:未収入金
  • 貸方:受取手形
  • 摘要:未回収の支払い

【参考ページ】
佐藤文雄 商業簿記における補助簿の検討 専修商学論集81 141-171, 2005-10-10 専修大学学会(PDF資料ダウンロード)

手形割引・手形割引高とは?

受取手形を現金化するには、支払期日を超えてから額面どおりの金額(取立の手数料は別途必要)を受け取る方法以外に、支払期日がくる前に他の企業への支払いに充てる譲渡と、支払期日前に金融機関へ持ち込んで換金する手形割引があります。譲渡は額面どおりの支払いに使えますが、手形割引の場合は、現金化する際に期日までの金利が割引料として差し引かれ、額面より金額が小さくなります。

手形割引とは

手形割引とは、手形の支払期日を待たず、金融機関へ手形を持ち込んで現金化する方法です。本来の期日で支払われるまでにかかる期間に応じて一定の割引料を計算し、手形の額面から差し引いた金額が支払われます。手形を割り引いた日から支払期日までの金利相当分が差し引かれるため、手形の額面よりは金額が少なくなります。

手形の割引は、手形を担保とした金融機関からの貸出しのように見えますが、手形の売買とみなされます。もっとも、銀行取引約定書の契約により、手形が不渡りになるなど、著しく手形の信用が低下した場合は、割引いた手形を買い戻す義務を負い、手形の金額に加えて満期日以後の法定利息を支払う義務が生じます。裏書した手形が不渡りになった場合は、裏書人や手形の振出人にさかのぼって支払義務を負います。

手形割引高とは

手形割引の会計上の取り扱いをみておきましょう。金融機関で割り引いた受取手形のうち、会計期間の終わり(期末)において、まだ支払期日が来ていない手形の合計金額を手形割引高といいます。
満期が来ていない手形は現金化することができないため、現金としては計上されません。このため、手形割引高は、通常は貸借対照表(企業の資産や負債を一覧にしたもの)の主要部分には含まれず、注釈や付属情報として枠外に記載します。

貸借対照表の貸方(負債の部)に計上した場合は、以下の科目から同額を控除します。

  • 受取手形
  • 流動資産
  • 資産合計
  • 流動負債

【参考ページ】
中小機構 経営自己診断システム 財務情報入力の注意点・解説

受取手形に関するよくある質問

  • 受取手形とはなんですか?

    受取手形とは、商品や役務の提供など商取引が成立した際に受注者が発注者から代金として受け取る有価証券で、金銭の支払いを指定の期日に約束または指示する旨が明記されています。指定の日以降に換金が保証されるため、受取る側は流動性資産(現金)の管理がしやすい、手形を担保として換金することができるため、短期融資の手段になる、第三者に譲渡し次の支払いに充当したり、金融機関に割り引いて現金化したりすることができるという特徴があります。

  • 受取手形は資産ですか?

    受取手形は資産として計上されます。手形は、他の企業などから指定の期日までに支払うことが約束されたもので、受取人にとっては債権、振出人(手形の発行者)にとっては債務になります。受け取った手形は支払期日を超えれば現金化することができますし、期日前でも譲渡や割引により支払いに利用することが可能です。このため、受取手形は現金に代わる資産として取り扱うことができます。

  • 受取手形を現金化するにはどうすればいいですか?

    受取手形を現金化するには、支払期日を超えてからと支払期日が来る前とに大別できます。支払期日を超えた手形は、受取人が金融機関に対し、取立委任を行うことで現金化できます。支払期日がまだ来ない手形の場合は、手形の裏書により権利を譲渡して支払いの手段として使うことができます。また、金融機関に手形を譲渡することで支払期日までの利息分の割引料を差し引いた金額を受け取る手形割引による現金化も可能です。

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