※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
事業を営む中で、年度や月をまたいで支払いが発生するケースは珍しくありません。個人事業主であれば、12月分の経費を翌年1月に支払うような状況です。このような支払いは「未払金」として適切に会計処理する必要があります。
ここでは、年度・月またぎの未払金の定義から具体的な仕訳方法まで、創業1年目・2年目の人にもわかりやすく解説していきます。
目次
- 年度・月またぎの未払金とは?
・未払金の意味
・未払金と似ている勘定科目 - 年度・月またぎの未払金の具体例
・年度・月をまたいで支払日が来る場合
・クレジットカード決済の場合 - 年度・月またぎ未払金の仕訳方法
- 日々の帳簿付けをラクにするには
・クラウド型の会計ソフトを使う
・Squareで会計ソフトと連携しよう - まとめ
年度・月またぎの未払金とは?
特別な理由がない限り記帳のルールとされる発生主義において、未払金は重要な勘定科目の一つです。とくに年度末や月末の締め時期には、期をまたいで支払いが発生するケースが増えるため、正しい会計処理が求められます。
未払金の意味
未払金とは、商品やサービスを購入したものの、まだ支払いが完了していない状態の債務です。取引が発生した時点で収益や費用を認識する発生主義会計では、購入した時点で「未払金」として計上し、実際に支払うタイミングで改めて処理します。
ここで、1月25日に1万円分の事務用品を購入し、クレジットカード(月末締め翌月20日引き落とし)で決済した場合の記帳例を確認してみましょう。この例では、支払い発生が月またぎになっています。
記帳日:1月25日 | 雑費 10,000円 | 未払金 10,000円 |
記帳日:2月20日 | 未払金 10,000円 | 現預金 10,000円 |
このように計上した未払金は、貸借対照表上では流動負債に分類され、1年以内に支払う予定の債務として扱われます。年度や月をまたぐ未払金が発生する主な理由としては、クレジットカード決済の利用や、請求書による後払い、支払日が翌月になる経費などが挙げられます。
未払金と似ている勘定科目
未払金と混同しやすい勘定科目として、未払費用と買掛金があります。いずれも支払い前の債務を計上するときの勘定科目ですが、それぞれ次のような扱いをします。
未払費用:消耗品購入など単発の取引の場合は「未払金」を使用しますが、継続的な契約に基づく商品やサービスの購入は「未払費用」を使用します。未払費用により計上する費用の具体例として、給与や家賃、水道光熱費などが挙げられます。
買掛金:「未払金」や「未払費用」は主たる事業以外の支払いについて計上するときに使用するのに対し、事業の主たる営業活動に関連する仕入れは「買掛金」を使用します。買掛金により計上する費用の具体例として、小売業における商品の仕入れや、製造業における原材料の購入などが該当します。
年度・月またぎの未払金の具体例
事業を営むうえで、購入した商品やサービスの支払いのタイミングが年度や月をまたぐケースは日常的に発生します。ここでは、実際のビジネスでよく見られる未払金の具体例を、期間利用とクレジットカード決済の二つの観点から解説していきます。
年度・月をまたいで支払日が来る場合
後払い方式で支払日が年度またぎ・月またぎになるケースは、さまざまな取引に及びます。これらについては、取引した日(もしくは料金が確定した日)にいったん未払金として計上し、支払日に改めて記帳します。
請求書払いにした消耗品費:ティッシュペーパーや洗剤などの消耗品を請求書払いにしている場合、支払いは翌月払いが一般的です。たとえば12月分の消耗品費を翌年1月に支払う場合、12月末時点で未払金として計上する必要があります。
年度末に依頼した外注費:11月・12月などに都度外注した場合の費用も、支払いが翌年度になるのは普通です。例として挙げられるのは、確定申告の税理士報酬や年末の大掃除を業者に依頼した費用などです。これらについては、実際の支払いが翌年になっても、サービスを受けた年度の未払金として計上します。
クレジットカード決済の場合
事業用のクレジットカードで経費を支払う場合も、未払金としていったん計上したうえで、カードの引き落し日が来たときに改めて記帳します。ここで問題となるのが、決済日と利用日が異なる場合です。その場合は、以下のように取り扱います。なお、分割払いやリボ払いを利用すると手数料が発生しますが、この手数料は「支払利息」または「支払手数料」という勘定科目で引き落とし日に記帳します。
利用日と明細の日付が異なる場合の処理:発生主義会計の原則に従うと、実際の利用日に計上するのが正解です。商品をカード決済で購入したのが20日、カードの利用明細に反映されたのが同月23日であるとすると、20日に未払金を計上するのが正しい処理です。
年度・月またぎ未払金の仕訳方法
年度・月またぎの未払金の仕訳は、年度内(月内)に支払日がある場合と同様です。つまり「取引発生時」と「実際の支払時」の2回に分け、勘定科目は未払金を利用します。このように帳簿をつけることで、債務を計上して翌月(翌年度)に引き継ぎ、これを消し込むことで、正しい会計処理を行えます。
たとえば、12月25日に1万円の消耗品を購入し、支払いが翌年1月20日の引き落としになる場合の仕訳を考えてみましょう。この場合は下記のようになります。
記帳日:12月25日 | 雑費 10,000円 | 未払金 10,000円 |
記帳日:1月20日 | 未払金 10,000円 | 普通預金 10,000円 |
月をまたぐ経費の場合も同様です。12月分の外注費5万円を1月10日に現金で支払う場合を想定すると、下記のように仕訳します。
記帳日:12月31日 | 外注費 50,000円 | 未払金 50,000円 |
記帳日:1月10日 | 未払金 50,000円 | 現金 50,000円 |
クレジットカード決済の場合は、利用時点で未払金を計上し、実際の引き落とし時に未払金を消し込みます。新幹線のチケット代金3万円を12月7日にクレジットカードで決済し、翌月20日にカードの引き落し日が来る場合を想定すると、記帳する内容は下記のとおりです。
記帳日:12月7日 | 旅費交通費 30,000円 | 未払金 30,000円 |
記帳日:1月20日 | 未払金 30,000円 | 普通預金 30,000円 |
日々の帳簿付けをラクにするには
未払金の処理を含む日々の経理業務は、適切に処理しないと決算時に大きな負担となります。とくに個人事業主や小規模な法人では、事業主自身で会計処理を担うケースが多く、効率化を意識することが大切です。
クラウド型の会計ソフトを使う
会計ソフトにはさまざまな種類があり、クラウド型と呼ばれるタイプは便利です。インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、外出先での経費の記録も簡単です。バックアップ作業も不要で、パソコンの故障や災害時のデータ消失リスクも軽減されます。
近年のクラウド会計ソフトでとくに便利なのは、データ連携による自動仕訳機能です。各種決済サービスや銀行口座、クレジットカードなどと連携することで、取引データを自動的に取り込み、適切な勘定科目に振り分けてくれます。たとえば、毎月の水道光熱費や通信費などの経常的な支出は、一度設定すれば自動的に仕訳されます。
Squareで会計ソフトと連携しよう
Squareの決済サービスは、人気の2種類のクラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード)とのデータ連携に対応しています。連携のための初期設定を済ませることで、売上情報を会計ソフトに反映させ、それぞれのソフトが対応する自動仕訳機能を使って記帳作業を簡便化できます。こうしたしくみがあれば、経理の手作業が減り、コア業務やお客さま対応に集中できるでしょう。
まとめ
年度・月またぎの未払金は、発生主義会計の原則に沿って「取引発生時」と「実際の支払時」の2回に分けて記帳します。とくに年度末の処理を誤ると、債務の引き継ぎ・消し込みに失敗し、確定申告の際の申告額に影響を与える可能性があるため、注意しましょう。
日々の経理業務を効率化するには、クラウド会計ソフトと決済サービスの連携による自動化がおすすめです。手作業による入力ミスを防ぎつつ、記帳作業の手間を大幅に削減し、未払金のように長期間にわたって管理する必要のある債務・収益の対応もスムーズになるはずです。
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執筆は2025年2月5日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash