事業の資金繰りをサポートする一つの手段として、金融機関やノンバンクが個人事業主・法人向けにさまざまなビジネスローンを提供しています。個人事業主と中小企業などの法人では、利用できるビジネスローン商品が異なることもあります。
ビジネスローンを申し込む前に、他の融資との違いや、金利、独自審査などの仕組み、審査落ちの原因、借入の注意点をよく理解しておきましょう。低金利や即日融資のビジネスローンの特徴やリスクにも着目して解説していきます。また、ビジネスの資金繰りを改善するために効果的な決済サービスも紹介します。
目次
- ビジネスローンとは
- ビジネスローンと融資の違い
- 個人事業主向けビジネスローンの特徴
- 法人向けビジネスローンの特徴
- 低金利ビジネスローンの特徴とリスク
- 即日融資ビジネスローンの特徴とリスク
- ビジネスローンにおける「総量規制」とは?
- 資金繰りを改善するには、Square
ビジネスローンとは?
ビジネスローンにはどういった特徴があり、どのような使い方ができ、他のローンや融資と何が異なるか、まずは概要を押さえておきましょう。
ビジネスローンの特徴
ビジネスローンは法人・個人事業主を対象とするローンで、中小企業やフリーランスも対象となります。
原則として無担保・無保証人で借り入れができることがビジネスローンの特徴です。一般的に公的機関や金融機関の融資を利用する場合は担保・保証が必要であるため、比較するとビジネスローンはフレキシブルに活用しやすいローンといえます。
ビジネスローンの提供元によっては借り主の年齢制限など条件を設けていることもあります。「20歳以上69歳未満」かつ「日本国籍、または日本での永住権を有する」などの条件を満たすことを条件とするケースがあるので、申し込み前に必ず確認しましょう。
ビジネスローンの用途
ビジネスローンは文字通り、ビジネスの事業資金に充当することを目的とするローンです。開業資金、設備投資資金、取引先への支払い資金、運転資金など、事業のためであれば用途を限定せずにビジネスローンを借りることができます。
具体的にはたとえば、次のようなシーンでのビジネスローンの活用が考えられます。
- 営業開始に必要な資金を補いたい
- ツールや機械を購入する資金を調達したい
- 入金が遅く資金不足で、給与の支払い分を用意したい
- 仕入れの支払いに充てる資金が足りないので借りたい
ビジネスローンは商品によって、融資の上限額が500万円から10億円までと非常に幅広く、借入の目的に合わせて選ぶ必要があります。金利や返済期間、審査の通りやすさ、申し込み条件なども多様であるため、しっかり理解した上で申し込むようにしましょう。
ビジネスローンが事業資金の調達のために借り入れるローンである一方、用途に制限のあるカードローンやフリーローンは事業資金としては利用できないケースもあります。
ビジネスローンと融資の違い
ビジネスローンの他にも、事業資金を借り入れる方法はいくつかあります。ここでは、ビジネスローン、事業者向けの公的融資、プロパー融資の特徴を比較してみます。
ビジネスローン | ・提供元:金融機関、信販会社、事業者金融など ・担保・保証人:原則として不要 ・融資までの時間:即日〜2週間程度 ・借入上限:10億円程度 ・金利:約2〜20% |
公的融資(事業者向け) | ・提供元:日本政策金融公庫・担保・保証人:なしで利用できる制度もあり ・融資までの時間:数週間〜2カ月程度 ・借入上限:7,200万円(一般貸付の場合) ・金利:〜2%程度・固定金利(返済期間などによる) |
プロパー融資(保証協会の保証を利用せず、金融機関が100%審査する融資) | ・提供元:銀行など金融機関 ・担保・保証人:利用目的・信用度により異なる ・融資までの時間:数週間程度 ・借入上限:限度額なし ・金利:〜2%程度 |
比較すると、ビジネスローンは借入の申し込みから実際に融資が開始されるまでの日数が圧倒的に短いことから、急な資金要請に対応しやすいことが分かります。反面、ビジネスローンの金利は他の融資と比べると高めであるため、資金繰りのスケジュールやタイミングに合わせた利用がおすすめです。
時間的な余裕があり、申し込み資格を満たす場合は公的融資やプロパー融資を先に検討し、それらを利用できない場合にビジネスローンという選択肢を採るのが賢い使い方です。
個人事業主向けビジネスローンの特徴
ビジネスローンは利用する事業者のニーズに合わせて細分化が進み、個人事業主を対象とするビジネスローンも提供されています。
種類
個人事業主向けのビジネスローン商品は、大きく分けて2種類の提供元があります。
- 銀行系(メガバンク、ネット銀行、地方銀行など)のビジネスローン
- ノンバンク系(信販会社、事業者金融など)のビジネスローン
たとえば、銀行系ではPayPay銀行、福岡銀行、りそな銀行、東京スター銀行などが、ノンバンク系ではAGビジネスサポート、オージェイ、ビジネスパートナーなどが個人事業主を対象とするビジネスローン商品を出しています。
金利
個人事業主向けのビジネスローンの金利は一般的に、銀行系が約2〜14%、ノンバンク系が約3〜18%となっています。金利が低いのは銀行系ですが、ノンバンク系と比べて銀行系のほうが審査が厳しい傾向があります。
審査に落ちる理由と対策
個人事業主向けのビジネスローンを申し込んでも、審査に通過しないと融資が受けられず、事業資金を調達できません。ビジネスローンの審査基準は公開されていないものの、一般的に次のようなポイントに注意することで審査落ちを回避できる可能性が高まります。
- 申し込み条件との不一致……対象年齢、経営年数などが条件に合うかどうかを確認
- 書類の不備……不足書類、記入漏れがないかどうかを確認し、提出期限を遵守
- 虚偽申告……申告情報に事実関係の間違いがないかどうかを確認
- 返済能力の低さ……借入金額を低めに設定し、事業計画書を提出
- 赤字決算……財務状況を整理、または赤字でも借入可能なローンに申し込む
この他、複数社でビジネスローンを利用中の場合は、先にローンを整理することも検討してみましょう。
審査が通りやすいビジネスローン
ビジネスローン商品の多くは創業後すぐだと申し込みができず、決算書などで2〜3年の実績を示すことを条件とするケースが多く見受けられます。ただし、ビジネスローン商品によっては創業1年以内の個人事業主も対象としていることがあります。
一例として、PayPay銀行のビジネスローンは、決算書や事業計画書が不要で起業したばかりでも申し込みが可能です。
各ビジネスローン商品の内容をよく理解し、条件に合うものに申し込むことで審査に通りやすくなります。
独自審査
「独自審査」は、ビジネスローンの審査の通過しやすさという面でチェックすべきポイントです。ビジネスローンにおける独自審査とは、決算書や確定申告などのビジネスの数字だけで貸し付けの可否を判断せず、事業計画の将来性、事業の現状、市場環境や個別の事情、信用度などを審査基準に組み入れることを指します。そのため、独自審査を実施しているビジネスローンであれば、一般的な審査では通りにくい事情があるケースでも利用できるチャンスが広がります。
法人向けビジネスローンの特徴
ビジネスローンは中小企業などの法人経営者向けにも数多く用意されています。
種類
法人向けに商品設計されたビジネスローンも、提供元の違いにより2種類に分類できます。
- 銀行系(メガバンク、ネット銀行、地方銀行など)のビジネスローン
- ノンバンク系(信販会社、事業者金融など)のビジネスローン
銀行系では三井住友銀行、三菱UFJ銀行、福岡銀行、りそな銀行、PayPay銀行、GMOあおぞらネット銀行などが法人向けのビジネスローン商品を提供しています。ノンバンク系ではAGビジネスサポート、キャレント、オージェイ、ファウンドワン、クラウドバンク・フィナンシャルサービスなどがビジネスローン商品を出しています。
個人事業主向けと比べて、法人向けのビジネスローン商品のほうが多くの機関で取り扱われているため、法人経営者にとっては借入先の選択肢が多いといえます。
金利
法人向けビジネスローンにおいては、銀行系の金利は約1〜14%、ノンバンク系の金利は約3〜20%で、銀行系のほうが低い傾向があります。ただし、金利というピンポイントの条件のみを基準にビジネスローンを選ぶのではなく、融資スピード、審査に必要な書類、借入上限額、返済期間などを総合的に検討し、自身が重視する基準に合わせて選びましょう。自社の事業状況や信用情報によっても、利用しやすいビジネスローンは変わってきます。
審査に落ちる理由と対策
法人でも個人事業主でも、ビジネスローンの審査落ちの要因は基本的に同じだと考えられます。次のポイントをチェックし、ネックとなる部分を改善することで審査落ち対策を行います。
- 申し込み条件との不一致……事業年数などが条件に合うかどうかを確認
- 書類の不備……不足書類、記入漏れがないかどうかを確認し、提出期限を遵守。
- 虚偽申告……申告情報に事実関係の間違いがないかどうかを確認。
- 返済能力の低さ……借入金額を低めに設定し、事業計画書を提出。
- 赤字決算……財務状況を整理、または赤字でも借入可能なローンに申し込む。
審査が通りやすいビジネスローン
審査落ちが懸念される場合、申し込みや審査の要件が柔軟なビジネスローン商品を選んで申し込むことでチャンスが広がります。たとえば銀行系のGMOあおぞらネット銀行のビジネスローンの申し込みには決算書と事業計画書が不要で、創業期や赤字決算のタイミングでも申し込むことができます。
注意点として、審査が通りやすいビジネスローンは上限金利が高いことが多いので、事前にしっかり確認し、納得した上で申し込みましょう。
独自審査
個人事業主向けのビジネスローンと同じく、法人向けのビジネスローンでも独自審査を設けていることがあります。独自審査を行うのは、銀行系ではなく主にノンバンク系のビジネスローンです。
決算書や確定申告の状況などから審査に不安がある場合は、柔軟な独自審査を行うビジネスローン商品を検討する価値があります。赤字決算でも審査が通るビジネスローンは、独自審査を適用しています。
低金利ビジネスローンの特徴とリスク
ここまで、ビジネスローンの概要や利用しやすさに注目して解説してきましたが、ビジネスローンのタイプ別の特徴とリスクについても考えてみましょう。
返済金額という点にフォーカスすると、低金利タイプのビジネスローンが魅力的です。金利が低い銀行系の中でも、地方銀行よりメガバンクのほうがより金利が低い傾向があります。ノンバンク系では、事業者金融より信販会社のほうが金利が低めです。
ただし低金利のビジネスローンの特徴として、申し込み後の審査が厳しいことが挙げられます。厳しい審査を通過し、返済能力が高いとみなされる事業者だからこそ、低金利で融資を受けられるというわけです。審査が厳しいということは、申し込みの際に用意する書類の量も必然的に多くなりがちです。過去3期分の決算書や税務申告書が必要なケースもあり、「すぐに融資が必要で書類の準備が間に合わない」「創業して間もないため必要書類がない」といった場合には低金利タイプのビジネスローンは向かないといえます。
とはいえ、銀行系でもGMOあおぞらネット銀行やPayPay銀行などのネット銀行の場合は、「銀行口座の入出金履歴だけ」「本人確認書類、決算書、確定申告書だけ」など極めて少ない書類の提出で融資を受けられるビジネスローンがあります。ネット銀行のビジネスローンは融資スピードが申し込みから最短2〜5日と短く、返済期間の自由度が高いことも特徴です。ネット銀行の金利は下限が約1〜2%であるものの、上限が約14%であることに注意しましょう。
低金利のビジネスローンの注意点をまとめると、次の通りです。
- 融資に至る審査が厳しい
- 必要書類が多い傾向(例外あり)
- ネット銀行の場合は上限金利が高い
即日融資ビジネスローンの特徴とリスク
申し込んだその日に融資を受けられる「即日融資」を強みとするビジネスローンは、ノンバンク系に多く存在します。取引先への支払い期日が目前に迫っている場合など、急な資金要請に対応するには即日融資タイプのビジネスローンが大きな助けとなります。
即日融資のビジネスローンは申し込みや審査の手続きの迅速さも特徴で、用意すべき必要書類は基本的に多くありません。即日融資タイプの場合、申し込みの手続きがすべてオンラインで完結するビジネスローンもあります。銀行系のビジネスローンに比べると審査も柔軟と考えられるため、正しく手続きをしていれば審査落ちのリスクが比較的低いこともメリットです。
即日融資のビジネスローンの返済期間は最長2〜10年と幅があります。また、金利については約3〜18%と高いため、返済金額・期間への影響をしっかり勘案しましょう。
即日融資のビジネスローンの注意点は、次のようにまとめられます。
- 返済期間の自由度は低め
- 金利が高い
ビジネスローンにおける「総量規制」とは?
金融機関やノンバンクなどからお金を借りる際に知っておきたいルールとして、「総量規制」があります。総量規制は貸金業法で定められているもので、金融機関やノンバンクなどの貸金業者に対して「申込者の年収の3分の1を超える貸付」を禁止しています。申込者個人が複数の貸金業者からお金を借りる場合、その合計額が年収の3分の1を超えることはできないということです。これは、過剰なお金の貸借によるトラブルを防ぐことにつながっています。
しかし総量規制には、「対象とならない貸付」が存在します。総量規制の対象外となるのは、住宅ローンや自動車ローンなどの他に次のような項目が含まれます。
A. 個人事業者に対する貸付
B. 新たに事業を営む個人事業者に対する貸付
C. 預金取扱金融機関からの貸付を受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付
※「A」と「B」は要件として「事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合」に限定。
※「C」は要件として「貸付が確実に行われると確認でき、1カ月以内の返済である場合」に限定。
つまり、個人事業主によるビジネスローンの利用は総量規制の対象外です。個人事業主がプライベートで貸金業者からお金を借りている場合も、ビジネスローンを合算して考える必要はありません。
なお、総量規制は個人向けの貸付に関するルールであり法人は対象ではありません。よって、法人も総量規制に関係なくビジネスローンを利用することができます。
参考:お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について) (日本貸金業協会)
資金繰りを改善するには、Square
現時点でビジネスローンを利用する必要性がないとしても、個人事業主や法人経営者にとって資金繰りは常に注視すべき課題です。ビジネスの収入・支出を適切に管理し、過不足なく資金を回していくためには、資金額と同時に「入出金のタイミング」にも気をつける必要があります。
特に、現金だけでなくキャッシュレス決済を扱うビジネスの場合には、各種決済サービスから自社への入金サイクルが肝心です。顧客からの支払いをキャッシュレス決済で受け付けると、決済サービスを経由して自社に入金されるため、売り上げが計上される決済日と入金日が同一ではなくなります。決済サービスによっては売り上げが「翌々月末払い」で入金されるケースもあり、ビジネスコストなどの支出はあっても収入はまだ入っていない、という状態になります。
しかしキャッシュレス決済サービスの「Square」の場合は、最短で翌営業日に入金されます。Squareを利用しているビジネスは売り上げの計上日と入金日の間にギャップが生じにくく、お金の動きがシンプルでわかりやすくなることがメリットです。入金が早いということは手元に常に資金がある状態ということになり、Square導入による資金繰り改善への効果は抜群です。
例として、Squareを利用した決済と「翌々月末払い」の決済サービスを利用した決済を比較すると、次のような違いが生じます。
Square | 「翌々月末払い」の決済サービス | |
決済日 | 3月1日 | 3月1日 |
入金日 | 3月2日(最短の場合) | 5月31日 |
このように、入金サイクルの違いによって手元の資金状況が最大約3カ月分も違ってくることがあります。「どんな入金サイクルの決済サービスを選ぶか」がビジネスの資金繰りに大きく影響することが分かります。今後ますます世の中でキャッシュレス決済が浸透していくと思われるため、Squareのように入金サイクルの早い決済サービスを選択する重要性はさらに高まるでしょう。
また、Squareでは「Square 資金調達」(※)という資金調達サービスも提供しています。
※Square 資金調達は、Squareをすでに利用しており、かつ所定の条件を満たしているSquare 加盟店が対象です。
Square 資金調達は、Square 加盟店が将来Squareで生み出す売り上げをあらかじめ譲渡することで、前払いとして資金調達を受ける仕組みです。最初に提示される固定手数料以外に追加のお金は一切かかりません。
Squareから資金調達のご案内を受けとった加盟店は、提示されている資金調達可能額を上限にご自身で資金調達額を選択し、申し込むことができます。場合によっては追加で情報提出が必要なことがありますが、申込自体はオンラインで完結し、面接は不要です。審査は最短即日、最大3営業日で完了します。申込が承認された場合、最短で審査完了の翌営業日にはSquareに登録している銀行口座に入金されます。
資金調達をしたあとは、Squareでの売り上げから一定の割合が自動的に差し引かれます。売り上げが伸びている日は多めに、そうでない日は少なめに差し引かれ、売り上げがない日には差し引かれません。そのため、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。
ビジネスの継続性の要ともいえる資金繰りについて、入金サイクルの改善やビジネスローンなどについての知識を日頃から蓄え、ビジネスを賢く運営していきましょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2023年12月4日時点の情報を参照しています。2024年3月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash