少子高齢社会が進む日本で、人口ボリュームの大きい団塊の世代がシニアになり、企業もシニア世代の消費動向を無視できなくなりました。
今回はシニア世代の消費動向の現状を確認し、どんな対策が取れるかについて考えていきます。
消費の5割を占めるシニア世代
総務省の家計調査によると、消費に占める60歳以上の割合は毎年徐々に増加し、2014年の段階で5割近くを占めています。一方で59歳以下は徐々に減少しており、少子高齢化が進んでいる現状ではシニア層の占める割合はますます増えていきそうです。
2002年にはインターネットショッピングを利用している高齢者世帯が1.9%だったのに対して、2013年には9.9%に増えるなど、消費傾向の変化も見られます。
参考:
日本経済2015-2016 第2節 高齢者の消費と就労(内閣府)
統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで- 5.高齢者の家計(統計局)
シニア世代全体の動向はむしろ消極化?
シニアといっても一括りにはできません。引退したばかりの比較的若いシニア層もいれば、現役を退いて既に何年も経っているシニア層もいます。
日本総研が2017年に行なった発表によると団塊世代を含む現在の60代は、かつての60代に比べて消費を控える傾向にあるようです。定年退職時の平均退職金額や退職前の年収がかつての50代の年収よりも落ち込んでいることが影響しています。60代はまだ子どもが独立していない世帯もあり、退職後に旅行に行くなど支出する機会もありますが将来に対する不安からか、かつての60代よりも消費を控えている傾向が見られます。
参考:拡大が期待されたシニア世代の消費の伸び悩み ~経済的制約下にある団塊世代に必要な「半年金・半就業」スタイル~(日本総研)
医療技術の進歩などにより寿命はますます伸びていくことが予想されます。世界的ベストセラーになった「LIFE SHIFT(ライフシフト)」では人生100年時代のキャリア設計について提唱しています。
長寿社会が当たり前になった現代では、生活のために消費を控えるシニア世代が今後も増えることが考えられます。
シニアの価値観も多様。セグメントを浮き彫りにすることも重要
消費の約5割を占めるシニア世代の存在は無視できないものになっています。事業者はシニア層の消費とどのように向き合っていけば良いのでしょうか。シニア世代の価値観も多様化しています。そのためシニア世代の価値観を分類し、どの層に価値や商品を提供するのかもシニア消費と向き合う上で重要な視点です。
今回は電通によるシニア価値観セグメントを参考に紹介します。
参考:シニアの多様な「買い物」観~決め手は「具体性」と「納得感」~(2018年7月2日、電通報)
アクティブトラッド
リタイアして悠々自適に暮らしている方が多く、お金あり時間あり。消費も行動も積極的だが、伝統的な家族観が強い。いわゆる「アクティブシニア」と言われてきたイメージに最も近い。
ラブ・マイライフ
若さや美への追求心、アンチエイジング意識が強く、新しい物好きで情報通、流行にも敏感。「新型」のアクティブシニアの一つ。
社会派インディペンデント
人とのつながりを大事にし、新しい人脈を築くことや世代を超えた交流にも意欲的。「新型アクティブシニア」のもう一つのパターン。
淡々コンサバ
現在の生活に十分満足していて、これ以上に多くを望まない。強い主張をももたず、日々淡々と平穏な暮らしを送っている。従来言われてきた「高齢者」イメージに最も近い。
身の丈リアリスト
何かとお金がない、お金がかかるからできないという諦め感を口にする。お金を本当に持っていないわけではないが、将来不安からか消費行動は消極的。
セカンドライフモラトリアム
社会に取り残される不安感や、人や社会とつながりたい思いは強い。が、その術がわからず、これからの人生をどう過ごしたらよいのか模索している。
シニアを多面的に捉えるのがコツ
シニアというと一括りにしてしまいがちです。しかしシニア層でも60代と80代では生活や価値観が異なりますし、働いているかどうかでも消費動向が違います。
シニア消費と向き合うためには、まずはシニア層を丁寧に分けて考える必要があるのではないでしょうか。サービスや商品の価値がシニア層のどのセグメントがマッチするのかを考えて、丁寧なマーケティングを行うことが今後、求められます。
日本は消費の5割を占めているのがシニア層です。そして今後もシニア世代が増えるにあたって、シニア消費と向き合わなければいけない場面が増えていくでしょう。しかしシニア消費と一口にいっても多様です。シニア消費の多様性を理解し、効果的なマーケティングをしていくことが今後ますます重要になります。
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執筆は2019年5月20日時点の情報を参照しています。
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