2017年に価格が急速に高騰して以来、じわじわと注目を集めてきた仮想通貨。最近ではソーシャルネットワークの代表格であるFacebookが自社の仮想通貨「Libra」を発表したり、家電量販店でも取り扱われるようになったり、より身近に感じられるようになってきました。なかには新たな投資法として注目するビジネスオーナーも増えているのではないでしょうか。ところが実際に投資するとなると、避けて通れないのが税金です。
今回は仮想通貨と税金の関係から、株式投資との違い、仮想通貨の所得計算を手助けするサービスについて説明します。
どこからが課税対象?仮想通貨にかかる税金について
仮想通貨は、保有しているだけであれば、税金が引かれることはありません。
所得税の対象となるのは、1月1日から12月31日の一年で行われた(1)仮想通貨の売却、(2)仮想通貨での支払い、(3)他の通貨への換金、(4)仮想通貨のマイニング、です。ただし、利益(所得)が20万円以内であれば、税金の対象にはなりません。一方で学生や主婦など扶養内の場合は、給与所得を含むあらゆる所得に合わせて、仮想通貨が含まれる雑所得の合計が38万円以下であれば扶養の範囲内になり、確定申告書は不要です。
所得は大きく分けて10種類ありますが、仮想通貨は「雑所得」として扱われます。
参考:家族と税(国税庁)
仮想通貨での利益を計算する方法
仮想通貨で得た所得の計算方法はいたって簡単です。仮想通貨を売却した場合は売値と買値の差額、商品を購入した場合は、商品購入時の仮想通貨の売値と、商品購入額の差額となります。わかりやすく例を挙げます。
仮想通貨を売却した場合
1. 2ビットコインをそれぞれ40万円(計80万円)で購入
2. 2ビットコインをそれぞれ50万円(計100万円)で売却
100万円(売却時の金額)ー80万円(1ビットコインあたりの購入時の価格40万円×2ビットコイン)=20万円(所得額)
仮想通貨で商品を購入した場合
1. 20万円/ビットコインのタイミングで1ビットコインを購入
2. 1ビットコインの価格が30万円に上昇したタイミングで、30万円のテレビを1ビットコインで購入
30万円(商品価格)ー20万円(1ビットコインあたりの価格20万円×1ビットコイン)=10万円(所得額)
このように取引ごとに所得を計算し、その総額を基に確定申告書を作成・提出したうえ、納税する必要があります。仮想通貨にかかる税金は、下記を参考にしてみてください。
所得を計算するうえで選択が必要。「移動平均法」と「総平均法」の違い
仮想通貨の価格は毎日変動するため、一年を通して複数回通貨を購入する場合は、1ビットコインあたりの価格にばらつきが出てくるでしょう。たとえばある年の1月に120万円/1ビットコインで5ビットコインを購入したとしましょう。それが2カ月後の3月に商品を購入するときには1ビットコインあたり150万円まで上昇、6月に売却するときは160万円/1ビットコインまで上昇……と取引をする度に1ビットコインあたりの価格が異なることもあるでしょう。
その際に所得を計算するには、仮想通貨購入時の価格をもとに計算する「移動平均法」と、一年間の購入額を基に単価の平均額を出す「総平均法」のいずれかの方法に分かれます。
移動平均法は、毎回通貨の購入額を基に取引の計算をしなければいけないため、複雑ではありますが、より正確な利益が出せる方法です。一方で総平均法は計算しやすいものの、単価の平均額を基に計算している分、実際の利益からかけ離れてしまう可能性があります。平均額によっては、総額が実際の利益を上回り、納税額が多額になる恐れもあります。また、1年の平均を出してからでないと計算ができないため、翌年の税額が確定申告直前まで予測しづらいというデメリットがあります。
ここで注意したいのは、一度選んだ計算法は翌年以降も継続して使用しなければいけないという点です。その年ごとで利益が少ない計算法を選ぶことはできないので、注意が必要です。
確定申告における株式投資との違い
株式投資の経験があれば、確定申告をしたほうが節税になる場合があると耳にしたことがあるかもしれません。いずれも投資ではあるものの、株式投資で得た利益は「譲渡所得」に含まれる一方で、仮想通貨の利益は前述の通り「雑所得」に含まれるので、株式投資で得られる節税メリットが仮想通貨で得られるとは限りません。
以下、仮想通貨が含まれる「雑所得」では対象にならないものを念頭に置いたうえで、仮想通貨の売買に踏み切りましょう。
1. 分離課税の対象にならない
所得は「総合課税」と「申告分離課税」のいずれかでの申告が可能です。
原則としてあるのが、給与所得など、他で得た所得と合算されたうえで、税率が決まる「総合課税」です。この場合、総所得が多ければ多いほど税率が上がる「累進課税方式」が採用されるので、所得があまりにも増えてしまうと住民税の10%と足して、税金が最大55%になり得る可能性があります。
一方で、一定の所得は「申告分離課税」の対象とみなされており、他で得た所得とは合算せず税額を計算し、納税を完結させることができます。この方法で確定申告をすると、住民税込みで税額が最大20%とされるため、該当する所得がある場合は活用したいところでしょう。
株式投資が含まれる「譲渡所得」は申告分離課税の対象です。仮想通貨でも同様に分離課税の恩恵を受けたいところですが、現時点で「雑所得」である仮想通貨は対象外です。
仮想通貨の売買は、所得が多ければ多いほど税額が上がる「総合課税」の対象であると心得ておきましょう。
2. 繰越控除の対象にならない
株式投資で損失が出た場合、確定申告をすることで、向こう3年まで損失を繰り越せる「譲渡損失の繰越控除」が適用されます。つまり3年以内の損失であれば、利益が出た年の譲渡所得と相殺し、節税ができます。
申告分離課税と同じく、株式投資が含まれる「譲渡所得」は繰越控除の対象ですが、仮想通貨が含まれる「雑所得」は対象外です。
3. 損益通算ができない
株式投資では繰越控除の他にも、下記所得区分から利益が出ている所得と合算して、利益と損失を相殺し、節税ができる「損益通算」の対象です。
・不動産所得
・事業所得
・譲渡所得
・山林所得
一方で仮想通貨は損益通算の対象外であるため、仮想通貨同士、もしくは雑所得内でしか相殺ができません。
たとえばある年、ビットコイン、イーサリアム、リップルなどさまざまな仮想通貨で得た所得がマイナス50万円の赤字だったとしましょう。株式投資であれば、この場合、該当する他の所得と合算して所得額を減額できますが、仮想通貨ではこれができません。
このように株式投資とは扱いが異なる点が多いですが、下記のような工夫で仮想通貨の所得でも節税につなげることができます。
・仮想通貨の価格が上がるまで保有する
・仮想通貨の所得を年間20万円以内に抑える
・マイニングをしている場合、収入金額から必要経費を差し引いて所得を計算する
必要な機器の費用やマイニングに費やした電気代、情報収集のために購入したメルマガや書籍、セミナーへの参加費用などが経費として計上できるようです。
参考:仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)(国税庁)
税金の計算を簡単にしてくれる「税金計算サービス」とは
特に個人事業を経営している場合、細かい経費計算に頭を抱える人も多いのではないでしょうか。そのうえ、仮想通貨の税金計算もするとなると、時間と負担が思いやられます。そこで押さえておきたのが、仮想通貨の税金計算をサポートしてくれる会計サービスです。
移動平均法と総平均法のいずれかを選択できるうえ、損益計算なども無料でできるサービスにはCryptoLinCや、Gtaxなどが挙げられます。他にもマイニングに対応しているものや、有料で税理士のサポートが受けられるサービスなど内容は多岐に渡るので、便利なツールを有効活用し、時間削減につなげてみてはいかがでしょうか。
仮想通貨における税金の仕組みを理解することで翌年の税額を予測したり、税金計算サービスで前もって所得を計算したりすることで、ばたつくことなく確定申告シーズンを迎えましょう。
執筆は2019年8月6日時点の情報を参照しています。
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