飲食店を経営していると、さまざまな経営上の問題や課題に直面します。新規開店準備に始まり、新メニュー開発、人材教育、業績改善、ブランディングなど、課題は多岐に渡ります。そのようなときに、専門的な知識と経験で課題の解決を助ける「飲食店コンサルタント」は頼もしい存在になるかもしれません。
飲食店コンサルタントとはどのような専門家で、どのようなサービスを提供してくれるのでしょうか。そして、飲食店コンサルタントを必要とする状況や、依頼のタイミング、サービスを受けるにあたって必要となる費用も気になります。
本記事では、飲食店経営者が経営状況に合わせて最適な飲食店コンサルタントを選べるように、飲食店コンサルタントとは何かから始め、飲食店コンサルタントに依頼するメリットとデメリット、サービス内容、飲食店コンサルタントが必要となるケース、依頼のタイミング、そして費用相場について詳しく説明します。
目次
- 飲食店コンサルタントとは
- 飲食店コンサルタントに依頼するメリットとデメリット
- 飲食店コンサルタントのサービス内容
- 飲食店コンサルタントの種類
- 飲食店コンサルタントが必要になるケース
- 飲食店コンサルタントに依頼するタイミング
- 飲食店コンサルタントの費用相場
飲食店コンサルタントとは
飲食店コンサルタントとは、飲食店経営者が抱える課題の解決をサポートする専門家です。飲食店コンサルタントの業務は、新規開店支援、メニュー開発、コスト管理、人材教育、マーケティング戦略、業績改善など多岐に渡ります。飲食店コンサルタントは経験と知識を生かして、飲食店の特性や経営者のニーズに合わせた具体的な改善策を提案します。
飲食店コンサルタントの中には、独立してサービスを提供しているコンサルタントのほか、企業に所属している人もいます。飲食店コンサルタントによっては、課題の分析と改善案の提案だけでなく、実際にソリューションの実行を手助けする場合もあります。
飲食店コンサルタントというと、課題解決を支援するイメージを持つ人もいるかもしれませんが、飲食店が直面する可能性のある課題の予防にも一役買っています。経営戦略の策定や、リスク管理に関わり、将来的な経営難を回避できるよう助言します。
ただし、コンサルタントはあくまで外部のアドバイザーであり、最終的な決定は経営者自身が行わなければなりません。経営者のビジョンに合わせてコンサルタントのアドバイスを生かしていく必要があります。
飲食店コンサルタントに依頼するメリットとデメリット
飲食店経営者の頼れる味方になる可能性のある飲食店コンサルタントですが、依頼する前に、飲食店コンサルタントのメリットとデメリットの両方を知っておくとよいでしょう。
メリット
不足している知識を補完してくれる
飲食店コンサルタントは、市場動向、消費者の嗜好、オペレーション、人材育成など、飲食業界に関する専門的な知識を持っています。専門知識をもとに、飲食店コンサルタントは、経営者の知識を補完します。
経験をもとにアドバイスがもらえる
加えて、これまでにさまざまな飲食店をサポートしてきた飲食店コンサルタントの経験にもとづいたアドバイスを受けられるのもメリットの一つです。飲食店コンサルタントは、過去の事例をもとに、クライアントに合ったソリューションを提案します。
客観的な視点が得られる
飲食店コンサルタントの客観的な視点もメリットの一つです。経営者と従業員は社内の人間で、どうしてもこれまでの自社の状況や固定観念にとらわれがちです。飲食店コンサルタントは第三者の視点から、冷静に経営状況をはじめとする飲食店の現状を分析し、改善や成長のための提案ができます。
デメリット
コストがかかる
飲食店コンサルタントを依頼する場合、少なからず費用がかかります。経営状況によっては、コンサルティング料金を負担するのが難しいかもしれません。ただ、すぐに諦めず、助成プログラムを利用してコンサルティングを受けられる可能性を探ってみましょう。たとえば、公益財団法人東京都中小企業振興公社は都内の中小飲食事業者を対象に「飲食事業者向け経営基盤強化支援事業」を行っており、専門家派遣実施コースでは、飲食業界の専門家によるコンサルティングを無料で受けられ、経営基盤強化に必要な経費の一部が助成されます。事業を行っている自治体で類似の助成がないか調べてみるとよいでしょう。
費用対効果が把握しにくい
飲食店コンサルタントの支援を受けたとしても、提案された改善策の効果がすぐに結果に現れないことがあり、特に短期的には、費用対効果をはっきりと把握するのが難しい場合が少なくありません。また、飲食店コンサルタントはあくまで飲食店の現状を分析し提案を行うのが主な業務で、必ずしも結果は保証されません。結果によって費用を支払いたい場合は、事前に達成したい目標を数値で具体的にし、成果報酬でコンサルティングを提供する飲食店コンサルタントを探してみるとよいでしょう。
相性によるトラブルが起きることも
経営者と飲食店コンサルタントの相性を無視してはいけません。良心的な料金設定でも、いくら過去に実績があっても、飲食店コンサルタントも人間です。経営者と飲食店コンサルタントが根本的に理解し合えない、価値観が合わないといったことがあっても不思議ではありません。また、いくら人間的に相性がよくても、依頼したい内容と、飲食店コンサルタントの得意分野が異なることもあります。手間と時間はかかるかもしれませんが、相性がよく、かつ依頼内容と合った得意分野を持つ飲食店コンサルタントをじっくり探す必要があります。
社内にスキルが蓄積されにくい
最後に一つ注意しておきたいのが、ノウハウの蓄積です。飲食店コンサルタントに頼りすぎてしまうと、社内にスキルや知識が蓄積されにくくなる可能性があります。飲食店コンサルタントからは、ノウハウを学び、社内に定着するように取り組むとよいでしょう。
飲食店コンサルタントのサービス内容
飲食店コンサルタントは、飲食店の経営全般をサポートする専門家ですが、以下のような専門分野があります。
・経営企画
・経営・業務支援
・内外装の企画
・取引先の仲介
・メニュー開発
・従業員の育成
・業務効率化
それぞれについて詳しく見てみましょう。
経営企画
ビジネスモデルの構築、店舗や業態の開発、戦略策定など、飲食店の経営全体に関わる企画の策定を行います。市場調査や競合分析、財務計画などを扱うこともあります。
経営・業務支援
日々の経営や店舗の運営に関する具体的な支援を行います。具体的には、売上向上のための提案、費用削減の提案、マーケティング戦略の立案などが含まれます。
内外装の企画
飲食店のコンセプトやお客様の体験を考慮しながら、店舗の外観や店舗内をどのようにデザインするかについてアドバイスをします。
取引先の仲介
新たに飲食店を始める経営者は、どこから材料を仕入れたらよいのかという課題に直面します。また、長年経営している飲食店でも、現在の取引先が必ずしも最適であるとは限りません。取引先の仲介を専門とするコンサルタントは、飲食業界でのネットワークを生かして、信頼できる取引先を紹介したり、交渉をサポートしたりします。
メニュー開発
飲食店の重要な要素であるメニュー開発に対してアドバイスをします。具体的には、飲食店のコンセプトや業態、食のトレンドを意識しながら、食材の選定、調理法の提案、コスト計算、価格設定の提案を行います。
従業員の育成
日々の業務が忙しく、なかなか従業員の育成に時間を割けないという経営者も少なくないでしょう。また、従業員教育をどのように行ってよいのか見当がつかないという悩みもあります。人材育成を専門とする飲食店コンサルタントは、接客スキル向上のためのトレーニング、チームビルディング、リーダーシップトレーニングなどを行います。
業務効率化
業務効率化を専門とする飲食店コンサルタントは、飲食店の業務プロセスを分析し、改善策を提案します。業務の無駄をなくし、コストを削減し、生産性を向上させることを目指します。
飲食店コンサルタントの種類
前項では、どのような分野の飲食店コンサルタントがいるか説明しましたが、飲食店コンサルタントが専門とする分野は必ずしも一つとは限りません。
ある一つの分野に精通して、その分野のみの課題解決を支援する「特化型」の飲食店コンサルタントがいる一方で、さまざまな分野を広く扱う「総合型」の飲食店コンサルタントもいます。
どちらかに優劣があるわけではなく、飲食店の経営者が抱える課題によって、依頼する飲食店コンサルタントの種類を選ぶとよいでしょう。
「メニュー開発のアドバイスを受けたい」「野菜のよい仕入れ先を紹介してほしい」など課題が明確な場合や、課題の規模が比較的小さい場合は、その分野を専門とする特化型の飲食店コンサルタントを探してみてください。ただし、課題によっては、時間を割いて自分で解決できることもあるので、飲食店コンサルタントのアドバイスが必要かも含めて検討するとよいでしょう。
飲食店が抱える課題が「経営を見直して売り上げを向上させたい」「海外進出を検討したい」というような場合には、経営企画から業務効率化まで幅広い知識と経験が必要になる可能性があるため、総合型の飲食店コンサルタントを探してみるとよいでしょう。
飲食店コンサルタントが必要になるケース
飲食店の経営と一口にいっても、さまざまな要素が絡み合っています。飲食店を経営していると、自社の人材やノウハウだけでは解決できない問題が生じることがあります。そのような場合、飲食店コンサルタントの助けが必要になることがあります。具体的なケースを三つ紹介します。
自社の人材が不足している場合
飲食店の経営には、メニュー開発や店舗運営だけでなく、人材育成、マーケティング、財務管理など、さまざまな知識が必要です。これらすべてを経営者がカバーするのは容易ではありません。店舗の規模によっては人手が不足することもあるでしょう。このような場合、飲食店コンサルタントが一時的に人材不足を補い、専門知識を提供し、経営をサポートします。並行して不足している人材を補ったり、従業員に教育を行ったりして経営を軌道に乗せます。
自社のノウハウが不足している場合
飲食店の経営では、おいしい食事を提供するだけでなく、飲食業界のトレンドやSNSなどマーケティング手法にも精通している必要があります。日々の業務に忙しいと、最新の情報を取り入れるのは容易ではありません。そのようなときに飲食店コンサルタントからトレンドやマーケティング手法を学ぶのは一つの手です。また、新規開業や新しい業態に挑戦するときなどに、飲食店コンサルタントは自社のノウハウを補完してくれる心強い味方になるでしょう。
客観的な視点からのアドバイスが必要な場合
経営者自身が店舗運営に深く関わっていると、自社の問題点を見逃すことがあります。また、自身で経営する飲食店には愛着があり、その強みや弱みを客観的に評価するのは簡単ではありません。飲食店コンサルタントは外部の人間であり、客観的な視点からアドバイスを提供し、課題解決の道筋を示してくれます。
飲食店コンサルタントは、上記のような場合だけでなく、新たな価値を創造するための提案も行います。これらの場合に当てはまるようでしたら、飲食店コンサルタントを検討する価値があります。ただし、飲食店コンサルタントは問題すべてを解決するわけではないことは知っておかなければなりません。課題と目標を明確にした上で、飲食店コンサルタントが必要なのかどうかも含め、検討してください。
飲食店コンサルタントに依頼するタイミング
飲食店経営には、将来を見据えた戦略的な決断が求められます。特に次に説明するような大きな局面で、飲食店コンサルタントの助けを借りると、自信を持って経営判断をくだせることでしょう。
飲食店をどこに出店するか決めるとき
出店場所は、その後の経営を大きく左右します。どのような人が住み働いているのか、競合店舗の状況、交通アクセスなど、さまざまな観点を検討して決める必要があります。経験豊富な飲食店コンサルタントは、これらの要素を考慮して最適な出店場所を提案し、具体的な物件選びのアドバイスをしてくれます。
多店舗展開やフランチャイズ展開を検討しているとき
一店舗の経営とは異なり、多店舗展開やフランチャイズ展開は、さらに広範な視野と複雑な経営戦略が求められます。マニュアルを作成し、ブランドやサービスの一貫性を保ちながら、複数店舗を管理するのは容易ではなく、新たな課題が生じます。こうした局面では、多店舗展開やフランチャイズ展開の支援を得意とする飲食店コンサルタントを雇うと、スムーズに複数店舗の経営を軌道に乗せられます。
複数店舗を展開し経営を拡大するにあたって、飲食店コンサルタントへの依頼と合わせて検討したいのが、複数店舗の売り上げを一元管理できる決済サービスです。Squareには複数店舗管理機能があり、簡単に店舗の追加・編集、切り替えができます。
自社の力で売り上げを改善できないとき
売り上げが頭打ちになったり、減少傾向にあったりする場合、原因を自社で突き止めるのは難しく、手当たり次第に思いつく改善策を実行しがちです。このような状況では、飲食店コンサルタントの外部の視点が役に立つことがあります。第三者の視点から冷静かつ正確に問題を分析、売り上げ改善のための提案をしてもらい、施策を実行していきましょう。
これらのタイミングで飲食店コンサルタントに依頼することで、経営の質を向上させ、リスクを最小限に抑えることができます。ただし、コンサルタントの意見が必ずしも正しいわけではありません。コンサルタントの提案を参考にする一方で、自分自身の直感や経験を信じることも大切です。飲食店経営は、科学だけでなく、芸術的な要素も含んでいます。最終的な決断は、経営者自身に委ねられます。
飲食店コンサルタントの費用相場
飲食店コンサルタントの費用は、専門性、経験、提供するサービスの内容や範囲、プロジェクトの規模や期間などにより異なります。ここでは、よく見られる形態とおおまかな費用を紹介します。
月額制
コンサルタントが定期的に飲食店を訪問し、アドバイスを行うことが多いようです。料金は一般的に月額数十万円が相場とされています。
プロジェクト制
特定の課題の解決や企画立案など、一定のプロジェクトの形でコンサルティングを依頼します。料金はプロジェクトの規模や難易度、期間などによりますが、数十万円から数百万円にのぼることもあります。
成果報酬制
売上向上やコスト削減など、コンサルティングの成果に応じて料金が設定されます。基本料金と成功報酬の組み合わせが一般的で、具体的な金額は依頼内容や成果の定義により異なります。
時間制
コンサルティングを依頼し、その時間内で相談やアドバイスを受ける形態です。一時間当たりの料金は数千円から数万円が相場です。
本記事では、飲食店コンサルタントとは何なのかから始め、コンサルティングを依頼するメリットとデメリット、サービス内容、どのような場合とタイミングで依頼するのがよいのか、そして気になる費用について説明しました。
飲食店コンサルタントを依頼するかしないかは、自社の課題や状況、利用する価値をよく検討した上で決める必要があります。本記事をきっかけに飲食店コンサルタントについて理解を深め、依頼を検討するときの参考にしてください。
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執筆は2023年8月8日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash