電子マネーを含むキャッシュレス決済は、煩雑な現金のやり取りをなくし、決済端末を利用することで人同士の接触も減らせる便利な会計の手段です。とはいえ、いざ「電子マネー決済を導入しよう!」と思い調べてみると、電子マネーは種類が多く、電子マネーを取り扱う決済サービスも選びきれないほど存在することがわかります。「自店舗ではどの電子マネーを取り扱うべきだろうか?」「どの決済サービスや決済端末を導入したらいい?」と選択肢の多さに戸惑う事業主も少なくないでしょう。
電子マネー決済の導入を検討中のビジネスオーナー向けに、「そもそも電子マネーとは?」という基本をおさらいしつつ、電子マネーに対応している決済端末のタイプと、その特徴を比較します。自店舗と好相性の決済端末を見つけるために重要視したいポイントも、ぜひ参考にしてください。
目次
電子マネー決済とは
電子マネー決済とは、カードまたはスマートフォンを、決済端末にピッとかざすだけで支払いが完了する決済手段です。電子マネーと一口にいっても種類はさまざまで、限度額や主に使われる領域などには違いがあります。
現金を扱わない点はクレジットカード決済と共通していますが、電子マネーには次のような特徴があります。
1. 利用に事前審査が必要ない
2. 事前にチャージが必要なものもある
3. 決済時に署名・暗証番号が必要がない
4. 利用限度額が、クレジットカードに比べて低い
5. 少額決済時に好まれる傾向にある
5番の「少額決済時に好まれる傾向にある」については、2022年に経済産業省が実施したキャッシュレス決済の実態調査1で、その傾向が顕著に示されています。「決済単価別の最もよく使われる支払い手段」という質問項目では、電子マネーとQRコード決済と回答した人が最も多かったのは「3,000円以下」の決済の場合でした。一方、クレジットカード決済が最も多かったのは「3万〜10万円」の決済となりました。
それぞれの回答の割合を以下の表で比べてみましょう。
1,000円以下 | 1,000〜3,000円 | 3万〜5万円 | 5万〜10万円 | |
電子マネー、QRコード決済 | 29% | 29% | 6% | 4% |
クレジットカード、デビットカード | 17% | 30% | 63% | 63% |
その他(現金、口座振込など) | 55% | 41% | 33% | 33% |
電子マネー決済は少額の支払いでよく使われる傾向があり、高額の買い物にはあまり使われていないことがわかります。これは、クレジットカード決済とは真逆の傾向です。
この結果には、それぞれの決済手段の利用上限額が少なからず影響している可能性が考えられます。クレジットカードは、ショッピング枠の利用限度額が数十万〜数百万円に設定されている一方で、電子マネーの限度額はSuicaやPASMOなどの交通系ICでチャージ上限が2万円、その他でも5万円程度が一般的です。
また、先の調査では、キャッシュレス決済の利用に積極的な層でも低単価決済において現金決済の比率が高いことも明らかになっています。これは、電子マネーなどのキャッシュレス決済の導入が進んでいない店舗の多さが要因となり、キャッシュレス決済を利用したくてもできないケースがあるためだと考察されています。こうした背景を考えると、500円ほどのコーヒーや1,000円台のランチを販売する飲食店、2万円以内の価格帯の商品が多い小売店などでは、電子マネーの導入で利便性がアップすれば集客のメリットが期待できそうです。
電子マネーの種類
電子マネーの種類は数多くありますが、次のように分類されます。
- 乗車券の機能も兼ね備えている「交通系電子マネー」
例:Suica、PASMO、Kitaca、TOICA、manaca、ICOCA、SUGOCA、nimoca、はやかけんなど - 流通企業が発行しており、ポイントも貯まる「流通系電子マネー」
例:nanaco、WAON、楽天Edyなど - 商圏をまたいで利用ができる「独立系電子マネー」
例:iD、QUICPayなど - QRコードを介して利用する「QRコード系電子マネー」(※)
例:PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ、メルペイなど
※「QRコード系電子マネー」は単に「QRコード決済」と呼ばれることもあります。
お客さまの幅広いニーズに応えられるよう「全種類の電子マネーを自店舗に導入する」という考え方もできますが、実際のところ、取り扱いできる電子マネーの種類は契約する決済サービスによって異なります。また、複数の決済サービスと契約するとなると、決済端末や手数料などのコストが膨らむことも考慮する必要があります。
そのため、決済サービスを選ぶ際には各店舗におけるお客さまのニーズや電子マネーの利用率を理解することが大切です。
たとえば、駅から徒歩2分の店舗では交通系電子マネーの需要が高いことが考えられます。流通系電子マネーの利用がお得な大手スーパー・コンビニの近隣店舗では、流通系電子マネーの需要が高い可能性があります。
電子マネーの利用率
電子マネー各種には利用者数や男女別の利用率の違いといった特色があり、店舗への導入においては利用動向を理解しておく必要があります。
ある調査会社が2023年に実施した電子マネーの利用動向調査2によると、調査対象の3万人のうち約60%が何らかの「電子マネー・電子決済サービス」を利用していることが明らかになりました。
さらに同調査の結果は、性別ごとの「よく利用している電子マネー・電子決済サービス」の種類に次のような違いがあることも示しています。
順位 | 男性 | 女性 |
1位 | PayPay(32%) | PayPay(33%) |
2位 | 楽天ペイ(15%) | 楽天ペイ(12%) |
3位 | d払い(12%) | d払い(11%) |
4位 | Suica(10%) | WAON(10%) |
5位 | au PAYアプリ(7%) | Suica(7%) |
6位 | WAON(6%) | au PAYアプリ(6%) |
7位 | 楽天Edy(5%) | nanaco(4%) |
8位 | nanaco(4%) | メルペイ(4%) |
9位 | PASMO(3%) | 楽天Edy(3%) |
10位 | iD(3%) | PASMO(3%) |
上位3種類は男女で同じですが、4位以降は明らかな違いが生まれています。
電子マネー決済の仕組み
電子マネーの決済の仕組みについて、利用から入金までのフローにしたがって理解していきましょう。
- お客さまが店舗の電子マネー決済端末で支払い
- 決済端末を通して、決済代行会社へ決済情報が届く
- 情報に基づき、決済代行会社が店舗と各電子マネー決済機関を仲介して決済処理
- 店舗からお客さまへ商品・サービスを提供
- 各電子マネー決済機関から、決済代行業者へ入金
- 決済代行業者から、手数料を差し引いた金額を店舗に入金
「1」から「4」までのステップは店頭で簡潔に進みますが、「5」と「6」の入金はその場での手続きではなく後日行われるのが一般的です。複数の電子マネーを扱いたい場合、個々の電子マネーの代理店とそれぞれに契約を結ぶのではなく、決済代行会社と「決済サービスを利用する加盟店契約」を結ぶと複数の電子マネーを一気に導入できます。契約窓口が絞られるので、手続きの手間や手数料などを一本化できることがメリットです。
電子マネー導入のために店舗がやるべきことは、「決済代行会社との加盟店契約」と「決済端末の導入」の2点です。これらは連動して利用するものなので、基本的に両方を一緒に購入・契約します。
なお、お客さまの視点で電子マネーを分類すると、前もって入金しておく「プリペイド型」と、後からまとめて支払いをする「ポストペイ型」があります。いずれの場合も、店舗への入金フローに違いはありません。
電子マネー決済端末の種類
電子マネーでの支払いを受け付けるには、カードやスマートフォンの情報を読み取る決済端末が必要です。基本的に、次の3種類の決済端末のいずれかを導入します。
- 据え置き型の「CAT端末」
- スマートフォンやタブレットと組み合わせて使う「モバイル決済端末」
- 複数のキャッシュレス決済を受け付け可能な「マルチ決済端末」
1. 据え置き型のCAT端末
スーパーやコンビニエンスストア、全国で展開している飲食店チェーンなどでは、レジ横に据え置きされた有線のCAT端末の利用が進んでいます。CAT端末には次のような特徴があります。
- 通信には電話回線・LAN回線を利用するため、導入には工事が必要
- 導入までにかかる期間は、工事期間も含めて最大1カ月程度
- 工事費用などを含め、導入費用が高額になりがち
- ニーズに合わせて機能のカスタマイズが可能なことも
- 基本的に有線のため、屋外イベントなど店外での利用には不向き
こうした特徴からCAT端末は、一定のコストを割ける、規模が大きい店舗型ビジネスで多く採用されています。
2. モバイル型の決済端末
iPadなどのタブレット端末をPOSレジ代わりに利用し、小型の決済端末でキャッシュレス決済を受け付けている場面を、小さな店舗で見かけることがあるでしょう。このようにスマートフォンやタブレット端末とつなげて使うモバイル決済端末には、次のような特徴が挙げられます。
- 通信にはWi-Fiやモバイルデータ通信を利用し、導入に回線工事は不要
- 申し込み当日〜数週間程度と短期間で導入可能
- 初期費用は比較的安価。端末の代金(数千円〜2万円程度)のみなど
- 維持費用が安価。月額利用料金が無料のサービスもあり
- ワイヤレスかつコンパクトなサイズで、店外イベントへの持ち運び・利用が簡単
このように、モバイル型の決済端末は個人事業主や小規模ビジネスにも手が届きやすい低コストと導入の手軽さが魅力です。
3.マルチ決済端末
交通系、流通系、独立系の電子マネーだけでなく、QRコード決済やクレジットカードなどさまざまなタイプのキャッシュレス決済に対応した端末はマルチ決済端末と呼ばれます。据え置き型やモバイル型の1種ということもでき、現金と金券以外の支払い方法に対応した、まさにマルチな決済端末です。マルチ決済端末には次のような特徴があります。
- 据え置き型とモバイル型の2種類がある
- 導入にかかる期間・通信方式は据え置き型かモバイル型かによる
- プリンター内蔵、POS連動などの機能を持つ端末もある
- 端末代金は数千円〜12万円程度
- 幅広い客層の決済方法のニーズに対応可能
- 1台でキャッシュレス化が完結してレジ業務がシンプルになり覚えやすい
- 1台の導入で済むため、複数台と比べてコスト抑制に効果
- レジ横に1台だけ設置するので省スペース
- 従来型のPOSレジシステムと連携させる場合、連携の手間が少ない
マルチ決済端末は端末代金が無料のものもありますが、決済サービスの月額利用料や決済ごとの手数料などのランニングコストと併せて検討し、ビジネスのスタイルに合うものを導入するのがおすすめです。付加的な機能についても、必要性を吟味して決めましょう。
電子マネー決済を導入する方法
電子マネーを受け付けるには端末の入手と同時に、決済サービスの利用契約(加盟店契約)を結ぶ必要があります。契約の前に、次の二つのうちどちらの導入方法を希望するか、明らかにしておきましょう。
電子マネーを1種類だけ導入する方法
いきなり複数の電子マネーを取り扱うのではなく、「まずはSuicaなど、1種類の電子マネーだけ導入してみたい」といった希望に合わせた導入も可能です。その場合は、対象の電子マネーを扱う代理店(または、電子マネーを提供する決済機関)と直接契約を結びます。入金日や売上管理の方法は代理店ごとに異なります。
その後、他の電子マネーも導入したいとなった際は、さらに別の代理店とも契約する、あるいは複数の電子マネーを扱う決済代行会社と契約して最初の代理店との契約は解除するという手間がかかることを覚えておきましょう。
複数の電子マネーを導入する方法
決済代行会社と加盟店契約を結ぶと、複数の電子マネーをまとめて導入できます。「一つに絞らず、さまざまな電子マネーを導入したい」というビジネスオーナーにはこちらの方法が最適です。
導入時の申し込み手続きは一度で済み、電子マネー決済の入金は一括して行われます。売上管理についても、一つの画面上で全種類の決済情報が確認できるので業務がスムーズです。
電子マネー決済端末を選ぶときのポイント
決済サービスが次々と登場するなかで、「どのサービスを利用すればいいのだろう」と頭を抱える事業主も少なくないでしょう。ここでは自店舗にぴったりの決済サービスを見つけるために、確認しておきたいポイント4点を解説します。
端末の持ち運びやすさ
レジの配置を変える、野外やイベント会場でも決済を行う、または店舗を移転する可能性がある場合は、モバイル決済端末やモバイル型のマルチ決済端末が適しています。
導入費用・月額費用・決済手数料
電子マネーを導入・利用するうえでは、導入費用、月額費用、決済手数料の3種類の基本コストがかかります。
- 導入費用……決済端末の代金や、代理店・決済代行会社との契約にかかる費用
- 月額費用……決済代行などのサービス利用料
- 決済手数料……1回ごとの決済にかかる料金
交通系、流通系、QRコードと、電子マネーの種類によって決済手数料が異なる決済サービスもあれば、一律で3%台(※)に設定しているサービスもあります。売上金額によって決済手数料の総額は大きく変動します。
他にもかかる費用として次の二つを認識しておきましょう。
- 振込手数料……入金ごとにかかる料金
- 早期入金手数料……入金日を早める際にかかる料金
多くの手数料が売上額から差し引かれてしまわないためにも、手数料に関しては細部まで確認しておくことが大切です。
電子マネー以外で使える決済手段
電子マネーだけでなく、クレジットカード決済やタッチ決済も導入している店舗は少なくありません。店舗としてどんな決済手段をお客さまに提供したいかを考え、ニーズの動向や競合店の状況も考慮して決めましょう。
入金サイクル
入金サイクルが早いほど資金繰りにはプラスですが、決済代行会社・代理店によって入金サイクルは大きく異なります。
たとえば、入金日は月1回が一般的ですが、なかには最短で翌営業日には入金するサービスもあります。手元に資金がない期間を長引かせないためにも、入金サイクルは必ず押さえておきたい点です。
なお、すべての決済サービスが自動で売上額を入金してくれるとは限りません。なかには毎回事業主が振込申請を行わなければいけないサービスもあるので、作業量を抑えたい場合は自動入金方式のサービスを選ぶのも良い方法です。
電子マネー決済の導入には、Squareがおすすめ!
Squareでは、電子マネー決済に対応したマルチ決済端末を提供しています。「手続きが複雑なのでは……」という不安をかき消すほど、導入方法はシンプルです。必要なのは、以下の4ステップだけです。
Squareで電子マネー決済を導入するうえで、押さえておきたい特徴も見ていきましょう。
初期費用は端末代金のみ。固定費はなし
Squareの場合、電子マネー導入に必要なのは、決済端末の代金のみです(※1)。たとえば、Square ターミナルなら、代金は税込で39,980円。POSレジとレシートプリンターが内蔵されておりPOSレジの操作・キャッシュレス決済の受付・レシートの発行を1台でこなせます。また、持ち運びも可能で、テーブル決済にもぴったりです。
▲Square ターミナルの使用例
決済手数料は一律3.25%
Squareの決済ごとの手数料は、業界最安水準の3.25%です。加えて、月々の固定費と毎回の振込手数料がゼロなので、維持費の支払いなしで利用できるのは大きなメリットといえます。詳しい料金体系はこちらからご確認ください。
売り上げは最短翌営業日に振り込まれる
売り上げがその場で手に入る現金払いは資金繰り面で安心感がありますが、たびたび銀行での入金作業が発生するなど、現金管理には手間やリスクがつきものです。
Squareであれば、売上額は最短で翌営業日には指定の口座に自動で振り込まれます(※)。現金に近い感覚で資金繰りを安定させつつ、現金管理の手間が省けるのは、多くのタスクを抱える事業主にとってうれしい点です。さらに売上額はいつでもSquare データやSquare POSレジアプリから確認できます。
※三井住友銀行・みずほ銀行をご登録の場合:0:00から23:59 までの決済分が、決済日の翌営業日に振り込まれます。三井住友銀行とみずほ銀行以外の金融機関口座をご登録の場合:毎週水曜日で締め、同じ週の金曜日に合算で振り込まれます。
豊富な決済手段に対応
Squareでは、電子マネー決済に合わせて、クレジットカード決済やQRコード決済、タッチ決済も同時に導入できます(※)。あらかじめさまざまな決済手段を導入しておけば、ニーズの変化に合わせて後から決済手段を追加する手間はありません。
※導入には審査を通過する必要があります。
Squareが対応している電子マネーなどのキャッシュレス決済の種類は、以下の通りです。
売上管理も簡単
Square POSレジアプリで電子マネーを含む各種決済を受け付けるだけで、売上情報はアプリ内に自動的に蓄積されていきます。1日の売上情報はアプリから簡単に確認でき、締め作業に充てていた時間は大幅に減ります。Square POSレジアプリは蓄積された売上情報を自動で分析してくれるため、商品別・時間別・日別の売上情報にも数回のタップでたどり着けるのが便利なところです。
相性のいい決済端末を見つけるには、まずニーズが高いキャッシュレス決済手段や理想の入金サイクル、予算などを明確にすることが大切です。Squareの優れたポイントは、できるだけコストを抑えながら電子マネーを導入でき、同時に煩雑な売上管理業務を効率化できることです。まずは決済端末代金だけの導入コストで、電子マネーを含むキャッシュレス対応を始めてみてはいかがでしょうか。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2020年10月6日時点の情報を参照しています。2024年7月16日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash