「地方創生」は地方におけるビジネスの活性化や人材確保などが期待される取り組みです。「言葉は知っているけれど、詳しいことはよく知らない」という人も多いかもしれません。
今回は、経営者や経営に関わる人が知っておきたい地方創生について、わかりやすく解説します。
地方創生とは
地方創生は、2014年9月の第二次安倍内閣で初めて掲げられました。明確な定義はありませんが、一般的には「地方における人口増や、地域経済の活性化の取り組みを指す言葉」として使われています。
現在の日本では少子高齢化が大きな問題となっていますが、さらに人口面でいえば、東京などの都市圏への人口集中も課題となっています。総務省統計局の人口移動報告によれば、2018年に転入数が転出数を超える転入超過になったのは、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、福岡県、大阪府、滋賀県の8都府県でした。中でも東京圏は13万9,868人と、2017年よりも1万4,338人増えています。
参考:住民基本台帳人口移動報告 平成30年(2018年)結果(総務省統計局)
都市部の人口が増える一方で、地方では人口が流出し、少子高齢化がいっそう加速する事態となっています。人口が減れば、町の活気が失われるだけではなく、税収の落ち込みにもつながります。
これらの問題を解決すべく、地方の人口を増やし、経済を活性化することを目指して、2014年9月には「まち・ひと・しごと創生本部」が内閣官房に設置されました。
基本目標として
・地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
・地方への新しいひとの流れをつくる
・若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
・時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する
の四つを掲げ、さまざまな施策を行なっています。
三種類の支援
地方創生のために、政府は「情報」「人材支援」「財政支援」という三種類の支援を行なっています。それぞれ、具体的にどのような支援があるのかについて紹介します。
情報支援
・RESAS(リーサス)
RESAS(リーサス)は、経済産業省と内閣官房が提供する「地域経済分析システム」のことで、官民で集められたビッグデータを提供しています。
公開されているデータの例としては、
・人口マップ(人口構成や人口増減、新卒者就職・進学など)
・地域経済循環マップ(地域経済循環図や労働生産性等の動向分析など)
・産業構造マップ(小売業や農業など産業別の分析データ)
・観光マップ(外国人訪問分析や外国人消費の比較(クレジットカード)など)
といったものがあります。
人材支援
人材のサポートとしては、以下のようなものがあります。
・地域活性化伝道師
・地方創生コンシェルジュ
・地方創生カレッジ事業
・プロフェッショナル人材事業
・地方創生インターンシップ
・地方創生人材支援制度
地域おこしのスペシャリストを紹介したり、eラーニングによる学習教材の提供を行ったりしています。主に地方公共団体に向けた支援事業ですが、地方創生インターンシップは企業として押さえておきたい事業であるため、別項目で解説します。
財政支援
財政的なサポートとしては、以下のようなものがあります。
・地方創生関係交付金
・地方大学・地域産業創生交付金
・企業版ふるさと納税
・地方拠点強化税制
交付金は、各自治体が行う地方創生事業に対して交付されるものです。「地方拠点強化税制」および「企業版ふるさと納税」は、企業が対象となる事業です。こちらも、別項目で詳しく解説します。
経営者がおさえておきたい四つの事業
企業経営者がおさえておきたい事業や制度として、以下の四つが挙げられます。
・プロフェッショナル人材事業
・企業版ふるさと納税
・地方拠点強化税制
・地方創生インターンシップ
それぞれについて、詳しく解説していきます。
プロフェッショナル人材事業
主に、地方企業に向けた事業です。良い人材を探している企業と、都市部にいるプロフェッショナルな人材のマッチングを支援するものです。都市部で経験を積んだ優秀な人材を雇用することは、地方企業にとって経営改善につながることが期待できます。しかし、もし実力のある人が地方で仕事をしたいと思っても、各地方にどんな企業があるのかという情報や経営者のキャラクターなどを知らなければ、実際に移住・転職をするするのは難しいかもしれません。そこで、「プロフェッショナル人材戦略拠点」が間に入ることにより、人材のマッチングを図ります。
もし、実際にプロフェッショナル人材を雇いたいという場合は、プロフェッショナル人材戦略拠点に相談しましょう。拠点は、東京都と沖縄県を除いた各道府県にあります。
各拠点にいるマネージャーが企業の抱える課題や事業構想などを聞いた上で、人材ビジネス事業者や都市部にある大企業との連携を図ります。相談自体は無料で受け付けてくれるため、「まずは話だけでも」という場合に使いやすいのがポイントです。
企業版ふるさと納税
ふるさと納税は、個人が「自治体に寄附をすることで、所得税・住民税の控除の対象となり、返礼品ももらえる」という制度ですが、その企業版となっています。
地方公共団体の地方創生に関する取り組みに対して寄附をすることで、税額控除措置が受けられます。制度利用には、一回につき10万円以上の金額の寄附が必要です。企業版ふるさと納税ポータルサイトでは、地域や事業分野から寄附先の地方を探すことができます。
なお、この制度を利用する際は、以下の注意点があります。
・寄附先から企業への経済的見返りはなし
・寄附額は事業費の範囲内であること
・本社のある地方公共団体には寄付できない
寄附を検討する際は、上記の点に気をつけましょう。
参考:企業版ふるさと納税リーフレット(内閣府地域創生推進事務局)
地方拠点強化税制
本社機能を地方に拡充、もしくは移転する場合、税制優遇措置が受けられるという制度です。たとえば、本社の一部を地方に移してサテライトオフィスを作ったり、地方で新たに起業したりといった例が挙げられます。
この制度が適用されれば、設備投資減税(オフィス減税)、雇用促進税制、地方税の課税免除または不均一課税など、法人税の負担を減らすことができます。ただし、確定申告が必須となる点に注意が必要です。
地方創生インターンシップ
首都圏の若者に地方企業で就業体験してもらい、就職を促すための事業です。インターンシップの対象者は東京圏在住の学生のほか、地方大学に進学した学生も含まれています。
地方創生インターンシップのポータルサイトでは、地方公共団体や大学、イベントなどの情報提供を行なっています。インターンシップ制度を新たに始めたり、すでに行なっているものの思ったような効果が出ていなかったりする場合は、参考にしてみるのもおすすめです。
地方創生は、地方から都市部への人口流出を抑え、地方を活性化させることにより、日本全体に活力をもたらすためのものです。政府も、交付金や情報提供など、さまざまな支援を行なっています。地方創生に興味がある場合は、ぜひこういった支援の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2019年5月28日時点の情報を参照しています。
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