大手企業が社員の副業を容認する制度を導入したことをきっかけに、副業解禁という言葉が昨年からよく聞かれるようになりました。実際、サラリーマンとして働きつつもう少し収入が欲しい、違う環境で仕事をしてみたいなど、副業に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
中小企業庁でも兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会などを通して、柔軟な働き方の実現に向けて、実態や優良な事例の把握を行っています。
「副業」とは
「副業」また「本業」の定義は何でしょうか。
例えば、税制上で所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の十種類に分かれています。サラリーマンなら給与所得のみ、サラリーマンをしつつ株の運用で収入のある場合は給与所得と配当所得、経営者として事業をしつつ本を出版し印税の収入がある場合は事業所得と雑所得、といった具合に複数の収入がある時にはそれぞれの所得の種類に合わせて課税がされます。
また、貯金を増やすために平日の夜や土日にアルバイトをしたり、ブログを開設して広告から収入を得たり、実家の農業を手伝ったり、得意の料理を土日に教えたりと、副業といってもさまざまな選択肢があります。中には料理を本業にしたいものの、生活のために平日は会社員をしているという人もいるかもしれません。ますます「副業」の定義は難しくなってきます。
ここではメインとなる収入源とは別に、特技や趣味を活かすため、新しいスキルを身につけるため、または将来の独立や移住を見据えて平日の夜や休日の時間を使って何かをしたいと考えている方向けに、副業の始め方をお伝えします。
就業規則を確認
2017年1月に日本経済新聞と日経リサーチが発表した働き方改革を巡る意識調査 では、上場企業301社に兼業や副業について聞いたところ、73.1%の企業が「禁止している」と答えています。また、容認している会社でも手続きが必要ないと答えているのは1%のみで、多くの会社では兼業や副業を行う際には届出や許可といった手続きを踏む必要があります。
このように多くの企業では副業が禁止されていますので、まずはご自身の働いている会社で副業が禁止されているかどうか確認をしてみてください。
副業が禁止されている場合、すぐに諦めるのではなく、就業規則をじっくり読んでみることをおすすめします。企業が副業を推奨しないのは、会社の業務に何らかの形で支障をきたすことを危惧しているからです。副業に夢中になるあまりに普段の業務の効率が下がったり、同業他社で副業を行うことでスキルやノウハウが流出したり、副業が上手く行った際に社員が退社したり、これらのデメリットを考慮して副業の認可に消極的になっています。
しかし一方では、就業時間として就業規則で定められている時間以外に、従業員がプライベートで何をして過ごすのかは自由です。そのため、副業の業種や労働時間を会社に明確に説明し、業務にマイナスの影響がないことが分かれば、認められる場合もあるかもしれません。
参考:労働基準法、守れていますか?今すぐ確認したい6つのポイント
また、「会社に言わないでこっそり始めた方が楽」と思うかもしれませんが、コンプライアンスの観点からも上司や総務の担当者に相談しておいたほうが、後に発覚した際に大きなトラブルになりにくいのではないでしょうか。
参考:企業ブランドイメージアップに繋がるコンプライアンス強化とは
ビジネスを始める
就業規則の問題をクリアしたら、実際にビジネスを始めましょう。
飲食に関わる業種
土日、平日の夜だけ飲食に関わる仕事を副業に考えているのでしたら、管轄する保健所のウェブサイトやパンフレットで食品に関係する許可や届け出を確認しましょう。食品を扱う上で必要になってくる保健所による営業許可です。イベントなどでの一時的な出店の場合は「臨時営業」として営業許可が必要ですが、一年間の5日間以下の営業などの条件を満たせば、「臨時出店」として保健所への届け出だけで済みます。また、食品衛生責任者や防火管理者といった資格の取得が必要な場合もあります。
参考:飲食店に興味を持ったら一度は確認!店舗経営に必要な資格や届出
副業の範囲で自宅を改築したり、場所を借りて開業をするのはなかなか難しいのではないでしょうか。飲食業にもっと気軽にチャレンジできる場として、既に設備等が揃っている「レンタルキッチン」を活用してみるのも一つの手です。
例えば、JR中央線の武蔵境駅から徒歩10分の場所にあるシェアキッチン8Kでは、「飲食店営業」と「菓子製造業」の許可を取得できる施設・設備が整っているだけでなく、商品開発や広報、経理などの開業サポートも受けられるようです。
空き家の活用やコミュニティーの活性化を目的としたこのようなレンタルスペースは全国各地に作られていますので、近くで利用できる場所がないかどうか探してみてはいかがでしょうか。
アプリ開発、ライター、デザイナー等の業種
これらの業種の場合は飲食と異なり、設備や場所、資格の準備はほとんど必要なくネット環境とパソコンさえあればスタートできるのではないでしょうか。中小企業庁が発行している2016年版小規模企業白書に掲載されているフリーランスについてのデータを見ると、ウェブサイトやブログ、SNSや知人・友人を通じた口コミといったルートから仕事の受注に繋がるようです。店舗を構えない分、地道な営業活動が必要なことが分かります。
ビジネス環境を整える
業種に関係なく必要になってくるのはビジネスをスムーズに運営できる環境です。特に副業の場合は使える時間が限られてくるので、効率的に運営をしていく必要があります。
例えば、Googleが提供するG Suiteは一人あたり月額500円で、会社名の入ったメールや大容量のストレージなどのサービスが利用できます。アプリをダウンロードすれば、スマホからもいつでもメールやドキュメントが開けるので、本業の合間にメールを確認することもできます。また、経理業務を軽減できる会計ソフトのfreeeやMFクラウド会計などもあります。
飲食業や小売業なら、スマートデバイスを利用したPOSシステムを導入することで、会計処理の手間だけでなく、売上管理もクラウド上で行うことができます。また、料理や英語の教室の月謝や、駐車場の賃料には請求書の送付や入金確認がパソコンの画面上でかんたんに行えるSquare 請求書など、本業に支障をきたさないためにもこれらのツールを活用してみてはいかがでしょうか。