インバウンド補助金とは?対象事業・受け取れる金額を解説

2023年5月に水際対策が終了して以来、インバウンド需要は堅調に回復してきています。

本記事では、インバウンド事業をより効果的に展開するために用意されている補助金制度についての概要を解説するとともに、現在発表されている補助金の対象事業や金額などの具体例を紹介します。また併せて、事例やインバウンド施策のヒントとして聖地巡礼を取り上げます。

目次


インバウンド補助金とは

はじめに、インバウンド補助金とはどのようなものか、概要とメリットをみていきましょう。

インバウンド補助金とは

インバウンド補助金は、外国からの旅行者が観光するための環境を整えてインバウンド(訪日外国人の消費)需要を拡大させるために設けられた制度です。

補助金は、国や地方公共団体が事業者などを支援するための制度で、目的に合わせて募集が行われ、対象事業や対象者、金額などの基準が設けられています。申請は事業の開始前に行い、費用はいったん自己負担した後、事業の完了後に必要書類などを提出し、補助金を受け取るという流れになります。ある程度の余裕をもった資金計画を立てる必要があるでしょう。

また補助金は融資とは異なり、目的に沿った利用をしている限り原則として返済する必要がないのが利点です。

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インバウンド施策がビジネスとして注目される理由

インバウンド施策は、コロナ禍で落ち込んだ国内の消費をV字回復させるための切り札として期待されています。

2023年6月に発表された「新時代のインバウンド拡大アクションプラン(以下、アクションプラン)」1では、今後、コロナ禍で落ち込んだインバウンドをV字回復させ効果的に根付かせるための方策として、ビジネス分野40施策、教育・研究分野13施策、文化・スポーツ・自然分野25施策を主要な柱とした施策を展開していくとしています。

このアクションプランの展開により、これまでの訪日外国人旅行者へのもてなしをさらに発展させ、より多くの外国人が日本に来たくなる観光資源の磨き上げや、より長く滞在したくなるビジネス・教育・文化・自然体験などの交流の機会を増やすための施策が展開することが予測されます。

つまり、今までインバウンドとは無縁だと考えていた事業者にもビジネスチャンスが舞い込んでくる可能性が高まってきているといえそうです。補助金は、各省庁や自治体が強化したい施策に関連して創設されることが多いため、インバウンド補助金に注目しておくことで、競合に先んじた事業戦略を図る機会にも活用できるかもしれません。

インバウンド補助金が展開する可能性のある事業

アクションプランでは、インバウンドの本格再開に備えた受け入れ機能の強化として、快適な旅行を満喫できる安心・安全な環境の整備支援、宿泊施設や観光施設などのサステナビリティの向上支援、移動時の対応支援などの取り組みを図るとしています2。このため、今後は、以下のような事業が補助金の対象となる可能性があるといえるでしょう。

  • 翻訳機器の整備、案内板・パンフレットなどの多言語対応
  • キャッシュレス決済環境の整備
  • 体験型・ストーリー型のコンテンツ、ガイド
  • 地域を巡るツアー
  • 歴史・文化・自然などを取り込んだ施設の高付加価値化
  • 太陽光発電、省エネ設備(空調など)の導入
  • 施設やタクシーなどの移動手段のバリアフリー、サイクルトレインの導入など

インバウンド補助金の種類

次に、インバウンド補助金として具体的にどのようなものがあるのかをみていきましょう。本記事では、自治体の例として東京都と金沢市の補助金事業を取り上げます。

補助金は原則として年度単位で制度化されるものであり、募集期間が定められているため、タイミングによっては受付終了となっているものがあるかもしれません。ただし、重点施策の場合だと毎年度実施されることも多く、また年度途中であっても補正予算がついて追加募集が行われる場合もあります。定期的にウェブサイトなどで最新情報を確認しておくとよいでしょう。

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東京都のインバウンド対応力強化支援補助金

「インバウンド対応力強化支援補助金」3は、東京都および(公財)東京観光財団が実施するもので、都内の宿泊施設、飲食店や免税店、体験型施設などが受け入れ強化を行う取り組みを支援します。

  • 対象事業者:都内の旅館、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設、外国人旅行者の受け入れ対応に取り組む中小企業団体など
  • 補助対象:多言語対応、公衆無線LAN、キャッシュレス決済、トイレの洋式化、災害時の受け入れ対応、外国人用グルメサイトへの掲載など
  • 補助率:補助対象経費の1/2以内
  • 補助額:上限300万円(無線LAN設置の場合は別途条件あり)、グループ向けは上限1,000万円(対象事業により上限額が異なる)

東京都の多様な体験型観光推進事業補助金

「多様な体験型観光推進事業補助金」4は、東京都が実施するもので、都内でヘアカットやネイル、メイクアップといった美容サービスを提供する事業者を対象にしています。

  • 対象事業者:都内で外国人旅行者向けに美容サービスを提供する事業者
  • 補助対象:外国人旅行者向けに新たなサービスを開発する際にかかる経費(機器や備品の購入、印刷製本、翻訳、施設整備など)
  • 補助率:補助対象経費の2/3または200万円のいずれか低い額
  • 補助額:上限200万円

金沢市外国人旅行者受入環境整備事業

「金沢市外国人旅行者受入環境整備事業」4は、石川県金沢市が実施するもので、市内の事業者が外国人旅行者の受け入れ環境を整備する際にかかる経費を補助します。

  • 対象事業者:金沢市内の飲食店、宿泊施設、商業施設、観光事業者
  • 補助対象:外国語表記、無線LAN、クレジットカード、外国語食事メニュー、免税店登録など
  • 補助率:補助対象経費の1/2
  • 補助額:上限20万円

インバウンド施策を成功させた事例

ここからは、インバウンドへの取り組みのヒントとして、いくつかの店舗が行っている実践例をみていきましょう。

ぬま田海苔:外国人旅行者をリピーターに

台東区・かっぱ橋にある海苔専門店、ぬま田海苔。日本語と英語のパンフレットを揃えたり、海苔とチーズのペアリングを提案したりと、外国人旅行者の集客に積極的に取り組んでいます。さらに「一見さん」になりがちな旅行者をリピーターに変える工夫として、海外発送も対応。海外から入る注文の95%がリピーターだそうです。

▶ぬま田海苔の具体的な取り組みについて詳しくはこちら
で紹介しています。

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鮨武:外国人旅行者をリピーターに

飲食店激戦区である代々木上原にあるすし店、鮨武。当日キャンセルや連絡無しでのキャンセルを防止する方法として、予約時にデポジットを請求しています。デポジットを導入したことで、キャンセルの発生は大幅に改善されたそうです。

▶鮨武の具体的な取り組みについて詳しくは動画
で紹介しています(動画本編を見るためにはフォームへの入力が必要です)。

インバウンド施策による聖地巡礼への取り組み

ここからは、インバウンドの取り組みをより効果的に展開するヒントとして「聖地巡礼」をみていきましょう。

インバウンド施策で聖地巡礼が注目される理由

聖地巡礼とは、映画やアニメ、マンガ、ゲームなどの舞台となった場所や、ゆかりのある場所など「聖地」と呼ばれる場所を訪問する行動を指します。ものがたりの世界観や登場人物の行動を追うことでより深く理解し、「今ここでしか味わえない特別感」を伴う感動体験ができるため、繰り返し訪れる熱心なファンも多いことで知られています。

ビジネス上では、ターゲット層が明確で集客しやすい、リピーター率が高い、長く滞在して聖地周辺の観光や飲食・宿泊を行う可能性も高いなどのメリットから、地域全体の経済活性化につながる観光コンテンツとして期待されています。

海外には、アニメやマンガ、ゲームなど、高い評価を受け、多くの人に愛されている日本の作品がいくつもあります。作品そのもののクオリティの高さや独創的な世界観だけでなく、それらの作品を通じて日本の文化や価値観にも魅力を感じている人も多くいます。

こうした海外の関心を高めて、日本の作品を実際の場所で追体験できる聖地巡礼を目的としたインバウンド施策は、訪日の目的が明確で消費行動も期待できる有効な取り組みとして、近年特に注目されています。

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インバウンド施策を聖地巡礼に応用した例

インバウンド施策として聖地巡礼をビジネス活用するには、滞在時の宿泊や飲食関係の受け入れを充実させるほか、世界観を共有できる情報発信や体験イベントの開催、記念に持ち帰ることのできる商品の販売などを、地域で総合的に行うことが重要となります。たとえば、以下のような取り組みを、地域全体で協力し合いながら進めるとよいでしょう。

  • 宿泊施設・飲食店の多言語化、宗教や食習慣に対応するメニューなどの開発
  • 聖地巡礼スタンプラリーなど、ツアーの企画・販売
  • 聖地巡礼のガイドブックやパンフレット、ウェブサイト、アプリの多言語化
  • SNSなどによる情報発信
  • 聖地や作品に関連する商品の開発・販売
  • 聖地での記念撮影など作品に関するサービスの開発・提供
  • 聖地や作品に関連するイベントの開催

インバウンド対策に欠かせないキャッシュレス対応にはSquare

インバウンド施策は観光庁(国土交通省)が主体となって展開していますが、経済産業省や環境省、厚生労働省なども分野に応じて取り組みを進めています。このため、自社に関連する省庁や所在地の都道府県については、常に情報を集め、いつでも活用できるよう、経営戦略の一つとして取り組みたいところです。

インバウンド施策は、訪日外国人に対し、少しでも多く訪問し、また長く滞在してもらうことで消費行動を喚起するのが目的であることから、対策の中心となるのは、多言語による情報提供と、安定した通信(Wifi)の提供、キャッシュレス決済が環境整備のポイントといえます。

特にキャッシュレス決済については、事前の両替の必要がない上、慣れない他国の貨幣での計算を強いられるストレスから解放されるとあって、希望する人が多いと考えてもよいでしょう。店舗の規模にかかわらず導入しておきたいところです。

決済代行会社のSquareでは、無料のアカウントを作成し、簡単なセットアップだけでキャッシュレス決済を取り入れることができます。

対応している決済方法は、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネー、そしてQRコード決済です。QRコード決済のなかには、中国で人気のWeChat Payや、中国のAlipayに加えてタイのTrue Moneyや韓国のNaverPayなども受け付けられるAlipay+が含まれています。Squareがあれば、日本人のお客さまから外国人旅行者まで幅広いお客さまに対応できるでしょう。

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手数料はキャッシュレス決済が発生した分の決済手数料のみで、月額利用料もかかりません。オンライン販売にも対応できるため、帰国後の購入対応も効果的に行えます。さらに面倒な在庫管理スタッフ管理などの高度な機能満載のSquareを、ぜひお試しください。

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執筆は2023年6月20日時点の情報を参照しています。2024年9月25日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash