経営者が知っておきたい従業員の妊娠・出産・育児にまつわる制度

社会の変化もあり、子育てと仕事を両立しながら働く人が珍しくなくなってきました。

今回は、経営者として知っておきたい、妊娠・出産・育児にまつわる制度・給付金などについて紹介します。

妊娠報告から産休までに必要なこと

Alt text

従業員から妊娠の報告を受けたなら、本人の希望に沿った形で、会社としてできる限り支えていきたいものです。出産・育児休業を経て、今後もこれまで通り働きたいという本人から希望があれば、長期に渡る配慮が必要です。必要な手続きを確認して、順次進めていきましょう。

  • 出産予定日から産休・育休のスケジュールを把握

労働基準法によって、出産の予定日より前から6週(多胎の場合は14週)と、出産翌日から8週を合わせた期間が産前産後休業期間として認められています。また育児・介護休業法によって、原則として子どもが1歳になるまでは育児休業期間として認められています。

産前産後休業は出産を控えた女性であれば条件なく請求すれば取得できますが、育児休業の場合、以下の3つの条件にあてはまらないと取得できません。

・同じ事業主に1年以上継続して雇用されている
・子どもが1歳の誕生日を迎えた以降も継続して雇用される見込みがある
・子どもが2歳の誕生日を迎える前々日までに、契約期間が満了し、かつ更新されないことが明白でない

参考:あなたも取れる!産休&育休(厚生労働省)

出産予定日を基準として、厚生労働省が委託する以下のサイトでも休業期間を確認できます。ぜひ参考にしてみてください。

参考:産休・育休はいつから?産前・産後休業、育児休業の自動計算(女性にやさしい職場づくりナビ)

  • 「育児休業取扱通知書」の交付

育児・介護休業法では、従業員から育児休業の申し出があった(育児休業申出書が提出された)場合、次のような休業中の各種待遇、休業後の賃金や労働条件などについて、書面などで通知するよう努めなければならないとしています。

また、以下の事項については通知する義務があるとされています。

1.育休申出を受けた旨
2.育休開始予定日・終了予定日
3.育休申出を拒む場合には、その旨及びその理由

参考:就業規則への記載はもうお済みですか ‐育児・介護休業等に関する規則の規定例‐(厚生労働省)

  • 「産前産後休業取得者申出書」の提出

産休中の社会保険料は、「産前産後休業取得者申出書」を年金事務所に提出することで、事業主分・従業員分の両方が免除されます。

産前に提出し出産日が予定日と異なった場合、つまり産前産後休業期間が変動した場合は、必要に応じて「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出することも忘れないようにしましょう。

参考:産前産後休業保険料免除制度(日本年金機構)

  • 「健康保険出産手当金支給申請書」の提出

出産の前後に会社を休み、給与の支給がなかった場合「健康保険出産手当金支給申請書」を提出することで、出産手当金が支給されます。対象の期間は、出産日前42日(多胎妊娠は98日)から出産の翌日の56日後までです。詳細は以下のサイトでご確認ください。

参考:出産で会社を休んだとき(全国健康保険協会)

出産したら必要なこと

  • 「健康保険出産育児一時金支給申請書」の提出

健康保険の被保険者およびその家族が出産した場合、1児について42万円(産科医療補償制度に未加入の医療機関などで出産した場合は40.4万円)が支給されます。受給方法は2つから選ぶことができます。

直接支払制度・受取代理制度では、被保険者自身が一時金を受給するのではなく、医療機関が受け取るしくみです。被保険者は退院時に出産育児一時金を差し引いた額を医療機関に支払います。

一方、健康保険組合から被保険者へ支給される「産後申請」もあります。産後に支給されるので、退院時に払う入院費や分娩費などまとまったお金を用意する必要があります。

参考:子どもが生まれたとき(全国健康保険協会)

育休に入るにあたり必要なこと

Alt text

  • 育児休業給付金の手続き

育児休業給付は、育休終了後に職場復帰をすることを前提した制度であり、原則として1歳未満の子どもを育てている被保険者が対象です。給付金を受給できる条件としては、主に以下の通りです。

・雇用保険の加入者
・育休に入る前の2年間で、1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上ある
・支給単位期間の就業日数が10日以下である
※支給単位期間 = 育児休業を開始した日から起算した1カ月ごとの期間(その1カ月の間に育児休業終了日を含む場合はその育児休業終了日までの期間)。

また、給付対象者の性別は問いません。

育児休業給付金では、育休開始から180日までは休業開始前の賃金の67%、181日目以降は50%が支払われます。また、手続きを行うのは事業主です。従業員の記入が必要な書類もあり、事前に書類を休業中の従業員に送付するなどのやり取りも発生するため、前もって準備しておくことをオススメします。

書類の提出先は管轄のハローワークです。初回の支給申請・受給資格確認手続きは、育休開始日から4カ月を経過する日の属する月末までに行う必要があります。

育児休業給付の手続きは1回のみではなく、原則として2カ月ごとに支給申請を行う必要があります。詳しくは以下の情報をご確認ください。

参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて(厚生労働省)
Q&A~育児休業給付~(厚生労働省)

  • 「育児休業等取得者申出書」の提出

産前産後休業と同じく、育児休業期間中も社会保険料が免除となりますが、別途「育児休業等取得者申出書」の提出が必要なので忘れないようにしましょう。万が一終了予定日より前に育休期間が終了した場合は「育児休業等取得者終了届」の提出が必要です。

参考:育児休業保険料免除制度(日本年金機構)

  • 「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届」の提出

産前産後休業が終了した後は、短時間勤務などによって報酬が下がる可能性もあります。この場合、「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届」を提出することで、報酬の変動のあった月から4か月目に保険料が改定となります。

参考:産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出(日本年金機構)

  • 「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出

「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届」と同様で、「健康保険・厚生年金保険 育児休業終了時報酬月額変更届」を提出することで育休終了後も標準報酬月額を改定することができます。

参考:育児休業等終了時報酬月額変更届の提出(日本年金機構)

  • 「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出

短時間勤務などによって標準報酬月額が下がった場合でも、下がる前の標準報酬月額で養育期間中も同じように年金額の計算をしてくれる特例措置です。養育期間中とは、子どもが3歳になるまでの間になります。

詳細は、以下のウェブサイトをご確認ください。

参考:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(日本年金機構)

従業員が妊娠や出産、育児休業を経て働き続けることができるのは、会社のサポートがあってこそといえるのではないでしょうか。厚生労働省の女性にやさしい職場作りナビのウェブサイトもぜひ確認してみてください。

執筆は2018年7月17日時点の情報を参照しています。
当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash