スモールビジネスこそ取り入れよう!シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーは、個人がもっている資産を他の個人と共有する事業形態で、これからの重要なビジネスになると注目され、国を挙げて取り組みが進められています。一見するとただの「ものの貸し借り」のようですが、モノやスペースだけでなくスキルや資金も対象となるシェアリングエコノミーは、資産を潤沢にもちにくいフリーランスや中小企業の経営者に大きなチャンスを与えてくれます。

シェアリングエコノミーの概要やビジネスモデルとしてのメリット・デメリット、小規模事業者が活用するためのポイントを解説します。

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シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーは、「使われていない資源」を個人間で有効活用することにより、新しい価値を生む経済活性化の動きを指します。

具体的には、ヒト・モノ・カネ・スペースなどの資産を、インターネット上のマッチングサイトを介したやりとりにより貸借や売買、交換していく経済活動で、シェアの対象にはスキルや時間などの無形のリソースも含みます。

シェアリングエコノミーが台頭した背景

シェアリングエコノミーはインターネット利用を前提とし、プラットフォームと呼ばれるマッチングシステムの仲介により取引を成立させます。通信環境の進展やスマートフォンなどの端末の普及により、いつでもどこでもサービスを受けることができ、また、簡単にサービス提供もできます。需要側・供給側ともに利用しやすいしくみがインターネット上に整ったことで、シェアリングエコノミーが身近なものになってきました。

また、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の普及による影響も大きく、評価制度で信用度が可視化され、個人が個人を選別して利用する環境が整ってきたことも、シェアリングエコノミーの普及に寄与しています。

シェアリングエコノミーの海外の動向

シェアリングエコノミーは世界でも急速に広がっています。新しい経済活動のため、シェアの方法や遊休資産の定義などは国により異なりますが、「インターネット上のプラットフォームを媒介とする」「個人間で利用しあう」という点は共通です。

モノをやりとりするだけでなく、移動や宿泊、スキル提供など、労働力を提供するサービスに関心が高く、無駄な経済活動をなくしていくことで環境保護や循環型社会にも貢献するという観点からも、シェアリングエコノミーが注目されています。

シェアリングエコノミーの日本の動向

これからの日本は少子高齢化や人口減少により、供給側の労働力不足だけでなく、需要側の消費人口も減り、経済活動が大きく減衰するといわれています。個人間の新たな取引形態であるシェアリングエコノミーの活動は、こうした縮小する一方の経済状況へ新しい風を送り込むサービスとして期待されています。

政府でもシェアリングエコノミーの普及に力を入れています。総務省では、シェアリングエコノミー活用推進事業として、地域課題の解決や地域経済の活性化を図る自治体の取り組みを支援するプロジェクトを立ち上げています。

経済産業省は、サービスの利便性や信頼性を高めるための国際的なルールづくりを進めています。2019年1月には国際標準化機構(ISO)において「シェアリングエコノミー」に係る技術委員会の設立が承認されました。2021年ごろの規格発行を目指しています。

参考:
平成30年版 情報通信白書 第1部第5節 シェアリングエコノミーの持つ可能性(総務省)
シェアリングエコノミー活用推進事業(総務省)
日本提案によりシェアリングエコノミーに関する国際標準化の技術委員会の設立が承認されました(経済産業省)

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シェアリングエコノミーのメリット・デメリット

シェアリングエコノミーには、プラットフォーム運営者、サービス提供者、サービス利用者の三つの立場があります。

フリーランスや小規模事業者がシェアリングエコノミーに参入する場合、主にサービスの提供か利用の立場になると考えられます。

シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーに参入するメリットには次のようなものがあります。

コストがかからない

サービス提供者の立場からすると、シェアするものがすでに所有している遊休資産であれば、少し手を入れるだけで使えたり、現状のままやりとりしたりと、初期投資を必要とせず、マーケティング調査などの手間もかからないため、コストを抑えることができます。

サービス利用者の立場からしても、シェアやレンタルなどにより、リーズナブルな価格で多種多様な商品やサービスを利用できたり、必要なスキルに特化したサービスだけを受けることで人件費を抑えたりすることができます。

新たな価値を付け、世界が広がる

サービス提供者の視点では、シェアリングエコノミーにより、眠っていたものが商品となって回りだす、趣味や時間つぶしにすぎなかったスキルにお金がつくというように、現有する資産やスキルを提供することにより、新たな資産価値を付加し収入源とすることができます。

利用者側からすると、サービスを利用することで新たな体験を得たり、プラットフォームを介して出会った提供者とのつながりでよりよい人間関係の構築や世界の広がりができたり、価値を増やしたり、生産力を高めたりすることができます。

新たな消費や経済の発展を促す

フリーランスや小規模事業者も、新しいアイデアでサービスをつなぐプラットフォームを立ち上げることもできます。つなぎ役に回ることで、提供者・利用者のアイデアやニーズを形にし、社会課題を解決したり、新たなサービスのしくみを作ったりする醍醐味も味わえるでしょう。

シェアリングエコノミーのデメリット

シェアリングエコノミーは新しい技術を使ったサービスのため、次のような点に気をつけておく必要があります。

得られる収入が少額

プラットフォームは、サービスそのものを用意せず、提供者と利用者をマッチングさせて双方から手数料を取る形で利益を得ています。このため、状況によっては手数料のコストが大きな負担となるかもしれません。

また、利用者がシェアリングエコノミーに対し、コストを抑えることに期待している場合、提供者にとっては売り込む商品やサービスの料金が少額になってしまう可能性があります。

安全性・信頼性に疑問

インターネットを介して匿名でサービスを提供したり利用したりできるため、とくに始めのころは相手のことがよくわからず、不安があります。

このため、シェアリングエコノミーのプラットフォームでは、利用者と提供者の両者がレビューできる相互評価を採用しているところが多くなっています。互いの信用度が可視化されて、トラブルを防ぎます。

ただ、どうしてもサービスの内容と報酬のバランスに不満が出たり、要求がエスカレートしたりする場合もありますし、中には詐欺などの犯罪をはたらこうとする人もいることに注意が必要です。

法律や保険・補償などが整っていない

シェアリングエコノミーは、近年台頭した新しいサービスなので、制度も法整備もこれからの部分が多くあります。事業の自由度が高いという利点もある一方で、グレーゾーンを取り締まるしくみがない面もあります。

ISOの規格化が進んだり、シェアリングエコノミーを対象とした保険商品が発売されたりと、法制度の整備も急速に進んでいます。常に新しい情報を得るようにしておく必要があります。

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個人・小規模事業者が活用するポイント

シェアリングエコノミーは個人と個人の取引が基本であり、商品やサービスも、人・モノ・カネ・スキル・スペースなど多岐にわたり、個人や小規模事業者とは相性がよいサービスです。

立場別に、シェアリングエコノミーの活用のポイントをみていきましょう。

サービス提供者としての活用

シェアリングエコノミーの提供側では、ふだん使っていない倉庫の有効活用など、遊休資産の価値を上げ、稼働率を上げることができます。

また、プラットフォームを上手に活用するとマーケティングにかかるコストを減らして受注できるツールとなるため、専門的なスキルの提供ができる場合などは、個人でも大きなビジネスチャンスがあるといえます。

初期投資がかからないため、本業を支える副業としても、多角的に業務を展開する複業の一つとしても、積極的に活用することをおすすめします。

サービス利用者としての活用

シェアリングエコノミーの利用にはあまり制約がないため、規模が小さい企業ほど活用するメリットが大きいといえます。

必要なときだけプラットフォームを経由して利用すればよいため、人件費や設備費などを自前で抱え込むリスクが減らせます。

もちろん、利用する際のマッチングが成立しなかったり、成果が期待を下回ったりするリスクなどには気をつけておく必要があります。

シェアリングエコノミー協会が設定した認証マークを取得しているなど、運用ルールが明確なプラットフォームの利用をおすすめします。

プラットフォーマーとしての活用

斬新なアイデアを打ち出す事業や情報システムなどの分野で活躍している事業者であれば、プラットフォームを作ったり運営したりする側に挑戦し、新しいアイデアを持ち込んで「お互いさま」のビジネスのしくみを作ることにチャレンジできます。

総務省のシェアリングエコノミー活用推進事業のように、少子高齢化への対策や地方創生に向けた自治体の取り組みは、地元の事業者を巻き込んで進めていくものも多くあります。国や自治体、シェアリングエコノミー協会などの機関を通じ、新しい情報を積極的に集めておくとよいでしょう。

執筆は2019年9月30日時点の情報を参照しています。
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