棚卸とは?意味や目的、効率的なやり方を簡単にわかりやすく解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

棚卸しは、保有する在庫の数量や状態を定期的に確認する業務です。正確に在庫状況を把握できれば、無駄な在庫や欠品の予防につながります。一方で、棚卸しは作業が煩雑でミスが発生しやすいため、計画的に実施しなければなりません。本記事では、棚卸しの基本的な目的や実施方法、注意点について詳しく解説し、効率的な在庫管理を実現するためのツールについて紹介します。

目次


棚卸しとは

棚卸しとは、企業や店舗が保有する在庫の数量や状態を確認して帳簿の記録と一致させるための業務です。棚卸しは財務管理と在庫の最適化に不可欠であり、会計処理にも影響を与えます。

棚卸しの時期

棚卸しは、一般的に年1回、会計年度の「期首」または「期末」に実施されます。

棚卸しの情報は決算時に正確な財務状況を把握するためには欠かせないため、会計年度の期末に実施するのが一般的です。ただし、正確な在庫管理を徹底したい企業では、半期ごとや四半期ごとに棚卸しすることがあります。

また、小売業や製造業など、在庫回転率が高い業種では、毎月または毎週のサイクルで棚卸しすることもあります。特に、商品のライフサイクルが短い業界では頻度を高めることで、適正在庫の維持と経営の安定につながります。

棚卸しをする目的

棚卸しの目的は、在庫数の正確な把握、利益計算の精度向上、在庫状態の適正管理です。これにより、無駄な仕入れを防ぎ、在庫コストの削減や財務状況の健全化を図ります。

在庫数を正確に把握する

棚卸しすることで、帳簿やシステム上の在庫データと実際の在庫数量を照合して差異を明確にできます。これにより、在庫過不足や記録ミスを早期に発見し、適切な調整ができるようになります。

特に、在庫のズレが大きい場合は、仕入れ・販売プロセスの見直しが必要です。もし在庫数が帳簿よりも多い場合は、過剰仕入れや不良在庫の可能性があります。逆に、在庫数が少ない場合には、原因を早急に特定して対策を講じなければなりません。

在庫ズレが発生している場合には、POSシステムや入出庫履歴を確認して発生時点の特定が必要です。販売履歴や在庫データの記録ミスや、入出庫時の履歴から誤配送や棚卸しの誤りがないかなどを調査します。

利益を正確に計算する

棚卸しを適切に実施することで、売上原価を正確に計算して事業の利益を正しく把握できます。売上原価は、「期首在庫+仕入れ-期末在庫」という計算式で求められますが、棚卸しを怠るとこの数値が正確に算出できず、財務状況が不透明になります。

特に、原価管理が重要な製造業では、棚卸しによって実際にかかったコストを明確にすることで、利益率の分析やコスト削減策の立案につなげられます。また、小売業では、棚卸しを通じて売れ筋商品や不良在庫を特定できれば、適切な販売戦略を立てるのに役立ちます。

在庫の状態を管理する

棚卸しは、在庫の数量だけでなく、状態を確認する目的でも行われます。長期間保管された商品は劣化や破損のリスクがあり、販売できなくなる可能性があります。そのため、定期的に棚卸しをして、不良品や賞味期限切れの商品を適切に処理することが重要です。

また、棚卸しは季節商品の管理にも有効です。たとえば、冬物衣料やクリスマス関連商品など、一定期間しか販売されない商品は、シーズンが終わる前に在庫を調整するとで値下げ販売による損失を防ぐのに役立ちます。

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棚卸しの種類

棚卸しの方法には、「実地棚卸」「帳簿棚卸」の2種類があります。それぞれの特徴を理解して、業務形態に適した方法を選択することが重要です。

実地棚卸

実地棚卸とは、倉庫や店舗にあるすべての在庫を直接確認して数量をカウントする方法で、いわゆる「棚卸し」のイメージそのものです。実際の在庫と帳簿との誤差を最小限に抑えられますが、在庫を一つひとつ目視で確認するため時間と手間がかかります。在庫の種類や数量、倉庫の規模により、実地棚卸しにかかる時間はさまざまですが、一般的に作業負担が大きくなる点に注意が必要です。

そのため、日常的には後述の帳簿棚卸でおおよその数字を把握しつつ、期末など一定のタイミングで実地棚卸を実施して正確な数字を把握する、という考え方で棚卸しの全体像を理解しておくと良いでしょう。

実地棚卸には、「一斉棚卸」と「循環棚卸」があります。

一斉棚卸

一斉棚卸とは、一度の棚卸しですべての在庫をカウントする方法です。全品目の在庫を一度に確認する際に向いています。しかし在庫数が多いと作業が予定期間内に終わらず、日数がかかれば他の業務に影響する可能性もあります。一

循環棚卸

循環棚卸とは、商品ごと、倉庫のエリアごとなどに分割して順番に棚卸しをする方法です。区分ごとの作業にかかる時間は限定されることから、通常業務と並行して少しずつ棚卸しを進められるのがメリットです。ただし、棚卸しにかかる期間は長くなるため、期間中の人員確保や作業精度の均質化に注意が求められます。

帳簿棚卸

帳簿棚卸とは、商品や材料を仕入れたときや出荷したときに、帳簿に数量を記録する棚卸し方法です。入出庫の都度記録するため、まとまった作業時間が不要で、実際の棚卸し作業を省略できる点がメリットです。システム管理が整っているECサイトや大規模な物流センターでは、帳簿棚卸が主に採用される傾向があります。

しかし、入庫から出庫までの期間の在庫変動が確認できないため、記録ミスやデータ入力の遅れがあると、帳簿と実数がずれる可能性があります。そのため、定期的な実地棚卸を併用するなどの対応が必要です。

棚卸しのやり方

棚卸しにはいくつかの方法があります。以下で代表的な棚卸しのやり方について詳しく見ていきましょう。

方式 作業時間 確認精度 コスト
リスト方式
タグ方式
バーコード方式 ×

リスト方式

リスト方式とは、実地棚卸の​際に​在庫の​リスト​(帳簿棚卸高)をもとに​実際の​在庫​(実地棚卸高)と​照らし合わせる​方法です。​棚卸し作業者が​、リストに​記録されている​数字と​現物の​数が​一致するかを​確認して、​相違が​あれば​正しい​数値に​リストを書き換えます。

特別な機器が不要のため、コストを抑えたい場合や少量の在庫を扱う小売店や中小企業に向いています。

  • 取扱い商品数の目安:~1,000程度
  • 導入業種の例:セレクトショップ、個人経営の雑貨店、飲食店、小規模スーパー
  • メリット:シンプルで導入しやすい
  • デメリット:漏れや重複が発生しやすい

タグ方式

タグ方式とは、実地棚卸の際に作業者がチェックした現物に品目や数量や担当者名などを記入した連番のタグ(棚札)を棚などに貼り付けていく棚卸し方法です。数え終わったものにはタグが残るため、棚卸しの重複や漏れを防げます。また、最後にすべてのタグを回収して集計するため、作業漏れの予防も可能です。

棚卸しの前にタグを準備する必要があり、棚卸しの作業もリスト方式よりも時間がかかります。しかし、カウント漏れが起きにくく、さまざまな業種に適用しやすい手法です。また、タグ方式は作業者ごとのカウント精度を把握しやすく、責任の所在を明確にできるため、大規模な倉庫や流通業で広く採用されています。

  • 取扱い商品数の目安:数千~数万程度
  • 導入業種の例:総合スーパー、ホームセンター、ドラッグストア、家電量販店
  • メリット:カウント漏れが予防しやすい
  • デメリット:作業時間がかかる

バーコード方式

バーコード方式とは、実地棚卸の際に現物や棚に貼り付けられたバーコードをスキャンする方法です。バーコードの読み取り機器やシステム導入などが必須で導入に一定のコストがかかりますが、棚卸しが自動化できます。大量の商品を扱う業種、かつ棚卸し専用のシステムを持つ企業で多く採用されています。

手作業による記録ミスを削減して、正確な在庫管理が可能です。また、リアルタイムでデータを更新できるため、即時に在庫状況が把握可能です。

  • 取扱い商品数の目安:数千~数万程度
  • 導入業種の例:ECサイトの物流倉庫、総合スーパーの在庫センター、大手メーカーの部品倉庫
  • メリット:精度・効率が高い
  • デメリット:導入コストが高い

棚卸在庫の評価方法

棚卸しによって在庫数量が確認できますが、それだけでは利益との関係が不透明なため、棚卸資産の評価額を確定する必要があります。

棚卸し在庫の評価方法には「原価法」と「低価法」の2通りがあり、取り扱い商品の特性やビジネスの形態によりどちらか一方を利用します。評価方法は事業開始時に選択し、所轄の税務署に届け出る必要があります。もし、届け出をしなかった場合には、最終仕入原価法が自動的に適用されます。

原価法

原価法とは、仕入れなどで在庫を取得したときの原価を基準に評価する方法です。原価法で在庫の評価価額を計算するためには、個別法、先入先出法、総平均法、売価還元法、移動平均法、最終仕入原価法という6種類のうちいずれかの方法で計算することが定められています。

この方法は、在庫の取得価格を正確に把握しやすいメリットがありますが、計算の複雑さや市場価格の変動による影響を受けやすい点には注意が必要です。特に、先入先出法は在庫回転が早い業種で採用されやすく、売価還元法は小売業向けの評価手法として活用されています。

低価法

低価法とは、在庫の仕入価額(原価)と棚卸しの際の時価を比較して、低いほうの価格を評価に適用する評価方法です。流行のサイクルの早い商品や価格変動が激しい商品を扱うビジネスの場合、低価法を採用することで時価変動による影響が適切に反映できます。そのため、アパレル業界や電子機器業界では、低価法が有効とされています。

低価法は将来の売却損失が予測できるため、市場価格が下落した場合でも在庫を適正に評価できるメリットがあります。同時に、時価が原価を下回った際は損失として計上できるため、節税効果も期待できます。

一方、在庫ごとに時価を把握して評価する必要があるため、特に取り扱う商品数が多い場合は管理が煩雑になりやすくなります。

棚卸し作業のポイント

棚卸し作業をスムーズに進めるためには、手順やルールを明確にし、作業のスケジュールを適切に設定することが重要です。また、在庫管理ツールを導入することで、作業負担を軽減し、精度を向上させることができます。

手順やルールを明確にする

棚卸し作業を円滑に進めるためには、事前に手順とルールを明確にし、全スタッフに共有することが重要です。たとえば、「担当エリアごとに責任者を決める」「記録フォーマットを統一する」「カウント後のデータ確認を実施する」といったルールを設けることで、作業の混乱が防げます。

また、作業者の経験に依存せず、標準化された方法で進めることで、作業の属人化の抑制に生かせます。事前の研修でスタッフの理解を深め、作業精度を向上させることも効果的です。

作業日程・時間を設定する

棚卸し作業は、営業に影響を与えないよう適切な時間帯に設定することが求められます。たとえば、店舗や倉庫の稼働が少ない時間帯や、繁忙期を避けたタイミングで実施することで、業務に支障をきたさずに作業ができます。

また、作業負担の軽減を図りたい場合には、複数回に分けて実施する循環棚卸を取り入れることもおすすめです。これにより、一度に大量の在庫をカウントする負担の軽減と、正確な管理の両立が可能になります。

在庫管理ツールを導入する

近年、クラウド型の在庫管理ツールが多くの企業・店舗で活用されています。これにより、リアルタイムでの在庫管理が可能になり、手作業によるミスを削減できます。特に、複数拠点を持つ企業では、オンラインで在庫情報を一元管理できるため、業務の効率化が図れます。

バーコードやQRコードと連携したシステムを導入することで、カウント作業のスピードと精度が向上し、管理負担が大幅に軽減できます。コスト削減にもつながるため、小規模事業者でも導入を検討する価値があります。

店舗運営を支える Squareのサービス

在庫管理ツールを導入する際は、業務フローに適したシステムを選ぶことが重要です。リアルタイムで在庫状況を把握したい場合はクラウド型、手軽に運用したい場合はアプリ型など、事業規模や運用スタイルに応じた選択が求められます。

ここでは、小売店や飲食店などの業種におすすめのSquareのサービスについて詳しく紹介します。

無料で在庫管理システムが導入できる

Squareでは、無料でPOSレジを利用できるため、在庫管理に手間がかかる小規模店舗でもコストを抑えた導入が可能です。登録手数料や月額固定費は不要で、商品登録やカテゴリ分け、在庫が一定数を下回った際の通知など、充実した在庫管理機能を備えています。

販売した商品は自動で在庫数に反映されていつでも最新の状況が確認できるため、「気づいたら品切れになっていた」といった事態を防ぎ、発注のタイミングを見極めやすくなります。また、手作業によるミスを削減できるため、在庫のズレを防ぎ、より正確な管理が可能です。

さらに、売上管理のレポート機能を活用すれば、売り上げや在庫数、売れ筋商品を簡単に分析できます。「どの商品がよく売れているのか」「次に仕入れるべき商品は何か」という疑問もデータをもとに検討できるため、欠品を防ぎながら効率的な在庫管理が可能です。

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▶Square POSレジを活用した在庫管理の事例はこちら

小売店の在庫管理にはSquare リテールPOSレジが便利

Square リテールPOSレジは、店舗販売に役立つツールを備えた​小売ビジネス向けのPOSレジシステムです。コストを抑えながら効率的に店舗運営につなげるシステムを導入したい場合に便利です。

別の方法で在庫情報を管理していた場合でも、Squareに一括でインポートできるため、一つひとつ登録しなおす必要はありません。フリープランでも登録できる在庫数は無制限で、在庫管理や店舗間の在庫の移動もまとめて管理できます。

特に、バーコードスキャン機能を活用すれば、商品の入出庫や棚卸しが簡単にできます。売上原価や在庫消化率の自動レポート機能も搭載されており、在庫の最適化を目指す場合に便利です。また、顧客プロフィールの​自動​追加や商品の​交換および返品など店舗販売の機能に加えて、ウェブサイト作成やSNSでの販売など、オンライン販売に必要な機能も備えています。

▶Square リテールPOSレジの機能と料金について詳しくはこちら

SquareのPOSレジなら高機能なのにずっと0円

キャッシュレス決済、在庫管理、顧客管理、スタッフ管理など、店舗に必要な機能をすべて搭載

売上管理・勤怠管理もSquareがあれば簡単

Squareのサービスは、在庫管理だけでなく、売上管理や勤怠管理にも対応しています。

Square シフトでは、スケジュール作成や勤怠管理、労働時間などを一元管理できます。リアルタイムでの勤怠確認や給与計算の手間削減ができるため、事務作業を効率化して本業に費やす時間を増やすことが可能です。

ビジネスの状況はリアルタイムで更新されるため、期間ごとの売り上げの変化を素早く分析し、経営判断に生かせます。また、曜日ごとに適切にスタッフを配置し、タイムカード機能を活用して従業員の勤務時間を正確に記録することも可能です。

スタッフの人数にあわせて利用できる機能が拡張できるため、ビジネスの成長に合わせた柔軟な運用が可能です。もっと売り上げを伸ばしたり、業務負担を減らした効率的な運営を目指したりする場合には、Squareの勤怠管理システムの導入がおすすめです。

▶Square シフトの機能と料金について詳しくはこちら

まとめ

棚卸しは、在庫管理の精度を向上させ、ビジネスの財務状況を正確に把握するために欠かせない業務です。適切な方法を選択し、計画的に実施することで、業務負担を減らしながら正確なデータが取得できます。

また、Squareのような在庫管理ツールを導入することで、作業の効率化やミスの削減が図れます。リアルタイムでの在庫管理や自動更新機能により、手作業の負担を軽減しながら正確なデータが維持できます。適切な棚卸しとデジタルツールを組み合わせて、店舗運営の最適化を目指しましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2018年12月3日時点の情報を参照しています。2025年4月9日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash