経営にたずさわる人なら必ず耳にするであろう、「ホスピタリティ」という言葉。自信を持って、その意味をしっかり理解している人は案外少ないかもしれません。
従来ホスピタリティは、主にホテルやレストランなどの接客業に必要なものと考えられてきましたが、近年は職場やチーム、地域や社会全体にもホスピタリティという考えを当てはめることが増えてきているようです。
ここではホスピタリティの意味や、ホスピタリティが必要な場面などについて解説します。
目次
- ホスピタリティとは
・ホスピタリティの語源と意味
・ホスピタリティとサービスの違い
・ホスピタリティとおもてなしの違い
・ホスピタリティを発揮した事例 - ホスピタリティ業界とは
・ホスピタリティが高い仕事
・求められるスキル
・ホスピタリティマネジメント - ホスピタリティを向上させるには
・業務効率を上げるツールを導入
・労働条件の見直し
・職場環境の改善 - まとめ
ホスピタリティとは
ホスピタリティは、現代では「丁重なもてなし、歓待の精神」という意味で使われています。ホスピタリティとは何か、と聞かれたら、「心をこめたおもてなし」「相手を思った自発的な行動」「手厚いサービス」などと答える人が多いのではないでしょうか。ホスピタリティの語源や似たような言葉と比べながら、その意味を紐解いてみましょう。
ホスピタリティの語源と意味
ホスピタリティの語源は、「すぐれて客人歓待を具現する者」という意味をもつラテン語「Hospes」、またさらにさかのぼると「Hostis=よそ者」を意味するラテン語に行き着きます。はるか昔のローマ人がいかに敵にも客にもなりうるよそ者との関係性の築いたかが、ホスピタリティという言葉に残っているのかもしれません1。
現代では、「ホスピタリティ=丁重なもてなし、歓待の精神」という意味でつかわれています。
ホスピタリティとサービスの違い
サービスの語源はラテン語の「servus」。これは「奴隷」という意味です。奴隷には当然、主人がいて、主人と奴隷とのあいだには主従関係があります。お客さま(=主人)が求めることを的確に遂行すること、きちんと業務をこなすことを「サービス」と呼ぶのです。
一方でホスピタリティでは、お客さまとの関係は対等です。命令されていないけれど、お客さまが何を求めているのか、どんなことをしてあげたらお客さまが喜ぶのかを考えながら、手厚くもてなすことです。「マニュアルに書いてあるから」「ノルマがあるから」ではなく、「こうしてあげたら相手は喜ぶだろうな」と考えて行動することがホスピタリティなのです。
ここで、具体例を挙げてみましょう。
《サービスの一例》
- お客さまが注文した料理を提供する
- 荷物を注文先まで指定の時間に届ける
- 繊細な商品を割れないように梱包する
《ホスピタリティの一例》
- お客さまの誕生日にケーキをレストランでプレゼントする
- 冬の雨の日に外で並んでいるお客さまに傘やカイロを渡す
- 小さなお子さまを連れたお客さまが会計している間、店員がお子さまの相手をする
ただし、同じ行動でも、状況によってホスピタリティになる場合とならない場合があります。上記の例をとってみると、レストランに「誕生日のお客さまにはデザートをプレゼントする」というマニュアルがあるなら、それは単にサービスであって、ホスピタリティのある行動にはあたらないことになります。逆に、商品を梱包するだけでも、たとえばスーパーマーケットのようなセルフサービスの店で、手にケガをしているお客さまに対して店員が袋詰めを手伝うことはホスピタリティといえるのではないでしょうか。
ホスピタリティとおもてなしの違い
おもてなしは「客人を招待する」ことから発せられたもので、「相手の満足は自分の満足」という意味合いであることや、相手と提供者が対等の立場であることからも、ホスピタリティと同じようなニュアンスで使われています2。
あえて区別するならば、「ホスピタリティ」は西洋の言葉で、お客さまの要望や提供する行動が明示的である西洋文化が反映されています。それに対して、日本独自の概念である「おもてなし」は奥ゆかしさやさりげなさ、暗黙的な要望を推察する空気を読む力といった日本らしい考え方に基づいているといえるかもしれません。
ちなみに、おもてなしという言葉は歴史が古く、源氏物語にも「もてなし」という言葉が登場したそうです。
ホスピタリティを発揮した事例
ホスピタリティにまつわるエピソードで、あるホテルにお客さまが忘れ物をしたところ、スタッフが新幹線に乗って忘れ物を届けてくれたという話があります。
このホテルの対応は賞賛に値しますが、「うちはそこまで対応できないな……」と感じる人も多いかもしれません。しかし、行動そのものをマネする必要はありません。新幹線に乗って届けることではなく、お客さまが忘れ物をしたら「なるべく早く届けてあげたい」と考えて行動することがホスピタリティなのです。
職場では規定やマニュアルを外れた行動を起こすことが難しく、ホスピタリティが発揮できないこともあるかもしれません。そういった場合には、従業員の裁量権などを見直してみるのも一案です。
ホスピタリティ業界とは
ホスピタリティ業界とは、顧客の思い出に残る、快適なサービスを提供する産業を指します。サービス業界と呼ばれることもあります。
ホスピタリティが高い仕事
以下は主にホスピタリティ業界と呼ばれるもので、従業員はホスピタリティが高く求められます。これらはサービス業と呼ばれることも多くあります。
- 宿泊業界:ホテル、リゾート、旅館、民宿など
- 飲食業界:レストラン、カフェ、バー、ケータリングなど
- 旅行業界と観光業界:旅行会社、航空会社、クルーズ、観光バス、観光案内所など
- 会議・宴会:会議、宴会、イベント、展示会、パーティー、ブライダル、フェスティバルなど
- アミューズメント:遊園地、テーマパーク、カラオケ、エンターテイメントビジネスなど
他にも学校や習い事のスクール、病院、福祉施設、ヘアサロン、清掃業など、ホスピタリティ業界とは広く呼ばれいなくても、お客さまがいるビジネスであればホスピタリティは必要になってきます。
求められるスキル
コミュニケーション能力は必須スキルです。顧客とのコミュニケーションはもちろん、ホスピタリティ業界はチームで動く仕事も多いため、同僚や上司との円滑なコミュニケーションが大切です。
海外からの顧客と接する機会が多ければ、英語などの語学力に加え、異文化や多様性への理解もプラスとなります。それぞれの文化に合わせたビジネスマナーも心得ていればなお良いでしょう。トラブルが発生した際や予想外のケースに遭遇した際などに、臨機応変に動ける力も重要です。
しかし、何より肝心なのは「ホスピタリティ精神」でしょう。たとえ上記すべてのスキルが揃っていたとしても、これが抜けていれば顧客を満足させることはできません。
ホスピタリティマネジメント
近年では、職場マネジメントとしてホスピタリティを実践する経営者が増えてきています。社内で従業員同士がホスピタリティを発揮することで、職場の雰囲気や社内環境を向上させようという動きです。その根底には「従業員が満足していない職場では、お客さまにも満足を与えられない」という考えがあります。
これまで、職場の人間関係や従業員のモチベーション維持といった部分は管理職の手腕に任されることがほとんどでした。しかし、雰囲気の良い職場環境を継続的に作っていくことは簡単なことではありません。そこで、経営者、管理職、従業員の全員がホスピタリティをもってコミュニケーションをとることでよい職場にしていこうという考えが広まっているのです。
ホスピタリティは働く人すべてにとって、大切な要素だといえます。
ホスピタリティを向上させるには
ホスピタリティのある職場にするために、経営者にできることはどんなことでしょうか。
業務負担を減らすツールの導入
従業員が負担に感じている業務をできるだけ減らせると、その分、お客さまの様子に気を配る余裕が生まれるかもしれません。そのためにも、作業負担を確実に減らせるようなツール選びが大切です。
たとえば以下のような悩みを抱えていませんか。
(1)【飲食店】会計に何かと時間が取られる
(2)【エステサロンや美容院など】予約確認に時間が取られる
この二つの改善方法を見てみましょう。
(1)の場合
手書き伝票で注文を受け付けていると、お会計の際にオーダー内容をレジに打ち込む必要が出てくるでしょう。オーダーエントリーシステムを搭載したPOSレジアプリやハンディ端末などで注文を受ければ、会計時には保留していた伝票を呼び出すだけでお会計を進められるので、手書き伝票をもとに金額を入力する手間が省けます。
(2)の場合
たとえば電話で予約を受け付けている場合、前日にリマインダーとしてお客さまに入電、またはメールを送信している店舗もあるかもしれません。オンラインで予約を受け付けられるシステムを導入すると、電話対応をする時間が減るうえ、リマインドは自動で送られる場合が多いので、予約確認に割いていた時間がまるっと削減できます。
上記で紹介した、オーダーエントリシステムを搭載したPOSレジアプリと予約システムはSquareなら無料で導入できます。必要なのは無料アカウントだけ。オーダーエントリーシステムを使うには無料のSquare POSレジアプリをダウンロードする必要があります。詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
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Squareの予約管理は無料から導入でき、事前決済はもちろん、有料プランの場合はキャンセル料も取れるので、ノーショー対策もできます。専用アプリでも、お使いのブラウザでも、場所を問わず、どこでも予約の状況を確認、調整できます。
労働条件の見直し
給与体系や福利厚生はもちろんですが、たとえばリフレッシュ休暇など「会社は従業員のことを大切に考えている」ことが伝わるような制度やシステムがあるかどうかもポイントです。
職場環境の改善
人間関係がうまくいっていない会社、ギスギスした職場では、従業員のやる気はなかなか生まれません。経営者も管理職も従業員も、全員がお互いを思いやりながら働ける環境づくりが必要になります。
そして、会社と従業員がともにホスピタリティの大切さを認識していることも重要です。組織のトップである経営者が従業員に対してホスピタリティを発揮する、つまり、「何をしたら相手は本当に喜んでくれるのか」を考え行動することが大切です。経営戦略としてホスピタリティを取り入れて、会社の成長に役立ててみてはいかがでしょうか。
まとめ
ホスピタリティが発揮されると多くのメリットを生み出します。接客の現場では、顧客満足度の向上やリピーターの増加だけでなく、商品やサービスに「ホスピタリティ」という付加価値が付きますし、お客さまが喜ぶことで従業員のモチベーションも上がります。職場内であれば、従業員に忠誠心や愛社精神が生まれる、従業員のやる気が上がり生産性アップにつながる、従業員同士のチームワークやコミュニケーションが円滑になるなどのメリットが挙げられます。ちょっとした行動でも良いので、ぜひ職場や普段の生活の中でホスピタリティを意識してみてはいかがでしょうか。
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この記事の公開日は2018年2月20日です。2025年2月19日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash