経営者の高齢化が進む中、事業承継に伴う後継者の育成が中小企業を中心に多くの企業で課題となっています。
今回は後継者育成について、意識しておきたい点や実際に育成する際のポイントなどを紹介します。
経営者の高齢化と後継者難
事業承継に関する調査によると、経営者年齢のボリュームゾーンが1995年には47歳だったのに対し、2015年には66歳となっており、経営者の高齢化がみられる結果となっています。一方、経営者交代率は長期にわたって下落傾向にあります。このふたつを照らし合わせると、多くの企業で経営者の交代がなされていないことが分かります。
また、廃業を予定している企業のうち、28.6%が「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者がみつからない」といった後継者難を理由にしており、後継者の確保や育成が大きな課題であることがみてとれます。
後継者の確保、育成の必要性
また、後継者が決定した事業者のうち、3分の1以上が後継者の選定を始めてから了承を得るまでに3年超かかったことがわかっています。
後継者が決定した後の育成や事業承継の実行にも、多大な時間を要すると考えられます。
「自分はまだ働き盛りで、まだ事業を引き渡す時期ではない」と考えている経営者もいるかもしれません。しかしながら、取引先や顧客に迷惑をかけることないよう、後継者の確保、育成は常に考えておくべき課題であるといえます。
社内における後継者育成のポイント
経営者が後継者を選ぶにあたり、関係者の理解が得やすいケースとして、親族になることが多いのではないでしょうか。一方、特に親族のなかに適切な候補者がいない場合は、社内人材から選出することが多いようです。後継者決定のタイミングとしては、現在の経営者が決定権や発言権を持っている現役の期間内に行うことが、従業員間の内紛などの不要なトラブルを招かないためにも重要です。
後継者が決まったら、将来に向けて意識的に育成していく必要があります。どのような育成方法を選ぶかは企業の置かれた状況によって異なりますが、一般的な事例やそのポイントを、まず会社内で行うものから紹介していきます。
部門ローテーション
営業部門や管理部門など、社内の主要部門をそれぞれ経験することで、業務プロセスを理解するとともに現場感覚を身に付けます。また、各部門の従業員と日々コミュニケーションをとり、同じ仕事に携わることは、現場で働く従業員からの支持を得ることにもつながります。
昇進ステップをきちんと踏む
一般社員から一気に役員クラスにステップアップするのではなく、係長、課長、部長と各役職を経験します。それぞれに求められている役割や責任範囲を知るとともに、将来そのポジションの人材を採用するにあたっても貴重な経験になります。
経営幹部として参画
ある程度経験を積んだら、責任と権限の範囲を広げ、経営に携わるようにします。経営上の意思決定や外部交渉を任せることによって、使命感やリーダーシップが育まれる機会となり、経営実績を積み重ねていくことができます。
補佐する人材も確保、育成
経営者の多くが感じる、孤独感。ベテラン社員や古参役員のなかに年下の経営者として参加する場合は、従業員を率いていくことで困難に直面することもあるかもしれません。新たな経営者を補佐し、気の置けない相談相手となるようなパートナー人材も併せて確保し、育成していくことが望ましいでしょう。
後継者育成には社外の活用も重要
後継者育成プロセスには、会社外部での教育も大切です。社内での育成プロセスに合わせて、計画的に進めていきましょう。
他社での勤務
理解のある取引先や同業者に依頼し、出向などある程度の期間他社で勤務することは、将来的に有用な経験となるでしょう。自社にはない経営や仕事の手法を身に付けたり、アイデアを得たりするチャンスにもなるほか、人脈の形成や拡大にもつながります。
セミナーなどの活用
専門の教育機関のほかに、公的機関でも後継者育成を目的としたセミナーが数多く開催されています。これらを利用すると、短期間で効率よく経営者としての基本的なスキルやマインドが身に付けられるだけでなく、次世代の経営者同士による異業種間ネットワークの形成にも役立ちます。
また、セミナーで得た知識は後継者のなかに留めておくだけでなく、自社に持ち帰って従業員教育にも活用するようにします。会社全体のレベルアップにもつながるなど、さらなる効果が期待できます。
子会社や関連会社での経営
育成が進み、ある程度実力が備わったと判断できる段階にさしかかったとき、もし子会社や関連会社がある場合には、その企業経営を任せてみるのもよいでしょう。実際の経営トップとして必要となる能力や責任感が身に付くとともに、経営者としての資質が確認できるよい機会になるのではないでしょうか。
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執筆は2018年5月8日時点の情報を参照しています。
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