ビジネスだけでなく、教育現場や行財政運営などさまざまな場面でも耳にする言葉のひとつ、「PDCA」。業務を改善して、成果をあげるための手法だということは分かっているけれど、その意味を正しく知り、効果的に導入できている例は案外多くないかもしれません。
今回は、PDCAの意味と導入のメリット、うまく回すためのポイントや具体的な活用方法を紹介します。
PDCAとは
PDCAはマネジメント手法のひとつで、「PDCAサイクル」とも呼ばれます。米のウィリアム・エドワード・デミング博士とウィリアム・シューハート博士が提唱し、1950年代に国勢調査の計画立案のために来日したデミング博士が日本に伝えました。デミング博士は品質管理の専門家であり、日本の製造業の品質向上に大きな貢献をした人物です。品質管理の国際基準であるISO9000やISO14000にも影響を与えている理念といわれ、世界基準のマネジメント手法といえます。
現在では、製造業だけでなく、システム開発、サービス業などさまざまな業界で、幅広く活用されています。日本でも、ビジネスシーンだけでなく、教育現場でも検証改善サイクルを回して、教育の質や学力の向上につなげようという動きがでてきているようです。
参考:すべての学校にPDCAサイクルを確立するために(文部科学省)
ビジネスシーンにおけるPDCAの目的は、業務の改善です。改善活動を継続的に行うことで、仕事の精度を上げ、生産行程や品質などを継続的に改良していきます。PDCAの各文字は、「Plan」「Do」「Check」「Action」という改善活動の段階を表しています。
Plan=計画を立てる
目標設定と目標を達成するための行動計画を作成します。「誰が(Who)」「いつ、いつまでに(When)」「どこで(Where)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「いくらで(How much)」の5W2Hに分解して設定します。数値を使って、誰でも目標がわかるように、具体的な目標を設定するのがポイントです。
Do=実行する
計画をもとに実行します。実行というと「計画に沿って確実に実行すること」と考える人も多いかもしれませんが、PDCAサイクルの「D」は試行でもあります。計画を実施してみて、有効なのか、ほかの方法は考えられないかなどを検証する段階です。時間を測ったり、数を数えたりしてどのくらい計画が達成できているか、結果がわかるように実施するのがポイントです。また、一度に全て行わず、少しずつ実践していくことも重要です。計画通りにすすまない、計画していた方法がうまくいかない場合も、そのことを記録します。
Check=評価する
計画が実行できたか、目標が達成できているかを評価します。計画がうまくいかなかった場合や変更があった場合は、その理由も分析します。成功した場合も、うまくいった原因を分析しましょう。目標や実行時の数字を検証することで、分析の具体的な根拠になります。
Action=改善する
評価の段階で明らかになった課題を解決するための改善点を考えます。この計画を続けるのか、中止するのか検討するのもこの段階です。
PDCAはActionで改善点を考えたら終わりではありません。改善を踏まえて次のPlanに進み、継続的に業務の品質を高めるサイクルを作っていくことが重要です。
PDCAにはどんなメリットがあるの?
PDCAのメリットには、以下のようなものがあげられます。
・目標が明確になる
・無駄な部分が明確になり、改善につながる
・業務改善に効果的な方法を、短時間に検証できる
・短期間でサイクルを回すのでモチベーションが下がらない
・業務が継続的に改善され、同じミスを繰り返すことが少なくなる
具体的に達成できそうな目標が設定されれば、スタッフのモチベーション向上が期待できます。
うまく回り始めればPDCAはサイクルではなくスパイラルになり、螺旋を描きながら、業務効率がどんどん良くなるでしょう。実際にPDCAサイクルを回すスタッフにも、目標達成や業務改善の意識が定着していきます。
PDCAをうまく回すためには?
PDCAは効果的な方法であることはわかっても、なかなかうまく導入できないという場合もあるかもしれません。うまくPDCAサイクルを回すためにはいくつかのポイントがあります。
数値化できるPlanを立てる
Planの段階で、現実的ではない願望を含めた大きな計画を立てると、実行が困難になる可能性があります。結果を数値化できないだけでなく、次のAction(改善)につなげられなくなることも考えられます。目標が数値化されていない計画は、成果が見えないだけでなく評価が漠然としてしまうので、改善につながりません。
適切なPlanのポイントは、現状分析を基に計画を考えることです。理想と現状との差が明らかになり、それを埋めるための計画を立てられるようになります。
業務をできるだけ小さく分割して考える
PDCAを回す業務はできるだけ小さく分解し、目標達成のためそれぞれの業務をどのように実施するか計画を立てます。分解された業務ごとに無駄や改善点を考えると、より具体的な計画や分析につながり、PDCAをスムーズに回せるようになります。
結果をきちんと分析して改善を行う
成果を急ぎすぎて、なにか問題が起こった場合、すぐに変更を実行してしまうと結果の検証がしにくくなります。問題が発生した際は、なぜ発生したのかを検証し、その改善のための変更を考えることが重要です。
PDCA導入の具体例
ここでは、社内の課題改善に目を向けたPDCA導入の具体例を紹介します。
たとえば「会社のブログへのアクセス数を増やしたい」という課題の場合、以下のようにPDCAを実行していきます。
Plan
現在の1記事あたりのアクセス数が1日50ページビューとして「1日100ページビューに増やす」という目標を立てます。そのために、これまでに1日100以上のページビューがあった人気の記事と似た傾向の記事を週に3本更新します。
Do
記事を実際に作成し、ブログに公開していきます。
Check
実際のアクセス数を確認し、目標を達成できたか、達成できた時とできなかった時の違いはなにか、などを分析します。加えて、目標数を大きく上回った記事、もしくは大きく下回った記事にはどんな特徴があるのかも確認しましょう。
Action
分析内容を基に、次にどんな記事を書くか、記事を広めるための手法をどうするか、など改善項目をあげて実施していきます。
PDCAは、会社だけでなく、個人で回すこともできます。自分の将来を見据えた計画を立て、実行し、結果を分析して改善していくことは、スタッフのキャリアプランの作成にも活用できるでしょう。
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執筆は2018年8月16日時点の情報を参照しています。
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