2019年秋に開催される「いきいき茨城ゆめ国体」「いきいき茨城ゆめ大会」の文化プログラムとしての開催も決まり、注目度の高まっているeスポーツ。世界的にみると日本にはまだ楽しめる施設が多いとはいえないようです。ビジネスとしてeスポーツ施設を新たに立ち上げて運営していく魅力は大きいといえます。
今回は、eスポーツが楽しめる施設を開業するにあたって、知っておきたい基本情報やヒントなどを紹介します。
eスポーツとは
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、コンピューターゲームや家庭用ゲーム機、スマートフォンゲーム、業務用ゲーム機などを使った対戦をスポーツ競技として捉える際に使われている言葉です。
ゲームプレイヤーを対象とした競技大会は1990年代から行なわれていましたが、2000年代のインターネットの普及に合わせてゲームが他のスポーツ競技のように興行化し、プロプレイヤーが登場し、リーグも設立されました。大会の様子はインターネットを使った動画配信サービスで提供されることが多く、野球やサッカーの試合のように、選手がプレイしている様子観て楽しむファン層も存在しています。
eスポーツの最大の特徴ともいえるのが、賞金の額です。大規模なものでは、予選を含めて賞金総額が1億ドル(約110億円)にものぼる「Fortnite World Cup」などがあり、日本国内をみても2018年に開催された「モンストグランプリ2018 チャンピオンシップ」では、優勝チームに賞金3,000万円が贈られています。
2018年3月に発表された総務省の報告書「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」によると、2017年時点の市場規模は海外で700億円程度、日本国内では5億円未満となっています。
eスポーツの種類
eスポーツの対象となるゲームは、主に以下の5ジャンルに分けられています。
マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)
複数人プレイヤーがチームにわかれ、同じチームのプレイヤーを協力しながら敵チームの本拠地を破壊する、というゲームで、eスポーツで多くの人気を集めているジャンルです。
代表的なタイトルとしては、「League of Legends」「Dota 2」「SMITE」「Vainglory」などがあります。
ファーストパーソンシューティング(FPS)
シューティングゲームの一つで、主人公の視点でキャラクターを操りながら空間を移動し、敵を打すゲームで、視界に入るのキャラクターの腕や武器などの一部分です。
代表的なタイトルとしては、「Counter-Strike:Global Offensive」「Overwatch」「Call of Duty: WWII」「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」などがあります。
コレクタブルカードゲーム(CCG)
日本ではトレーディングカードゲームとも呼ばれ、カードをデジタル化し、アプリケーション内で対戦するゲームです。「Magic the Gathering」や「ポケモンカード」など、これまでも実物のカードを用いて楽しまれてきた分野ですが、オンライン対戦ができるようになったことでプレイヤーを増やし、eスポーツのなかでも一つのジャンルを築いています。
代表的なタイトルとしては、「Hearthstone」「Shadowverse」「Gwent」などがあります。
格闘ゲーム
名前の通り、格闘をして相手を倒すゲームジャンルで、特に日本で人気のあるeスポーツの一つです。代表的なタイトルとしては、「ストリートファイター」シリーズや「鉄拳」シリーズなどがあります。
その他スマートフォンゲーム
「パズル&ドラゴンズ」や「モンスターストライク」など、おもにスマートフォンを使ってプレイするゲームです。日本では家庭用ゲーム機やコンピューターを使ったゲームよりもユーザーが比較的多く、大規模な大会が開催されています。
eスポーツの大会は、大小さまざまな単発開催のほか、「リーグ」「ツアー」と呼ばれる様式でも行われています。リーグは、野球やサッカーなどのプロスポーツで行われているのと同様に、シーズンを通して同じチーム(プレイヤー)によって競われる形式です。
一方ツアーは、一定の大会期間を設けて開催されますが、参加者は固定されておらず、期間内に取得したポイント数などに応じて決勝大会への出場権を獲得し、優勝者を決めるというスタイルの大会です。
eスポーツ施設開業の際に準備すべきもの
eスポーツが楽しめる施設としては、eスポーツに特化した専用のスタジアムなどもありますが、主流となっているのはネットカフェをベースにeスポーツへシフトしたスタイルの店舗です。韓国で広まっている「PCバン」と呼ばれる店舗形態がこれと似ているので、参考としてチェックしてみるとよいでしょう。
eスポーツ施設の開業にあたっては、一般的なネットカフェ開業と同様の準備に加えて、ハード面、ソフト面それぞれに意識する点があります。
ハード面としては、まず来店者が使用するコンピューターの選択が重要です。ウェブサイトの閲覧や動画の試聴を想定したスペックのコンピューターではなく、eスポーツの使用に耐えうる高い性能を備えた、いわゆる「ゲーミングPC」の準備が必要です。可能であれば、憧れのゲーミングPCを使ってみることを目的とした来店者も集客できるよう、フラッグシップモデルクラスのゲーミングPCが用意できると理想的です。また、高性能なマシンやパーツが登場するサイクルが早く、それなりの台数を用意する必要もあるため、購入するよりもリースを利用するのも一つの方法です。
一方、ソフト面のポイントとしては、一般的なネットカフェとの差別化が挙げられます。eスポーツ施設として利用者に認知していてもらうために、定期的に大会を行ったり、プロのプレイヤーを招いてイベントを開催したりするなどの方策が考えられます。クチコミによるオープン告知なども考えると、オープンする前の段階から協力者となり得るeスポーツ界で有名なプレイヤーへの人脈づくりを行っておくことが肝心です。
法規制など
前述の「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」によれば、eスポーツの大会は次の法律に抵触する懸念が課題として挙げられています。
刑法
大会の出場者から出場料を徴収し、その中から賞金を捻出する場合は、刑法の「賭博」に該当する可能性があります。ただし、徴収した出場料を大会運営費に充当し、賞金をスポンサーの出資金から捻出する場合は問題ありません。
不当景品類及び不当表示防止法
賞金が、大会で使われるゲームの売り上げによって利益を得る企業の顧客誘引の手段となる景品に該当するとみなされる場合には、その金額に上限が設けられています。賞金が景品として顧客誘引の手段となりうるかどうかは、判断が難しい部分もあるため、不安がある場合は専門家に相談するようにしましょう。
風俗営業法
賞金を出して大会を開催する場合や、飲食店が大会の出場料を徴収したり観戦料を徴収したりする場合には風俗営業法の適用対象となるため、営業許可を得る必要があります。
現在はまだ多くありませんが、eスポーツ施設開業へ向けての総合的なソリューションを提供している業者も存在します。必要に応じて活用してみるのも一手です。
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執筆は2019年5月26日時点の情報を参照しています。
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