「信用スコア」という言葉を聞いたことがありますか。個人に紐づくさまざまなデータを基準にその人の「信用力」をスコアリングする仕組みです。アメリカや中国では徐々に普及が進んでおり、今後は日本でも使われるようになると予想されています。
信用スコアが可視化されることで、生活やビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。今回は、信用スコアの基本的な考え方や導入のメリットなどについて解説します。
信用スコアとは
信用スコアとは、個人の信用力を数値化したものです。数値が高いほど、その人の信用力が高いことが示され、融資やサービスの利用申込で有利に働きます。
そもそも「信用力」とは、「どのくらい人から信用されているか、あるいは人からの信用を勝ち取る能力があるか」ということを表す考え方です。日本では、融資の申し込みなどの際に信用調査が行われていることが多いので、そのイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし、AIなどの技術の発展により、「信用力」の考え方が変わろうとしています。これまでの信用力は「良い会社に長く務めている」「年収や資産が高い」といった点が大きな影響を与えていましたが、今後は生活習慣や趣味嗜好といった一見関係ないような事柄まで加味した信用スコアが算出される可能性があります。いわば、努力次第で信用力を高めることができるようになるかもしれないのです。
より身近な評価指標として、信用スコアの算出が当たり前になる社会が近づいています。
他国で導入されている事例
信用スコアの考え方は、海外ではすでに浸透しつつあります。
たとえば、中国の事例を見てみましょう。大手オンラインマーケット「Alibaba」のグループが、信用スコアサービス「芝麻信用」を展開して、同グループによる電子決済サービス「Alipay」と連携しています。
中国では電子決済の普及が進んでおり、それと紐づく信用スコアサービスも大きな影響を与えています。芝麻信用のスコアが高いと、サービスの保証金が免除されたり、手続きが簡略化できたりというメリットがあります。逆に、信用スコアが低いことが日常生活に影響するというデメリットがあります。
参考:“善良”中国人は日本の飲食店予約で特典 。アリババ信用スコアに応じ予約金免除(2019年2月19日、BUSINESS INSIDER JAPAN)
このように、信用スコアが社会生活にも大きな影響を与える可能性があります。
信用スコア算出の仕組み
信用スコアは、さまざまな情報をもとに算出されます。その背景にある技術が、「AI」と「ビッグデータ」です。
まず必要になるのが、スコア算出に必要なデータの収集です。金融機関やサービスの利用情報など、外部パートナーや信用機関との連携で幅広いデータの収集が行われます。将来的には、ソーシャルメディアの情報なども参考情報として使われるようになるかもしれません。
そして、それらの情報をもとにスコアリングが行われます。各社独自のアルゴリズムによりAIが判定します。AI技術も日々進展していますから、サービスの普及とともに、アルゴリズムの高度化が進むことが予想されます。
日本における信用スコアの導入
日本でも、信用スコア業界に進出を試みる企業が増えています。
その代表例が、みずほ銀行とスタートアップ企業J.Scoreが提供する「AIスコア」というサービスです。J.Scoreのサイトにアクセスし、チャット形式で生年月日や学歴、年収、家族情報という基本的な項目を答えていくだけでAIスコアがすぐに算出される仕組みです。本名や住所などは入力せずとも信用スコアを可視化できるので、信用スコアを身近に感じる上で大きな役割を果たしていきそうです。
AIスコアを活用したサービスも登場しています。たとえば、AIスコアを基準に算出されたランクに応じて、提携企業からさまざまな特典が受けられるサービスや、個人向け融資サービスも登場しています。
他にも、LINEやヤフーも信用スコアサービスへの参入を発表しています。今後は、日本国内でもさまざまな信用スコアサービスが登場することが予想されます。
信用スコアが普及することによる影響
海外だけでなく、日本でも普及の兆しが出ている信用スコア。では、信用スコアの利用によって、消費者やビジネスオーナーにどのような影響が出てくるのでしょうか。
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審査の手間が省ける
お金や不動産を借りるというときには、個人や企業の信用力調査を行うことがあります。信用スコアが普及すれば、その点数を参照できるので、借りる側も貸す側も手間やコストを削減することができます。ムーズなサービスの利用が可能になり、経済の活性化にもつながるかもしれません。 -
新しいビジネスの隆盛
信用スコアの基となるデータと相性が良いのが、インターネットを利用したサービスです。キャッシュレス決済やシェアリングエコノミーなどは、その利用履歴からデータを取得しやすい性質のサービスです。これらのサービスが信用スコアを導入すれば、スコアアップを兼ねてサービス利用者が増えると考えられます。 -
情報漏えいのリスクが大きくなる
スコアリングに使われる情報は、極めて個人的な内容です。万一これらに関するデータが漏れれば、これまで以上に社会生活に及ぼす影響が大きくなります。システムの普及とともに、セキュリティー対策も求められます。 -
新しい犯罪が誕生する
信用スコアを上げるために、悪質なサービスが生まれる可能性があります。点数アップのために不要なものを売りつけたり、有料で信用スコアを上げるサービスが登場したりするかもしれません。
信用スコアは、私たちにとって身近なものになろうとしています。海外では普及が進んでいますが、日本では個人情報の扱いやセキュリティー面のリスクなどの不安から、どのように普及が進むか未知数なところが大きいです。ただ、インターネットを利用したサービスは今後も増え続けることから、それらの情報をうまく活用できる信用スコアは無くてはならないものになるかもしれません。
いざ信用スコアの導入が求められたときに、メリットとデメリットを判断して的確な判断が下せるよう、信用スコアについての理解を深めていく必要があります。
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執筆は2019年6月19日時点の情報を参照しています。
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