2019年10月1日から消費税率が8%から10%に増税されます。また、同時に軽減税率制度が実施されます(2018年3月時点)。「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行する宅配新聞」は軽減税率の対象品目として、消費税は8%のまま据え置かれます。増税と軽減税率制度は、飲食店の経営に大きく影響を与えます。
今回は、軽減税率についてと飲食店に求められる対応について紹介します。
軽減税率の対象
まず、軽減税率の対象品目についてみていきましょう。
飲食料品
食品表示法が規定する食品のうち、人の飲んだり食べたりする食品と一定の一体資産が対象です。食品の中でも、下記は軽減税率の対象から除かれます。
- 外食、ケータリング
- 酒税法に規定されるアルコール類
一体資産とはおもちゃ付きのチョコレートなど、食品と一体となって売られているものを指します。ただし、一体資産のうち、税抜価額が1万円以下であって、食品の価額の占める割合が2/3以上の場合に限ります。たとえば、100,000円以上するコーヒーサーバーと1,000円のコーヒー豆を一緒に売る場合は、食品が占める割合が2/3以下となり、軽減税率の対象から外れます。
ケータリングは軽減税率の対象外ですが、出前は軽減税率の対象品目に入ります。
簡単にいうと、アルコール類を除いた、スーパーなどで日常的に購入する飲食料品、または自宅やオフィスに届けてもらう飲食料品が軽減税率の対象です。
宅配新聞
週2回発行する宅配新聞に限定されているため、以下の場合は軽減税率の対象から除かれます。
・店舗で販売している新聞
・電子新聞
など
簡単にいえば、週2回以上発行する紙媒体の新聞で、店舗や自宅に配られる物が軽減税率の対象です。
軽減税率の導入と消費税率アップによる変化
2019年10月1日からの軽減税率制度実施と消費税率アップにより、下記の2点変わります。
課税事業者は消費税の計算方法が変わる
納税義務のある課税事業者は売上税額と仕入税額の差額を預かった消費税として税務署へ支払っています。
売上税額:売り上げに付随する消費税
仕入税額:人件費を除いた支払いに付随する消費税
消費税改正前の売上税額と仕入税額は単純に税抜価格の8%ですが、増税後は次のように変わります。
売上税額:標準税率対象品目の売上税抜価格×10%+軽減税率対象品目の売上税抜価格×8%
仕入税額:標準税率対象品目のの支払い税抜価格×10%+軽減税率対象品目の支払い税抜価格×8%
取引金額を、増税後の標準税率と軽減税率に区分して、消費税の納税額を計算します。
軽減税率に対応した機器の導入・改修
お客様にそれぞれの消費税に対応した、請求書や領収書を発行する必要があります。対応していないシステムを用いる場合、取引金額を手書きで10%と8%に区分して発行し、お客様に渡さなければなりません。
たとえば、「店内で飲食する料理の提供」と「テイクアウト料理」の販売をひとつのお店で行っているとします。領収書を発行するとき、前者は外食として10%、後者のテイクアウト料理は8%に区分されます。
標準税率と軽減税率を区分する手間を減らすためには、消費税の改正に対応した機器の導入・改修を検討しましょう。
インボイス方式(適格請求書等保存方式)の実施
消費税改正の4年後にあたる2023年10月1日からインボイス方式(適格請求書等保存方式)が実施される予定です。
現行の「帳簿及び請求書等の保存」では、請求書ごとに適用税率や税額を記載することが求められていません。現在の全品目一律の消費税適用の場合、この方法でも問題はありませんでした。軽減税率の導入により、適切な仕入税額を計算するためには、請求書ごとに適用税率・税額が分かるインボイス方式を採用することで、不正や記載ミスを防げると考えられます。
参考:コラム≪適格請求書等保存方式の導入について≫(国税庁)
軽減税率の導入に備えて
税額計算の特例
売り上げまたは仕入れを、各税率ごとに区分することが困難な中小事業者(法人は前々事業年度、個人事業主は前々年における課税売上高が5,000 万円以下)には特例が適応されます。ただし、この特例はインボイス方式が導入される前の2023年9月30日までの期間限定のものなので、それまでにインボイス方式に対応できるように準備しておきましょう。
参考:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(国税庁消費税軽減税率制度対応室)
執筆は2018年3月28日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash