e-Taxをわかりやすく解説!開始時期や必要書類
インボイス制度や電子帳簿保存法など、税制が大きく変わっていくなかで利用する機会が増えてくることが見込まれるe-Tax。個人、法人を問わず、さまざまな税についての手続きが効率化できるこのシステムについて、概要やメリット、利用方法や対応する税金の種類などをわかりやすく紹介します。
e-Taxとは
e-Taxとは、国税庁が用意した、国税に関する各種の手続きをインターネットを使って電子的に行うシステムです。税務署へ赴くことなく申告や届出などができるほか、税金の納付も可能。対応する税務・会計ソフトを使用すれば、申告などに必要なデータの作成から提出までの一連の作業を電子的に進めることができます。
電子申告・納税システムの概要
e-Taxは、個人、法人を問わず、所得税や消費税、贈与税、印紙税、酒税といった国税に関する申告や法定調書の提出、届出や申請などの各種手続きをインターネット経由で行える国税庁のシステムです。
正式名称を「国税電子申告・納税システム」といい、平成16年(2004年)6月に全国で運用がスタート。取り扱う税金の種類や手続き内容、対応する端末などを拡大しながら年々アップデートがはかられ、利便性が高まっています。
税金の納付にも対応しており、事前に届出をしておいた預貯金口座からの振替によるダイレクト納付やインターネットバンキングのほか、ペイジー(Pay-easy)対応のATMを介しても行うことができます。
書類のやり取りに比べて対応が早いことなどから税理士事務所が利用するケースが多くみられていましたが、確定申告では、ここ数年は個人での利用割合が増えています。自宅などから納税者本人がe-Taxを利用して手続きを行った件数をみると、令和3年分では令和2年分の1.4倍(約122万人増加)という数字が発表されています。
利点とメリット
e-Taxの利点としては、まず、税務署などに出向くことなく自宅や事業所などから国税にまつわる申告や納税などの手続きが行えるということが挙げられます。
また、e-Taxに対応した税務・会計ソフトも市販されており、これらを利用することで会計処理や申告などのデータ作成から提出までの一連の作業を電子的に行えるため、省力化やペーパーレス化がはかれるといったメリットもあります。
そのほか、受付システムが稼動している時間であれば税務署の執務時間以外でも申告書などの提出ができ、納税のために金融機関の窓口に並ぶ必要もなくなるなど、時間的な制約を受けずに手続きが進められることもe-Taxを使う利点の一つだといえます。
さらに確定申告では、書類を窓口や郵送で提出する場合に求められる領収書や証明書類の添付が省略できるものが多いのもメリットです。ただし、e-Taxでの添付が必要ないだけで税務署から提出や提示を求められた際には応じる必要があるので、紛失したり処分したりしないよう注意してください。確定申告によって還付される税金がある場合には、窓口や郵送による手続きと比べて早く還付処理が受けられる点もメリットだといえるでしょう。通常だと1カ月から1カ月半かかるものが、2週間から3週間程度に短縮できます。
【参考ページ】
【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
【e-Tax】電子申告は全体の約6割!令和3年分の確定申告
e-Taxの利用方法
では、e-Taxを使うにはどのようにすればよいでしょうか。事前に必要な準備や手続きも含め、順を追って説明します。
利用条件と登録手続き
e-Taxのサービスは通常、火曜日から金曜日であれば24時間、月曜日、土曜日、日曜日、休祝日であれば8時30分から24時のあいだ利用可能です。所得税等の確定申告時期は土日祝日等を含み全日24時間利用できます。ただし、メンテナンス日やメンテナンス時間は利用できなくなるので、e-TaxのWEBサイトにある「利用可能時間カレンダー」で確認するようにしてください。
e-Taxを利用する場合は、おもにコンピューターまたはスマートフォンを端末として使用します。コンピューターを使用する場合はコンピューターにインストールして使うダウンロード型の「e-Taxソフト」やWEBブラウザをインターフェイスとする「e-Taxソフト(WEB版)」を使い、スマートフォンを使用する場合はスマートフォン向けの「e-Taxソフト(SP版)」を使います。「e-Taxソフト(SP版)」は一部のタブレット端末にも対応しています。コンピューターで利用する「e-Taxソフト」と比べるとスマートフォンやタブレットで利用する「e-Taxソフト(SP版)」は機能に制限があるので、事前に自身が求める手続きに対応しているかどうかを確認するようにしてください。
e-Taxを利用するための税務署への手続自体には費用は特にかかりませんが、付随費用として、プロバイダー契約料などの通信費用、ICカードリーダライタの取得費用などの電子証明書の利用に伴う費用、納税の場合はインターネットバンキングの利用手数料などが必要になります。
e-Taxを利用するにあたって、アカウントの登録時に必要となるのが利用者識別番号です。利用者識別番号を取得するためには、以下のいずれかの手続きをとらなくてはなりません。
利用者識別番号の取得方法(個人の場合)
方法1. WEBからマイナンバーカードを使ってアカウントを登録する
コンピューターを使う場合:「受付システム ログイン」画面からマイナンバーカードを読み取ります。読み取ると「マイナンバーカード方式の利用開始」画面に遷移するので、指示に従って必要な情報を入力してください。
スマートフォンを使う場合:「e-Taxソフト(SP版) ログイン」画面からマイナンバーカードを読み取ります。読み取ると「マイナンバーカード方式の利用開始」画面に遷移するので、指示に従って必要な情報を入力してください。
方法2. WEBから利用者識別番号を取得する
「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から開始届出書を作成、送信します。
方法3. マイナポータルの「もっとつながる」機能からe-Taxを利用する
デジタル庁のマイナポータルにある「もっとつながる」機能からe-Taxを利用するようにして利用者識別番号を取得することも可能です。利用者識別番号を持っていない場合は「利用者情報の登録」画面に遷移するので、画面に従って入力を進めると、マイナンバーカード方式の登録が完了します。
【参考ページ】マイナポータルとの連携
方法4. WEBからID・パスワード方式の届出を作成・送信する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からマイナンバーカードを使って、ID・パスワード方式の届出を作成し、送信します。
【参考ページ】「ID・パスワード方式について」
方法5. 税務署に行って、ID・パスワード方式の届出を作成・送信する
税務署に出向き、職員の対面による本人確認を経てID・パスワード方式の届出を作成し、送信します。
【参考ページ】「ID・パスワード方式について」
方法6. 書面で利用者識別番号を取得する
国税庁のWEBサイトにある「[手続名]電子申告・納税等開始(変更等)の届出」から用紙をダウンロードし、必要事項を記載して提出先税務署へ送付または持参して提出すると、後日郵送で利用者識別番号が通知されます。
方法7. 税理士に依頼し、利用者識別番号を取得する
関与税理士の方に開始届出書を代理送信してもらいます。
利用者識別番号の取得方法(法人の場合)
方法1. WEBから利用者識別番号を取得する
e-TaxのWEBサイトにある「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から開始届出書を作成、送信します。
方法2. 法人設立ワンストップサービスから利用者識別番号を取得する
デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」から法人代表者のマイナンバーカードを使って開始届出書を作成、送信します。
方法3. 書面で利用者識別番号を取得する
国税庁のWEBサイトにある「[手続名]電子申告・納税等開始(変更等)の届出」から用紙をダウンロードし、必要事項を記載して提出先税務署へ送付、または持参して提出します。
方法4. 税理士に依頼し、利用者識別番号を取得する
関与税理士に開始届出書を代理送信してもらいます。
必要な情報と書類
e-Taxを使って申告などのデータを送信する際には、そのデータについて利用者本人が作成し、改ざんされていないことを確認するために電子署名を行う必要があります。電子署名を行うためには、事前に電子証明書を取得しておかなくてはなりません。
e-Taxで使用できる電子証明書は、電子署名法の特定認証業務の認定を経て政府認証基盤(GPKI)のブリッジ認証局と相互認証を行っている認証局が作成した電子証明書等のうち、e-Taxで使用可能であることが確認されたものに限られます。
【参考ページ】「e-Taxで利用できる電子証明書」
なお、法人の場合は代表者のマイナンバーカードも電子証明書として利用できます。
電子証明書がICカードに組み込まれている場合には、公的個人認証サービスに対応したICカードリーダライタとICカードリーダライタを使用するためのデバイスドライバが別途必要になるので準備しておく必要があります。電子証明書が組み込まれたICカードがマイナンバーカードである場合には、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンをICカードリーダライタの代替として使用できます。
e-Taxの使い方 ステップガイド
e-Taxを使う流れとしては次のステップを踏みます。個人の場合も法人の場合も、基本的には同じです。
1. 利用者識別番号を取得する
先に紹介したいずれかの方法によって利用者識別番号を取得します。
2. 電子証明書を取得する
マイナンバーカードなど、e-Taxで使用可能な電子証明書を取得します。
3. 手続きを行うソフト、コーナーを選ぶ
国税庁が用意したWEB上のソフト、コーナーを選びます。対応している手続きや利用できる端末に違いがあるので注意してください。
4. 申告、申請データを作成し、送信する
選択された各ソフト、コーナーの画面に従い、申告、申請データを作成し、送信します。
5. 送信結果を確認する
送信後しばらくすると、e-Tax内の「メッセージボックス」に送信データの審査結果が受信通知として届くので確認します。
【参考ページ】【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
e-Taxでできることと対象税金
e-Taxを利用すると所得税の確定申告や消費税の確定申告など、8カテゴリーの税金について申告が可能です。また申告以外にも、所得税関係や相続税・贈与税関係、法人税関係など、税金に関するさまざまな申請や届出ができます。多くの場合、申請や届出に必要な書類もイメージデータによって添付できます。
申告できる税金の種類
e-Taxは、所得税、贈与税、法人税(連結納税関係手続を含む)、地方法人税(連結納税関係手続を含む)、消費税(地方消費税を含む)、復興特別法人税、酒税および間接諸税の申告、全税目の納税(電子納税証明書の手数料納付を含む)、国税関係法令に規定されている申請・届出等(電子納税証明書の請求及び発行を含む)の各種の手続きや電子納税を行う納税者および税理士業務を行う人が利用できます。
e-Taxを使って申告できる税金は以下のとおりです。スマートフォンが使えるケースが限られていたり、コンピューターを使う場合でも申告内容によって対応するインターフェイスに違いがあったりするので注意してください。
内容 | コンピューターの場合 | スマートフォンの場合 |
所得税確定申告等 | 確定申告書等作成コーナー、e-Taxソフト | 確定申告書等作成コーナー |
相続税申告 | e-Taxソフト | なし |
贈与税申告 | 確定申告書等作成コーナー | なし |
法人税確定申告等 | e-Taxソフト、CSVファイルチェックコーナー | なし |
消費税確定申告等 | 確定申告書等作成コーナー(個人のみ)、e-Taxソフト | なし |
復興特別法人税申告等 | e-Taxソフト | なし |
酒税納税申告 | e-Taxソフト | なし |
間接諸税申告 | e-Taxソフト | なし |
間接諸税申告の内訳は、印紙税納税申告、揮発油税納税申告、石油ガス税納税申告です。
e-Taxでは、上記の税金の申告のほかに、税金に関するさまざまな申請や届出も可能です。
申請・届出内容 | コンピューターの場合 | スマートフォンの場合 |
---|---|---|
所得税関係 | 確定申告書等作成コーナー(所得税の更正の請求のみ)、e-Taxソフト | なし |
源泉所得税関係 | e-Taxソフト(WEB版)、e-Taxソフト | e-Taxソフト(SP版) |
相続税・贈与税関係 | e-Taxソフト | なし |
法人税関係 | e-Taxソフト | なし |
消費税関係 | e-Taxソフト | なし |
復興特別法人税関係 | e-Taxソフト | なし |
間接諸税関係 | e-Taxソフト | なし |
酒税関係 | e-Taxソフト | なし |
納税証明書交付関係 | e-Taxソフト(WEB版)、e-Taxソフト | e-Taxソフト(SP版) |
納税関係 | e-Taxソフト(WEB版)、e-Taxソフト | e-Taxソフト(SP版) |
法定調書関係 | e-Taxソフト(WEB版)、e-Taxソフト | |
その他 | e-Taxソフト |
間接諸税関係の内訳は、印紙税、揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、たばこ税、石油石炭税、電源開発促進税、自動車重量税、国際観光旅客税です。
また、e-Taxソフトに対応していない国税関係の手続きについても、書面で作成した申請書や届出書などをイメージデータ(PDF形式)に変換することで、e-Taxで送信(提出)することが可能です。税務調査や滞納整理の際に調査・徴収事務担当者から提出を求められた書類についても、データ(PDF形式またはCSV形式)でe-Taxソフトに組み込んでe-Taxで送信(提出)することができます。
【参考ページ】【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
e-Taxに関するよくある質問
e-Taxとは、個人、法人を問わず、国税に関する申告や法定調書の提出、届出や申請などの各種手続きをインターネット経由で行える国税庁のシステムです。税金の納付にも対応しており、預貯金口座からの振替によるダイレクト納付やインターネットバンキングのほか、ペイジー対応のATMを介しても行うことができます。
e-Taxの主なメリットは、税務署に出向くことなく国税にまつわる申告や納税などの手続きが行えることです。受付システムが稼動している時間であれば税務署の執務時間以外でも申告書などの提出ができ、納税のために金融機関の窓口に並ぶ必要もなくなるなど、時間的な制約を受けないという利点があります。
e-Taxのアカウントを登録するためには、事前に利用者識別番号を取得しておかなくてはなりません。また、e-Taxを使って申告などのデータを送信する際には、そのデータについて利用者本人が作成し、改ざんされていないことを確認するために電子署名を行う必要があるので、事前に電子証明書を取得しておく必要もあります。
e-Taxによる口座振替として事前にダイレクト納付利用届出書を提出している場合は、登録してある預貯金口座からの口座引落しによって納付できます。その際、法定納期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて、利息分に相当する延滞税が自動的に科せられます。
申告期限内であれば、訂正後の申告データを送信することで何度でも対応できます。訂正したデータを送信した旨を税務署に連絡する必要はありません。申告期限経過後に誤りをみつけた場合は、「更正の請求」か「修正申告」の手続きで修正できます。e-Taxを使ったやり取りも可能ですが、税務署に尋ねるのが安心です。
本ページは情報提供を目的としており、掲載している情報は記事更新時点のものです。法律、雇用、税務、その他経営に関する最新情報に関しましては必ず専門家にご相談ください。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。