公開日:2023/11/28
純利益とは?計算方法や純利益率の目安、営業利益との違い
純利益とは、企業が1年間に得た最終的な利益をいいます。純利益は、売上高から売上原価や販売費・管理費などの経費を引いた経常利益額から、税金や特別損益などを差し引いた金額です。純利益は、企業の収益性や経営状況を判断する重要な指標です。本記事では、純利益の意味や計算方法、純利益と他の利益との違いをわかりやすく解説します。
純利益とは?
純利益とは、企業が1年間に得た最終的な利益をいいます。純利益は、次のような式で計算できます。
純利益=すべての収入−すべての支出
上記の計算式にある収入・支出には、次のようなものが含まれます。
【収入】
- 売上高(企業が本業で得た代金の総額)
- 営業外利益(受取利息・受取配当金など)
- 特別利益(有価証券や不動産の売却など、本業以外からの利益)
【支出】
上記をすべて計算に入れたうえで、計算できる最終的な利益が純利益です。
さらに、後述する「経常利益」を計算に用いると、次のように計算できます。
純利益=経常利益 ー (特別損益 + 税金)
特別損益とは、株式売買による損益といったように、臨時的なものを指します。
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純利益の計算方法
純利益を計算する方法を具体例で見てみましょう。以下は、A企業の損益計算書の内容です。
科目 | 金額(円) |
---|---|
売上高 | 100,000 |
売上原価 | 50,000 |
売上総利益 | 50,000 |
販売費・管理費 | 30,000 |
営業利益 | 20,000 |
営業外収益 | 5,000 |
営業外費用 | 3,000 |
経常利益 | 22,000 |
特別利益 | 2,000 |
特別損失 | 1,000 |
税引前当期純利益 | 23,000 |
法人税等調整額 | -1,000 |
法人税等 | -8,000 |
当期純利益 | 14,000 |
この企業の当期純利益は、税引前当期純利益から法人税等を差し引いた14,000円となります。また、経常利益から特別損益と税金を差し引いても同じ結果になります。
純利益率とは?
純利益率とは、売上高に対する純利益の割合を示す指標です。純利益率は、次の計算式で求められます。
純利益率(%)=純利益/売上高 × 100
純利益率は、企業の収益性を測る指標として利用します。純利益率が高いほど、売上高に対して多くの利益が残っており、経営は黒字です。反対に、純利益率が低いほど、売上高に対して少ない利益しか残らないことを意味しています。場合によっては、利益が残らず赤字になるケースも否定できません。
たとえば、A社とB社が同じ業界で同じ規模の売上高を計上していると仮定します。A社の純利益率が10%で、B社の純利益率が5%だった場合、A社の方がB社よりも収益性が高いと言えます。
収益性とは、企業が自社の力で稼ぐ能力を数字に示したものです。収益性が高いほど少ない資産で大きな利益を得られます。稼ぐ力だけではなく、成長力の評価につながる場合もあります。
純利益率の目安と計算方法
純利益率の目安は、業界や規模によって異なります。一般的には、5%以上であれば良好な状態です。10%以上であれば優秀な企業と判断できます。しかし、これらはあくまで目安であり、絶対的な基準ではありません。
純利益率を計算する方法を、具体例で見てみましょう。先に作成した「純利益の計算方法」の損益計算書を利用して計算します。
A企業の純利益率は、次の計算式で求められます。
純利益率 (%) = 14,000/100,000 × 100 = 14
A企業の場合、純利益率は14%です。10%以上が優秀企業と判断できますから、A企業は優秀な水準といえます。
当期純利益率の業種別の目安は次のとおりです。
業種 | 平均 |
---|---|
サービス業 | 4% |
小売業 | 2%~3% |
卸売業 | 3%~4% |
不動産業 | 7%~8% |
銀行業 | 10%~15% |
銀行業の平均が高い理由は、小売業や卸売業と比較した場合、売上原価に分類される仕入がないことが挙げられます。小売業や卸売業は、仕入れている資材や材料が高騰すれば、粗利益の減少につながります。不動産業は、土地や建物を購入し売却することで利益を得ています。仕入れた代金にどの程度上乗せして売却できるかにより、最終の利益が変わります。利益が変わると利益率も変わります。利益率を改善するためには「売上を伸ばすか、仕入原価を抑えるか」がポイントになります。
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純利益と営業利益、その他の利益との違い
純利益と似た言葉に、営業利益や経常利益、当期純利益などがあります。これらはどう違うのでしょうか。ここでは、これらの言葉の意味や違いを解説します。
営業利益とは、企業が本業で得た利益を示します。営業利益は、売上高から売上原価や販売費・管理費を引いた金額です。営業利益は、企業の本業の収益性や競争力を測る指標として活用します。よく似ているものに「事業利益」があります。事業利益は、本業で得た利益に受取利息や配当金をはじめとする金融資産を加えたものです。
純利益と営業利益の違いは、営業外収支や特別損益、税金が含まれるかどうかです。純利益は、これらをすべて差し引いた最終的な利益をあらわします。営業利益は、営業外収支や特別損益、税金を差し引く前の本業のみで得た利益です。
税金を差し引く直前の利益を「税引前当期純利益」と言います。借入れがない企業や臨時収入がない企業は、経常利益と税引前当期純利益が同額になることも珍しくありません。
税引前当期純利益が赤字の場合は、法人税を納付することで、赤字幅が広がります。税引前当期純利益が黒字の場合でも、法人税納付後に赤字になるケースもあるでしょう。法人税には最低限納付しなければならない「均等割」があります。均等割を納付後、税引前当期純利益が黒字でも最終利益が黒字になるとは限りません。
ここでは、利益額を把握する際に基本となる営業利益と純利益について具体的な例を挙げて紹介します。
A企業の損益計算書の内訳を利用した場合の営業利益・純利益について計算してみましょう。営業利益を求める公式は次のようになります。
営業利益 = 売上高 ー 売上原価 ー 販売費・管理費
この公式をもとに計算した場合、営業利益は20,000円です。
20,000(営業利益)= 100,000 ー 50,000 ー 30,000
また、純利益を求める公式は次のようになります。
純利益 = 営業利益 + 営業外収入 ー 営業外支出 ー 特別損失ー 税金
この公式をもとに計算した場合、純利益は13,000円です。
13,000(純利益) = 20,000 + 5,000 ー 3,000 ー 1,000 ー 13,000
上記の結果より、純利益よりも営業利益の方が大きいことがわかります。
次に、経常利益との違いはどこにあるのでしょうか。経常利益とは、企業が本業と関連する業務で得た利益です。経常利益は、営業利益に営業外収益と営業外費用を加えたり引いたりした金額で計算できます。経常利益は、企業の通常業務の収益性や安定性を測る指標です。
純利益と経常利益の違いは、特別損益や税金などが含まれるかどうかです。経常利益は、特別損益や税金を差し引く前の本業と関連する業務で得た利益をあらわします。
経常利益を求める公式は次のとおりです。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収入 ー 営業外支出
たとえば、A企業の経常利益は次のように計算できます。
22,000(経常利益) = 20,000 + 5,000 ー 22,000
この場合、先に求めた計算式より純利益は13,000円で、経常利益は22,000円です。純利益よりも経常利益の方が大きいことがわかります。
次に、当期純利益との違いはどこにあるのでしょうか。当期純利益とは、企業が1会計期間(通常は1年間)に得た最終的な利益です。当期純利益は、純利益と同じ意味で使用されています。厳密に言えば、概念がことなり当期純利益は会計上、純利益は経済学上での取り扱いです。
会計上の概念は、会計基準や法令に従って計算し経済学上の概念は、実際の経済活動に基づいて計算します。
たとえば、ある企業が株式を売却して特別利益を得た場合、会計上は当期純利益に含まれます。しかし、経済学上では純利益に含まれません。株式売却は本業以外からの臨時的な収入です。実際の経済活動に、株式売却は影響しないと判断します。
最後に、売上総利益との違いはどこにあるのでしょうか。売上総利益とは、企業が商品やサービスを販売することで得た原始的な利益です。売上総利益は、下記の公式で計算できます。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価(製造原価)
たとえば、原価1,000円の商品を1,500円で100個販売した場合、売上総利益は次のように計算できます。
50,000(売上総利益) = 150,000 - 100,000
売上総利益は50,00円であり、ここには販管費といわれる会社の経費が控除されていません。一般的に粗利益といわれる金額が売上総利益です。
企業が最も重視すべき利益は?
企業が最も重要視すべき利益は、目的により変わります。利益には種類があり、意味や内容がそれぞれ違うためです。そこで次の4つを例に比較しましょう。
売上総利益:売上高から売上原価を控除した残りの金額。商品やサービスの付加価値を示す。
営業利益:売上総利益から販売費や管理費を控除した残りの金額。本業の収益力を示す。
経常利益:営業利益に営業外収益や営業外費用を加減した残りの金額。事業全体の収益力を示す。
純利益:経常利益から法人税や消費税を控除した残りの金額。会社の純資産に加算する。
たとえば、金融機関から融資を受ける場合は経常利益や営業利益を重視します。株主から資金調達する場合は、営業利益と純利益を重視しするでしょう。金融機関は、営業利益と支払利息の比率を重視し、比率が高いほど評価が高く融資が受けやすくなります。
純利益は、株主にとって配当金に直結する基準です。純利益から配当金を支払った残りの金額が多いほど、内部留保が多いと判断し企業の体力があることを示します。そのため、株主からは評価が高くなり出資が期待できます。
新たな取引先と取引を開始する場合、売上がきちんと回収できるか、取引が継続できるかがポイントです。会社の信頼性や安定性を判断するため、営業利益を重視します。売上高が少ないことよりも、営業利益が少ないことの方がコスト管理ができていないと判断されます。
日本企業の純利益ランキング
純利益は会社の純資産に加算され、会社の財務体質や成長性を示す指標です。純利益が多いほど、会社は強くて優秀と評価できます。ここでは、2022年度(2021年4月から2022年3月)の決算に基づく日本企業の純利益ランキングを紹介します。
順位 | 企業名 | 純利益(億円) |
---|---|---|
1 | トヨタ自動車 | 24,513 |
2 | NTT | 12,131 |
3 | 三菱商事 | 11,806 |
4 | 三井物産 | 11,306 |
5 | 三菱UFJFG | 11,164 |
6 | 日本郵船 | 10,125 |
7 | ソニーグループ | 9,371 |
8 | 三井住友FG | 8,058 |
9 | 伊藤忠商事 | 8,005 |
10 | 商船三井 | 7,960 |
ランキングからもわかるように、日本企業の純利益は自動車や通信業が上位を占めています。三菱商事や三井物産をはじめとする総合商社は、資材や資源が高騰した影響を受け、提供する側という位置づけから、利益が増加しています。トヨタ自動車も資材の高騰により影響は受けたものの、それにも増して売上高を確保できたことが、純利益2兆円に到達できた要因でしょう。
純利益に関するよくある質問
純利益とは、企業が1年間に得た最終的な利益のことです。純利益は、次の公式で求められます。
純利益 = 営業利益 + 営業外収入 ー 営業外支出 ー 特別損失ー 税金
純利益は、企業がすべての支払いを済ませたあとに残ったお金です。純利益は、株主への配当や内部留保に使われます。内部留保とは、企業が自己資本として蓄積するお金です。内部留保は、将来的な事業拡大や設備投資などに使われます。
純利益とは、数種類ある利益のなかの一つです。経常利益に特別利益を足して特別損失と税金(法人税等)を控除したものです。特別利益とは、本業以外の臨時的な収入です。たとえば、有価証券や不動産の売却益があります。特別損失とは、特別利益とは逆で臨時的な支出です。たとえば、有価証券や不動産の売却損があります。法人税等とは、国や地方自治体に支払う税金です。純利益は、最終的に残った「もうけ」を示しています。
純利益は、次の公式で計算できます。
純利益 = 経常利益 + 特別利益 ー 特別損失 ー 法人税等
上記の計算式にある経常利益は下記の公式で求められます。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収入 ー 営業外支出
上記の計算式にある営業利益は下記の公式で求められます。
営業利益 = 売上総利益 ー 販売費・管理費
上記の計算式にある売上総利益は下記の公式で求められます。
売上総利益 = 売上高 ー 売上原価