ビジネス用語集

前受収益とは?前受金との違い、負債の理由と仕訳例

公開日:2023/11/29

取引先や関係先と継続的な付き合いをしていく中で、代金を前受けすることもあります。代金を前受けした際の会計処理では、前受収益の勘定科目を使用します。しかし、前受金や未収収益など、名前が似ている勘定科目もあり、前受収益との違いに迷うこともあります。また、消費税の課税事業者の場合は、前受収益の消費税の取り扱いについても注意が必要です。ここでは、前受収益の内容や前受金との違い、仕訳例などについて解説します。

契約負債の一種である前受収益とは?

前受収益とは、得意先などに継続して提供をしているサービスに対して対価を受け取った場合、その受取額のうち、まだサービスの提供をしていない部分を表す勘定科目です。前受収益について「企業会計原則」や「中小企業の会計に関する基本要領」では、つぎのように記載されています。

・企業会計原則注解の注5:「一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価」

・中小企業の会計に関する基本要領:「決算期末においていまだ提供していないサービスに対して受け取った対価」

実は、会計上、収入にできるタイミングは原則、モノの引き受けやサービスの提供が完了した時点です。お金のやり取りがあったとしても、まだサービスの提供が終わっていない時点では、代金の受け取りを収入(売上)にすることができません。

そのため、収入科目ではなく、前受収益勘定を使って会計処理を行います。代金を受け取ることで、今後サービスの提供などを行う義務を負うことから、前受収益は契約債務の一種といえます。

前受収益で処理する代金の受け取りなどの例として、以下のようなものがあります。\

・未経過の受取利息
・前受けしている未経過の手数料
・前受けしている未経過の年間保険料
・前受けしている未経過の家賃収入や地代収入
・機械やソフトウェアなど受取リース料で前受けしているもの
・年払いを受けている未経過の会費 

【参考ページ】
企業会計原則
中小企業の会計に関する基本要領

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前受収益と前受金の違い

前受収益と前受金の違いは、継続したサービスに対する代金の前受けであるかどうかです。継続したサービスに対する代金の前受けの場合は「前受収益」、そうでない場合は「前受金」を使います。

例えば、受取家賃や保険料、リース料などは、その時一度限りではなく、継続してサービスの提供や受取りが発生します。そのため、これらに対する代金の前受けは「前受収益」科目を使って会計処理します。一方、モノを販売した場合、例えば、パソコンを販売した場合などは、モノの提供はその一度だけで継続性はありません。継続性のないものに対する代金の前受けは「前受金」科目を使って会計処理します。前受金の例として、商品や固定資産などのモノの販売や、修繕費や宿泊代などのサービスの提供に対する前受けが挙げられます。

前受収益とその他の勘定科目の違い

前受収益とよく似た名前の勘定科目として、他に長期前受収益と未収収益があります。名前は似ていますが、前受収益と長期前受収益や未収収益には明確な違いがあります。

それぞれの勘定科目との違いは、以下のとおりです。

前受収益と長期前受収益の違い

前受収益と長期前受収益の違いは、代金を前受けしている期間の長さです。継続するサービスへの前受けのうち、決算日から1年以内に収入になる部分が「前受収益」、1年を超えて収入になる部分が「長期前受収益」になります。

前受収益は、いずれ収入(売上)になる勘定科目です。売上は利益に影響を与えるものであるため、投資家や銀行などの利害関係者にとって、いつ前受収益が売上になるのかは重要な関心事です。

そこで、決算日から1年を超えるかどうかにより「前受収益」と「長期前受収益」に分けて財務諸表(貸借対照表)に表示します。前受収益は「流動負債」区分に、長期前受収益は「固定負債」区分に表示されます。資産や負債は、大きく流動区分と固定区分に分けて財務諸表に表示することがルールになっています。

流動と固定を分けるルールのひとつに、1年基準(ワン・イヤー・ルール)があります。これは、決算日から1年以内に決済されるものは流動区分、1年を超えるものは固定区分とするものです。前受収益は、1年基準(ワン・イヤー・ルール)が採用されます。

前受収益と長期前受収益を分ける際の基準日は、代金の受取日ではありません。あくまで決算日です。代金の受取でも、前受収益と長期前受収益に分けて会計処理する必要があります。

例えば、3月決算の会社で、1月に2年分の受取家賃240万円(月10万円)を前受けしたとします。この場合、当期に受け取った240万円は、当期末決算で、次のように処理されます。

当年度  1月~3月分:当期の受取家賃(収入) 30万円
翌年度  4月~3月分:前受収益       120万円
翌々年度4月~12月分:長期前受収益     90万円
合計:                   240万円

受け取った家賃は、3つに分けて会計処理することになります。

【参考ページ】1年基準(ワン・イヤー・ルール)

前受収益と未収収益の違い

前受収益と未収収益のどちらも、得意先などに継続して提供をしているサービスに対する勘定科目という点では違いはありません。しかし前受収益と未収収益には大きな違いがあります。未収収益は、得意先などに継続して提供をしているサービスをすでに提供しているが、いまだ代金が未回収の状態を表す勘定科目です。

つまり、前受収益と未収収益との違いは、サービスの提供と代金の受取りの有無(時期)による違いです。前受収益は、代金の受取りはありますが、サービスをまだ提供していません。一方、未収収益は、サービスの提供はすでに行っていますが、代金をまだ受取っていません。それぞれをまとめると、下記のようになります。

勘定科目 サービスの提供 代金の受取り
前受収益
未収収益

上記のように、前受収益と未収収益では、サービスの提供と代金の受取りの時期が逆になります。

前受収益が負債の理由

前受収益は「流動負債」区分に、長期前受収益は「固定負債」区分に該当します。前受収益、長期前受収益のどちらも負債の区分です。前受収益は後に収入になる勘定科目なのに、なぜ負債なのでしょうか。

そもそも負債とは、将来的に他社に対して引き渡す義務のある金銭や経済的資源のことをいいます。前受収益は、先に代金を受け取って後でサービスの提供を行う、いわば「義務」と同じ意味合いを持つものです。

義務とは、法律や道徳などによって定められている、行わなくてはならない行為です。つまり、将来会社が負担しなければならない負債や債務です。前受収益は現金の前受けだけでなく、義務という点で、負債の意味を持つ勘定科目なのです。

前受収益における消費税の取り扱い

前受収益における消費税の取り扱いは原則、会計処理と同様です。収入になる時期に、消費税の課税売上になります。

そもそも、消費税の課税仕入れになる時期は、モノの引き渡しやサービスの提供が完了した時点です。つまり、前受収益の時点では、モノの引き渡しやサービスの提供が完了していないため、消費税の課税売上にはなりません。

例えば、3月に代金の前受けがあり、サービスの提供が完了したのが4月である場合について、消費税の取り扱いを見てみましょう。

3月の代金前受け時(前受収益計上時)には、現金などのやり取りはありますが、サービスの提供が完了していないため、消費税の課税売上にはなりません。

4月のサービスの提供が完了した時には、現金などのやり取りはありませんが、サービスの提供が完了しているため、消費税の課税売上となります。まとめると、以下のようになります。

時期 会計処理 消費税
代金前受け時 前受収益 関係なし
サービス提供完了時 売上など収入科目 課税売上

消費税の税抜処理を行っている場合、前受収益は消費税部分を分けないで、消費税込みの金額で計上する必要があります。

【参考ページ】No.6165 前受金や前払金などがあるとき

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前受収益に関するよくある質問

  • 前受収益とは何ですか?

    前受収益とは、得意先などに継続して提供をしているサービスに対して受け取った代金のうち、まだサービスの提供をしていない部分を表す勘定科目です。

    会計上、収入(売上)にできるタイミングは原則、モノの引き渡しやサービスの提供が完了した時点です。お金のやり取りがあったとしても、まだサービスの提供が終わっていない時点では、代金の受取りを収入(売上)にすることができません。

    そのため、収入科目ではなく、前受収益勘定を使って会計処理を行います。前受収益は、流動負債に属します。

  • 前受収益と前受金の違いは何ですか?

    前受収益と前受金の違いは、継続したサービスに対する代金の前受けかどうかです。継続したサービスに対する代金の前受けの場合は「前受収益」、そうでない場合は「前受金」を使います。

    例えば、受取家賃や保険料、リース料などは、その時一度限りではなく、継続してサービスの提供や受取りが発生するため、前受収益になります。一方、固定資産などのモノの販売や宿泊代などのサービスの提供など、継続性のないものに対する代金の前受けが、前受金です。

  • 前受収益と未収収益の違いは何ですか?

    前受収益と未収収益の違いは、サービスの提供と代金の受取りが行われる時期にあります。前受収益は、代金の受取りはありますが、まだサービスが提供されていない状態です。一方、未収収益は、サービスをすでに提供していますが、代金をまだ受取っていない状態です。つまり、前受収益と未収収益では、サービスの提供と代金の受取りの時期が逆になります。なお、どちらも得意先などに継続して提供をしているサービスに対する勘定科目です。

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