追徴課税とは?税率や計算シミュレーション、払えない場合の対応方法を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

事業主であれば、「追徴課税」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。「罰金のようなイメージはあるけど、詳しいことはよくわからない」という人もいるのではないでしょうか。事業に大きな影響を及ぼすためこともあるため、今回は、個人事業主や中小企業の経営者が知っておきたい追徴課税の知識について、わかりやすく解説します。

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目次


追徴課税とは

税金の過少申告、無申告、納付遅延などが判明した場合に課される税金を追徴課税といいます。本来納付すべきだった税額はもちろんのこと、さらに「納付が遅れた」「悪質な所得隠しがあった」などの事実を踏まえ、行政的制裁として10%〜40%の金額を上乗せした徴収額が決定されます。この「納付が漏れていた税金」と「ペナルティーとして払う附帯税」が追徴課税です。

追徴課税の理由によっては納付額が大きく膨らむこともあり、経営へのコスト負担に影響大です。もし追徴課税を受けると、対応に追われて事業が滞る可能性や、納付できない場合には財産が差し押さえられる可能性もあります。こうした事態を避けるためにも、税務手続きは正しく行いましょう。

追徴課税が発生する主な理由

追徴課税が発生するのは、次のような状況が税務調査で判明した場合です。

  • 税額の申告に漏れがあった
  • 税額を実際よりも少なく申告していた
  • 期限内に申告・納税しなかった

適切なタイミングで正確に確定申告と納税を行えば、追徴課税は発生しません。

追徴課税の対象になり得る事業者 

確定申告内容の正確性を税務署から疑われた場合、税務調査が実施されます。調査の結果、故意に不正な申告をしたケースのみならず、誤って実際より少ない税額を申告したと判明したケースも追徴課税の対象です。

税務調査の対象は法人・個人を問わず、中小企業や個人事業主も対象となることがあります。「前年と比べて経費が大幅にアップした」「申告した所得が同業者と比べて明らかに少ない」などのケースでは、税務調査が入る可能性が高まります。一般的に、過去に不正の多かった業種・景気の良い業種には税務署から厳しい目が向けられる傾向があり、IT関連業、貸金業、飲食業、美容業などが税務調査の対象になりやすいといわれています。

追徴課税の種類と計算方法

追徴課税のペナルティーが発生しないよう注意すると同時に、万が一に備えて追徴課税の詳細を理解しておくことも大切です。追徴課税の附帯税は、ケースごとに次の5種類に分類されます。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税
  • 延滞税

以下、それぞれの意味と算出方法を解説します。

過少申告加算税

申告は期限内に行ったが、納付するべき金額が少なかった場合に課されるのが「過少申告加算税」です。金額は、新たに収めることになった税金の10%となります。ただし、新たな納付額が、もともとの申告納税額または「50万円」のどちらか多いほうを超えている場合、オーバーした部分に関しては15%となります。

具体例で考えましょう。たとえば、「本来の申告額が200万円だった」場合とします。

もし30万円を申告していた場合、

・(1)新たに払う金額=170万円
・(2)過少申告加算税=50万円×10%=5万円
・(3)過少申告加算税(超過分)=120万円×15%=18万円

(1)+(2)+(3) = 合計193万円

が支払額となります。

また、160万円を申告していた場合、

・(1)新たに払う金額=40万円
・(2)過少申告加算税=40万円×10%=4万円

(1)+(2) = 合計44万円

が支払額となります。

なお、税務調査を受ける前に自分から修正申告をした場合は、過少申告加算税がかからない可能性が高くなります。ミスに気づいたら、できるだけ早く修正申告を行いましょう。

参考:No.2026 確定申告を間違えたとき(国税庁)

無申告加算税

簡単にいえば、期限内に申告をしなかった場合に課されるものです。金額は、新たに収めることになった税金の15%となります。また、50万円を超えかつ300万円以下の部分については20%と多くなります。

たとえば、110万円の申告漏れがあった場合、

・払うべき税金=110万円
・無申告加算税①=50万円×15%=7万5,000円
・無申告加算税②(超過分)=60万円×20%=12万円
・合計 129万5,000円

を払う必要があります。

税務調査を受ける前に、自ら期限後申告をした場合は、5%に変わります。

なお、以下の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税はかかりませんので、参考にしてください。

1. その期限後申告が、法定申告期限から1月以内に自主的に行われていること。
2. 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。

なお、一定の場合とは、次の(1)および(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1) その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。
(2) その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内に申告する意思があったことが認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

引用:No.2024 確定申告を忘れたとき(国税庁)

要するに、「速やかに期限後申告をしている」「税額を期限内に納付している」「過去にペナルティーを受けていない」ということです。期限後申告であっても、まったく対応しないよりは負担が軽減されるため、気づいた時点で速やかに行いましょう。

不納付加算税

これは、源泉徴収税に関わるものです。事業者は従業員の給与から源泉徴収税を天引きし、給与を払った翌月の10日までに納付するのがルールです。この期限までに納付できないと、不納付加算税が課せられます。金額は、納付すべき額の10%となります。税務署からの通知前に納付すれば5%になるため、できるだけ速やかに対応しましょう。なお、不納付加算税が5千円未満と少額の場合は対象外となります。

重加算税

悪質な不正を行った場合に課されるもので、追徴課税の中でもっとも内容が重いのが重加算税です。過少申告や不納付に加え、二重帳簿や必要書類の隠匿、虚偽記載や改ざんなどが行われていた場合に適用されます。

加算分の税率も高くなり、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%となります。当たり前ですが、不正事実と見なされる行為は絶対に行わないようにしましょう。

延滞税

延滞税とは、納税が期限日より遅れた場合に発生する追徴課税です。利息のように、納税期日の翌日から実際の納付日までの日数で延滞税の金額が決まります。延滞税の税率は、未納期間の長さや時期により異なります。

未納期間が期日の翌日〜2カ月までの場合、延滞税は年7.3%の税率が原則です。ただし年7.3%か、「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低いパーセンテージが適用されるルールであるため、期間により以下の税額となります。

  • 2022年1月1日〜2024年12月31日:年2.4%
  • 2021年1月1日〜12月31日:年2.5%

期日から2カ月を超える未納の場合、原則として年14.6%の延滞税がかかります。こちらは実際には年14.6%か、「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほうの税率が適用されるため、期間により税率は以下の通りです。

  • 2022年1月1日〜2024年12月31日:年8.7%
  • 2021年1月1日〜12月31日:年8.8%

延滞税は期限内に納税すれば回避できる追徴課税なので、納付スケジュールの管理を怠らないようにしましょう。

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

追加徴税で以上の5種類の附帯税が発生する要件は、次のようにまとめられます。

追徴課税の種類 課税の要件
過少申告加算税 期日までに申告したが、申告納税額が過少だった場合
無申告加算税 期日までに申告をしなかった場合
不納付加算税 源泉徴収税を期日までに納付しなかった場合
重加算税 申告において悪質な不正を行った場合
延滞税 期日までに納税がなかった場合

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追徴課税の対象期間

追徴課税の時効は、税の申告期限の翌日から「5年」が原則です。領収書や帳簿などを5年間保存することが求められるのはこのためで、5年より前の申告漏れなどに対しては追徴課税はなされません。とはいえ、重篤な不正行為が発覚した場合は5年を超えていても追徴課税が発生することがあります。

追徴課税の納付に関してよくある質問

税務署から追徴課税の通知が来たときに具体的にどうすればいいか、よくある疑問から採るべき行動を考えてみましょう。

いつまでに納付すればいいの?

追徴課税の通知が来たら、すぐに納税することが求められます。一括払いが基本で、e-Tax(電子納税)による納付も可能です。追徴課税分を納付せずにいると、滞納処分による財産の差し押さえなどのリスクがあるため放置は厳禁です。

分割納付はできる?

税務調査は数年分を一気に調べるため、追徴課税が思いがけない金額になることもあります。一括納付が難しいときは必ず税務署に相談しましょう。

納付の意思があれば、1年の納付猶予と分割納付を検討してもらうことも可能です。猶予期間中は延滞税の免除(全額または一部)も適用されます。この猶予制度の利用は、追徴課税分の一括納付により事業継続や生活が困難になる場合などが該当し、他の国税の滞納がないことなどが条件です。

参考:
第3章 第1節 職権による換価の猶予の要件等(国税庁)
国税を期限内に納付できないときは、どうしたら良いですか?(財務省)

払えない場合はどうすればいいの?

1年の猶予期間中に分納であっても追徴課税分を納付できない場合、その理由が認められれば猶予期間の延長が可能です。最初の猶予期間と合わせて最長2年の猶予期間内に追徴課税額を納付することになります。

参考:No.9206 国税を期限内に納付できないとき(国税庁)

追徴課税の見直しを求めることはできる?

追徴課税にどうしても納得がいかない場合は、不服の申し立てができます。具体的には、税務所長などに宛てて「再調査の請求書」を提出し、課税の撤回や変更を求めるものです。それでも解決しない場合は、最終的な手段として「訴訟」があります。追徴課税に不服がある場合は自分で納付する・しないの判断をせず、まずは税理士に相談するのがおすすめです。

参考:No.7200 税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続(国税庁)

追徴課税の会計処理

追徴課税の納付を行った場合に経理上はどのように処理するか、勘定科目や記帳方法を理解しておきましょう。

勘定科目と仕訳の例

法人が追徴課税の附帯税を帳簿に記載する際は「租税公課」の勘定科目で仕訳し、摘要欄に附帯税の種類(過少申告加算税や延滞税など)を記載します。税務上の損金としては処理できないので、法人税の所定の書式で損金不算入の調整も忘れずに行いましょう。

一例として、法人が追徴課税を受け、普通預金から延滞税30,000円を納付した場合の処理方法は次の通りです。

借方 金額 貸方 金額 摘要
租税公課 30,000円 普通預金 30,000円 法人税の延滞税

一方、個人事業主が追徴課税の附帯税を事業用の資金から支出して会計処理する際は、「事業主貸」の勘定科目で仕訳します。必要経費として処理することはできません。

たとえば、個人事業主が追徴課税を受け、所得税の延滞税5,000円を事業資金口座から納付した際は次のように処理します。

借方 金額 貸方 金額 摘要
事業主貸 5,000円 普通預金 5,000円 所得税の延滞税

追徴課税を受けないためにできること

追徴課税はビジネスの経済的損失となり、会社や事業主の社会的信頼を低下させることにもつながりかねません。追徴課税を回避するために、次の五つのポイントに注意しましょう。

1. 無申告や不正申告は行わない

確定申告をしない、または不正な数字を申告するといった行動は、最終的に追徴課税としてビジネスにマイナスをもたらします。追徴課税を受けないために最も大切なことは、正確な確定申告を心がけることです。

2. 納税スケジュールを管理する

確定申告の期間は、法人は決算日の翌日から2カ月以内、個人は原則として毎年2月16日~3月15日です。その時期までに確定申告に必要な書類やデータをしっかり準備しておくことで、スムーズに間違いなく申告でき、ミスによる過少申告加算税などを避けることができます。

また、税の納付期限までに必要な資金を用意しておくなど、納税スケジュールを適切に管理することは延滞税を含む追徴課税の回避につながります。

3. 会計ソフトを利用してミスを防ぐ

毎日の正確な経理業務の遂行は、ミスによる追徴課税を避けるための第一歩です。手入力主体の帳簿や紙ベースでの領収書・請求書の管理はミスを誘発しやすいため、デジタルに移行することで入力の間違いやデータの紛失を防止しましょう。決済システムと連携できる会計ソフトを使えば、売り上げの数字や勘定科目の間違いが減って追徴課税のリスクを低減できるうえ、業務効率化にもプラスです。

4. 請求書はすぐに売上計上する

日々の売上管理も、経理業務の正確さをアップさせて追徴課税を避けるために重要なポイントです。発行した請求書の売り上げをこまめに計上すれば、「入金があったがどの請求分かわからない」といったトラブルや、確定申告の際に準備不足によるミスも避けられます。請求書の発行をデジタル化し、請求額が売り上げ台帳に自動的に入力されるシステムなども利用してみましょう。

5. 入金後すぐに仕訳処理をする

経理業務を溜め込まず、売り上げの入金があったらその日のうちに帳簿で仕訳処理をしてしまうことが記帳漏れを防ぐコツです。帳簿に未記載の入金を放置しているうちに勘定科目がわからなくなれば、誤った課税所得額の算出から追徴課税につながるリスクがあります。

業務効率が理由でタイムリーな仕訳処理が追いつかないなら、経理や決済の数字をデジタルで一元管理できるシステムの導入が追徴課税を避ける一助となるでしょう。

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参考:
請求書払いのメリット・デメリットとは。Square 請求書の作成・支払方法
クラウド請求書でできること

追徴課税は、個人事業主、企業経営者であれば必ず押さえておきたい知識です。もし課されることになればビジネスに支障が出る可能性もありますが、申告を正しく行っていれば必要以上に恐れるものではありません。追徴課税が発生しないようにするためにも、常に期限内の正確な申告・納税を心がけましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2019年7月25日時点の情報を参照しています。2024年2月5日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash