※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
個人事業主として活動していく上で、1年間の税務手続きはどのように進めていけばよいのでしょうか。確定申告の期間や、税金・社会保険料の納付時期、その他の手続きのスケジュールを知っておくことで、余裕を持って準備でき、スムーズに事業を営めます。
本記事では個人事業主を対象に、確定申告とは何なのかからはじめ、個人事業主が収めるお金、年度末の確定申告から翌年年度末の確定申告までの1年間に行う税務や行政手続きについてわかりやすく説明しつつ、節税対策やオススメのツールも紹介します。
目次
確定申告とは
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の収入や経費を計算し、その結果から課税される所得を確定し、国に報告する手続きです。個人事業主は、会社に雇用されている人とは異なり、事業の収入と経費を自分で計算し、申告し、納税しなければなりません。
個人事業主は確定申告にあたって「白色申告」と「青色申告」の二つの方法から選べます。白色申告は手続きが簡単で、特別な帳簿の作成は求められませんが、節税メリットが少ないです。一方、青色申告は詳細な帳簿が必要ですが、税制上の特典が受けられるのが魅力です。どちらの方式で確定申告を行う場合でも、収支の記録と、関連する領収書や契約書など、書類の保存は欠かせません。個人事業主には、確定申告時だけでなく、これらの書類を一定期間保存する義務があります。
以前は、帳簿をつける作業や確定申告は手作業で行われていましたが、現在では便利なツールが安価に利用できます。確実に記録を残し、業務を効率化するためにこれらを利用しない手はありません。
初めて確定申告を行う場合、まずは国税庁のページを見てみるとよいでしょう。不明な点がある場合は、管轄の税務署や税理士をはじめとする専門家に相談するとよいでしょう。
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個人事業主の1年間のお金に関するスケジュール
ここでは、確定申告や、税金と社会保険料の支払いスケジュールを3月から翌年3月までの1年間で俯瞰して見てみましょう。
3月 | 前年の1月から12月までの確定申告と所得税の納付(3月15日まで) 消費税、国民年金、国民健康保険料 |
4月 | 国民年金 |
5月 | 自動車税、国民年金 |
6月 | 住民税、国民年金、国民健康保険料 |
7月 | 予定納税、国民年金、国民健康保険料 |
8月 | 住民税、個人事業税、国民年金、国民健康保険料 |
9月 | 国民年金、国民健康保険料 |
10月 | 住民税、国民年金、国民健康保険料 |
11月 | 個人事業税、予定納税、国民年金、国民健康保険料 |
12月 | 国民年金、国民健康保険料 |
翌年1月 | 住民税、国民年金、国民健康保険料 |
翌年2月 | 確定申告の受付開始(2月16日から) 国民年金、国民健康保険料 |
翌年3月 | 確定申告と所得税の納付(3月15日まで) 消費税、国民年金、国民健康保険料 |
特に記載がない場合の支払い期限は各月の月末です。固定資産税については、年4回に分けて納税しますが、地方自治体によって納付期限が異なります。
こうして表にして俯瞰してみると、毎月何らかの支払いがあることがわかります。事業を営む社会の一員として期限内に支払いを済ませたいのはもちろん、支払いをうっかり忘れてペナルティを課されたり、社会保障サービスを受けられなくなったりするのも避けたいところです。
国民年金や国民健康保険料のように、口座からの自動引き落としを設定できるものもあり、積極的に活用を検討するとよいでしょう。資金に余裕がある場合は、一括で支払うのも一つの手です。加えてカレンダーに支払い予定日を設定するなどして、支払い日を忘れないように心がけましょう。
次項以降では、個人事業主が納めるお金の中から、代表的な「所得税」「事業税」「住民税」「国民健康保険料」「国民年金」と、そのほかに支払う可能性のある税金について説明します。
個人事業主が納めるお金の種類
個人事業主は、収支管理や確定申告と合わせて、納税や社会保険料の支払いも自分で行います。ここでは、個人事業主が一般的に収める「所得税」「個人事業税」「消費税」「住民税」「国民健康保険料」「国民年金」について見てみましょう。
所得税
所得とは収入から必要経費を引いた金額です。所得税は、1年間の所得から所得控除を引いた課税所得に、所得税率をかけて計算されます。所得税は、所得に応じて段階的に高くなる累進課税です。所得税は国税で、国に対して税金を納めます。
所得税には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類があり、一般的に、専門的なサービスや商品を提供し、収入を得ている個人事業主の場合、所得は「事業所得」にあたります。
所得税や計算方法の詳細については、国税庁のウェブサイトを参考にしてください。
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個人事業税
所得税が国税なのに対し、個人事業税は事業を営む個人を対象に地方税として課されます。すべての個人事業主に納税義務があるわけではなく、一定以上の所得があり、特定の事業を営む個人事業主が対象です。該当する業種は70種類あり、それぞれ第1種業種、第2種業種、第3種業種に分類されます。たとえば、飲食店は第1種業種にあたり、税率は5%ですが、はり灸院は第3種業種で税率は3%です。納付時期は、8月と11月の年2回です。各地方自治体のウェブサイトに個人事業税の説明がありますので、内容を確認し、正確な申告と納税を心がけましょう。
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住民税
住民税は住民票のある自治体に納める地方税の一つで、「都道府県税」と「市町村税」から成り立っています。所得に応じて計算される「所得割」と、定額を負担する「均等割」の二つで構成されます。
住民税の課税標準となる所得は前年の所得ですので、前年に収入が多かった人は、翌年の住民税の負担が増えます。個人事業主は所得が年によって大きく変動することがあるため、前年の収入が多かった場合、翌年の税金負担を計画的に考える必要があります。
住民税は、通常、6月、8月、10月、翌年1月の年4回分割で支払いますが、一括納税も可能です。納税の方法や期日は、各自治体からの通知やホームページで最新情報を確認してください。
国民健康保険料
会社などの組織に所属せずに働く個人事業主は、社会保険に加入する代わりに国民健康保険に加入し、医療保険サービスを受けます。この費用が国民健康保険料です。保険料は、前年度の所得や世帯の構成などに基づいて計算されます。支払いは分割払いで、定期的に納付します。納付方法は地方自治体によって異なるため、地域の国民健康保険担当窓口で詳細を確認するとよいでしょう。国民健康保険制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトを参考にしてください。
国民年金
国民年金は、日本のすべての住民を対象とする年金制度です。個人事業主を含め、一定の条件を満たす者は加入が義務づけられています。国民年金の保険料は定額で、2023年度は1カ月16,520円です。ただし、所得が一定額以下の低所得者や、特定の条件を満たす人は、免除や猶予措置を受けられる可能性があります。保険料は前もって一括納付(前納)すると割引を受けられます。毎月納付することもできます。
国民年金に加入し、一定期間以上の保険料を納付した人は、65歳から基礎年金を受給する資格を得られます。納付期間や加入期間によって受給額が変わるため、早めに加入し、継続して納付するようにしましょう。未納が続くと、将来の年金受給額に影響が出る場合があります。
国民年金や、国民年金の前納について詳しくは、日本年金機構のウェブサイトを参考にしてください。
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前出の「所得税」「個人事業税」「住民税」「国民健康保険料」「国民年金」以外にも、売上高や事業によっては、個人事業主が納める必要のあるお金がある場合があります。
たとえば、売り上げが一定の金額を超える個人事業主は、消費税の納税義務が発生します。また、業務用の車両を所有している場合には自動車税が、事業用の土地や建物を所有している場合には固定資産税が課されます。
自身が営む事業でどのような種類の税金が課される可能性があるかチェックし、不安があれば、国税庁や税務署の無料相談を利用したり、顧問税理士がいる場合は問い合わせたりするなどして疑問を解消しておきましょう。
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個人事業主ができる節税対策
個人事業主が利用できる節税対策には、いくつかの方法があります。以下では代表的な節税対策として「青色申告」「家事按分」「iDeCoへの加入」「国民年金基金への加入」について説明します。
青色申告
確定申告では白色申告ではなく、青色申告を選択すると、青色申告特別控除で所得税の控除額が増え、赤字を翌年に繰り越せるようになるなどのメリットがあり、節税効果を期待できます。
青色申告を選択するには、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請手続」を税務署に提出する必要があります。青色申告では、帳簿は複式簿記でつけ、貸借対照表や損益計算書を作成するなど、白色申告と比べて、確定申告の手間はかかります。便利な会計ソフトやサービスが安価で提供されているので、これらを利用して青色申告をするのが賢明です。
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家事按分
家事按分は、家庭と事業の両方で使用するものやサービスの費用をわけることで、経費を適正に計上する方法です。たとえば、個人事業主で自宅の一室を仕事場として使用している場合、水道光熱費や家賃などの経費を事業用と家庭用に分けて計上(家事按分)することができます。家事按分によって、事業の経費が増え、利益が減るため、節税効果を期待できます。
水道光熱費や家賃のほか、車両および関連費用、新聞図書費などがあります。
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iDeCo(個人型確定拠出年金)などへの加入
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金とは別の、任意加入の私的年金制度です。老後のために税制優遇を受けながら、積み立てを行えます。iDeCoを利用すると、積立額が所得から控除されるだけでなく、運用益に課税されません。
iDeCoのほか、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定して長期積立を支援する非課税制度「つみたてNISA」を検討してもよいでしょう。
iDeCoについては厚生労働省のウェブサイトに、つみたてNISAについて金融庁のウェブサイトにそれぞれ説明があります。興味を持った人は、目を通して、加入を検討してみてください。
国民年金基金への加入
個人事業主の中には、国民年金だけでは老後が心許ないと考える人もいるかもしれません。国民年金基金に加入すると、国民年金に加えて受け取れる年金が増えます。1カ月の掛け金の上限はiDeCoとの合算で68,000円までです。国民年金基金の掛け金は全額控除されるので、節税メリットがあります。注意しなければいけないのが、一度加入するとやめられないことですが、掛け金を増やしたり減らしたりは途中でもできます。
国民年金基金について詳しくは、全国国民年金基金のウェブサイトを参考にしてください。
スムーズなお金の管理にオススメのツール
個人事業主の中には、日々の売り上げを記録したり、経費を計算したりする作業を負担に思っている人も多いでしょう。会計ソフトやPOSシステムを使ってお金の管理をスムーズにできれば、本業に専念できます。
最近では初心者でも使いやすいソフトウェアやサービスが安価に提供されています。ここでは、「クラウド会計ソフト」「POSレジシステム」「キャッシュレス決済」「クラウド請求書」の四つのジャンルについて詳しく見てみましょう。
クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトは、インターネット上で提供される会計ソフトウェアのことを指します。自分のコンピュータにインストールする必要はなく、インターネットが使える環境ならいつでもどこからでも会計処理を行うことができます。会計ソフトを使用すると、データ入力や帳簿管理の負担が減り、時間の節約やミスの低減にもつながります。会計ソフトでこまめに帳簿をアップデートしておくと確定申告もスムーズに行えます。
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POSレジシステム
POS(Point Of Sale、販売時点情報管理)レジシステムは、特に小売業や飲食業を営む個人事業主の強い味方になります。何がどれだけ売れたかといった情報を管理するためのシステムで、販売データをもとに在庫管理や売上分析もでき、効率的な事業運営をサポートします。Square POSレジのように、無料で利用でき、会計ソフトと連携できるシステムもあります。
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キャッシュレス決済
POSレジシステム同様、キャッシュレス決済も特に小売業や飲食業を営む個人事業主が導入したいサービスの一つです。キャッシュレス決済を導入すると、現金を扱うことが減るので、現金管理の手間や紛失のリスクを減らせるのが魅力の一つです。
キャッシュレス決済サービスの中にはSquareのように、初期費用は端末代金のみ、ランニングコストは決済手数料のみで、POSレジと簡単に連携できるサービスもあります。
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クラウド請求書
クラウド請求書は業種を問わずに、個人事業主が利用を検討したいサービスの一つです。クラウド請求書を利用すれば、インターネット上で請求書の作成・管理を行えます。従来の紙の請求書とは異なり、スピーディーに作成できるだけでなく、紛失リスクも低くなります。Squareではクレジットカード決済機能のついた「Square 請求書」を提供しています。定期請求機能もあるので、月謝や会費、サブスクリプションサービスの請求におすすめです。ぜひ利用を検討してみてください。
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本記事では、個人事業主が避けては通れない確定申告と、税金や社会保険料といった支払うべきお金について説明しました。手続きや支払いの多さに圧倒されたという人にも、ツールやサービスを使って日々の会計業務をしっかり行うことで、お金にまつわる手続きを円滑に行えることが伝わったのではないでしょうか。本記事をきっかけに、ツールやサービスの力を借りながら、かしこくお金にまつわる業務を行い、本業の成長につなげていきましょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2023年10月19日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash