ネットショップの開業を検討する際、どのサービスを使うか迷う人も多いでしょう。本記事では、ネットショップ開設サービスの仕組みを解説したうえで、サービスの選定ポイントや注意点、さらには代表的な無料サービスを紹介します。
目次
- 無料のネットショップは本当に無料?
- 無料のネットショップの開業方法2つ ! どっちが向いてる?
・(1) モール型ネットショップ
・(2) ASP型(自社ネットショップ)
・【比較表】 モール型とASP型ネットショップの違い - 無料のネットショップ開業サービスの選定ポイント
・手数料は多くないか
・入金サイクルは理想的か
・必要な機能は揃っているか
・実店舗との連携は可能か - 無料でネットショップを開設する際の注意点
・カスタマイズ性・容量制限
・集客力
・独自ドメイン - おすすめの無料モール型ネットショップ3選を比較
・(1) Yahoo!ショッピング
・(2) メルカリshops
・(3) Amazon(小口出品プラン) - おすすめの無料ASP型ネットショップサービス3選を比較
・(1) Square
・(2) BASE
・(3) STORES - まとめ
無料のネットショップは本当に無料?
近年登場している無料のネットショップ開設サービスは機能性も高く、オンライン販売を始めるには十分だといえるでしょう。ただし運営に一切コストがかからないかというと、そうではありません。初期費用や月額利用料金はもちろんかかりませんが、以下のような手数料が発生することを覚えておきましょう。
- 決済手数料
- 振込手数料
- 振込申請手数料
- サービス利用料
- 早期入金手数料
なかにはこれらの手数料がすべて発生するサービスもあるので、コストをなるべく抑えたい場合には「サービス名+手数料」で検索して、どのようなコストがかかるかを確認しておきましょう。
無料のネットショップの開業方法2つ ! どっちが向いてる?
ネットショップの開業方法は大きくモール型とASP型に分かれます。
(1) モール型ネットショップ
モール型は、インターネット上のショッピングモールに出店または出品する形式です。月額費用無料で利用できる代表的なサービスとしてはYahoo!ショッピングやAmazonが挙げられます。
モール型の強みは集客力です。消費者のなかには、ほしいものがあればポイントや特典が得られるモールでまず検索するという人が多いため、そこに出店または出品することで認知される機会が広がります。ただし出店または出品者が多い分、価格競争も激しくなりがちです。
モール型が向いている例:
- 商品を安く仕入れられるなど、価格競争に自信がある
- 利益が少なくても、とにかく商品を販売して売り上げを伸ばしたい
- 集客の手間を省きたい
(2) ASP型(自社ネットショップ)
ASPとはApplication Service Providerの略で、ネットショップの開設・運営に必要なシステムを借りて、インターネット上に出店する形式です。無料で使えるサービスにはSquareやBASEなどがあります。
ASP型の特徴は、モール型と比べてデザイン面での自由度が高い点です。一方、集客力はモール型より劣るため、収益を上げるには魅力的なショップの構築やSNS発信といった取り組みが必要です。
ASP型が向いている例:
- 手づくり商品を受注生産したい
- 実店舗に顧客がいるなど、ある程度の売り上げが見込める
- ショップのデザインにこだわりたい
【比較表】 モール型とASP型ネットショップの違い
モール型 | ASP型 | |
---|---|---|
概要 | 大型ショッピングモールのような、ネットショップの複合サイト内に出店する。 | ネットショップの開設・運営に必要なシステムを借りて、インターネット上に出店する。 |
例 | 楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど | BASE、Square、STORESなど |
独自ドメイン | 利用不可 | 一部で利用可 |
ウェブデザイン | 自由度が低い | 自由度が高いが、ページ数などに制約のある場合も |
価格競争 | 起きやすい | 起きにくい |
集客 | ・モール自体にアクセスが多く、顧客が流入しやすい ・共通セールやキャンペーンに参加できる |
・モール型より集客努力が必要 ・独自にセールやキャンペーンを企画し、宣伝する必要がある |
無料のネットショップ開業サービスの選定ポイント
モール型とASP型の違いを押さえたところで、次は最適なサービスを選ぶポイントを見ていきましょう。
手数料は多くないか
最初の章で見たように、初期費用や月額費用が無料のサービスでも、売り上げから各種手数料が引かれるのが一般的であり、その内容はサービスごとにさまざまです。
たとえばモール型のYahoo!ショッピングの場合は、ストアポイント原資負担やキャンペーン原資負担など複数のコストが発生する一方で、メルカリshopsなら決済手数料が含まれた販売手数料のみです。ASP型でも、Squareの場合は決済手数料のみですが、BASEは決済手数料のほかにサービス利用料や振込手数料がかかります。できるだけ売り上げを確保できるよう、手数料は事前に把握しておきましょう。
入金サイクルは理想的か
売り上げの入金サイクルもサービスによりけりです。最短翌営業日に振り込まれる場合もある一方で、月末締め翌月払いの場合もあります。入金サイクルは資金繰りに影響する可能性が大きいため、必ず確認するようにしましょう。
必要な機能は揃っているか
ネットショップで優先する機能はビジネスによって異なります。たとえばSNS経由の集客に力を入れたいのなら、SNSアカウントとの連携機能は必須でしょう。またビジュアルでの訴求を重視する場合は、カスタマイズできる範囲が広いサービスが向いています。まずはネットショップの販売戦略を立て、注力ポイントを洗い出してみましょう。その際、現在だけではなく将来まで考慮することで、必要な機能が見えてくるはずです。
実店舗との連携は可能か
実店舗がある場合、在庫や売り上げを同期できることも重要です。どちらも同じ管理画面から確認できれば、システムを行き来せず、棚卸しやレジ締めなどをスムーズにできるようになります。モール型の場合は、別途管理システムを連携させることになりますが、ASP型のなかには最初から実店舗との連携機能が備わったサービスもあります。
無料でネットショップを開設する際の注意点
無料のASP型サービスを利用する場合、頭に入れておきたい点がいくつかあります。
カスタマイズ性・容量制限
無料版は有料版と比べると容量が少なく、最大で500MBが限度というサービスが多いようです。商品点数が少ないという場合は、容量制限はあまり気にならないかもしれません。ファイルサイズが大きい画像に関しては画像圧縮ツールを使うなど、工夫することもできるでしょう。
また、カスタマイズできる範囲も限られるのが一般的です。サイトで使用するフォントやテーマにこだわりたい、あるいはビデオやアニメーションを駆使したいなどの場合は有料版を検討した方がよいでしょう。
集客力
ASP型に欠かせない集客機能ですが、すべてのサービスに基本的なSEO対策ツールが備わっているわけではありません。なかには別途SEO対策アプリを接続しなければならないものもあるため、注意が必要です。
同様に、SNSとの連携機能の有無もサービスによってさまざまです。特にInstagramとネットショップを連携できるInstagramショッピングに対応しているかは必ず確認しておきましょう。
独自ドメイン
無料版だと、独自ドメイン(www.●●●.co.jpなど)は使えず、基本的には (https://●●●.square.site/)など、サービス名がURLに入り込みます。一方、有料版なら独自ドメインの取得がプランに含まれている場合がほとんどです。
おすすめの無料モール型ネットショップ3選を比較
ここからは、モール型のネットショップの代表格である、Yahoo!ショッピング、メルカリshops、Amazon(小口出品プラン)を紹介します。
(1) Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、初期費用や月額固定費、売上ロイヤリティが無料のモール型サイトです。ページのデザインテンプレートは、現在は1種類です。独自性を出す余地は減りますが、その分メニューがシンプルになり、ページ作成や商品登録がしやすいといえます。
プランは1種類のみで、登録できる商品数は無制限です。
プラン | 1種類 |
登録商品数 | 無制限(20万以上になる場合は別途相談) |
デザイン | テンプレート1種類 |
初期費用、月額費用、売上ロイヤリティ | 無料 |
ストアポイント原資負担 | 1%から15% |
キャンペーン原資負担 | 1.5%必須 |
アフィリエイトパートナー報酬 | 1%から50% |
アフィリエイト手数料 | アフィリエイトパートナー報酬の30% |
決済サービス手数料 | 3.0%から4.48%、または1件あたり150円~350円(決済方法による) |
(2) メルカリshops
メルカリshopsの特徴は、毎月2,300万人以上が利用するフリマサイトのメルカリに商品を掲載できる点です。
タイムセール機能やクーポン機能、特集参加機能など、商品の露出を増やすさまざまな機会が用意されているほか、「フォロー・いいね・評価」機能で購入やリピートを促しやすい設計になっています。
プランは1種類のみ。販売手数料は決済手数料込みで一律10%とシンプルです。
プラン | 1種類 |
登録商品数 | 個人事業主の場合、ショップ開設後の一定期間は200件まで |
デザイン | 変更不可 |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | 無料 |
販売手数料 | 10%(決済手数料込み) |
(3) Amazon(小口出品プラン)
ショッピングモールとしてみた場合、Amazonはサイト全体が大きなカタログのようになっているところが特徴です。1商品が1ページとして統一されています。
1商品でも登録でき、店舗のページをつくる必要がありませんが、ショップとしての独自性を出すのが難しいともいえます。
店舗としてのページを作りたい場合、大口出品プランを選択してブランド登録を申請し、登録できるとストアページを作ることができます。プランは2種類あります。
プラン | 2種類(小口出品プラン、大口出品プラン) |
登録可能商品数 | 小口出品プラン毎月49点まで、大口出品プラン毎月49点以上 |
デザイン | 変更不可 |
初期登録費用 | 無料 |
月額費用 | 小口出品プラン無料、大口出品プラン4,900円/月 |
販売手数料 | カテゴリー別に5%から45%(カテゴリーによっては最低販売手数料あり)。小口出品プランはさらに1点販売するごとに100円 |
決済手数料 | 無料 |
おすすめの無料ASP型ネットショップサービス3選を比較
ここからは、無料版のASP型ネットショップとして、Square、BASE、STORESを紹介します。
(1) Square
無料版のほか、有料プランも2種類用意されているため、事業規模が大きくなったときにプラン変更するだけで拡張できるようになっています。独自ドメインは外部で取得したものも適用できるため、すでに自社ドメインを使っている場合でもショップの構築がしやすくなっています。
Squareの大きな特徴は、実店舗にSquareを導入すると、売り上げと在庫をネットショップと連動できる点です。在庫管理と売上管理が一元化されるため、効果的な運用ができます。登録できる商品数やデータ容量は無制限です。
また、Instagramに商品をタグ付けして投稿し、商品ページへの誘導が可能です。ネットショップ内にInstagramの投稿を表示させることもできます。ASPの弱点といわれている集客の強化が見込めます。サポート窓口はメールのほか、電話も対応しています。
デザインテンプレートは、小売、飲食店、サービス業など、ビジネスの内容に応じたものが用意されています。商売の特徴をつかんだデザインや機能があらかじめ設計されているため、使い勝手がよくなっています。
プラン | 無料1種類(フリー)、有料2種類(プラス、プレミアム) |
初期費用 | 無料 |
月額費用(年払い) | フリー無料、プラス3,375円、プレミアム9,180円 |
決済手数料 | 3.6%(プレミアム3.3%) |
振込手数料 | 無料 |
登録可能商品数 | 無制限 |
データ容量 | 無制限 |
(2) BASE
BASEのプランは無料版と有料版1種類の計2種類です。外部で取得した独自ドメインを適用させることができます。登録できる商品数もデータ容量も無制限です(1日あたりの上限はあります)。デザインテンプレートは無料のほかに有料のものもあります。HTML編集が可能なため、カスタマイズもできます。
プラン | 無料1種類(スタンダード)、有料1種類(グロース) |
初期費用 | 無料 |
月額費用(年払い) | スタンダード 無料、グロース16,580円 |
決済手数料 | スタンダード 3.6%+40円〜、グロース2.9%〜 |
サービス利用料 | スタンダード3%、グロース無料 |
振込手数料 | 一律250円(20,000円未満は500円の事務手数料を加算) |
登録可能商品数 | 無制限(1日最大1,000件) |
データ容量 | 無制限 |
(3) STORES
STORESのプランは、無料版のほか有料版が1種類あります。登録できる商品数やデータ容量は無制限です。デザインは無料のテンプレートが48種類と豊富です。独自ドメインは、有料版を利用すればSTORESのなかで取得することができます。ただし、外部で取得したドメインを使用することはできません。
プラン | 無料1種類(フリー)、有料1種類(ベーシック) |
初期費用 | 無料 |
月額費用 | フリー 無料、ベーシック2,980円(年払・クレジットカード払時の換算) |
決済手数料 | フリー 5.5%、ベーシック3.6% |
振込手数料 | 275円+事務手数料275円(入金額10,000円以上の場合は事務手数料0円) |
登録可能商品数 | 無制限 |
データ容量 | 無制限(デジタルアイテムは1アイテム1GB、商品画像は1画像5MB) |
Square、BASE、STORESの主な違いを下表にまとめます。
Square | BASE | STORES | |
プラン | ・フリー ・プラス ・プレミアム |
・スタンダード ・グロース |
・フリー ・ベーシック |
データ容量 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額費用 | ▼フリー 無料 ▼プラス 3,375円 ▼プレミアム 9,180円 |
▼スタンダード 無料 ▼グロース 16,580円 |
▼フリー 無料 ▼ベーシック 2,980円 |
決済手数料 | ▼フリー、プラス 3.6% ▼プレミアム 3.3% |
▼スタンダード 3.6%+40円〜 ▼グロース 2.9%〜 |
▼フリー 5.5% ▼ベーシック 3.6% |
入金手数料 | 無料 | 250円(20,000円未満は+500円) | 275円(10,000円未満は550円) |
まとめ
ここまで見たように、無料ネットショップ開設サービスを選ぶ際はさまざまな点を考慮する必要があります。考える点が多すぎて迷ってしまうという人は、ビジネスで重視することを考えてみましょう。コスト、認知拡大、資金繰り、ブランディングなど洗い出して優先順位をつけ、その順番に視点を定めて見ていくと、利用すべきサービスが見えてくるかもしれません。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2021年8月23日時点の情報を参照しています。2025年2月20日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash