都内に19店舗あるカスタムサラダ専門店、クリスプ・サラダワークスは、「サラダは脇役」という概念を取っ払い、サラダを堂々と主役に昇格させた飲食店だ。
以前まではカウンター越しに注文するスタイルだったものの、2017年に自社でセルフレジを開発しはじめてからは、入り口付近に並ぶタッチパネル「CRISP KIOSK」から注文する形に切り替わっている。
サラダの中身はクリスプ・サラダワークスが考え抜いた組み合わせから選ぶこともできれば、具材を一から自分で選び、オリジナルサラダを作ることもできる。もちろんすでにあるメニューに好みの具材をプラスしたり、苦手な具材を抜いたりすることもできる。アボカドなら半個ほど豪快に。雑穀米やワイルドライスで炭水化物をプラス、などお腹の空き具合と相談しながら軽めにもボリュームたっぷりにも調節ができる。
メニューを選んだら、そのまま決済に進む。クリスプ・サラダワークスでは、19店舗中14店舗は現金を扱わないオールキャッシュレス店舗で、セルフレジにクレジットカードを差し込んだりスマートフォンをかざしたりすることでお客様自身が決済を完了させる。自社で開発しているセルフレジには、一見決済端末の姿は見えないが、実はここで使われているのがSquareの決済端末。キャッシュレス決済はSquare Readerで受け付け、SquareのAPIを利用して決済情報を自社のPOSシステムと統合している。
自社開発のセルフレジを利用している飲食店はなかなか珍しいかもしれない。クリスプ・サラダワークスではどのようなことを大切にしていて、なぜセルフレジの導入に踏み込んだのか。また、この試みを実現する上でSquareを選んだ理由を代表の宮野浩史さんに聞いた。
ーーまずクリスプ・サラダワークスをはじめられた理由を教えていただけますか。
宮野浩史(以下、宮野):もともと僕は10年くらいアメリカに住んでいました。その頃よく食べていたものが、日本に戻ってきたときになかなかないなと感じまして。それこそ、クリスプ・サラダワークスのようなカスタムサラダもそうなんですけど。アメリカで当たり前のように食べてたものが、日本に帰ってくるとない。なら、作ろうというような発想から生まれました。
最初の頃はどちらかというと日本に暮らす駐在員や海外経験がある人に喜んでもらえたらいいなという思いで、麻布十番に1号店をオープンしました。それが2014年です。
サラダってどちらかといえば、おまけについてくるイメージが強かったかと思います。でもそうではなくて、お腹いっぱいになれて、喜んで食べられる。そんなサラダがあったらいいなという思いで、創業しました。
▲代表の宮野氏
ーーお店を開けた当初の反応はどうでしたか。
宮野:もともとは海外などでカスタムサラダを食べていた人に食べてもらおうと思っていて。最悪、そういう人たちに来てもらえればいいかな、と思っていました。それが意外と開けてみると、思っていた以上に「こういうの食べたかったんですよね」「こういうのないかなと思ってたんですよね」と言ってくれる日本人のお客様が多く出てきました。
ーー今だと、どのような客層がお店を訪れているのでしょう。
宮野:一見女性が多いと思われがちなんですけど、男性の方も多くて。三割から四割ほどは男性のお客様です。年代でいうと20代後半から40代前半までが圧倒的に多いですね。
もちろんモデルさんやジムのトレーナーさんとか、健康に気を配っている方もいらっしゃるんですけど。「もっと健康にならなきゃな」「健康にいいことしないとな」と思っている人にももちろん来ていただきたいと思っています。ダイエットとかって辛いし、大変じゃないですか。我慢してジュースだけ飲む、とか。そうではなくて「うまいものを食べたい!」と思って食べたものが、たまたまちょっと体にいいもので、食べ応えがあって、おいしかったら、うれしいですよね。結果、自分がすごく我慢するわけでもなく、罪悪感を感じるわけでもなく。僕らのリーチしたいのは、そういう層でもありますね。
ーークリスプ・サラダワークスでは自社でセルフレジを開発されていますよね。こちらの決済方法として、Square Readerをご利用いただいているかと思います。
宮野:はい。実は僕らが「CRISP KIOSK(クリスプ キオスク 以下、キオスク)」と呼んでいるセルフレジの1世代目は他社様の決済端末を使用していました。そこからフルリニューアルとして、2世代目をゼロから作り直しました。そのときはアプリもセルフレジもPOSレジも自社のものに変えたんですけど。1世代目に使っていた他社様の決済端末から、2世代目はSquareにお願いすることにしました。
ーーなぜ2世代目からはSquareに移行することにしたのでしょう。
宮野:理由はいくつかあります。まず、開発の側面からという部分。あとは安定性と、デザイン性です。国内で出ている決済端末の多くは、丸いデザインのものが多く、我々のブランドとシームレスに統合するのがデザイン面でなかなか難しかったんです。Squareの四角くシンプルなデザインは、クリスプ・サラダワークスのプロダクトデザインにもマッチしました。あとはSquareのAPIを利用してセルフレジを開発することができるので、シームレスに統合できるのは大きいところかなと思っています。
他社様の決済端末と比べてデザイン性が高い、開発面で容易になった、あとは安定性が増した、この三点がSquareを入れたメリットなのかなと思っていますね。
Square導入のご相談は営業チームに
Squareサービスの導入を検討中のお客さまに、営業チームが導入から利用開始までサポートします。イベントでの利用や、複数店舗での一括導入など、お気軽にご相談ください。
ーーありがとうございます。Squareの決済端末とAPIを自社で開発したセルフレジに組み込むのは、これまでにあまりないSquareの活用方法だと感じています。そもそもクリスプ・サラダワークスでセルフレジを導入することは、なぜ大切だったのでしょうか。
宮野:僕たちはお客様の体験を上げることがゴールです。お客様に喜んでもらって、顧客体験を上げる。そうすると当たり前ですけど、お客様が繰り返し使ってくれたり、LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)が伸びたりするわけじゃないですか。お客様の体験を上げるためには、すごくシンプルですが、お客様を知っていたほうがいい体験を提供できるはずだと思っています。
たとえば僕が誰かの誕生日パーティを企画したいとしますよね。でも僕がどれだけ優秀なパーティープランナーだとしても、相手の情報がわからなければ、その人に喜んでもらえるパーティーをプランニングするのは難しいと思うんです。今飲食で起きてることって、そういうことなのかなと思っていて。何も知らないから、決まったルーティンの体験しか提供できない。
そこで、一人ひとりのお客様に正しいタイミングで正しいコミュニケーションを行うためには、お客様の情報が必要だという考えが根幹にあります。「お客様って今日、何回目ですか」「名前もせっかくだから聞いていいですか」「メールアドレスもいいですか」と聞けば、答えくれるかもしれません。でも摩擦があるから普通なら嫌がられるわけじゃないですか。
アプリもセルフレジも、なるべくストレスが少ない形でお客様を知るためのツールだと思っています。
ーーお客様への体験をよりパーソナライズするために、すでに行っている取り組みなどはあるのでしょうか。
宮野:たとえばCRISP APP(クリスプ・サラダワークスのメニューを事前注文・デリバリー注文ができる自社アプリ)では、会員登録をしていただけます。そうするとお客様が何回来ているのか、10日ぶりに来たのか、昨日も来たのか、という情報がわかります。本来はそれによって、店頭での対応も変えるべきだし、アプリ上での対応も変わるべきだと思っています。
SquareのAPIに関しては自動顧客登録機能があるので、それを我々側のシステムに入れれば、お客様が簡易登録をしなくてもクレジットカードの識別ができるようになります。
それこそ他社様で決済を受け付けていた頃は、キオスク(店頭のセルフレジ)を使用しているお客様の識別ができませんでした。今ならお客様がキオスクで何回同じクレジットカードで決済したのかがわかります。そうすると、はじめてキオスクを使ってる人は何人か、という情報がわかります。それは僕たちのマーケティング分析データとして利用しています。
あとは僕たちがお客様から許可を得るステップを踏みつつ、「このクレジットカードではアプリに登録する前にSquareで3回店頭決済している」というデータをなるべくシームレスにつなげていきたいと思っています。
ーーセルフレジの開発にはどれくらいの時間がかかったのでしょう。
宮野:我々のアプリとセルフレジ、POS、そしてその基盤のシステムの全体でいうと、半年くらいかかったと思います。去年(2020年)の春くらいからプロジェクトが動き出して、正式にリリースされたのが10月です。セルフレジに関しては最後の1、2カ月くらいでできました。
ーーSquareのAPIを利用するうえで、苦労などはありましたか。
宮野:開発チームから不満などはありませんでしたね(笑)。ただ開発のリソースの関係で、現状は簡易的な対応のしかたをさせていただいています。次のフェーズでは我々のアプリ内で完結するようにしていく予定です。
ーー最後に、お客様の飲食体験をさらによくしていくうえで、クリスプ・サラダワークスで取り組もうとしていることがあれば、教えていただけますか。
宮野:お客様の体験を上げるために、お客様を知るというところですね。お客様からいただいた情報をどう体験につなげていくのかが次のフェーズになるかと思っています。アプリでもキオスク(店頭のセルフレジ)でも、できるだけお客様の負担、働く人の負担を少なく、お客様の情報をきちんと適切に体験に結びつけていくことです。それを飲食の世界の「当たり前」として持っていくのが、次のステップだと考えています。
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