青色申告で必要となる「複式簿記」をわかりやすく解説

「確定申告をするなら、青色申告をしたほうがよい」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。青色申告にはさまざまなメリットがありますが、「複式簿記」を利用しているため、複雑でわかりにくいというイメージがあります。そこで今回は、青色申告、および青色申告で必要となる複式簿記について解説します。

青色申告での帳簿のつけかた、複式簿記とは

まずは、基本的な事項を押さえましょう。

青色申告とはそもそも何か

青色申告」は確定申告のやり方の一つです。確定申告では、1年間にどれだけの所得を得たかを税務署に申告することで、所得税の金額を確定させます。

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、青色申告のほうが手間がかかる分、節税のメリットが高いという利点があります。

主なメリットとして、以下が挙げられます。

  • 最高65万円を所得から引ける「青色申告特別控除」(2020年分から55万円。電子申告なら65万円のまま)
  • 赤字の場合、損失を翌年以降に繰り越せる「純損失の繰越」
  • 家族に払う給与を必要経費に計上できる「青色事業専従者給与」
  • 回収できていない代金を経費として計上できる「貸倒引当金」

青色申告は、以下の所得のいずれかを得ている人が行えます。

  • 事業所得(事業によって得られる所得)
  • 不動産所得(アパートや駐車場などの不動産の貸付で得られる所得)
  • 山林所得(所有する山林の伐採や譲渡で得られる所得)

参考:青色申告制度(国税庁)

青色申告は、「帳簿」と呼ばれる取引記録を正しくつけ、決算書を作ることで、納める税金を安くしてもらえます。確定申告時には、確定申告書のほか「青色申告決算書」を税務署に提出する必要があります。

青色申告決算書は、以下の4枚からなります。

  • 損益計算書 1枚
  • 損益の内訳の記入書 2枚
  • 貸借対照表 1枚

「複式簿記」のやり方で帳簿をつけていないと、これらの申告に必要な書類を作ることができません。

複式簿記とは何か

複式簿記は、「取引を二つの側面から記録する方法」です。たとえば、事業のために10万円でパソコンを買ったとします。

この取引では、「パソコンという資産を手に入れた(原因)」「10万円分の現金が減った(結果)」 という二つの事象が起きています。

複式簿記では、取引における「原因」および「結果」という二つの側面を、数字と文字で記録していくわけです。

取引といっても、その内容はさまざまです。

たとえば、「商品を売った」「製造のために機械を買った」「代金を受け取った」「材料を仕入れた」「お金を借りた」などがあります。このような取引内容を細かく分類したものを、「勘定科目(かんじょうかもく)」といいます。この勘定科目に合わせて取引を整理することを「仕訳(しわけ)」と呼びます。

複式簿記は、「原因」と「結果」の2側面を記録することだと説明しました。

実際に仕訳をするときは、「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」という言葉を使います。会計ソフトなどで実際に仕訳しようとすると、取引項目には、借方および貸方の二つの欄が用意されています。この言葉はお金の貸し借りが由来だといわれていますが、「借方=左」「貸方=右」を示すということを覚えておきましょう。

控除額が最高55万円も変わる。複式簿記と簡易簿記の違いとは

複式簿記なら、前述した「青色申告特別控除」によって、最高65万円を所得金額から差し引くことができます。つまり、それだけ課税される税金が少なくなるということです。2020年分からは控除額が55万円になりますが、電子申告または電子帳簿保存を行えば、引き続き65万円の控除が受けられます。

複式簿記で作る帳簿には、誰でも必ず必要な「主要簿」、業務のやり方によってそろえる「補助簿」の2種類があります。

・主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)
・補助簿(現金出納帳、預金出納帳、固定資産台帳、買掛帳、売掛帳など)

実は、青色申告では複式簿記だけではなく、簡易簿記も選べます。仕訳の必要がないため帳簿づけが少し楽ですが、それでも、補助簿はつけなければなりません。また、控除額は10万円と少なくなります。

白色申告と青色申告の控除額の違い

白色申告には、前述した「青色申告特別控除」に該当するものはありません。また、家族への給与を必要経費にする「青色事業専従者給与」もなければ、赤字を翌年以後3年間にわたって繰り越せる「純損失の繰越」も利用できません。もし売上額が同じだったとしたら、控除額が少ない白色申告のほうが、税金を多く支払う可能性が高くなります。

白色申告でも簡易でいいとはいえ、帳簿をつけなければなりません。手間や節税メリットを考えた場合、青色申告を選ぶのがおすすめです。

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簡易簿記から複式簿記に変更するには

「今までは白色申告だったけれど、複式簿記の青色申告に変更したい」という場合は、青色申告をしようとする年の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。

つまり、2020年分の確定申告を青色申告で行いたいと思ったら、2020年3月15日までに届け出る必要があります。申請書の様式は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。直接持参するだけでなく、郵送でも受け付けてもらえます。

参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)

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複式簿記を簡易化してくれるクラウド会計ソフト

複式簿記をするなら、会計ソフトの利用がおすすめです。代表的なクラウド会計ソフトを三つ紹介します。

確定申告ソフトfreee

質問に答えるだけで簡単に取引を入力できるため、複式簿記の知識があまりない人でも使いやすいクラウド会計ソフトです。アプリを使えば、スマートフォンからでも会計処理ができます。個人事業主の場合、月額980円(税抜)から使えるスタータープランと、月額1,980円(税抜)のスタンダードプランが用意されています。年額プランであれば、さらにお得になります。

やよいの青色申告オンライン

やよいの青色申告はインストール型のソフトが有名ですが、クラウド型も用意されています。簡単に入力できる帳簿機能のほか、スマートフォンアプリで撮影したデータを自動仕訳する機能なども備わっています。e-Tax(国税電子申告・納税システム)にも対応しています。年額8,000円のセルフプランは、最初の1年間はすべての機能が無料で使えるため、「ちょっと試してみたい」という人におすすめです。

マネーフォワードクラウド確定申告

仕訳の自動入力ができるほか、明細データの自動取得という強みがあります。銀行口座やクレジットカード、クラウドソーシングなどと連携でき、データを自動的に取り込んでくれるため、手入力の手間が省けます。プランは、お得に利用したい人向けのパーソナルライトプラン(月額1,280円)、請求書発行が多い人向けのパーソナルプラン(月額2,480円)があります。さらに、電話サポートがつくサービスも用意されています。

青色申告は、大きな節税メリットがある制度です。利用するには複式簿記が必要となりますが、使いやすい会計ソフトも登場しているため、初心者でもやりやすくなっています。ぜひ、青色申告に向けて、複式簿記にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

執筆は2019年12月25日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash