飲食店のコスト管理の中で最も重要といわれるFLコスト。飲食店の経営を健全に行えているか判断する上で大事なだけでなく、利益を増やすためにも理解しておきたい指標です。本記事ではFLコストとは何かから始め、FLコストやFL比の目安、FLコストを改善のために検討したいポイントをわかりやすく説明します。
目次
FLコストとFL比率とは
FLコスト、FL比率などというと難しく聞こえますが、それぞれを構成する要素を一つずつ追っていくと理解しやすいでしょう。
FLコストのFとLはそれぞれFood、Laborの頭文字です。Foodは材料費を、Laborは人件費を表します。FLコストとは材料費と人件費を合計した金額です。FLコストと合わせて、FL比率という指標も知っておきたいところです。FL比率は、売り上げのうちどのくらいの割合をFLコストが占めるかを表します。FLコストとFL比率は以下のように計算できます。
FLコスト = 材料費(F) + 人件費(L)
FL比率 (%)= FLコスト / 売り上げ× 100
FLコストが高くなるとFL比率は高くなり、逆にFLコストが低くなるとFL比率は低くなります。飲食店の利益は、売り上げからFLコストやその他のコストを引いて計算できるため、FLコストをおさえ、FL比率をおさえることで、売り上げから引かれる金額が減り、より多くの利益が出ることになります。つまり、FL比率が低い方が経営状態がよいといえます。
実際にFLコストとFL比率を計算してみましょう。ある飲食店が当該期間に支払った材料費が105,000円、人件費が75,000円、売り上げが300,000円だった場合、FLコストは180,000円、FL比率は60%になります。
飲食店の経営で材料費と人件費はコストの大きな割合を占めますが、大きなコストはこれだけではありません。店舗や調理スペースを借りて飲食店を経営すると、材料費や人件費とともに、家賃も無視できなくなるため、最近では、家賃(Rent、略してR)も含めたFLRコスト、FLR比率も重要視されるようになってきました。
FLRコストとFLR比率は、FLコストとFL比率に家賃を含めて以下のように計算できます。
FLRコスト = 材料費(F) + 人件費(L)+ 家賃(R)
FLR比率 = FLRコスト / 売り上げ× 100
たとえば、ある期間の材料費が105,000円、人件費が75,000円、家賃が30,000円、売り上げが300,000円だった場合、FRLコストは210,000円、FRL比率は70%になります。
FLコストの目安
FLコストは一概にこの値に収まっていなければならないといったことはありません。材料費(F)と人件費(L)の値や比率は業態や店舗によって異なるからです。
高級店であれば材料費も人件費も高くなる傾向にありますが、安価に食事を提供するファストフード店では効率化によってどちらも安くおさえられる傾向にあります。人件費は営業時間の長さの影響も受けるでしょう。
ここではFLコストの構成要素である材料費と人件費の目安をそれぞれ説明します。
材料費の目安
材料費について重要なのは、適正な原価率を保つことです。飲食店の原価率は以下のように計算できます。
原価率 = 材料費 ÷ 売り上げ
飲食店の適正な原価率は30%といわれています。安く材料を仕入れるだけでなく、仕入れた材料を無駄なく使うことで原価率を低くおさえられます。飲食店の経営ではついつい提供する方に目が行きがちですが、食材の廃棄などについても意識するとよいでしょう。
人件費の目安
飲食店の経営者は、地域の平均的な時給や月給、従業員のスキルに応じて、従業員に給与を支払います。まずは地域の平均的な時給、競合店の求人情報などを調べて、自社の人件費と比べてみるとよいでしょう。地域の状況にもよりますが、人件費は年々上昇傾向にあるので、定期的に見直す必要があります。
FL比率の目安
FLコストは業態や店舗によって異なると説明しましたが、FL比率については50%から60%が推奨されています。まずは自社のFLコストを計算して、60%以下になっているかチェックしてみましょう。標準的な内訳は材料費が売り上げの35%、人件費が売り上げの25%といわれています。
たとえば売り上げ300,000円でFL比率を60%におさえる場合、FLコストは、180,000円になります。標準的な材料費は売り上げ300,000円の35%で105,000円、人件費は売り上げ300,000円の25%で75,000円になります。
つまり、FLコストの絶対値だけを見るのではなく、あくまで売り上げに対する材料費と人件費の比率として、FL比率を見るのが重要です。自社の売り上げから適切なFLコストを計算し、材料費と人件費の合計が適正FLコスト内におさまるように調整しましょう。
FL比率が60%を超えている場合はどうしたらよいでしょうか。続いて、FLコストとFL比率を改善するポイントを説明します。
FLコストとFL比率を改善するポイント
FL比率が60%を超えていたら、少なくともどうしてFL比率が高くなってしまっているか早急に検討する必要があります。FL比率は売り上げに占めるFLコストの割合で、その変数は材料費と人件費です。
FL比率とFLコストが高い場合には、材料費が高くなってしまっているのか、人件費が高くなってしまっているのか、それとも両方が高くなっているのか、どこに原因があるのか探すところから始めます。高くなっているかどうかは、材料費が売り上げの35%、人件費が売り上げの25%に収まっているかで判断するとよいでしょう。
材料費が高い場合、人件費が高い場合についてそれぞれ対策を見ていきましょう。
材料費が高い場合
材料費が高い場合は、以下の対策を検討してみてください:
- 食材の仕入れ原価を下げる
- 歩留まりに注意する
- 食材・食品廃棄率を下げる
- オーバーポーションをなくす
そもそも高すぎる食材を使っている可能性があります。同じ品質で安く仕入れられる可能性がないか検討してみるとよいでしょう。旬の食材や地元の食材を使うことで材料費をおさえることもできます。この方法には、材料費をおさえられるだけでなく、季節の味を提供できる、地元の生産者とのつながりができるといったメリットもあるので積極的に検討してみましょう。また、賞味期限の長い食材であれば、まとまった量を仕入れることで、単位当たりの原価をおさえられます。
仕入れた食材の中には使えない部分があることを忘れてはいけません。これを表すのが歩留まりです。たとえば、ステーキ用に肉を塊で1kg仕入れたとしましょう。1人に対して100gを提供するとして、10人に提供できると考えてはいけません。肉の端は乾いてしまっているかもしれませんし、筋や脂が多くて提供できない部分があるかもしれません。歩留まりは、肉に限らず、野菜や果物、その他の食品にも適用できます。仕入れた食材の内、提供できた割合を表すのが歩留まり率です。歩留まり率は高いに越したことがありません。材料費をおさえたい場合は、原価と合わせて歩留まり率についても調査してみるとよいでしょう。
適正な原価で、歩留まり率にも注意しながら食材を仕入れていても、廃棄する食材が多ければ材料費は高くなります。廃棄した食品は目の前からなくなるので、忘れてしまいがちですが、一度仕入れた量に対して、どのくらい商品として提供したのかを計算し、廃棄した食材について数値で把握してみることをお勧めします。廃棄量を把握することで、仕入れる量を減らすことができます。仕入れる材料が減れば材料費が減り、FLコストとFL比率も減ります。
また、お客様にたくさん食べていただきたいと、食べ切れる以上に盛りつけていませんか。お客様が残した食品も廃棄される食材の一部です。食材廃棄については、コスト面だけでなく、環境や倫理面からも世界的に取り組む動きがあります。飲食店の経営者として廃棄に罪悪感を感じている人もいるかもしれません。廃棄コストを減らして、環境や倫理面でも社会に貢献しているという手応えがあれば、ビジネスのモチベーションにもつながるでしょう。
オーバーポーションになっていないかチェックするのも重要です。オーバーポーションとは、決められた以上の食材を使って調理をしてしまうことです。調理に慣れてくると、正確に分量を計らなくなり、目分量で調理してしまいがちです。提供した食事に対して材料の消費量が多すぎる場合には、オーバーポーションを疑いましょう。オーバーポーションを防ぐには、レシピや利用する食材の量を規定し、遵守するのが重要です。調理担当者の裁量が多い場合には、今一度レシピや食材の量、計量プロセスを経営者と従業員が一緒に確認するとよいでしょう。
人件費が高い場合
人件費が高いとわかったらどうしたらよいでしょうか。いきなり過度に時給やシフトを減らすと、従業員のモチベーションが低下し、サービスや提供する食事のクオリティーの低下につながりかねません。また、最悪の場合には、重要な従業員が離職してしまうでしょう。従業員のモチベーションや飲食店のクオリティーを保ちつつ、人件費を節約するには、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 営業時間
- 従業員の人数
- 業態の変更
- 人手でしなくてもよい作業の効率化
営業時間は長すぎませんか。働いている従業員の数は適切ですか。これまでお店を開けてきた営業時間を変更するのは簡単ではないかもしれません。ただし、売り上げがない、またはとても少ない時間帯の場合は、思い切ってお店を閉めて、売り上げが上がる時間帯に注力するのも一つの手です。また、売り上げが上がっている時間帯でも、業務がなく時間を持て余している従業員がいるかもしれません。このような場合はシフトを見直したり、並行してできる業務を見つけたりするとよいでしょう。
人件費の問題に直面している場合は業態を変更するのも一つの手です。新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、飲食業は苦境を強いられています。そのような中でも、学びはありました。いち早く店舗での営業からテイクアウトやデリバリーに業態を切り替えて、困難を乗り切ろうとしている飲食店もあります。テイクアウトやデリバリーでは、接客をする従業員を減らし、人件費をおさえることができます。店舗の家賃も節約できるかもしれません。業態の変更は容易ではありませんが、一つの選択肢として、検討してみる価値はありそうです。
人件費は、作業を効率化し削減することもできます。調理については調理プロセスを見直したり、機械化したりして効率化できます。飲食店での作業は調理だけではありません。予約や支払い、経理といった業務に頭を悩ませている経営者もいるのではないでしょうか。このような作業はシステムを導入することで、大部分を自動化できます。一昔前までは高価な専用システムが必要だったり、操作が難解だったりしましたが、現在では安価に使い慣れたパソコンやタブレット端末で利用できるシステムが多数提供されています。支払いや予約、経理作業を効率化するのに多額の投資は必要ありません。自動化したい分野をみつけて、徐々にシステムを導入していくとよいでしょう。作業を効率化し、ミスや残業が少なくなれば、人件費を節約できるだけでなく、従業員の満足度やモチベーションも向上するはずです。
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本記事では飲食店を経営する上で知っておきたいFLコストとFL比率とは何かから始め、FLと共に意識したいR(家賃)、FLコストとFL比率の目安、どうしたらFLコスト改善のポイントについて説明しました。FとLというアルファベットを含む指標の名前を見て難しそうだと感じた人もいたかもしれませんが、材料費と人件費という要素に分解することで、飲食店の経営で有用な指標だと理解できたことでしょう。
飲食店の経営がうまくいっている人も、何かがうまくいっていないと感じている人も、本記事をきっかけに一度FLコストや家賃も含めたFLRコストを計算してみてください。もしFL比率が標準的な値を超えてしまっていても大丈夫です。本記事で示した改善のポイントを一つずつチェックし、対策を講じていくことで、FL比率を改善し、利益アップにつながるはずです。
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執筆は2021年3月3日時点の情報を参照しています。2023年2月15日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash