※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
開業届は、税務署の窓口や郵送だけでなくオンラインでも提出が可能です。オンラインの場合、パソコンまたはスマートフォンで手続きできますが、必要な端末のタイプや手続きのポイントを知ったうえで申請方法を選ぶ必要があります。そこで、開業届をオンラインで提出するメリットや、e-Taxやクラウド会計ソフトのサービスを介した開業届の手続きの手順について理解を深めてみましょう。開業届のオンライン提出についての「よくある質問」にも回答します。
目次
開業届とは
事業を始めたときなどに税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届書」は、通称「開業届」と呼ばれます。開業届を出す対象となるのは、事業所得、不動産所得、山林所得を生み出す事業をスタートさせた人で、該当するのは個人事業主やフリーランスで、オンラインのビジネスも対象です。
開業から1カ月以内に提出する書類
開業届は、事業の開始から1カ月以内に提出する必要があります。さらに、事業開始のタイミングだけでなく、事業所やオフィスの新設、増設、移転、そして事業廃止の際にも「個人事業の開業・廃業等届書」の手続きが求められます。
納税地を管轄する税務署に開業届を提出する際、次の書類を用意することを覚えておきましょう。
- 開業届(提出用・控え用)
- マイナンバーカードまたは マイナンバーがわかる書類と本人確認書類1
- 青色申告承認申請書(青色申告を行う場合のみ)など
開業届の書式はオンラインで入手可能です。開業届には、住所地や事業所、氏名、生年月日、マイナンバー、職業、屋号、開業日、事業概要などを記載します。書き方や持参するものについては国税庁のウェブサイトで確認するか、管轄の税務署に相談することもできます。
提出するメリットとは
開業届を提出すると、次の三つのメリットが得られます。
- 青色申告が可能になり、最高65万円の節税ができる
- 事業の赤字を最大3年まで繰り越しできる
- 30万円未満の固定資産を一括経費計上し、節税できる
このような経済性が開業届提出の主なメリットです。ビジネスの効率的な運営や持続性にフォーカスすると、開業届を出す意義は大きいといえます。
開業届の4通りの提出方法
開業届は対面、郵送、オンラインのいずれかの手段で提出できます。オンラインの場合は2通りの提出方法があります。どの方法でも、開業届の提出先は同じく「納税地を管轄する税務署」です。
(1)税務署にて提出する
税務署の窓口に開業届を提出する方法では、現地まで足を運ぶ手間がある一方で、対面で記入内容の確認・修正ができることが利点です。
税務署の開庁は平日の午前8時30分から午後5時までです。土日や祝日、開庁時間外には、税務署の時間外収受箱に投函して提出することもできます。
(2)税務署に郵送する
開業届を印刷・記入したら、郵便で送って提出する方法もあります。注意点は、マイナンバーカードや本人確認書類の写しと、開業届の控えを受け取るための切手付きの返信用封筒を同封する必要があることです。
郵送の場合、修正点などがあった場合のやりとりに少し余分に時間がかかってしまう可能性があります。送付前に電話で問い合わせるなどして、疑問点をしっかり解消してから提出すると良いでしょう。
(3)e-Taxで提出する
オンラインで開業の届出をする場合、「e-Tax」と呼ばれる国税電子申告・納税システムを利用できます。パソコンの画面上のフォームに記入して開業届の作成・送付を完結させられるので効率的です。
(4)外部アプリから提出する
スマートフォンを使ってオンラインで開業届を提出したい場合は、freeeやマネーフォワードという民間サービスのアプリを経由して手続きすることも可能です。この場合、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを用意します。
開業届をオンラインで提出するメリット
対面や郵送でなくオンラインで開業届を提出する場合、メリットとして次のようなものが挙げられます。
どこからでも提出できる
オンライン環境と必要な端末さえあれば、場所と時間を問わずに開業届の手続きができることが最大のメリットです。ビジネスをスタートさせるときは書類の手続きが多く忙しいタイミングでもあるので、開業届のオンライン提出で業務を効率化できます。
交通費・切手代がかからない
税務署の窓口での提出なら交通費が、郵送なら切手代や封筒代がかかります。しかしオンラインなら通信費だけで済むので、特別なコストは不要です。
書類の印刷が不要
対面や郵送だと開業届や添付書類を紙に印刷して記入する必要があります。書き損じや控えの分も考える必要があり、印刷自体は低コストでも手間はかかります。しかしオンラインの場合はすべて画面上と手元の操作だけで開業届の手続きが完了するため、印刷の手間は一切ありません。オンライン手続き後に控えをデジタルで保存すれば、紙いらずで資源の無駄を防ぐことができます。
開業届のオンライン提出の手順
オンラインでパソコンまたはスマートフォンから開業届を提出する手順を理解し、作業環境に合う方法を選んでみましょう。
パソコンから提出する方法
パソコンからオンライン手続きを行う手順は、次の通りです。各手順の詳細は後述します。
- e-Taxの利用者識別番号を取得
- 電子署名の準備(電子証明書を取得)
- e-Taxソフトをパソコンにインストール
- 開業届を入力して送信
1. e-Taxの利用者識別番号を取得
e-Taxを初めて利用する際は、まず「開始届出書2」というユーザー登録のような手続きを行い、16桁の利用者識別番号を取得します。e-Taxの開始届出書の手続きはパソコンからだけでなく、スマートフォンでも手続き可能です。
マイナンバーカードを持っている場合は、「マイナンバーカード方式3」が利用できます。マイナンバーカードを読み取り、カード発行時に設定した4桁の暗証番号を入力することで、e-Taxにログインできる方法です。ログイン後はマイページからe-Taxの利用者識別番号を確認できます。
2. 電子署名の準備
利用者識別番号の取得手続きが済んだら、次は電子署名の準備です。マイナンバーカードを利用して電子証明書(データの送信者の証明)を取得することで、開業届のオンライン手続きに必須の電子署名を有効化できます。
e-Tax上での開業届の提出にはパソコンを使いますが、マイナンバーカードを読み取って電子証明書を取得するためにICカードリーダー、またはスマートフォンも必要です。ただし、スマートフォンはマイナポータルアプリに対応した機種・動作環境が求められるため、最新情報をマイナポータルのウェブサイトで確認しましょう。
3. e-Taxソフトのインストール
続いて、e-Taxソフトをダウンロードし、パソコンにインストールします。税目プログラムのうち、「所得税」が開業届の手続きに必要な項目です。
4. 開業届の入力・送信
ここまでできたらe-Taxソフトを開き、申請・申告等一覧にある「個人事業の開業・廃業等届出書」に進みます。必要事項を入力し、電子署名を付けて送信したら手続き完了です。
スマートフォンから提出する方法
開業届のオンライン提出をスマートフォンで行う場合は、クラウド会計ソフトのfreeeやマネーフォワードなどの機能を利用して手続きします。freeeもマネーフォワードも民間のサービスですが、開業届の作成・提出に手数料などはかからず、誰でも無料で利用できます。手元に用意するものは、マイナンバーカードとスマートフォン(マイナンバーカードの読み取りに対応したもの)のみです。
freeeでの手続き
freeeを利用したスマートフォンでの開業届提出の手順は、次の通りです4。
- 「freee開業」にアカウント登録する
- 開業届に必要な内容を入力する
- 開業届の提出方法で「スマホで電子申請」を選択する
- マイナポータルとe-Taxを連携する
- 「freee電子申告・申請アプリ」をインストールする
- 作成した開業届をアプリから提出する
必要なアプリは基本的に、「freee電子申告・申請アプリ」と「マイナポータルアプリ」の二つです。ただし、Android版の電子申告・申請アプリを利用する場合は併せて「JPKI利用者ソフト」というアプリも必要です。
マネーフォワードでの手続き
マネーフォワードの場合は、スマートフォンでの開業届提出の手順は次の通りです5。
- 「マネーフォワード クラウド開業届」にアカウント登録する
- 開業届に必要な内容を入力する
- 書類の提出画面で「スマホで電子申告」を選択する
- マイナポータルとe-Taxを連携する
- 「マネーフォワード クラウド確定申告アプリ」をダウンロードする
- 作成した開業届をアプリから提出する
必要なアプリは、「マネーフォワード クラウド確定申告アプリ」と「マイナポータルアプリ」です。
会計ソフトと連携できるSquare
個人事業主でも法人でも、店舗・ビジネスの運営には開業届をはじめとする煩雑な事務作業や手続きが付き物です。そんな中で日々の営業を円滑に進めていくためには、一つひとつの作業を効率化し、データを統合的に管理する「仕組み」の導入が欠かせません。
先述のfreeeやマネーフォワードのように、開業届などの書類作成・手続きの機能も併せ持つ会計ソフトを使うなら、それらの会計ソフトと連携して利用できる決済サービスの「Square」も業務効率化の向上に寄与します。Squareでは店頭やネットショップでのキャッシュレス決済の機能だけでなく、POSレジ、請求書・見積書の作成、在庫管理などさまざまな機能を一元的に利用することができます。Squareを導入してfreeeやマネーフォワードと連携させておけば、Squareにインプットされた決済情報が自動でfreeeやマネーフォワードにも蓄積され、売り上げデータを会計ソフトに入力する手間が不要です。決済金額と会計ソフトに入力した数字が一致しないといった人的エラーも発生せず、スマートなビジネス運営が可能になります。
作業とコストの両方の効率化を追求する個人事業主やネットショップなどにとって、Squareは初期費用や月額利用料が無料で使える点も魅力です。実店舗・オンラインビジネスなどの形態を問わず、小売、飲食、美容、医療など幅広い業界でSquareは利用されています。
詳しくは以下の記事をご確認ください。
▶︎【Squareガイド】Squareとクラウド会計ソフトを連携できる?
開業届のオンライン提出についてよくある質問
最後に、オンラインでの開業届提出に際して「よくある質問」とその答えをチェックしてみましょう。
開業届のオンライン提出にICカードリーダーは必要?
開業届をオンラインで、かつパソコンから提出する場合、マイナンバーカードの読み取りにICカードリーダーまたはスマートフォンが必要です。スマートフォンがあってもマイナンバーカードの読み取りに対応していない機種・OSだと利用できないため、その場合はICカードリーダーを用意することになります。
マイナンバーカードの番号がわからなくてもオンラインで申請はできる?
オンラインでの開業届の手続きのうち、スマートフォンでの手続きには必ずマイナンバーカードが必要です。マイナンバー(個人番号)は、マイナンバーカードの表面に記載があります。オンラインの手続きではICチップを読み取る必要もあるので、「マイナンバー通知カード」ではなく必ずマイナンバーカードを用意しましょう。
ただし、パソコンで行うe-Taxサイトでの開業届の手続きの場合、マイナンバーカード以外にも利用できる電子証明書があります。公的個人認証サービス、商業登記認証局、株式会社帝国データバンクなど、指定の電子委任状取扱事業者が発行する電子証明書の取得方法はe-Taxサイトの「電子証明書の取得」のページを参照してください。
e-Taxで提出できる書類はほかに何がある?
e-Taxでは開業届だけでなく、所得税、法人税、消費税、酒税、特別復興法人税などに関わる届け出や申請などの電子手続きが可能です6。個人事業主や経営者であれば、税金関連の業務効率化のためにe-Taxの利用を検討してみると良いでしょう。
e-Taxのスマートフォン版から開業届の提出はできない?
e-Taxサイトはスマートフォンのブラウザからもアクセスできますが、利用は一部の機能に限定され、開業届の提出はできません7。e-Taxで開業届をオンライン提出する場合は、パソコンからとなります。
以上のように、開業届は作成から提出までオンラインでの手続きが便利です。これからビジネスを始めるなら、オンラインで開業届の手続きを進めると同時に、クラウド会計ソフトや決済サービスSquareなどの業務効率化の仕組みの導入も検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2024年7月2日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash