フリーランスの味方!報酬未払いを防ぐ請求書の役割

さまざまな働き方が登場している今、特定の企業や組織に属さず、自らの才能やスキルを武器に独立して働くフリーランスの道を選ぶ人が増えています。フリーランスとして働く人たちの職業は、エンジニア、ライター、デザイナーなど多岐に渡ります。

フリーランスは自分で仕事量をコントロールできたり、働く場所や時間を柔軟に変えることができるというメリットがある一方、仕事を「受ける」ことが多い場合、仕事を「発注」する側とのやり取りに際して、気をつけなければならない点も多々あります。今回は、フリーランスとして働くにあたり、報酬未払いのトラブルを防ぐ上で重要な役割を担う「請求書」について紹介します。個人事業主やフリーランスが請求書を作成・発行する際の注意点、よくある間違いやインボイス制度、クラウド請求書を利用するメリットもまとめてお伝えします。

目次


請求書の役割

Alt text

どのようなビジネスであっても、金銭を伴う取引が発生する時に必要となるのが請求書です。とりわけフリーランスで働く場合、支払いが滞りなく行われるかは自分の生活に直接関わってきます。「期日になっても報酬が支払われない」「支払いを催促しても先延ばしにされ、いつまでも支払ってくれない」などのトラブルを防ぐためにきちんと請求書を発行しましょう。

手数料の負担や支払い期日の明記など、請求書を作成する時の確認事項や、記載する項目などについては、「スムーズな取引のために、失敗しない請求書の書き方」でご紹介しています。

請求書の作成手順

請求書は、いわゆる「掛け売り」で取引を行う際に、商品やサービスの提供を行ったあとに対価を受け取るための金額や条件などを記載した書面です。売り手(個人事業主やフリーランス)が買い手(取引先)に向けて発行するもので、約束どおりに取引を進めるための相互の意思確認書として欠かせません。

契約書の作成から入金までは、次のようなプロセスを踏むのが一般的です。

1.契約内容を確認する

特に契約書などを取り交わしていない場合でも、売り手と買い手、双方の合意があれば契約は有効です。電話やメールなどで依頼を引き受け、契約書や発注書などで事前に取引の詳細が残されていない場合には、請求書を発行する前にいくつか確認しておくべきポイントがあります。

基本的には、単価や消費税の扱いをどうするか、締め日・支払日といった支払いサイト、振り込みの場合には振込手数料をどちらが負担するかなどが挙げられます。

2.テンプレートを用意する

請求書には特定のフォーマットはありませんが、記載漏れなどを防ぐためにテンプレートを利用するのがおすすめです。請求書の作成は、「市販の用紙に手書き」「Excelなどのソフトを使う」「会計ソフトを使う」「クラウド請求書を利用する」などの方法があります。

Excelなどのソフトを使って請求書を作成する場合でも、金額や項目を入力するだけで利用できるフォーマットをインターネット経由で提供している業者もあるので、それらを利用すれば手間なく作成することができるでしょう。

3.請求書を発行する

フォーマットの項目に合わせて、内容や金額を記載し、請求書を作成します。

作成した請求書は、手書きの紙面やプリントアウトしたものを郵送するほか、スキャンしてデータ化したものや、PDFファイルなどのフォーマットで保存したものをメールに添付して送るなど、電子データとしても発行が可能です。会計ソフトやクラウド請求書サービスのなかには、入力作業からの一連の流れで請求先にデータが送れるものもみられます。

4.受領・入金を待つ

請求書を発行したら、発行した請求書に不備などがなく、正しく受領されたことを確認します。特に受領通知などを送らない企業もあるので、初めて取引する場合などは、担当者に問い合わせておくと安心です。先方での承認が得られたら、指定の期日まで入金を待ちます。

請求書に記載すべき7項目と注意事項

請求書には特に決まった書式はなく、自由にレイアウトすることができます。ただし、記載内容には注意が必要で、支払いトラブルを生まないために記しておいたほうが良い項目がいくつかあります。最低限、以下に紹介する7項目は記載しておくようにしましょう。

1. 宛先

請求先の法人名や屋号、氏名を記載します。あわせて担当者名も載せておくと、受け取り側で書類が紛れてしまうリスクも少なくなるでしょう。法人名や屋号のみを記載する場合には最後に「御中」を、氏名や担当者名を記載する場合には最後に「様」を付けましょう。

取引相手によっては、「宛先を別法人名にしてほしい」「取引内容ごとに分けて請求してほしい」ということもあるので、前もって確認しておくと安心です。

2. 金額

提供した商品やサービスの具体的な内容と金額を記載します。

取引内容が明快になるよう、個々の商品やサービス名ごとに行を分けて数量と単価を載せ、最後に数量に単価を乗じた金額を記載します。

3. 消費税・源泉徴収税

各項目で算出した金額をすべて足した小計と消費税額を記載し、源泉徴収税がある場合にはその額を算出し、記載しておくのが通例です。

源泉徴収税とは、請求元の個人事業主やフリーランスが特定の業種である場合に、請求先があらかじめ請求元の所得税を代わりに納めておくもので、総合計から源泉徴収税額を差し引いたものを請求金額として記載します。

4. 発行日・発行者

発行日と発行者名、住所や連絡先を記載します。発行日は請求書を作成した当日ではなく、月末など請求先の支払いサイトに合わせた日が指定されることが多いので事前に確認しておくようにしましょう。

また、発行者の住所や連絡先のスペースに押印する慣例がありますが、請求書の要件とはなっておらず、近年では廃止している事業者も増えてきています。

5. 支払期限

請求先と決めておいた支払い期限も記載するようにしましょう。

支払い期限が平日の場合は特段問題はありませんが、土日祝日や年末年始など金融機関の業務が停止する日になる場合は、休み前にするか、休み明けにするかを事前に決めておく必要があります。

6. 振込先の口座情報

銀行名、支店名、口座の種類、口座番号を記載します。振込手数料が発生する場合、どちらが負担するかも事前に確認し、記載しておくとよいでしょう。

7. 請求書番号

不備などがあった場合に素早く照会できるよう、通し番号や作成日時などのルール化された番号を記載しておくと便利です。

項目ごとに気をつけるべきこと

各項目の注意点を以下の表にまとめています。

項目 気をつけること
1.宛先 法人名や屋号のみを記載する場合には最後に「御中」を、氏名や担当者名を記載する場合には最後に「様」を付ける。
2.金額 個々の商品やサービス名ごとに行を分けて数量と単価を載せ、最後に数量に単価を乗じた金額を記載する。
3.消費税・源泉徴収税 小計と消費税を記載し、源泉徴収税がある場合にはその額を算出し、記載しておく。
4.発行日・発行者 請求書を作成した当日ではなく、請求先の指定日にする。
5.支払い期限 金融機関が休みになる日と重なる際にどうするかを確認する。
6.振込先の口座情報 口座情報とあわせて振込手数料をどちらが負担するかも記載する。
7.請求書番号 ほかの請求書と重複しないようにする。

よくある請求書の間違い

請求書を作成する過程で起きがちなミスを見ていきましょう。

▼誤りのある請求書

jp-blog-invoice10

1:発行日は請求書を作成日付ではなく、締め日や月末など請求先が指定した日付を記載します。
2:宛名は正式名称を記載します。社名のみであれば「御中」を、担当者名まで記載するのであれば「様」を最後に付けましょう。
3:金額には3桁ごとにカンマを打つようにしましょう。

▼正しい記述の請求書

jp-blog-invoice11

フリーランスだからこそ気をつけること

Alt text

源泉徴収の対象かどうかを確認する

源泉徴収は会社勤めの人たちだけでなく、フリーランスとして働く人たちにも関係があります。国税庁では、報酬・料金などの支払いを受ける人が個人の場合の源泉徴収の対象範囲を以下の通りに定めています。

1 原稿料や講演料など
2 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
3 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4 プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
5 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
6 ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
7 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
8 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

ライターやセミナー講師、モデルなどフリーランスとして働く多くの人に当てはまりそうな内容が見受けられます。上記の範囲に該当する場合、報酬を支払う側は源泉徴収義務者と見なされます。自身の業務が源泉徴収の対象となるかどうか、国税庁の情報をチェックして、当てはまる場合は計算して請求書に記載します。その際の消費税の記載の方法や確定申告の仕方などにも目を通しておきましょう。

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁)

控えを保管する

請求書を作成した後は、必ず控えを保管するようにしましょう。請求書は、お金のやりとりを証明する書類として証憑書類に該当し、一定期間保管することが法律によって義務付けられています。また、期日を過ぎてもクライアントが支払いに応じてくれない場合、内容証明を送付したり、少額訴訟の手続き時に発行済の請求書を証明として利用したりすることもあります。請求書は作成・送付したら終わりではなく、きちんと控えを保管するようにしましょう。

インボイス制度に対応した請求書を作成する

2023年10月1日からインボイス制度が開始し、買い手が消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには適格請求書発行事業者が発行した適格請求書(インボイス)を保存しなくてはならなくなりました。

適格請求書(インボイス)とは、売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額を伝えるものです。

適格請求書には以下の項目を記載します。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号(Tからはじまる13桁)
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨も記載)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額など
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

一般的な請求書と同様に適格請求書に指定の書式はありませんが、必ず記載しなければいけない項目に漏れや抜けがあると適格請求書として認められないので、気をつける必要があります。そういった不備の発生や1つ1つ項目を確認する手間などを考えると、フォーマットを自作して運用するよりも、インターネット上で配布されているフォーマットや市販の会計ソフト、クラウド請求書サービスなどを利用するほうが効率的であり、安心だといえるでしょう。

また、2023年4月には消費税法の一部が改正され、インボイスを発行する売り手の納税負担を軽減する「2割特例」や、1万円未満の取引に関してはインボイスの保存が不要になる「少額特例」が設けられるなど、インボイス制度に関しては一部見直して行われました。詳しくは、国税庁のウェブサイトをご確認ください。

業務効率化にクラウド請求書を活用する

Alt text

請求書作成、印刷、内容確認、封入、郵送という一連の流れは、フリーランスとして働く人にとって大きな負担となります。内容を間違えば、支払いがスムーズに行かないことも起きるため作成には神経を使います。そのような負担を軽減してくれるものがクラウド請求書です。クラウド請求書は、インターネットに接続できる環境であればどこにいても作成、送信することができます。また、クラウド請求書の多くは、請求書作成・送付機能にとどまらず、見積書・納品書の作成機能、会計ソフトとの連携機能など、経営をサポートするさまざまな機能を提供しています。

Square 請求書でめんどうな請求業務を効率化しよう!

キャッシュレス決済サービスのSquareが提供するSquare 請求書は、請求書を簡単に作成・送付できるサービスです。取引先のメールアドレスさえ分かれば、パソコンやスマートフォン、タブレットから、インボイス制度に対応した請求書を送ることができます。請求書を受け取った取引先は、メールにあるリンクからワンクリックで決済画面に飛び、クレジットカード決済で請求額を支払うことが可能です。また、支払い状況の管理も併せて行うことができ、フリーランスで働く人にとって業務効率化の強い味方です。

これらの機能はすべて無料で利用でき、取引先がクレジットカード決済を行った場合のみ決済手数料が発生します。

jp-blog-invoice

複数のプロジェクトを同時進行することが多く、なるべく請求書業務を効率化したいという人には、便利な機能が詰まった有料プラン(Square 請求書プラス)も用意しています。料金プランごとの特徴について詳しくはこちらからご確認ください。

報酬のスムーズな支払いや、業務効率化にも役立つクラウド請求書は、フリーランスとして働く人たちにとってなくてはならないツールといえるのではないでしょうか。この機会にぜひ検討してみてください。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2017年9月5日時点の情報を参照しています。2024年1月23日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash