源泉徴収義務者が知っておくべきことまとめ

源泉徴収義務者の役割

給与や報酬の支払いを受ける者が、一年間の収入額や社会保障などの控除額に基づいて計算される所得税を国に確定申告をして納税することは法律で義務付けられています。(申告納税制度)

しかし、確定申告期間は対象となる収入が発生した年(1月から12月までの間)の翌年3月までに限られており、該当する全ての個人が期間内に漏れなく申告手続きを済ませることは容易いことではありません。さらに、一年分の納税額を一度にまとめて支払うとなると、多額の費用となる可能性があり納税者にとっては大きな負担となります。

そこで、所得税の納税義務がある個人に支払われる給与や報酬などから、支払者(事業主など)があらかじめ納税額を差し引くという制度が生まれました。これを源泉徴収制度といいます。

この源泉徴収制度の採用により、従業員に源泉徴収を行うのは、給与などの支払者である事業主の義務となりました。このような役目を持つ企業や個人事業主を源泉徴収義務者と呼びます。

源泉徴収義務者は、従業員の給与などから差し引いた税金を、対象とする収入が発生した月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。納付に漏れがあったり期限を過ぎてしまったりすると、延滞税や不納付加算税などの罰則が課されることがあるので、注意しなければなりません。

しかし、給与などの支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を所轄の税務署長に事前に提出して許可を得ることで、源泉徴収税を年二回にまとめて納付することが可能です。

また、源泉徴収の対象となる支払いは給与所得に限らず、原稿料や講演料の報酬など、多岐に渡ります。源泉徴収義務者は源泉徴収の対象範囲をきちんと理解しておく必要があります。

参考:源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲(国税庁)

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源泉徴収額の求め方

源泉徴収額はどのように計算されているのかを身近な給与所得を例に挙げて整理してみましょう。

源泉徴収税額表を準備する:源泉徴収義務者は、国税庁のウェブサイトに掲載されている税額表を使って、各従業員の収入や扶養家族の状況に応じて給与から差し引く源泉徴収額を算出します。この表は毎年更新されるので、必ず該当する年の税額表を選ぶようにします。

参考:平成29年分の源泉徴収税額表(国税庁)

月額表と日額表の違い:参照する税額表を選択します。「月額表」(給与が毎月、または半月ごと、10日ごとなどに支払われる場合)と「日額表」(給与が働いた日ごと、または一週間ごとに支払われる場合)と「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」(ボーナスが支払われる場合)に分かれているので、各従業員への給与の支払い方法に該当する税額表を参照します。

甲欄と乙欄の違い:税額表は、甲欄と乙欄に分かれています。従業員による給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出がある場合は、甲欄を参照します。扶養親族の数によって源泉徴収税は異なります。提出が無い場合は、乙欄を参照します。

その他の社会保険料等控除後の給与等の金額:総支給額から社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)を引いたものを指します。

参照すべき箇所や控除後の給与の金額が分かったら、表の中で該当項目の行と欄が交わる箇所を探し、記載されている金額を源泉徴収税の額とします。

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復興特別所得税について

これまでの説明では、源泉徴収とは個人に対する支払いから所得税を差し引くことだとお伝えしてきましたが、2017年現在の源泉徴収額は、所得税と復興特別所得税の合計額であるということを知っておく必要があります。

2011年12月に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法が公布されたことを受け、源泉徴収義務者は、2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間に発生する支払いに対して源泉徴収する際、所得税の他に復興特別所得税を併せて徴収し、その合計額を国に納付する必要があります。

前項で取り上げた税額表の記載金額は、所得税に復興特別所得税を合計したものですが、個人事業主など自ら確定申告を行う必要がある場合は、この特別措置を考慮することを忘れないようにしましょう。

参考:復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(国税庁)

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源泉徴収票の作成と交付

源泉徴収義務者は、給与や報酬などを支払った全ての者に対して源泉徴収票を作成し公布しなければなりません。源泉徴収票の具体的な作成方法は国税庁のウェブサイトで確認することができます。また、一部の源泉徴収票は税務署に提出する必要がある場合もあるので、提出範囲についても正しく理解しておく必要があります。

参考:「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数(国税庁)

源泉徴収票の電子交付

2007年1月以後、それまでの書面による交付に代えて、交付を受ける者(従業員など)の承諾がある場合に限り、源泉徴収票に記載すべき事項を電子メールによる送付や磁気媒体などに記録して交付(電子交付)することが可能になりました。(給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)制度)

その後の税制改正により、この制度の適用範囲は給与所得の源泉徴収票のみに限らず、退職所得の源泉徴収票や公的年金の源泉徴収票などにも拡大されています。

しかし、源泉徴収票の電子交付が可能になったことは、経費削減や経理事務の効率化を目的としたペーパーレス化の試みの一環として考えることができる一方、電子交付された源泉徴収票を確定申告の添付書類として使用することはできないという注意点があります。この場合、支払者である事業主は、確定申告を行う従業員に対して源泉徴収票を書面で交付しなければなりません。

その他の目的においても、電子交付を受けた従業員から事業者に対して書面による交付の請求があった場合、事業者はこれに応じる義務があります。

なお、電子交付された源泉徴収票であっても、国税庁が定める一定のデータ形式で作成し、かつ、給与などの支払者(交付者)の電子署名を付与したものは、給与などの受給者(交付を受ける者)が国税電子申告・納税システム(e-Tax)により確定申告を行う際、その添付書類としてオンライン送信することが認められています。

源泉徴収票は、確定申告や住宅ローンなどを組む時などに必要となるだけでなく、事業主にとっても従業員の収入と納税を証明する重要な書類です。源泉徴収義務者の役割をしっかり理解して、漏れのない源泉徴収を、そして納税を心がけましょう。

執筆は2017年3月24日時点の情報を参照しています。
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