オンライン予約の普及や感染症拡大の影響により、予約の直前キャンセル、無断キャンセルに悩んでいるという事業者は増えているかもしれません。キャンセル料の設定は、消費者契約法などに基づく運用が求められます。不当なキャンセル料を設定した場合には無効になってしまう可能性もあるため、しっかりと内容を把握した上で、キャンセル対策を講じましょう。
この記事では、予約キャンセル料について、消費者との契約に関する基本的な考え方を整理し、キャンセルポリシーやキャンセル料金の設定方法を紹介します。また、無断キャンセルへの対応についても解説します。
目次
- キャンセル料とは
・予約キャンセルの考え方と消費者契約法
・消費者契約法の基本ルール
・消費者を守る様々な法律 - キャンセルポリシーの作り方
・キャンセル料条項に掲載する事項
・キャンセル料条項はどこに記載するとよいか - 業種別キャンセル料金の決め方
・飲食店・宿泊施設などの予約キャンセルの場合
・物販の予約キャンセルの場合
・特定継続的役務提供型サービスの解約の場合
・オンラインサービスの解約の場合 - 無断キャンセルへの効果的な対応
・コース予約の場合の無断キャンセルに対する考え方
・席のみ予約の場合の無断キャンセルに対する考え方
・キャンセル料(損害賠償)請求のための必要事項
・無断キャンセル防止のための対策例
キャンセル料とは
キャンセル料は、予約をしていた商品やサービスなどをキャンセル(取消)したときにかかる料金のことで、取消料とも呼ばれます。商品やサービスを提供する事業者がそれぞれ独自にキャンセル期間を定めており、この期間に入ってからお客様がキャンセルした場合にはキャンセル料がかかります。ただ、キャンセル料に関しては事業主が自由に設定できるわけではありません。その理由を次項以降説明していきます。
予約キャンセルの考え方と消費者契約法
消費者との契約に関して定められた「消費者契約法」を軸に、予約キャンセルの基本的な考え方とキャンセル料を設定するにあたっての基本ルールを整理しておきましょう。
予約キャンセルは、事業者(お店)と消費者(お客様)が交わした契約(消費者契約)を解除する行為です。
事業者と消費者が契約する場合、商品やサービス内容、関連知識などの情報量に圧倒的な差があり、そのままだと消費者が不利益になる契約を結んでしまうおそれがあります。消費者契約法は、このような状況から消費者を保護するために制定された法律です。制定が2000年と比較的新しく、その後も社会の状況に合わせて消費者を守るため改正を重ねてきました。
消費者契約法の基本ルール
消費者契約法は、契約の「取消」と「無効」の二つを基本に消費者を保護します。取消は、不当な勧誘によって結ばれた契約を後から取り消すことができるとするものです。無効は、消費者が一方的に不利益を被る場合に契約条項を無効にできるとするものです。
キャンセル料は、消費者契約法第9条に考え方の基本が定められています。第1項には、契約の解除に伴う損害賠償や違約金について、事業者に生じる平均的な損害の額を超える金額を請求した場合、超えた部分について無効となることが示されています。また、第2項には、損害賠償金を支払う期日を超えて支払われない遅延損害金について、年利14.6%を超える部分については無効と定められています。
つまり、キャンセル料は事業主が自由に設定できるわけではなく、平均的な損害額の範囲や金利に抑えられています。
参考:消費者契約法(消費者庁)
消費者を守る様々な法律
消費者を保護する法律には、消費者契約法の他、特に契約トラブルを招きやすい商取引を対象とした「特定商取引法」、クレジットカードやローンを利用した商品購入の被害を防ぐ「割賦販売法」、虚偽広告や過大な景品提供を規制する「景品表示法」があります。
これらの法律は相互に関連しながら、消費者と事業者が公平な取引環境のもとで合理的に選択し気持ちよく生活できるよう、契約のルールを形作っています。
キャンセルポリシーの作り方
ここからは、具体的にどのような内容を定めると公平な取引となるのか、キャンセルポリシーの記載内容を整理していきましょう。
キャンセル料条項に掲載する事項
キャンセルに伴い発生する事項をまとめたものを「キャンセルポリシー」といいます。取引の際には必ず提示できるようにしておきましょう。
キャンセルポリシーには、次のような事項を記載します。誤解を生むあいまいな表現は避け、具体的に連絡方法と連絡先、連絡してほしい内容を記載しましょう。
- キャンセル可能な期間:何日前までキャンセルができるか
- キャンセル可能な期間を過ぎた場合の対応:キャンセル可能期間が過ぎた際にキャンセル料金の支払いを求める場合、契約金額に対して何割を請求するか
その他、感染防止対策や自然災害への対応など、不測の事態によりやむを得ずキャンセルとなる場合については直前の連絡でもキャンセル料がかからないといった点も記載しておくと、お客様が安心して予約できる環境を提供できます。
キャンセル料条項はどこに記載するとよいか
キャンセルポリシーは目立ちやすい場所に掲示し、予約前にかならず一読するように促します。ホームページに掲載する場合、商品・サービスの掲載ページの他、店舗情報に相当するページにも明記しておくとよいでしょう。予約のページには、キャンセルポリシーに同意する旨のチェックを入れる仕組みをつけておくとより確実でしょう。
電話での予約の場合、口頭で伝えるのを忘れないようにしましょう。最低でもキャンセルが可能な期間とキャンセル料発生の可能性についてはしっかりと話し、予約確定時の確認メールやSMSなどにキャンセルポリシーを明記することが望まれます。店舗での予約の場合、キャンセルポリシーを紙面にして予約時に渡して同意のチェックを入れてもらえるようにしておくとよいでしょう。
業種別キャンセル料金の決め方
お客様都合によりキャンセルした際の損害賠償や違約金について、業種ごとに具体的な考え方を見ていきましょう。
飲食店・宿泊施設などの予約キャンセルの場合
飲食店や宿泊施設などの予約については、利用日のかなり前のキャンセルであれば、新たに別のお客様による予約を受け付けることが可能ですが、直前になると新規予約の受付は難しく、用意した食材や人員が無駄になる可能性が生じます。埋め合わせできない損益を考慮し、キャンセルの時期に応じたキャンセル料を設定するのがよいでしょう。
たとえば、経済産業省が発表したNo show(飲食店における無断キャンセル)対策レポートでは、キャンセルに伴う損害賠償の考え方が示されています。事前キャンセルでは逸失利益(キャンセルがなければ得られたであろう利益)を補填できる可能性がありますが、無断キャンセル(ノーショウ)では逸失利益の補填は難しいため、事前キャンセルと無断キャンセルでは異なるキャンセル料を設定しているケースが多いようです。
物販の予約キャンセルの場合
商品の購入予約に関するキャンセルは、別の購入者に販売すれば損害が生じない場合が多く、キャンセル料を定めても無効とされるケースがみられます。オーダーメイドの商品や名入れを行ったものなど、キャンセルされた場合に他のお客様へ転売が困難な商品に対し、キャンセル料条項を入れるとよいでしょう。
特定継続的役務提供型サービスの解約の場合
エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の七つのサービスについては、特定商取引法の対象となっています。店舗、郵送、オンラインのいずれも含みます。それぞれの業態別に、サービスの開始前の解約やサービス開始後の中途解約の際のキャンセル料の上限が決められています。該当する業種の場合は特定商取引法の基準で設定しましょう。
オンラインサービスの解約の場合
オンラインの学習塾のように、特定商取引法上のサービスに該当する場合は、先述の役務提供型の解約の基準でキャンセル料を設定します。
特定商取引法では、サービス開始後の中途解約の場合、たとえば学習塾であれば「2万円または1カ月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額」という目安があります。特定商取引法の対象にならない月払い制のサービスについてもこれを参考に、1カ月の月額料金を目安にした上で、解約に伴って生じた損益を加味してキャンセル料を定めるとよいでしょう。
無断キャンセルへの効果的な対応
お客様都合のキャンセルの中で最もやっかいなのが、前述の「無断キャンセル」です。たとえ直前でも事前に連絡があれば次のお客様を探す手配ができますが、何の連絡もない場合は予約時間が過ぎても席を確保したまま待っているため、長時間の機会損失が生じてしまいます。
コース予約の場合の無断キャンセルに対する考え方
コース予約など、予約時に提供する内容が決まっていた場合は、キャンセルで発生した損害を再販することが著しく困難であることから、全額のキャンセル料を請求するキャンセル料条項を定めることができるでしょう。ただし、その場合でも転用可能な食材や人件費は除くなど、消費者契約法など関連法に則り算出する必要はあります。
席のみ予約の場合の無断キャンセルに対する考え方
席のみ予約の場合であっても、予約時に内容が確定していると考えられる場合はコース予約と同様に扱うことができます。内容が確定していなかった場合、キャンセルと無関係に発生する固定費、転用できる食材や人件費については損害賠償の対象からは除外となります。席のみ予約の場合、実際にどのくらいの売上になったかを算定するのが難しいため、平均客単価の何割かを按分して損害賠償額とする考え方が一般的です。
キャンセル料(損害賠償)請求のための必要事項
無断キャンセルの場合、転用できないで待ち続けている損失分が大きいため、席のみ予約の場合でも、補填不可能な金額が高めになることが想定されます。また、季節や繁忙期・閑散期でも算定方法は異なります。店舗の運営状況に応じた適切なキャンセル料の算定ができるようになっておきましょう。
また、店舗にキャンセルポリシーを明確に打ち出し、予約時には必ずキャンセル料が発生する可能性と、キャンセルのタイミングやキャンセル料の目安を具体的に伝えましょう。
無断キャンセル防止のための対策例
無断キャンセルを防止するため、次のような予防策を工夫し、お客様もお店も納得できる円滑な商取引でサービス向上を目指しましょう。
- 予約時に連絡先を確実に把握し、再確認の連絡を入れる
- キャンセル時に連絡しやすい体制や仕組みを構築する
- キャンセルポリシーやキャンセル料をわかりやすく提示する
- 事前決済や預り金などの仕組みを導入する
- 予約管理システムの連絡機能を使ってキャンセルポリシーの確認やリマインド、キャンセル受付などの対応を一元的に行う
無料で導入できる予約管理システムのSquare 予約では、SMSとメールでリマインドを自動送信し、無断キャンセルを未然に防ぐことができます。また、事前決済に対応した予約専用サイトが作成できたり、キャンセル料金の回収ができたり(有料機能)など、無断キャンセルの防止だけでなく、トラブル回避の手段としても役立ちます。
予約管理はSquare 予約で
Squareの予約管理は無料から導入でき、事前決済はもちろん、有料プランの場合はキャンセル料も取れるので、ノーショウ対策もできます。専用アプリでも、お使いのブラウザでも、場所を問わず、どこでも予約の状況を確認、調整できます。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2022年2月15日時点の情報を参照しています。2023年8月25日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash