民間学童保育を開業したい!使える助成金や必要な資格について

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

放課後や夏休み・冬休みなどの長期休暇に、小学生の子どもの預け先として利用できる学童保育。共働きの世帯が増加したり、コロナ禍などで利用を控えていた家族が再び預けるようになったりと、需要が高まっています。

この記事では、これから民間の学童保育を開業しようと思っている人に向けて、必要な手続きや資金、活用できる補助金などを紹介します。学童保育の種類やサービス内容、必要な資格などもあらためて振り返っておきましょう。

目次


学童保育とは

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学童保育は放課後や長期休暇のあいだに子どもを預けられる施設のことをいいます。子どもたちが安心して過ごせる居場所の提供が主な役割です。学童保育の種類にもよりますが、公立だと18時頃、民間だと21時頃まで開設しているところが多く、働く親の強い味方になっています。

学童保育とひと口にいっても、自治体が設置から運営まで行うものもあれば、運営だけを民間に委託しているものや設置と運営を民間が担うもの、さらには民間企業が独自に預かりサービスを提供するものなど、さまざまな種類があります。それぞれの種類について詳しく見ていきましょう。

学童保育の種類

学童保育は大きく3種類あります1。以下の比較表でその違いを見てみましょう。

  放課後児童クラブ 放課後子ども教室 アフタースクールサービス
管轄 こども家庭庁 文部科学省 なし
設立・運営 自治体/民間 自治体 民間
費用 有料 無料 有料
入会金 なし なし 1万円〜3万円程度
月額利用料金の目安 4,000円〜8,000円程度 無料 1万円〜10万円程度
対象 市区町村内小学校に在籍している児童(1〜6年生) 市区町村内小学校に在籍している児童(1〜6年生) 小学1〜6年生の児童
保護者の就労の有無など 原則は共働き、またはひとり親など 問わない 問わない
預かり時間 18時頃まで(オプションで延長保育あり) 17時頃まで 18時以降の延長保育あり
主な過ごし方 ・自由に遊ぶ
・おやつを食べる
・宿題をする
・自由に遊ぶ
・宿題・工作をする
・地域住民と交流する
・習い事をする
・宿題をする
・おやつや夕飯を食べる
送迎サービス 原則なし
※オプションによってはあることも
原則なし 施設による

(1) 放課後児童クラブ

放課後児童クラブは、児童福祉法に基づき設置されます。正式名称は「放課後児童健全育成事業」で、設置と運営の形態によって下記の3種類に分かれます。

  • 自治体が設置・運営する「公設公営」
  • 民間企業に運営を委託する「公設民営」
  • 市区町村から補助金を受けて民間事業者が設置・運営する「民設民営」

2020年の調査2によると、「公設民営」が5割弱と一番多く、「民設民営」が3割、「公設公営」が2割程度となっています。

放課後児童クラブは小学校または児童館に設置されていることが多く、おやつを食べたり宿題をしたり、自由に遊んだりして時間を過ごします。基本的には下校のタイミングから利用できるため、帰宅することなくそのまま向かえる点がメリットです。

また民設民営の放課後児童クラブは、別途費用がかかりますが、充実した教育プログラムを提供していたり、公設の放課後児童クラブよりも預かり時間が長かったり、希望者には夕食の提供やお迎えサービスなどもあったりします。

放課後児童クラブは後述するアフタースクールサービスと比べると費用が安く、自治体によっては利用料の減免制度を設けています。ただし、利用にはさまざまな条件があり、審査を通過した場合のみ入所できるしくみです。

一般社団法人児童健全育成推進財団によると、放課後児童クラブの役割は、「保護者が共働き等により昼間家庭にいない小学生を預かり、その遊びと生活を支援し、健全育成を行うこと」3とあります。保護者が何かしらの事情で昼間自宅にいない場合の利用が前提としてあることがわかります。

(2) 放課後子ども教室

放課後子ども教室は、文部科学省が管轄しており、正式名称は「放課後子ども教室推進事業」です。

東京都生涯学習情報の説明4では、放課後子ども教室では子どもたちが安心、安全に活動できる居場所を提供するのはもちろん、地域住民との交流などを通じて、地域社会のなかで子どもたちが豊かに健やかに育まれるような環境づくりも目指しているとあります。

2007年から推し進められてきた「放課後子どもプラン」5により、放課後児童クラブとの一体化、あるいは連携しての運営がずいぶんと定着してきました。そのため、放課後児童クラブと同様に設置場所は小学校や児童館であることがほとんどです。一見この二つは似ているようにも思えますが、放課後子ども教室は親の就労状況を問わず無料で利用できるところが大きな違いです。ただしその分利用時間が短かったり、指導員として放課後児童支援員は配置されず、地域の大人や退職した教員などのボランティアによって成り立っています。

(3) アフタースクールサービス

最近では、「アフタースクールサービス」と呼ばれる独自の学童保育サービスを提供する民間事業者も増えているようです。

民間で学童保育を始める際には、(1)の民設民営の放課後児童クラブまたはアフタースクールサービスの二つが主な選択肢になります。アフタースクールサービスは、多彩なプログラムと手厚いサポートが用意されている分、月額利用料金は高額になります。こうしたサービスを開業・運営するのに、特別な資格はいりませんが、保護者が安心して預けられるためにも「幼稚園教諭」「保育士」「小学校教諭」などの有資格者を配置している施設がほとんどです。また、親の就労状況などは問わず、対象年齢を満たしている児童が利用できます。

学童保育で提供するサービス内容

学童保育では出欠の確認から始まり、それぞれ宿題をしたり遊んだりして時間を過ごします。個別の活動と合わせて、集団でスポーツをしたり、屋内で工作をしたりすることもあります。施設によっては、おやつを提供することもあるようです。そのほか、日常の生活習慣を身につける機会として、掃除や後片付けにも子どもが参加します。

公立の学童保育では自由に遊べる時間がたっぷりと設けられている一方、民間の学童保育では宿題をする時間も設けつつ、プログラミングやヒップホップダンス、英会話、絵画・造形など特定のスキルを伸ばせるカリキュラムもあわせて用意されていることが多いようです。来所してから帰宅するまでの活動は、学童保育ごとに特色を生かせるところでしょう。

学童保育のニーズはある?

近年では自治体が率先して保育の受け皿を拡大してきた背景もあり「待機児童ゼロ」を実現している自治体が少しずつ増えています。少子化の深刻な状況なども踏まえると、今からはじめてもニーズはあるのだろうかと思うかもしれません。学童保育の現状を見てみましょう。

学童保育の現状

待機児童が社会問題として大きく取り上げられたことを覚えている人も多いでしょう。保育園に関しては、待機児童の数は減ってきているようで、実際に2023年には待機児童が5年連続で過去最小と報じられていました。一方で、学童保育の待機児童は2020年、2021年に一旦減少傾向を見せたものの、2022年から増加に転じ、2023年には1万6,000人以上の児童が利用できなかったとこども家庭庁は発表しています6

地域ごとの差もあります。たとえば都内でいうと、待機児童が200人以上いる区もあれば、10人を下回る区もあります7。なかには子育て世帯が急速に増加し、施設の確保が追いついていない自治体もあるようです。さらに待機児童が多いエリアでは、対象を小学3年生までとしている施設もあります。

こういった背景から、地域などによっては高いニーズがあると考えられます。

民間の学童保育を始める際に必要なこと

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民間で学童をはじめるには、(1)民設民営の放課後児童クラブ、あるいは(3)アフタースクールサービスの2種類があることが「学童保育の種類」の章でわかりました。開所・運営に必要な届出や資格保持者の確保、施設の整備は、どちらの方法で開業するかによって異なるため、以下から詳しく見ていきましょう。

また、省令やガイドラインは改訂されることもあるので、定期的に最新の情報をチェックするようにしてください。

届出

自治体からの補助金を受けて民設民営の放課後児童クラブをはじめる場合、あらかじめ開所予定の市区町村に届け出ます。事業開始だけでなく、変更事項がある場合や、学童保育を廃止や休止する場合にも届出が必要がです。開所を検討している市区町村のウェブサイトや窓口で届出に必要な書類などを確認するようにしましょう。

ただ、アフタースクールサービスを提供する場合、届出は不要です。

適切なスタッフの確保

アフタースクールサービスの場合、特別な資格を持ったスタッフの配置は求められていません。とはいっても有資格者がいないと聞くと多くの保護者は不安を抱くでしょう。この点がネックとなり、十分な利用者を確保できない可能性も考えられます。そのため、保育士や社会福祉士、教員といった子どもに関連する資格を持ち、都道府県知事が指定する研修を受けた「放課後児童支援員」を配置することが多いようです。

民設民営の放課後児童クラブの場合、厚生労働省では、「放課後児童支援員を、支援の単位ごとに2人以上配置(うち1人を除き、補助員の代替可)」としています。支援の単位の目安は40人です。この支援単位に対して、少なくとも1人の放課後児童支援員を配置する必要があります。その他の要員については補助員でも構わないとしています。

サービスの基準

アフタースクールサービスでは、サービスの基準についても決まりがありません。宿題のサポートから、中学校受験対策、送迎、長期休暇中のキャンプまで、事業者ごとに多種多様なメニューが用意されています。

民設民営の放課後児童クラブでは、厚生労働省の放課後児童クラブ運営指針8が基準になります。厚生労働省の運営指針では、開所日数を原則年間250日以上、開所時間を平日3時間以上、休日や長期休暇中は8時間以上と定められています。また、新1年生は保育所からスムーズに切り替えられるよう4月1日から受け入れるようにとあります。

施設の基準

前述の運営指針では、専用の部屋、または間仕切りで区切られた専用のスペースを用意し、1人あたり1.65平方メートル以上の確保を求めています。また、体調が悪いときに休むためのスペースも必要です。事故や怪我防止のための安全対策も計画してください。

民間の学童保育を経営するのに資格は必要?

先述のように、民設民営の放課後児童クラブでは放課後児童支援員の配置が求められます。一方で、アフタースクールサービスを提供する場合には資格は必要ありません。ただし、安心・安全な環境づくりを目指すうえでも、資格を取得しているスタッフを配置するのが好ましいでしょう。

放課後児童支援員とは?

放課後児童支援員になるには、以下の条件に当てはまること、また計24時間におよぶ「放課後児童支援員都道府県認定資格研修」の受講が必要です。

- 保育士の資格を有する者
- 社会福祉士の資格を有する者
- 学校教育法の規定により、幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の教諭となる資格を有する者
- 学校教育法の規定による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。)において、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者
など

引用:放課後児童支援員に係る都道府県認定研修ガイドライン(案)の概要(厚生労働省)

また、参考までに放課後児童支援の役割は以下のとおりです9

  • 一人ひとりの子どもの状況を把握する
  • 子どもの生活を、時間・空間の両面からとらえ、子どもの状況を把握しながら組み立てる
  • 放課後児童クラブで過ごす上で必要な基本的生活習慣を習得することを援助する
  • 遊びや諸活動を通じて、一人ひとりの子どもの生活を支え、発達を促す
  • 危険から子どもを守るとともに、子どもが自らを守りお互いを守る力を育てていく
  • 保護者との伝え合いを通じて、子どもの育つ家庭での生活を支える
  • 地域社会の中で、子どもの生活が円滑に進められるようにする
  • 学校や地域、その他関係機関との連携を深める

民間の学童保育の開業に必要な資金

開業には最低でも1,500〜2,000万円は必要

民間の学童保育を開業するには多くの資金がかかります。具体的には1,500万円から2,000万円ほどが相場だといわれています。なかでもコストの多くを占めるのは物件と送迎車の取得費、内装のようです。英会話教室やスポーツクラブが既存の施設を利用することで開業資金をおさえることもあれば、自治体からの補助金を受ける民設民営の放課後児童クラブを運営することで利用料をおさえるところもあります。車による送迎サービスの代わりに、スタッフが徒歩で近隣の小学校に児童を迎えに行く施設もあります。

何にいくらかけるかは、設置・運営の形態によって大きく異なり、さらに地域の特性や家庭のニーズなどを調査したうえで詰めていくといいでしょう。

おおよその相場は以下のとおりです。

▼学童保育の開業にかかるコスト

物件 100万円〜200万円程度
内装費 30万円〜900万円程度
家具 80万円程度
送迎サービスを使う車両 100万円程度/1台
人材募集費 30万円程度
広告費 20万円程度
備品など 30万円程度

民間の学童保育の開業に使える補助金

自治体によっては放課後児童クラブの設置・運営に対して補助金を用意しているところがあります。待機児童を減らしたり、仕事と子育てとの両立する住民をサポートするために制度を設けているところが多いようです。

対象や条件などは制度ごとに異なりますが、補助される費用には以下のようなものがあります10

  • 施設の改修・設備整備
  • 賃借料
  • 備品の購入などに係る費用
    など

最新情報については自治体に問い合わせる、あるいは自治体のホームページから確認しましょう。

民間の学童保育の料金設定

民設民営の放課後児童クラブの場合、利用料金は公設の学童と同程度に設定されています。一方で、アフタースクールサービスではは入会金が発生したりと、費用面ではさまざまな違いがあります。

まず公設や民設民営の放課後児童クラブだと、定額の月額利用料金を払うことで、開設している曜日や時間帯に利用できる施設が多いでしょう。土日が含まれることもあれば、日曜日はおやすみのところもあります。長期休暇の際には開設時間帯が変わることもあります。

一方、アフタースクールサービスだと週何回利用するかによって、利用料金が変動するしくみを採用する施設が多いようです。たとえば以下のように、通う日数が多ければ多いほど、利用料金が増えるしくみです。利用日数が多いほど1日あたりの利用料金がお得になるよう設定されているケースもよくあります。

例:
週1日:1.8万円
週2日:3万円
週3日:4万円
週4日:5万円
週5日:5.4万円

また、夏休みや冬休みなど需要の高い季節は価格をあげたりと、ダイナミックプライシングを取り入れている施設もあるようです。

そのほか、プラスアルファのサービスを提供する場合には、追加コストを徴収するところが多いようです。例としては以下が挙げられます。

  • 追加預かり(契約済みの日数に追加してサービスを提供する場合)
  • 延長預かり(契約済みの時間から延長してサービスを提供する場合)
  • 送迎(施設によっては、無料送迎を行うところも)
  • 習いごと
  • おやつ・食事
    など

そのほか、以下のような割引を用意しているところも多いです。

  • 兄弟割引(兄弟で入会すると入会金が1人無料になるなど)
  • 年間契約割引
    など

民間の学童保育に導入したいツール

民間の学童保育を開業する際に導入しておきたい便利なツールを紹介します。

クラウド請求書

学童で必ず発生するのが、支払いのやりとりです。入会金のお支払いはもちろん、月々の利用料金を定期請求をしたり、追加オプションの請求をしたり……お金のやりとりが何かと多いものです。

指定口座への振り込みを採用する学童も多いですが、忙しい保護者だと支払遅延などが発生する可能性も考えられます。何よりも、支払い済みのものと未払いのものを随時確認し、管理していく作業には手間と時間がかかります。確認ミスなどがあれば、本来徴収できてないものを支払い済みと記録してしまうこともあるでしょう。

そこで便利なのが、クラウド請求書の活用です。クラウド請求書とはメールで送れる請求書で、受取者はメールにあるリンクからクレジットカードで決済をすることができます。

たとえばSquareが提供するクラウド請求書機能「Square 請求書」だと、送付した請求書は管理画面などから一覧できるうえ、未払い、支払い済みなどに分けて確認できるので、ひと目で支払状況を把握できます。さらに何枚送付しても無料(※)なので、コストの負担も少ないです。定期請求の設定もできるため、指定した頻度で保護者が登録したクレジットカードに自動で請求をかけることもできます。

※初期費用も月額利用料もなし。決済手数料のみが発生します。決済手数料について詳しくはこちら

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キャッシュレス決済端末

学童では延長保育を行うことも多く、忙しい保護者は「仕事で間に合いそうになくて……」とその日に預かりサービスの延長を希望することもあるでしょう。

こういった場合、お迎え時に追加分の請求をできるよう、教室でも支払いを受けられるような仕組みを整えておけると便利です。最近では少額でもキャッシュレス決済が好まれる傾向にあるため、キャッシュレス決済端末の用意も検討しておくといいかもしれません。たとえばSquareなら5,000円以内で決済端末を手に入れられる(※)ため、まずはこういった低コストのサービスから検討してみてもいいでしょう。

※Square リーダー(税込4,980円)を使うには、スマートフォンやタブレットの用意が必要です。詳しくはこちらご確認ください。

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入退室管理システム

子どもと離れて時間を過ごすからには、せめて学童に無事に到着したかどうかは把握しておきたいと思う保護者も多いでしょう。入退室管理システムを活用すると、児童の入退室時間をICカードやQRコードなどで記録することができます。記録時に、保護者に通知がいくよう設定もできます。保護者に安心して利用してもらえるよう、取り入れる学童も増えているようです。近年では低コストで利用できるシステムも増えているため、導入を検討してみてもいいかもしれません。

この記事では民間の学童をはじめる際に役立つ基本的な情報を解説してきました。子どもを預かることは言うまでもなく責任重大な業務です。安心・安全な環境を整えられるよう、上記の情報を参考にしつつ、開業の準備を進めていきましょう。


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執筆は2019年5月19日時点の情報を参照しています。2024年5月28日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash