法人が青色申告をするメリット・デメリット

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

「法人税を申告するのなら、白色申告より青色申告のほうがいい」と聞くものの、以下のような疑問を持っている事業主も多いのではないでしょうか。

  • 「青色申告は難しそう」
  • 「なぜ青色申告がいいのかよくわからない」
  • 「そもそも、青色申告は法人ができるのか?個人がするものではないのか?」

今回は、法人が青色申告をするメリット・デメリットについて、わかりやすく解説します。

目次


法人でも青色申告できる?

結論からいえば、法人でも青色申告ができます。

青色申告は、確定申告の方法の一つです。個人事業主が行うイメージがありますが、もちろん法人が行うことも可能です。国税庁によれば、法人税に関する青色申告普及率は90%を超えていることから、むしろ法人にとって青色申告をすることは一般的といえます。

参考:青色申告制度の意義と今後の在り方(国税庁)

節税につながるメリットが多くあることことから、法人は青色申告を行うのがおすすめです。ただし、青色申告をするには事前に承認を受けなければなりません。手続きは簡単で、税務署に申請書を提出するだけであり、手数料も不要です。

青色申告の手続き方法

青色申告を始めるには、あらかじめ税務署にその旨を承認してもらう必要があります。具体的な流れは、以下のとおりです。

(1)青色申告の承認申請書に必要事項を記載する。
(2)法人税などを納税する所轄税務署に持参、郵送、またはe-Tax経由で提出する。

注意すべきポイントは、申請書の提出期限です。具体的には、「青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで」に提出しなければなりません。

たとえば、事業年度が4月1日だった場合、青色申告承認申請書は3月31日までに税務署に提出しなければならない、ということです。もし1日でも遅れた場合、その年に青色申告を行うことはできません。次の事業年度まで待たなければならないため、注意が必要です。

ただし、できたばかりの法人であれば、設立日から3カ月経過した日と、事業年度終了日のどちらか早い日の前日までに申請すれば問題ありません。

青色申告の承認申請書は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。

青色申告をしなかった場合は「白色申告」になる

青色申告をしない場合、もしくは、青色申告をしたかったが申請期限に間に合わなかった場合は、「白色申告」をすることになります。白色申告も、確定申告のやり方の一つで、青色申告よりも経理作業が簡単な点が特徴です。

売上や経費などを記録した帳簿作成も、白色であれば「単式簿記」が認められています。単式簿記は言葉だけだと難しそうですが、身近な例では、「家計簿」や「おこづかい帳」が代表的なものです。つまり、簡易的な記帳でよいということです。

始めやすいのが白色申告の一番のメリットですが、青色申告で利用できるさまざまな特典が受けられない、というデメリットがあります。

法人が青色申告するメリットとは

法人が青色申告する主なメリットには、以下が挙げられます。

・ 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金の繰越控除
・ 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
・ 推計による更正又は決定の禁止
・ 中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入
・ 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

メリットを一つずつ解説します。

青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金の繰越控除

簡単にいえば、「欠損金(赤字)を、翌年度以降の黒字と相殺できる」というものです。

たとえば、前年度に200万円の赤字を出した会社が、今年度に100万円の黒字を出したとします。すると、抱えていた200万円の赤字のうち100万円分が黒字と相殺され、今年度の所得を「0円」という扱いにできる、ということです。この例の場合、赤字がまだ100万円分残っているため、もし翌年度に黒字を出せれば、再び同じように相殺できます。

2018年4月1日以後に事業を開始した場合は10年、それ以前の事業開始であれば9年の繰越控除が可能です。

参考:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(国税庁)

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欠損金の繰戻しによる法人税額の還付

もし、資本金か出資金が1億円以下の中小企業であれば、欠損金の繰越控除ではなく「法人税の還付」という方法も選べます。要するに、赤字を出してしまった場合「前年度に法人税を払いすぎたと見なし、一部のお金を返してもらう」というものです。

還付金額は、以下の式で計算されます。

還付金額=法人税額(前年度)×{欠損金額(今年度)÷ 所得金額(前年度)}

参考:欠損金の繰戻しによる還付(国税庁)

推計による更正又は決定の禁止

簡単にいえば、「税務署長の推測で税額を直させたり、決めたりすることはできない」ということです。

実は、法人税法には、納税義務がきちんと行われない場合には「税務署長が売上や経費などを推測して納税額を決められる」というルールがあります。

参考:第131条 推計による更正又は決定(法人税法)

これを「推計課税」と呼びます。帳簿がないなどの理由で、正しい税額が算出できない場合でも課税できるようにするためのルールです。青色申告の場合、適正に取引を管理していると考えられるため、推計課税の対象外となります。

なお、もし「更生」すなわち「申告内容の訂正」が行われる場合、青色申告者に対しては、税務署長は通知書に更生理由を書かなければならないという決まりもあります。つまり、理由をきちんと確認できるうえ、もし不満があれば異議申し立てをすることもできます。

参考:税務署長の処分に不服があるとき(国税庁)

中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入

簡単にいえば、「中小企業であれば、30万円未満で手に入れた減価償却資産を全額費用にできる」ということです。

認められる要件としては、買ったものは事業に使うこと、損金経理をすること、明細書を添付することなどが挙げられます。

現在は2020年3月31日までに取得した資産が対象ですが、2020年の税制改正大綱において、さらに2年延長される可能性が高まっています。

参考:NO.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(国税庁)

中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

簡単にいえば、「中小企業が、ある特定の資産を購入し、特定の事業に使ったとき、特別償却か税額控除をしてよい」ということです。

上限は、特別償却は基準取得価額の30%、税額控除は基準取得価額の7%となっています。2017年4月1日から2021年3月31日までに取得した資産が対象となり、具体的には機械、ソフトウェア、車両などが挙げられます。

詳細は、国税庁のウェブサイトをご覧ください。

法人が青色申告するデメリットとは

強いてデメリットを挙げるとすれば、「手間がかかる」ということです。

青色申告でも白色申告でも帳簿を用意するのは同じですが、青色申告で求められるのは「複式簿記」を使った帳簿です。白色申告で使う帳簿よりも複雑なため、簿記に慣れていない人にとって、作成するのに時間がかかります。また、固定資産台帳や仕訳帳など、用意すべき帳簿や書類も白色申告に比べれば多くなっています。

もっとも、現在は便利な会計ソフトやシステムも増えており、さらに、法人であれば経理担当者がいたり、顧問税理士がいたりする可能性が高いことから、ビジネスオーナーとしてデメリットを心配しすぎる必要はありません。

企業として見れば、メリットのほうがデメリットより多いことから、青色申告を利用するのがおすすめです。ただし、繰り返しになりますが、青色申告を行うには税務署の承認手続きが必要です。また、申請書提出には期限があります。準備は早め早めに行いましょう。

個人がやるものと思われがちな青色申告ですが、法人も行うことができます。帳簿を作る手間こそあるものの、欠損金の繰越控除や法人税の還付といったメリットがあることから、多くの法人が青色申告を行っています。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆は2020年2月11日時点の情報を参照しています。2024年6月14日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash