ダイナミックプライシングとは?小売業で導入するメリット、導入方法

小売業を営むビジネスオーナーにとって、収益性の向上は常に優先事項です。利益率を確保しつつ、ユーザーや市場のニーズとマッチした適切価格を設定するのは簡単なことではありません。固定価格が主流ではありますが、小売業でもダイナミックプライシングを導入する動きがあります。Statistaによれば、北米と欧州のEコマース企業の21%がダイナミックプライシングをすでに導入しています。ダイナミックプライシングでは、需要と供給に合わせて価格を設定できる柔軟性により、売り上げや利益の拡大を期待できます。

ダイナミックプライシングとは

ダイナミックプライシングとは、需要、供給、顧客や競合の動き、閑散期や繁忙期などの季節要因といった条件に基づき、売り上げや利益を拡大できるよう価格をリアルタイムで調整する仕組みのことです。たとえば、需要が高い場合は価格を上げ、低い場合は価格を下げて需要を喚起します。

「スマートプライシング」と「ダイナミックプライシング」という用語は同じ意味で使われることもありますが、前者は一般に、データに基づいて効果的に価格を設定・調整することを含む、より広い概念を指します。後者は、価格のリアルタイム調整を指す用語として広く定着しています。また、「変動料金制」や「動的価格設定」と呼ばれることもあります。

小売業がダイナミックプライシングを導入するメリットとデメリット

メリット

ダイナミックプライシングの特徴は、その柔軟性にあります。需要に合わせて価格を柔軟に調整することで、余剰在庫を減らし、変化する消費者のニーズに対応し、収益最大化性を図ることができます。戦略的な割引によって価格に敏感なお客さまを引き付ける一方、需要が高まる時期には高い価格を維持できるなど、ビジネスの競争力も高められます。

デメリット

ダイナミックプライシングには課題もあります。まず、透明性を欠けばお客さまの不満を招き、信頼を損なう可能性があることです。価格を急激に変更すると、需要が高いときに購入したお客さまが不公平だと感じることもあります。また、店頭でもオンラインでも、ダイナミックプライシングが設定されている商品は避けられる傾向にあり、これはCivicScienceの調査でも裏付けられています。さらに、競合他社との値引き合戦に陥るリスクなど、長期的な収益にマイナスとなる可能性もあります。

このような課題があるため、ダイナミックプライシングでは、メリットとデメリットのバランスを慎重に考えることが必要です。次項では、デメリットを抑えながら小売業でダイナミックプライシングを導入するためのヒントをご紹介します。

ダイナミックプライシングの導入方法

ダイナミックプライシングを導入する方法はさまざまです。ここでは3種類の方法を紹介します。

時間ベース

時間帯や曜日、季節に合わせて価格を調整します。曜日限定や期間限定のセールで、閑散期にお客さまを引き付けることができます。季節ベースの価格設定では、たとえば冬が近づいたら冬物衣料の価格を引き上げ、春先やシーズンオフではセールで価格を引き下げます。さらに、商品を提供するスピードに応じて価格を調整することもできます。料金が割増になる当日配達がその一例です。

セグメントベース

人口統計や所在地、購買行動で顧客をグループ化して、それぞれに異なる価格を適用します。たとえば、特典プログラムを通じて常連客に限定したセールを掲載したり、地域ごとに価格を設定したりします。顧客データに基づいて個人ごとに、おすすめの商品を提案したり、好みにマッチするアイテムに割引を提供したりすることもできます。

需要ベース

需要の変動に応じて価格を調整します。たとえば、SNSのトレンドなどで需要が高まっている一方で、在庫が限られている商品がある場合は価格を引き上げて収益を伸ばし、逆の状況では価格を引き下げます。

ダイナミックプライシングの導入手順

上記のいずれの方法も、導入するには綿密な計画が必要です。以下の手順に沿って、効果的な計画を立てましょう。

1.目的を定める

目的が市場シェアの拡大なのか、それとも短期的な収益アップなのかを明確にし、ダイナミックプライシングの活用方法を決めます。

2.数字や売上データを調べる

ダイナミックプライシングは、利益を最大化するためのものです。ピーク時の値上げであれ、閑散期の値引きであれ、収益性が鍵となります。まず数字を把握することが不可欠です。

売上原価、利益率、利幅を確認します。売上原価とは、売れた商品の仕入れや製造にかかった費用のことで、価格決定の基準となるため、ダイナミックプライシングにおいて特に重要です。利幅については、事業継続の観点から、売上原価だけでなく、賃料、光熱費、人件費といった他の営業費用も加算して決めることが重要です。Square リテールPOSレジ(有料プラン)では、売上原価を細かく分析して、これらの重要な指標を簡単に追跡できます。

最後に、過去の売上データを分析し、パターン、季節性、顧客行動を把握します。Squareの管理画面では、価格決定に役立つ豊富なデータを利用できるほか、顧客リストから購入パターンや行動を把握することも可能です。

3.価格設定ルールを決定する

価格設定ルールを決めておくことで、一貫した体系的なアプローチで価格を設定し、成り行きに任せた変更を避けて、透明性を維持できます。

まず、商品やカテゴリーごとに価格の下限と上限を設定します。下限は収益性が危うくなることを防ぎ、上限は購買意欲をそぐような価格高騰を防ぎます。競争力を維持しつつ、価格つり上げで反感を買わないための安全策だと言えます。下限と上限は、売上原価、利益率、利幅をすべて考慮して決めます。

次に、価格設定の際に考慮する主な要因を決定します。一般的な要因は、需要、在庫数、時間です。これらの要因の次は、価格調整のタイミング(イベントや条件)を決めます。その際に、たとえばSquare リテールPOSレジなら、在庫数が一定レベルを下回ったときにアラートを受け取れます。在庫数を予想して価格を調整するために役立ちます。

4.テクノロジーを活用する

ダイナミックプライシングでは、テクノロジーをぜひ活用しましょう。価格設定ルールを決定したら、そのルールを運用するためのツールに投資しましょう。前述のSquare リテールPOSレジでは、月々6,000円で豊富な機能が利用できます。

5.効果を測り、改善する

ダイナミックプライシングでお客さまの反発を避けるには、コミュニケーションが鍵となります。価格変更を隠さず明確にお客さまに伝え、可能であれば価格を左右する要因について情報を提供しましょう。価格変更に関するフィードバックを収集して分析することで、お客さまの印象を把握し、改善を図ることも大切です。

ダイナミックプライシングは、市場の変化に適応できる柔軟な価格戦略ですが、重要な外部要因に基づいて価格を賢く調整することが求められます。これにより、競争力と顧客満足を維持しながら、事業の収益性を高めることができます。


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執筆は2024年5月22日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash