飲食店や小売店などにおいて、アルバイトで働く従業員によって店舗内で悪ふざけを行っている写真や動画がソーシャルメディア投稿され、炎上を招く「バイトテロ」。
社会的に大きなイメージダウンがもたらされ、店舗の売上低下を招くだけでなく、行為に関係した箇所の消毒や清掃、社員教育の追加実施など予定外のコストもかかり、場合によっては閉店に追い込まれることもあります。
今回は、経営者として知っておきたいバイトテロの概要や予防策などを紹介します。
バイトテロとは
バイトテロ行為の概要
バイトテロとは、一般的に、飲食店や小売店などで働くアルバイト従業員が、店舗内で不適切な行為をする写真や動画を、InstagramやTwitter、Facebookなどのソーシャルメディアに投稿した結果、多くの批判を招く、いわゆる「炎上」をもたらす行いのことを指し、多くの場合、実行者と撮影者の2名以上で行われます。
バイトテロが発生するようになった背景の一つとして、日常的なコミュニケーションツールとしてソーシャルメディアが利用されるようになったことが挙げられるでしょう。友人に「ちょっとした悪ふざけを見せる」くらいの軽い気持ちで、店舗側へ不利益を与える意図はなく投稿したものが、思いもよらない規模で「炎上」を招いてしまうパターンが多くみられます。
ちなみに、従業員が関与せず、来店者が店舗内でとった不適切な行為をソーシャルメディアに投稿して「炎上」を招く行為については、通常、バイトテロに該当しないとされます。
バイトテロの代表事例
では、具体的にどのような行為がバイトテロとして行われたでしょうか。代表的な事例をいくつか紹介します。
・コンビニエンスストアの店員が、店舗内にある冷凍ケースに入り、寝そべった状態の写真をソーシャルメディアに投稿。不衛生だとしてネット上で多くの批判を招き、店舗は本部からフランチャイズ契約を解除された。
・空港内にある土産物店で有名俳優が買い物をした際に使われたクレジットカードの伝票画像を店員がソーシャルメディアに投稿。閲覧者からの指摘を受けて即座に投稿を削除し、店舗運営者が俳優の所属事務所に謝罪。
・チェーン展開している飲食店で働く男性店員が下半身裸の状態で、料理を運ぶ際に利用するトレーを陰部に当てている動画を別の従業員が撮影し、投稿。さらに、同じ店員と思われる人物が店舗で扱う食べ物を口に含んで吐きだす動画も投稿され、騒動となった。店舗側は、これらの行為に関わった従業員3名に対して退職処分を施し、法的措置も検討。また、全店を一斉休業にして再発防止のための社員研修を開催した。
バイトテロは、ソーシャルメディアによって流布されるため、大きな拡散力を持ちます。不適切な投稿であったとして削除を行っても、閲覧者によって既にコピーされた投稿内容が別のソーシャルメディアを介して広まっていった事例もあるため、投稿が行われた時点で情報が拡大していくのを防ぐことは困難です。
バイトテロがビジネスに与える影響
バイトテロが発生した場合、ビジネスへさまざまな悪影響をもたらします。
飲食チェーン店を運営している企業のケースでは、該当店舗の閉店のみならず、系列店も風評被害に合いました。また、個人で運営している飲食店では、経営が立ち行かなくなり廃業という事態にまで至っています。
バイトテロによって被った被害に対して、法的措置を求めて裁判を行う事例もみられますが、結果的に金銭的な賠償は得られるものの、その後の信用回復には多大な苦労が伴っているのが実態です。
バイトテロの対策法
バイトテロの被害から回復する困難を考えると、何よりも未然に防ぐための対策が重要といえます。
アルバイト従業員だけになる時間を作らない
バイトテロは、社員などの監督者が不在でアルバイトの従業員だけになる時間帯に多く発生しています。そのため、常に誰かしらの管理監督者が店舗にいるようにすることが、バイトテロの抑制に効果があると考えられます。現状で対応できないようであれば、運営システムを考え直すことも視野に入れておきましょう。
「その後」どうなるかを理解させておく
バイトテロの多くは、「仲間内の悪ふざけ」の延長線上で行われており、当人たちに店舗や企業へ損害をもたらそうという意図がないことが多く見られます。また、バイトテロを行った他者の投稿を見て面白半分に模倣するケースもみられ、騒動に発展した際の認識も甘い傾向がみられます。「くびかくご」との文言を入れたバイトテロの動画もあるように、たとえ「炎上」を招いたとしてもアルバイトを解雇される程度の認識であるようです。
インターネットによって広まった情報から、閲覧した人たちによって動画に関わった人物が特定されることも難しくありません。その結果、個人情報が拡散し、本人がいやがらせを受けたりするだけでなく、場合によってはその後の就職に影響したり、家族にいやがらせが及ぶことも十分考えられます。また、雇用者側が裁判を起こし、金銭による多大な賠償を求められることもあります。
自分が関わった投稿がどのような事態を招き、その後、自分の身にどのような処遇がもたらされるかなどを意識していないがゆえに行為に及んでしまう部分があるので、バイトテロを防ぐには、事前に過去の事例などを交えて、軽率なソーシャルメディアの投稿を行うとどうなるかを従業員に理解させておくことが重要な対策になるといえるでしょう。
物理的にバイトテロが行えない環境づくり
バイトテロはソーシャルメディアを介して広まり、その投稿ツールとして使われるのはほとんどがスマートフォンです。なので、投稿自体行えないようにするために、職場へスマートフォンの持ち込みを禁止する企業が増えており、不適切な行動をとる人物が特定できるように監視カメラを設置するケースも珍しくありません。
ただし、マニュアルにスマートフォンの持ち込み禁止を定めていても、ルールそのものが破られてしまうことがあります。実際にスマートフォンの持ち込みを禁止していた店舗でバイトテロが発生した事例もあるので、マニュアルで定めるだけでは根本的な防御策になっていないのが実際のところです。
心理的に不適切な投稿ができない環境づくり
バイトテロを防ぐ方策にはさまざまなものがありますが、もっともベースとなるのが、従業員の意識のあり方です。店長や経営者が主体となって密度の濃いコミュニケーションをとり、アルバイトも正社員と同様に店舗を一緒に運営していく者としての当事者意識が持てるようになれば、不適切な行動をソーシャルメディアに投稿しようという発想は生まれにくくなっていくでしょう。
そのほかにも、就業中にソーシャルメディアへの投稿が行えるような時間を作らないなど、バイトテロへの対策はいくつか考えられます。無防備でアルバイトを雇うリスクを熟知し、事前に対策や発生時の対処を用意しておくよう心がけておきましょう。
執筆は2019年8月29日時点の情報を参照しています。
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