2002年に誕生したtokyobike(トーキョーバイク)は、世界30カ国で展開する自転車メーカーだ。国内には直営店が4店舗、パートナーショップが2店舗、取扱店舗が200店舗以上ある。
自転車屋と聞くと、自転車に強いこだわりを持つ人が行くところ、あるいは修理など本当に必要なときにしか行かない場所と想像する人もいるかもしれない。トーキョーバイクは街を楽しむことをコンセプトに掲げていることもあり、街散策が好きな人、もっと広くいうとお出かけ好きな人がふらっと立ち寄れるのが大きな特徴である。たとえば店舗周辺の地図を独自で作成したり、辺りを散策できるレンタルサービスを実施したりと、街を巡りたくなるわくわくするような仕掛けが随所にある。
フレームからパーツまでこだわりをもって作られた自転車は、単体で買うこともできれば、カスタマイズも可能だ。ハンドル、サドル、タイヤなどをとことん自分好みに組み替えることができる。長い付き合いになるであろう自転車をひと味、ふた味変えられるのも、楽しみかたの一つだ。
今回は2021年に全店舗で導入したSquareについて、話を聞いた。最初に谷中に店舗を構えてから15年近くが経ったタイミングで導入しようと思ったのは、なぜだったのだろう。これまで抱えていた課題や、Squareの導入によって改善されたことを、執行役員/直営店統括マネージャーを務める橋本雅希さんと、TOKYOBIKE TOKYOの店長である佐伯莉乃さんに教えてもらった。
業種 | 自転車および自転車部品の小売業、卸売業 |
業態 | 自転車専門店 |
利用しているサービス | Square リーダー、Square ターミナル、Square POSレジ、Square 請求書、Square データ |
導入を検討した理由 | ・レジカウンターに縛られず、店内のどこからでも決済ができるよう、持ち運べる決済端末が必要だった ・複数店舗と顧客管理ができて、売上分析機能があるPOSレジを探していた |
Squareが役に立っている点 | ・顧客管理を紙ベースからデジタルに切り替えることができた ・Square 請求書を使うことで従業員の作業時間を短縮し、販売機会を逃すことが減った ・売上分析機能を活用することで、課題の改善や売り上げの向上に生かせている ・ワイヤレスの決済端末で店内のどこからでも決済ができるため、レジカウンターに人が集中することがほとんどなくなった ・顧客情報がすぐに検索できることでお客様とのコミュニケーションが円滑になった |
店内のどこからでも決済できるようにしたかった
トーキョーバイクがSquareを検討しはじめたのは、2021年7月に東京・清澄白河のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」がオープンする少し前のことだった。本店舗は1階から2階に抜ける吹き抜けのある大空間で、他店舗と比べると4倍近い広さがある。そこでレジカウンターに縛られることなく、店内のどこからでも決済できるワイヤレスの決済端末を求めていた。
その背景には、お客様から自転車の購入や修理を受け付けるときの流れが大きく影響している。
トーキョーバイクでは購入する自転車やカスタマイズ・修理内容が決まると、お客様情報の記入に移る。名前や住所、連絡先、購入する商品内容などだ。
これまでは、お客様をレジカウンターに誘導し記入してもらうという流れだったため、1カ所に人が集中してしまうことがよくあった。ただ、TOKYOBIKE TOKYOでは、1階から2階を結ぶ大階段に腰をかける場所があり、階段を登りきったところにあるハイテーブルでくつろぐこともできる。こういった場所での記入を促すことができれば、レジカウンターに人が集中することを防げると考えたのだ。さらに記入を終えたら、従業員が決済端末をサッと取り出し、その場で決済まで完結できたらよりスムーズだと感じた。
▲Photo by DAICI ANO
約1.5万件の顧客情報を活用できるようにしたかった
お客様情報の記入は紙で行っていたが、この点は新しいPOSレジを導入することでデジタル化を叶えたい、という思いが強くあった。
理由はたくさんある。
まず、記入を終えたら、従業員がどこかのタイミングでエクセルに情報を入力する作業が必ず発生していた。ここにかかる手間や時間を削減したかった。
お客様と店舗用の控え、メカニックの点検用の控え、と何枚もの用紙を扱う煩雑さからも解放されたかった。
もっというと、紙での管理だとお客様の購入履歴を迅速に調べることができなかった。それどころか、膨大な紙資料から特定のお客様の情報を探し出すことは不可能に近く、ほぼ活用できていなかったという。Square導入以前に蓄積されていた顧客情報は約1.5万件にもおよぶ。
ちなみにSquareを導入する前に、2年ほど使用していたPOSレジがあったそうだ。ただ顧客管理機能は契約していた有料プランよりもさらに高額なプランにアップグレードしないと使えなかった。
ワイヤレスの決済端末で、円滑な決済を実現
トーキョーバイクがこうした悩みを解消するうえで導入したのが、決済端末もPOSレジも提供しているSquareだ。
決済端末は各店舗の1日の最大従業員数に合わせて用意した。全員が常時肩から下げているトーキョーバイクのサコッシュに端末を入れ、お会計のタイミングで取り出し、場所を気にせずに決済を行う。
お客様がわざわざレジカウンターに向かわなくてもお会計に進めるので、レジ前に列ができる光景はほぼ見ないという。ちなみに現金決済を希望する場合はキャッシュドロワーのあるレジカウンターでのお会計になるが 、トーキョーバイクでは約9割のお客様がキャッシュレス決済を希望するそうだ。
情報記入はタブレットで完結
顧客管理を強化するためにトーキョーバイクが選んだ機能は、SquareのPOSレジ内から利用できるSquare 請求書だ。
Square 請求書は、遠くに住むお客様や店舗に足を運べないお客様にメールで送るという利用方法が一般的だが、店頭での対面決済にも利用できる。
トーキョーバイクでは、
- どのお客様がどの自転車やパーツを購入したかを把握できるようにしたい
- どのお客様がどんな修理をどのタイミングで希望したかをいつでも参照できるようにしたい
- 顧客情報と購入内容が1枚にまとまった用紙を最終的にメカニックに渡したい
という希望があった。
Square 請求書なら、こうした希望がすべて叶う。お客様には情報を直接タブレットに入力してもらえば、従業員がエクセルに入力する手間が省けるうえ、紙を保管する必要もなくなる。さらに、そのままお客様が希望する決済方法で支払いを受け付けることも可能だ。
そこで自転車を購入するお客様や、修理を希望するお客様に関してはSquare 請求書を使用する流れを採用した。
具体的には以下のような流れだ。
(1) お客様が購入を決断する。または、修理を依頼をする。
↓
(2) 従業員がSquare POSレジアプリから新規の請求書を作成。購入・修理内容に紐づいて、POSレジに登録された商品メニューから商品を選択する。
↓
(3) お客様にタブレットをお渡しし、顧客情報の入力を依頼する。
↓
(4) 従業員は入力内容を確認後、請求書を作成。
↓
(5) Squareの決済端末で決済を受け付ける。お客様のメール宛に支払い完了メールが送信される。
↓
(6) 請求書を印刷し、メカニックに渡す。
▲tokyobikeの請求書(イメージ)
また、以前までは電卓に価格を打ち込み合計金額を出していたが、Square 請求書を使いはじめてからは商品を追加するだけで合計額が自動で算出されるようになり、電卓の出る幕もなくなった。
「(請求書が)POSと連携されているので、金額をチェックする時間が省けて、金額に対するミスも発生しなくなりました」(佐伯さん)
請求書発行後、お客様のメールアドレスに自動で送られる請求書が控えの代わりになり、お客様控えの発行も不要になった。
新車を購入したときやカゴをつける、サドルやハンドルを変えるなど自転車のカスタマイズをするとき、タイヤがパンクしたなど修理が必要なときは、Square 請求書を印刷し、メカニックに渡す。メカニックは請求書に記載された内容を確認しながら、必要な作業を行う。滞りのないフローだ。
手書きの紙からデジタルに変わったメリットは大きい。
「忙しいときだとサッと書いちゃったりするので、見返したときに『何て書いてあるんだろう?』ということがやっぱりありましたが、そういうことは確実になくなりました」(佐伯さん)
全体の作業時間が1/3まで短縮
お客様の情報記入が紙からデジタルに変わったことで、接客できる人数、全体の作業時間にも変化が生まれた。
たとえば以前までは、従業員がお客様の購入する商品名、合計金額などを記入しており、1人のお客様につきっきりになってしまう傾向にあった。ところが今ではSquareで新規の請求書を短時間で作成後、お客様にタブレットを渡し顧客情報の入力を委ねられるようになり、その間にほかのお客様とも会話ができるようになった。
手で書く作業、電卓を打つ作業などがまるっとなくなり、作業時間は1/3にまで短縮したという。作業時間が削減できたことで、販売機会を逃すことも減った。
「うちは1人に対する接客時間が本当に長いんです。熱があるお客様は従業員の手が空くまで待ってくれますが、帰っちゃうお客様もいます。作業時間を短縮できたことで、お客様にお声がけできないことは減ったと思いますね」(橋本さん)
コミュニケーションも円滑に
顧客情報のデジタル化が役に立っているのは、販売の場面だけではない。橋本さんはこう話す。
「自転車は売って終わりではなく、お客様が修理しに来ることもあります。そのとき、Squareであれば過去の修理内容が残るので、2回目の来店でもし同じような不具合があった場合、不具合のある製品を渡してしまっていた可能性も含めて検証ができたり、お客様の乗り方が原因かもしれないとヒアリングやアドバイスができたりするので、過去の内容がぱっと見でわかるのは、販売した後のお客様とのコミュニケーションツールとしてすごくいいです」
以前までは修理を希望するお客様が来店しても、履歴を調べる術がなかった。そのため、お客様に故障内容をいちからヒアリングしていたそうだ。それが今ならお客様の名前をPOSレジ上で検索するだけで、過去の購入履歴がひと目で確認できる。
「自分が対応していなかったお客様でも、過去の履歴を調べられることで、お客様がいちから説明しなくてよくなるので、私たちもお客様も安心して時間を過ごせます。お客様にとってはやっぱり自転車って難しい部分もあるでしょうし、そもそもどこの具合が悪いのか・何で故障しているのかがご自身ではわからないこともあります。それをお客様自身が細かく説明しなくても、お店側が過去の履歴をさかのぼることで前回の修理内容や修理頻度などが把握できるので、お客様とのコミュニケーションにおいていいことだなと思います」(佐伯さん)
▲佐伯さん(左)、橋本さん(右)
売上分析にかけていたコストがゼロに
ビジネスを日々改良していくうえで、売上分析は欠かせないことだろう。トーキョーバイクも売上拡大、コスト削減、商品開発などに向けた施策を練るうえで、必ずデータも参考にする。そのため新しいPOSレジに乗り換えるうえでは、売上分析機能が使えることも欠かせなかった。
使い心地を聞くと、以前のPOSレジと比べて不便に感じる点はないという。以前は店舗ごとに費用がかかっていたが、今は全4店舗の分析を無料でできている。「本当に助かっています」と話す橋本さんの顔は、どこかほっとしている。
以前だとあまり詳細に見えていなかったことも、Squareのデータから把握できるようになった。たとえば各車種とあわせて購入されるアクセサリーは、決済ごとの購入内容を確認すると見えてくる。もっと詳しく分析したいときは、売上情報をCSVファイルとしてダウンロードして、エクセルで分析していくこともある。
また、訴求したい商品の売れ行きがちゃんと伸びているかは、Squareの管理画面内の商品別売上から見ることができる。
「盗難防止のための鍵と法律上義務付けられているベルはつけないといけなくて、ライトも夜走るのであれば必須です。つまりこの3点は持っていなければ必ず購入することになるアイテムです。ただ、スマートフォンにマップを表示させながら走れるスマートフォンホルダーや、飲み物を付けられるドリンクホルダーなど、あるとちょっと快適になるようなアイテムもたくさんあります。それをどうご案内して、販売につなげるかというところにも注力しています。その結果は、カテゴリー別、商品別のレポートで把握することができています」(佐伯さん)
大きな判断を下すときも、売上データは役に立つ。たとえば中目黒店では、火曜日と水曜日を定休日にしていたところ、曜日別の売り上げから平日の売れ行きもいいことがわかり、火曜日も営業することにした。
「営業日数を増やすことは僕らも結構体力を削るので、本当に増やしていくかを決めるときには1年間の売り上げを見るんです。そういったデータはSquareだと視覚化されて、わかりやすいんですよ」(橋本さん)
反対に清澄白河の店舗、TOKYOBIKE TOKYOでは営業日数を変えないという判断をした。
「TOKYOBIKE TOKYOも同じタイミングで営業日を増やすかどうかは考えたんですけど、曜日ごとの売上分析を見ると清澄白河は週末の売り上げのほうが強かったので、平日をもう1日開けたときの売り上げと人件費などを考えると、開けないほうがいいという判断にいたりました」(橋本さん)
人それぞれの収穫があるお店
2022年に自転車発売から20周年を迎えたトーキョーバイク。
どんなお店であり続けたいと考えているのだろう。
「街のハブのような店っていうとなんか大げさすぎるなって思うんですよね。僕らの周りのお店さんが『ほかにいい場所がない?』ってお客さんに聞かれたときに、『トーキョーバイクいいよ』って言ってもらえるようなお店になれたらいいですね。自転車屋のことを『いいよ』ってなかなかおすすめしないじゃないですか。そういう風に言ってもらえる自転車屋でありたいなとは思います。自転車好きでなくても、自転車が欲しくなくても、行ったら『何かおもしろいかも』って思ってもらえる店舗になっていたらいいなと思っています」(橋本さん)
佐伯さんは、各々に合った楽しみ方が見つけられるお店でありたいという。
「この店(TOKYOBIKE TOKYO)に関しては、やっぱりフラッグシップで、いろんなお客様がお越しになるので、何も買わなくても何か得て帰っていただけるようなお店になったらうれしいなとは思っています。
ここには自転車だけじゃなくてコーヒー屋さんがあったり、植物屋さんがあったり、うちだけじゃないいろんなものがあって、イベントでは今日のように展示をしていたり、ポップアップでいつも置いていないものを置いていたり、レンタルバイクで街に出られたり、本当にいろんな機能があるお店です。自転車を買っていただけたらもちろんうれしいですけど、それに限らず楽しんでもらえたらうれしいなと思っています」(佐伯さん)
「今までだったら紙に商品名を書いて、金額を書いて、そこからレジで探して打ち込んでいましたが、Squareを導入してからは全体の作業時間が1/3になったイメージがあります」ーtokyobike 執行役員/直営店統括マネージャー 橋本雅希
Squareが実現したこと
顧客情報の管理をデジタル化できた
トーキョーバイクではSquare POSレジ内の請求書機能を利用して、顧客情報のデジタル化を図っています。お客様の名前を検索するだけで購入履歴が瞬時に表示され、お客様から相談を受けたときに過去にどんな車種を購入し、どんな修理をしたのかなど、状況がすぐに把握できるようになりました。
作業時間は1/3まで短縮、機会損失も防げるようになった
トーキョーバイクでは、自転車の購入や修理を受け付ける際には、必ずお客様情報をもらいます。以前までは紙に手書きで情報をまとめていたうえ、電卓に価格を打ち込み購入金額を算出していましたが、Square 請求書を使うことで一連の流れをタブレット上から行えるようになりました。手書きも手計算もなくなり、全体の作業時間は以前の1/3まで短縮。ほかのお客様を待たせてしまう、最悪の場合はお声がけできないままお客様が帰られてしまうことも以前はありましたが、このような機会損失は減ったといいます。
レジカウンターに人が集中することを避けられた
TOKYOBIKE TOKYOでは、広々とした店内を生かして、店内のどこからでも決済を受け付けられるようにしたい、という思いがありました。お客様がレジカウンターに足を運ぶかわりに、従業員がお客様のいるところまで向かい決済を受け付けることができれば、レジ周りに人が集中することを防げるだろうと考えたからです。全従業員が肩から下げるサコッシュの中に、Squareのワイヤレスの決済端末を常時携帯することで、いつでもどこからでもキャッシュレス決済を受け付けられる仕組みを作っています。
売上分析を無料で行えるようになった
トーキョーバイクは売上拡大、コスト削減、新商品開発の施策を練るうえで、必ずデータも参考にします。以前までは店舗ごとに費用がかかるPOSレジで売上分析をしていましたが、SquareのPOSレジに乗り換えてからは、全4店舗の分析を無料で行えています。決済ごとの購入内容や商品別の売り上げなどは以前よりも詳細に見られるようになり、コストを削減しながら分析の質を高めることができています。
この事例に登場したSquareのサービスは:
Squareひとつで、
大規模なビジネスも
スムーズに回せます。
店舗運営に余裕を与え、ビジネスの成長にフォーカスできる余白を生み出すのがSquareのビジネスツールです。tokyobikeが、Squareでどのように日々の業務を効率化し、目指すビジョンを具現化してきたのか、より詳しい活用法をeBookにしました。ぜひダウンロードしてお読みください。