現金出納帳とは?初心者にも簡単にわかる書き方を紹介

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

現金出納帳(金銭出納帳)は、事業運営で発生する現金の入出金を記録する帳簿で、簡単に表すと事業の家計簿のようなものです。

正確なお金の管理は安定した事業運営に欠かせませんが、個人事業では事業用とプライベートのお金が混同しやすく、管理に悩む人も多いでしょう。

そこで本記事では、現金出納帳の必要性、また基本的な記載項目から書き方の手順、締め方まで、初心者の個人事業主にもわかりやすく解説します。

目次


現金出納帳とは?

現金出納帳(金銭出納帳)の出納は「すいとう」と読み、「出し入れ」や「収入と支出」を意味します。つまり、現金出納帳はその名のとおり、事業運営における現金の動きを記録していく帳簿です。

記録を追うことにより、今使える現金はいくらあるのか、今月は残りいくらでやりくりする必要があるのかをいつでも把握でき、いつのまにか赤字になって支払いの現金が不足したという事態に陥らずにすみます。

また、個人事業主は事業用とプライベートで財布を分けて管理していても、ちょっとした買い物などで財布の中身が混ざってしまいがちです。このとき、現金出納帳をつければ事業用のお金をプライベートのお金と区別して、正確に管理できます。

現金出納帳はなぜ必要?

個人事業主にとって現金出納帳は、日々の事業用の現金の正確な管理に役立ちますが、長期的にみても作成すべき理由があります。

お金の流れを「見える化」できる

現金出納帳をつけると、「いつ、何のために、いくらお金を使ったのか、あるいは受け取ったか」をさかのぼって確認し、現金の流れを時系列で把握できます。

数値で状況を把握するため、「そんなに使った覚えはないのに思ったより手元の現金が減っている」といった事態も起きにくくなります。また、使える金額の感覚が養われ、必要以上のお金を使うことも抑制できます。さらに、現在のお金の状況の正確な把握だけでなく、過去の数字を分析して未来の見通しを立て、出費の見直しや予算の調整をする経営の基本データとしても重要です。

現金出納帳は、単なる現金の記録ではなく、うまく活用すれば経営判断の重要なヒントが詰まったツールにもなり得ます。

確定申告では帳簿の作成・保存が求められる

現金出納帳の備えつけは義務ではなく、事業の実態に応じて作成すればよいとされている帳簿です。たとえば、事業におけるお金をすべてクレジットカードや銀行口座でのやり取りし、現金取引がないという人は現金出納帳を設ける必要はありません。

しかし、いくらキャッシュレス決済が普及したとはいえ、現金取引がゼロという人は少ないでしょう。たとえ件数が少なくても現金取引があれば、現金出納帳の備えつけを意識しておきたいところです。

なお、現金出納帳を設けた場合、青色申告の人は法定帳簿として7年間の保存が義務づけられています1。白色申告の人は青色申告とは必要な帳簿が異なるため、現金出納帳に関する明確な記述はみられません。しかし、作成した帳簿に関しては下記のとおり5年または7年の保存期間が定められています2

  • 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)…7年
  • 任意帳簿業務に関して作成した上記以外の帳簿…5年

不正防止につながる

従業員を雇っている場合、現金出納帳によって不正を防ぐ効果も期待できます。

どんなに信頼できる職場でも、現金の数え間違いは起きますし、持ち出しなどの不正行為が発生しないとも限りません。現金出納帳をつけていれば、常に帳簿と実際の現金の照らし合わせが行われるため、不具合が発生したときにすぐ気づけます。

管理がずさんだと「お金を抜き取ってもばれないだろう」と不適切な行為が起きやすい環境をつくってしまいます。現金出納帳で日頃から管理を徹底することは不正の抑止にもつながるのです。

出納帳の種類

現金出納帳は出納帳の一つで、ほかにも出納帳に分類される帳簿があります。ここでは2種類の出納帳について整理しておきましょう。

現金出納帳

現金出納帳は、現金の出し入れを管理するもので、金銭出納帳ともいいます。現金の入出金の状況と残高を取引順に記帳する帳簿です。

現金での売り上げや仕入れはもちろん、事業で使う物品の購入、銀行口座からお金を引き出したとき、事業用の現金をプライベートで使ったときなど、事業用の現金の動きはすべて現金出納帳に記帳します。

事業用の現金をプライベートで使った際には「事業主貸」という勘定科目を使って処理

預金出納帳

現金を管理する現金出納帳に対して、事業用の銀行口座の入出金を記録する帳簿が預金出納帳です。口座の残高に動きがあったときに預金出納帳に記帳します。

事業用に複数の銀行口座を使っている場合は口座ごとに分けて預金出納帳を作成します。

現金出納帳の書き方

現金出納帳には、具体的のどのように現金の入出金を記帳していけばよいのでしょうか。ここでは現金出納帳の記載項目と、書き方の流れを整理していきましょう3

書くべき項目6つ

現金出納帳には下記6項目を記載します。
1. 日付
現金を受け取った(支払った)日付を記入します。
同じ日に複数の現金取引があった場合は、取引ごとに行を分けて書きましょう。

2. 勘定科目
勘定科目は、取引内容を分類するために使われます。家計簿でも食費や水道光熱費などと分類して書くように、事業においても収益や費用をグループ分けして管理します。個人事業でよく使う勘定科目は下記のとおりです。

  • 売上
  • 仕入れ
  • 租税公課
  • 荷造運賃
  • 水道光熱費
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費
  • 消耗品費
  • 地代家賃
  • 雑費
  • 事業主貸 / 事業主借

3. 適要
勘定科目だけでは入出金の詳細が分かりません。何を売り上げたのか、何を購入したか、どの銀行に現金を預け入れたかなど、摘要欄に入出金の詳細を記入します。

4. 収入金額

5. 支出金額
現金が増えた取引では収入欄に収入金額を、現金が減った取引では支出欄に支出金額を記入します。

6. 残高
その取引によって手元の現金はいくらになったのか、残高を計算して記入しましょう。日ごとの残高は「前日の残高+(今日の収入金額-今日の支出金額)」で求められます。

書き方と手順

現金出納帳には日々の現金取引だけでなく、月初に前月からの繰越額を、月末には当月の締めと次月への繰越額を記入します。

  1. 月初に、前月からの繰越額を収入欄と残高欄に記載する
  2. 現金取引ごとに、日付、勘定科目、摘要、収入額または支出額、残高を記載する
  3. 月末に当月の現金取引額を集計し、次月への繰越額を算出する
    3-1. 当月の合計収入額を収入欄へ、合計支出額を支出欄へ記入する
    3-2. 翌月への繰越額を支出欄に記入する
日付   勘定科目 摘要 収入 支出 残高
      前月繰越 50,000   50,000
1 10 水道光熱費 水道代   6,500 43,500
  20 消耗品費 プリンタインク購入   3,000 40,500
  旅費交通費 タクシー代(◯◯駅→事務所)   2,000 38,500
  30 普通預金(A銀行) 現金補充 10,000   48,500
  31   合計 60,000 11,500  
      次月繰越   48,500  
        60,000 60,000  
2 1   前月繰越 48,500   48,500
             

現金出納帳への記入だけでなく、日ごと、月ごとに帳簿の残高と実際の現金の残高が合っているかも忘れずに照合しましょう。

帳簿残高と実際の現金の残高が合わないときは、まず記帳の漏れや転記ミス、計算ミスがないかを疑います。それでも残高不一致の原因がわからなければ、「現金過不足」として実際の残高に帳簿残高を合わせるかたちで帳簿上の数字を調整します。

プライベートの現金から補填するなどして残高を合わせたくなるかもしれませんが、1円でもそうした帳尻合わせをしてはいけません。事業上の現金を正しく管理できなくなってしまい、現金出納帳の意味が薄れてしまいます。

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現金出納帳を作成する方法

現金出納帳は手書きでも、コンピューターを使ったデータ形式でも、どちらの方法で作成しても問題ありません。

ここでは手書き、エクセルのテンプレートを使う方法、会計ソフトやアプリを使う方法の3種類について、メリットやデメリットを紹介します。

ノートや帳簿に手書きする

ノートに定規で線を引いて現金出納帳とするほか、市販の現金出納帳を購入して手書きで記入していきます。

コンピューターを立ち上げる必要もなく、手軽に書き始められる点がメリットといえる一方、ミスの起こりやすさや修正の手間は大きなデメリットです。

手書きの作成方法では、領収書やレシートからの転記ミス、電卓の打ち間違い、「0」と「6」など数字の見間違い、1行間違えて書いてしまったなど、さまざまなミスが起こり得ます。また修正も書き直すしか方法がなく、効率的とはいえません。

現金取引が少なければ小さな負担ですみますが、そうでなければおすすめできる方法とはいえません。

エクセルのテンプレートを使う

現金出納帳はエクセルなどの表計算ソフトでも作成できます。無料でテンプレートを配布しているサイトからダウンロードすれば、すぐに記帳を始められて便利です。

必要な箇所に数式が設定されたテンプレートなら、収入金額または支出金額を入力するだけで残高が自動計算され、計算の手間が省けます。

ただし、操作を誤ると数式が破損するおそれがあります。気づかないまま入力を続けると、正確な残高を把握できません。表計算ソフトや関数の扱いに不慣れな人は修復に手間がかかってしまいます。

会計ソフトやアプリで簡単に作成する

会計ソフトやアプリでも現金出納帳を作成できます。会計ソフトはエクセルと同様、残高が自動計算されますが、数式が破損するリスクはありません。さらに、確定申告書にも数字を自動で反映してくれるため効率的です。

スマートフォンでレシートを撮影すると、レシートの中の文字情報を認識し、取引情報として入力してくれるソフトも提供されています。

さらに、会計ソフトは銀行口座やクレジットカードとも紐づけられるため、現金出納帳だけでなく預金出納帳の作成も非常にスムーズになります。

月額利用料がかかる点や初期設定がやや面倒な点はデメリットといえますが、その後の確定申告まで見据えると、一考の価値はあるでしょう。

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現金出納帳を作成する際の注意点

個人事業主が現金出納帳を作成する際、書き方のほかにも押さえておくべきポイントがあります。ここでは必ず頭に入れておきたい三つの注意点を紹介します。

現金残高と実際の現金残高を合わせる

現金出納帳を間違いなく記帳できていれば、帳簿の残高と実際の現金の残高は一致するはずです。しかし、時には残高の不一致が生じるかもしれません。

帳簿の残高と手元の現金の残高が合わない場合は、まずレシートや領収書からの転記ミスと計算ミスを疑い、原因を突き止めましょう。

それでも原因がわからないときは「現金過不足」として、実際の残高に帳簿の残高を合わせます。後で原因が判明したら、帳簿上の現金過不足を取り消します。

もし期末まで原因がわからないままであれば、「雑損失」または「雑収入」として決算処理をします。

事業に使うお金とプライベートのお金を分ける

事業用の現金の動きを正確に管理するため、たとえ帳簿の残高と実際の残高が合わないときでも、プライベートの財布からの補填や、事業用の現金の抜き出し行為は厳禁と心得ましょう。事業用のお金とプライベートのお金は厳密に分離し、現金過不足が生じないよう業務を改善するのが先決です。

領収書やレシートを保管する

現金出納帳と同様に、領収書も青色申告の人は7年間、白色申告の人は5年間の保存義務があります1

現金出納帳への記入を終えても領収書やレシートは処分せず、ファイリングするなどして保管しておきましょう。レシートに多い熱感紙は温度・湿度や紫外線、摩擦などに耐性がないため、ていねいな管理が必要です。

まとめ

現金出納帳は事業において、いつ、何のために、いくら現金を使ったか、あるいは受け取ったかを詳細に記録する帳簿です。現金出納帳を作成するとお金の流れを把握しやすくなるほか、不正防止にも役立ちます。

日々の記帳はやや面倒かもしれませんが、会計システムやアプリを使えば少ない負担で簡単に入力できます。お金の管理は事業の安定運営と成長の基本です。正しく記帳を行い、事業運営に役立てていきましょう。


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執筆は2025年2月11日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash