OODAループとは?成長ビジネスの現場で今すぐ使える、PDCAと異なるフレームワーク

OODAループは、現場での意思決定に重要な役割を果たす理論の一種です。OODAループのフレームワークをビジネスシーンに採用することで、1人ひとりが臨機応変に環境に即応しながら仕事を進めることが可能になります。そんなOODAループの意味や実践方法を、比較されることの多いPDCAサイクルのフレームワークと対比しながら紹介します。

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OODAループとは何か

OODA(ウーダ)ループはその起源を知ると、理解しやすくなります。OODAループの提唱者であるアメリカ空軍のジョン・ボイド大佐は、航空機を使った戦闘の実戦と戦術に長けた人物として知られています。OODAループは元々、航空戦に挑むパイロットのための戦術として編み出されたものです。

一瞬の判断が命や戦果を左右する航空戦においては、全てのパイロットが自分で的確な判断を下せる必要があります。時に、上官の命令を待っているだけでは、敵に攻撃されたり、退避が遅れて軍全体が危険にさらされたりする可能性があるからです。現場の状況は刻一刻と変化し、パイロットは常にその変化に対応する必要があるため、状況把握、最適な選択肢の検討と実行という臨機応変な思考力や対応力を身につけておくことが求められます。

OODAループは、変化の激しい状況下であってもパイロット1人ひとりが最適な判断と行動を採ることができるわかりやすいフレームワークとして提唱されました。実際に朝鮮戦争でOODAループを活用した戦術が成果を挙げ、「現場の理論」としてのOODAループが広まるきっかけとなったといわれています。

戦闘シーンのために確立されたOODAループですが、その後は軍事戦略の立案に始まり、ビジネスや政治など、幅広い場面で役立てられています。今回はビジネスの現場でのOODAループの在り方、実践方法にフォーカスして、活用法を考えていきましょう。まだ日本では採用例の少ないOODAループに注目することで、一歩先を行く効率性を獲得することもできるはずです。

参考:OODA LOOP(ウーダループ)―次世代の最強組織に進化する意思決定スキル(チェット・リチャーズ著、原田勉訳・解説)

OODAループとPDCAサイクルの違いは?

OODAループと比較されることの多いマネジメントのフレームワークに、PDCAサイクルがあります。PDCAサイクルとの違いを考えることで、OODAループを相対的に理解しやすくなります。

ビジネスの現場におけるPDCAサイクルは、現場の業務プロセスを改善する、よりハイレベルな品質管理を実現するなど、既存の仕事の精度をさらに高めるために用いられものです。その手法はP(plan=計画する)、D(do=実行する)、C(check=評価する)、A(action=改善する)という4ステップから成り立ち、中期から長期にわたって効果を見ながら活用します。PDCAサイクルは最初に立てた計画を中心に進めるもので、想定外の状況には対応しにくいという難点があります。

一方OODAループは、既存の業務ではなく、全く新しい事業や商品開発、起業の際などに用いられます。OODAループの起源が空中戦であったように、未知の相手を前に、目の前にある情報だけを前提としてその場で勝利のための作戦を立て、すぐに実践するという、短期的に活用しやすいフレームワークです。

PDCAサイクルとOODAループは、それぞれ全く異なる状況下で使う理論だと覚えておくと良いでしょう。未知の状況においてPDCAサイクルを導入しようとしても、そもそも計画立案の根拠となるデータが存在しなければ、効果的な計画は立てられません。そんな時こそ、OODAループの出番です。

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OODAループの4ステップ

OODAループは、Observe(観察する)、Orient(方向付ける)、Decide(決定する)、Act(行動する)という4ステップの頭文字を取って作られた言葉です。Oから始まりAにたどり着き、また冒頭のOに戻り、この流れを繰り返します。

ステップ1: Observe=観察する

OODAの最初のステップは、対象をしっかり観察することです。対象とは、たとえば市場、顧客、競合、販売数や利益の動き方など。航空戦のパイロットのように、現れた敵や味方の状態、気象や地理などを余すことなく観察することで、今自分が置かれている状況を把握します。

このステップで重要となるのは、予測や事前情報、常識といった既存の知識にとらわれないこと。「今までAだったから今回もAになるはず」といった思い込みがあると、目の前に現れたXという状況を柔軟に受け入れることができなくなるため、要注意です。

ステップ2: Orient=方向付ける

ステップ1で状況を正しく掴んだら、次は進む方向、採るべき行動を考えます。攻撃や防御をするか否か、あるいは前後左右に進路を変えるという方法も考えられ、その中から最適な選択肢を検討し、選びます。

1での十分な観察に基づき、この「方向付け」が可能になります。

ステップ3: Decide=決定する

ステップ2で検討した最善の選択肢が「右に進む」だったとします。その場合この決定のステップでは、「どのように右に進むか」を具体的に決定します。速度や手段、最終到達地点、あるいは戻る可能性の有無など、行動指針を決定することで、次のステップを確実なものにするのです。

ステップ4: Act=行動する

ステップ3の決定に基づき、行動に移します。ここで求められるのは、理論に基づき思考した結論を現実のアクションに転換する実行力です。

そして再びステップ1の「Observe」に戻り、ステップ4の「Act」の結果を観察しながら次のステップを踏み出すことで、OODAループは短期間で精度の高い結果を残すことが可能にします。

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スモールビジネスにおけるOODAループの例

OODAループは、組織と個人の両方で活用することができます。組織での活用は、たとえば新商品の開発チームとして市場のニーズを観察し(ステップ1)、そのニーズにどのようなソリューションの提供が可能かという方向性を考え(ステップ2)、ソリューション提供の手法やシナリオを決定し(ステップ3)、実際に商品を作って売り出す(ステップ4)といったことが可能です。

できればリーダーなどの立場の人がOODAループのステップごとに内容を確認し、フィードバックを与えながら進めることで、より精度の高いOODAループの実践が可能となります。OODAループを会社や店舗といった組織内で活用することは、1人ひとりの状況判断力や決定力を鍛え、トップダウン式ではない企業文化の形成につながっていきます。ティール組織に代表されるような、全員が組織の成長に100%の力で貢献するような組織体質がOODAループによって完成されれば、業績や企業価値が向上することはいうまでもありません。

個人でのOODAループの活用も効果的です。先述のように、OODAループの特長として「環境変化への強さ」「迅速な対応力」があり、個人事業主や1人で担当する部署の小回りの良さとは非常に強い親和性があります。

新規事業の立ち上げを、もしPDCAサイクルで回していくとすると、他の事業立ち上げの経験やメソッドがあることが前提となりますが、OODAループであれば全くの異業種、異業態であっても対応できます。特に時代やトレンドの流れが速い現代においては、流行や市況も目まぐるしく変化するため、短期スパンのOODAループで迅速に対応することが望ましいケースが少なくありません。

PDCAサイクルかOODAループか、代表的なフレームワークのどちらがより適しているか状況を見極めることが、ビジネス戦略の実効性を大きく左右するといえるでしょう。

執筆は2019年8月23日時点の情報を参照しています。
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