帝国データバンクが2024年7月に行った調査1によると、正社員が「人手不足である」と回答した企業は半数以上にのぼりました。さらに、非正社員の人手不足割合に関しては「飲食店」が全業種中でトップとなり、深刻な人手不足が課題となっていることがわかります。この記事では、飲食店の人手不足の原因と解決策を紹介します。
目次
飲食店の人手不足の現状
先出の帝国データバンクの調査では、「正社員」が不足していると感じている企業は51%にのぼり、アルバイトやパートなどの「非正社員」においては28%となっています。中でも飲食店は、非正社員の人手不足に悩む企業の割合が67%と、他業種と比較して高い割合となっています。
飲食店の人手不足の背景
飲食店における人手不足の背景には、どのような問題があるのでしょうか。
コロナ禍の影響
2020年に新型コロナウイルスの世界的なパンデミックが起こると、日本でもさまざまな行動制限がとられるようになりました。なかでも飲食店は営業自粛や営業時間の短縮、酒類提供や人数の制限などがあり、厳しい状況から、人件費の削減に踏み切った店舗も少なくありません。一度流出した人材が戻ってきていないことも、背景の一つだと考えられます。
人材定着率の低さ
コロナ禍以前から飲食店には慢性的な人手不足の問題がありました。厚生労働省が2023年に発表した「新規学卒就職者の離職状況」2によると、2020年3月に卒業した新卒者の就職後3年以内の離職状況をまとめたところ、高卒・大卒ともに宿泊業・飲食サービス業が離職率でトップとなっており、大卒では51%、高卒では62%にも上ります。新卒者の半数以上が3年以内に離職していることが分かります。詳しくは後述しますが、長時間労働や業務量の多さなどの原因から、離職率が高く、慢性的な人手不足に陥っているのが現状です。
売り手市場で、採用が進まない
厚生労働省の発表3によると2024年7月の飲食業における有効求人は、キッチン担当などの「飲食物調理の職業」は2.57倍、ホール担当などの「接客・給仕の職業」の有効求人倍率は1.97倍となっており、売り手市場であることが伺えます。求人を出しても求職者が集まらないと頭を抱えている飲食店も多いかもしれません。また、前述の長時間労働や業務量の多さなど、飲食店で働くことへのマイナスイメージも採用が進まない理由の一つといえます。
スタッフの離職の原因として考えられること
飲食店が人手不足に陥りやすい理由としては、以下のようなことが考えられます。
負担が大きい
休みが不規則、深夜営業や24時間営業をしている、仕込みや片付けなど営業時間外の業務が多い、慢性的な人手不足をカバーするために管理職の仕事が増えるなど、さまざまな理由から飲食店では長時間労働になりやすく、一人ひとりのスタッフにかかる肉体的・精神的負担が大きい傾向にあります。株式会社シェアダインが調理人を対象に行った調査4では、調査対象者の7割が「サービス残業が当たり前」「調理業務以外の業務が多い」「シフトが柔軟に組めない」などの理由から飲食店での働きづらさを感じていました。
報酬や待遇に魅力がない
厚生労働省が「外食産業」を対象としたアンケート5によると、「現在の仕事を今後も続けたいと思わない理由」として「収入が低いため」と回答した人は正規雇用者で5割超、非正規雇用者で5割弱となっています。報酬や待遇が業務量に見合っていないとスタッフが感じた場合、モチベーションを保つことができず、離職の原因になってしまいます。また、人事評価の基準が定まっていなかったり、曖昧だったりすることもあります。スタッフは「どのようにしたら時給が上がるのか」「どのようにしたら役職が上がるのか」が分からないことに不満を持ち、しっかりと評価してもらえるお店や企業へ転職してしまうことが考えられます。
人間関係によるトラブル
人間関係のトラブルも離職につながる理由の一つです。飲食店に限った話ではありませんが、2019年に厚生労働省が行った調査6では、転職入職者が前職を辞めた理由のうち、「職場の人間関係が好ましくなかった」と答えたのは男性が9%、女性が13%でした。少人数で働くことが多い飲食店では、人間関係の悩みが辞職につながりやすいと考えられます。
クレーム対応や過剰なサービスによるストレス
東京都議会で全国初の「カスハラ条例」が成立するほど、カスタマーハラスメントは大きな問題となっています。クレーム対応も接客業務の一部ではありますが、お客さまの中には暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求などの著しい迷惑行為を行う人もいます。こうしたお客さまからの過度なクレームや、クレームを避けるようと過剰なサービスをすることで、スタッフが疲弊してしまい、離職するケースもあります。
飲食店の人手不足を解消する5つのヒントと役立つツール
人材不足を解消するために、飲食店が取り組めることにはどのようなことが挙げられるでしょうか。具体的なヒントと合わせて役に立つツールも紹介します。
1. 長時間労働の解消に取り組む
長時間労働による負担の解消に積極的に取り組むことは、現時点で働いてくれているスタッフの離職を防止したり、今後応募する人が魅力的に感じたりするポイントになりえます。営業時間を急に変更することは難しいかもしれませんが、レジ締めやシフト管理、食材の発注など、営業時間外で発生する業務に関してはITツールを導入することで解決できる部分が多いでしょう。たとえば、POSレジの導入によるレジ締めの簡略化、シフト管理アプリを活用した柔軟なシフト管理などに取り組むことができれば、スタッフにとってより働きやすい職場環境となり、人手不足を解消する一助になるかもしれません。
役に立つツール:POSレジ
POSレジとは、商品名、価格、販売個数、在庫状況、顧客情報、支払い方法などの情報を集計して管理するシステムが搭載されたレジのことです。POSレジに蓄積されるデータを分析することで、どのようなメニューが、いつ、どれだけ売れたかをより正確に把握したり予測したりすることができるようになります。
「日曜日の夜は家族連れが多く、子ども向けのメニューが多く出る」「平日昼間のランチでは女性の比率が多く、野菜中心のメニューが人気」などのデータ分析が可能です。どの曜日のどの時間帯が混み合うかなどがわかれば、スタッフの配置を適切に行うことができるようになります。
また、POSレジは売上情報が自動で集計されるので、レジ締めの際の手作業による計算を簡略化することができます。レジ締めにかかる時間を大幅に省略できるので、スタッフの長時間労働の防止にもつながります。
役に立つツール:スタッフ管理ツール
ひと昔前までは、紙や表計算ソフトでシフト表を管理し、タイムカードで勤怠時間を記録するのが一般的でした。シフトの確認もスタッフがお店に出向いたり電話で確認したりする必要がありましたが、最近では専用のアプリなどを活用してシフト管理を行うことが可能です。システムにもよりますが、概ね以下のことが可能です。
- シフト作成
- 勤怠管理
- 勤務時間の可視化
- 店舗側、スタッフ双方からのシフト確認
- 給与計算
- スタッフ別の売上成績
スタッフ管理ツールを利用することで、シフト担当者の作業が軽減されるほか、スタッフも自分のシフトをオンラインで確認することができ、利便性が向上します。また、スタッフ管理システムの中には、スタッフ同士でシフトの交換ができるものもあるので、柔軟なシフト制度の実現に役立つでしょう。
2.雇用条件や評価制度を見直す
給料や待遇が業務量に見合っているかどうか見直しましょう。給料の見直しが難しい場合は、まかないの提供など待遇面の改善に取り組み、福利厚生は充実しているか、有給は取れているのかといった項目についてもチェックしましょう。また、評価制度が定まっていない場合は、評価制度を設けてマニュアル化することも必要です。どうすれば評価が高まるのか、評価が高まった場合にはどのような特典があるかなど、わかりやすい基準や条件を設けることで、スタッフのモチベーションをアップさせることができるかもしれません。
3.職場環境や教育制度を整える
定期的にスタッフと面談をして、職場環境についてのヒアリングを行うことも必要です。また、普段からお店の様子や、スタッフ同士のやり取りを観察するのも大切です。人間関係のトラブルがある場合は、早急に解決方法を探りましょう。調理の技術を身につけたいと思っているスタッフや店舗経営を学びたいスタッフなど、将来的に管理職候補になるような学ぶ意欲の強い人材を逃さないために、教育制度を用意しておくとよいでしょう。
「見て覚える」だけではなく、マニュアルを用意して誰でも理解できる教育を行うことも検討するとよいかもしれません。きちんとマニュアルを用意しておけば、新人スタッフがいつでも正しい手順を確認できるだけでなく、既存スタッフの教育にも役立ちます。新しく導入した機器類の使い方や、新メニューの盛りつけ方など、新しい情報が出るたびにマニュアル化しておけば、スタッフは必要な業務をいつでも学ぶことができます。
4.業務内容の見直しと効率化に取り組む
人手をすぐに増やすのが難しかったり、労働環境を整えるのに時間がかかったりする場合は、業務内容の見直しを行いましょう。食材の在庫確認、掃除、設備メンテナンスなどに無駄な業務がないかをチェックしましょう。
会計業務に時間がかかっているのであれば、セルフレジや現金のやり取りの必要がないキャッシュレス決済を導入することを検討しましょう。株式会社ジェーシービーが行った実験7では、キャッシュレス決済は現金よりも16秒速く、非接触型(QUICPay)に限ると現金より20秒速く決済できることが明らかになっています。また、実験によって導かれた各決済速度の差をもとに試算したところ、すべてのお客さまがキャッシュレス決済だった場合、1店舗あたりの労働時間は1日約4時間も減少する可能性があることがわかりました。
注文に時間がかかっている場合には、タッチパネル注文やセルフオーダーシステムなどを導入するといいかもしれません。このようなツールを利用して業務の効率化を図ることで、少ない人手で業務を行うことができるようになります。
役に立つツール:セルフオーダーシステム
お客さまが自分自身で注文を行うセルフオーダーシステムを導入することで注文ミスの削減、人員コストの削減につなげることができます。セルフオーダーシステムには、注文専用のタブレットやQRコードを各テーブルに配置してお客さまに注文してもらう方法と、タッチパネルをお客さまが操作して注文からお会計まで行う方法があります。後者の場合、お客さまが操作するタッチパネルなどの端末が必要ですが、注文を聞いたりお会計をしたりする必要がない分、ホールのスタッフ数を減らせます。
5.採用する条件を変える
募集をかけてもなかなか人が集まらないというような場合は、採用条件を変えたり、採用範囲を広げたりするのも一つの手です。たとえば、「仕込みだけ」「週3日、混雑時の2時間だけでもOK」「HPやSNSの更新業務をおまかせ。在宅でもOK」など、業務を細かく切り分け、短時間や在宅でも勤務できるように条件を変えることで、条件が合わずこれまでは応募に至らなかった層にもリーチできるかもしれません。また、募集にあたっては求人サイトだけでなく、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを活用するのもおすすめです。特に若い世代は情報収集にSNSを利用する傾向があります。お店を気に入ってくれているフォロワーが採用広告に応募してくれることも期待できるでしょう。
人手不足を解消するツールは、Squareにおまかせ!
Squareでは人手不足を解消するのに役立つツールおよびサービスを提供しています。
POSレジ
Squareでは、飲食店に特化したPOSレジであるSquare レストランPOSレジを提供しています。メニューやホールのテーブルレイアウトなどを簡単に登録することができ、シンプルなデザインで直感的に操作できるので、新人スタッフのトレーニングに長時間を費やす必要がないのも嬉しいところです。会計の効率化を助けてくれるだけでなく、スタッフ管理や在庫管理とも連動できます。また、売上分析機能や顧客管理機能もあるので、飲食店の効率的な運営には欠かせません。さらに、キャッシュレス決済端末のSquare ターミナルをハンディ端末として使用し、注文から会計までお客さまのテーブルで行うことも可能です(※)。
※Square ターミナルをハンディ端末として利用するには、Square レストランPOSレジの有料プランへのお申し込みが必要です
▲Square ターミナルをハンディ端末として利用している様子
キャッシュレス決済
Squareでは、ニーズや予算に応じて選べる決済端末を複数種類提供しています。前述のSquare ターミナル(税込39,980円)は、コンパクトで持ち運びができ、さらにレシートプリンターも内蔵されていることから、テーブルでお会計からレシートの発行まで行いたい店舗におすすめです。
テイクアウトを提供している飲食店には、Square レジスター(税込84,980円)がぴったりでしょう。Square レジスターには、スタッフ用の大きなタッチスクリーンとお客さま用の決済画面の2画面が搭載されています。お客さま用の決済画面には注文した商品やお会計額が表示され、お客さまは自分で希望する決済方法を選択したり、カードを挿入したりかざしたりできます。お会計の操作をお客さまに任せられるので、その間にササッと商品を準備しておくことも可能です。どちらも端末費用はかかりますが、月額利用料などは必要ありません。かかるのは、キャッシュレス決済時の決済手数料のみです。
▲Square レジスターでお会計をしている様子
セルフオーダーシステム
注文もお会計もお客さまにおまかせして、最小限の人数で運営したいという飲食店には、Square キオスクが役に立つでしょう。Square キオスクの専用端末(税込29,980円/台)と専用アプリ(5,000円/月)、iPadを準備すれば、低予算でセルフオーダー兼セルフレジシステムを店舗に導入できます。
そのほかの便利な機能
Square シフトは、勤怠管理やシフト管理に特化したサービスです。有料プランと無料プランがありますが、無料プランでも、スタッフの出退勤の記録、シフト作成、人件費レポートなど豊富な機能が利用できます。有料プランでは、スタッフ内でシフトの交換ができたり、スタッフ別に売上レポートが確認できたりなど、より高度な機能が用意されています。
在庫管理機能が無料で利用できるのもSquareの特徴です。在庫数が多い場合もCSVファイルで一括インポートでき、在庫数の変更はパソコンのブラウザやPOSレジアプリからいつでも簡単に操作できます。在庫が少なくなったものに関してはメールでお知らせが届きます。
Squareは会計ソフトのfreeeまたはマネーフォワードと連携できます。売上データをSquareから会計ソフトに取り込めるので、会計ソフトにデータを入力し直す必要はありません。日々の帳簿作成業務を一部でも自動化できれば、人手によるミスや心理的な負担を減らすことにもつながります。
人手が足りずにお店が回らなくなり、廃業に追い込まれる飲食店もあるほど、人手不足は深刻な問題です。スタッフの働く環境を整え、さまざまなツールを利用して業務の効率化を進めながら、人手不足を解消して売り上げアップを目指しましょう。
飲食店ならSquareにおまかせ
Square レストランPOSレジなら、店内、オンライン、デリバリーのオーダーを1か所で管理して飲食店の運営をもっと効率化できます。メニューごとの売上レポートやシフトレポートなど、リピート率アップとコスト削減に役立つ機能が使える有料プランも。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2022年12月14日時点の情報を参照しています。2024年10月18日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash
1: 人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)(株式会社帝国データバンク)
2:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者の状況)を公表します(2023年10月20日、厚生労働省)
3:【PDF形式】一般職業紹介状況(令和6年7月分)について(厚生労働省)
4:シェアダイン【調査リリース】飲食店勤務経験のある料理人の7割がキャリア構築に難しさを感じると回答(2022年10月12日、株式会社シェアダイン)
5:【PDF形式】外食産業における労働時間と働き方に関する調査(厚生労働省)
6:【PDF形式】令和5年雇用動向調査結果の概況(2024年8月27日、厚生労働省)
7:決済速度に関する実証実験結果(2019年8月28日、株式会社ジェーシービー)