【商いのコト】“植木屋”の夫婦が作る“人が集まるまち”ーsenkiya

成功も失敗も、すべては学びにつながる。ビジネスオーナーが日々の体験から語る生の声をお届けする「商いのコト」。

つなぐ加盟店 vol. 43 senkiya 高橋秀之さん、高橋雅子さん

自分たちの思いに共感してくれる人とともに、“人が集まるまち”を作る。そのような強い思いを持ち、埼玉県川口市で商いをする夫婦がsenkiyaの高橋秀之さんと妻の雅子さんだ。

実家の母屋を改装してカフェと雑貨店を営む高橋さん夫婦。二人の価値観に共感し、敷地内には革小物の工房や観葉植物屋などさまざまな商いを営む人たちが集まり、地域を盛り上げている。

前編では、秀之さんがsenkiyaを始めたきっかけや、現在のかたちに至るまでの道のりを紹介する。

後編はこちら

黒磯にあるカフェとの出会いが、人生を変えた

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埼玉県川口市。東川口駅から車で10分ほど東に行った閑静な住宅街の一角に、senkiyaはある。敷地内にはカフェや雑貨店の他に、さまざまなショップが立ち並び、地元の住人や遠方から訪れるファンで賑わいを見せる。

「この地域はちょっと変わっていて、植木屋さんがたくさんあるんです。僕は小さな頃から、梅や桜といった花木を扱うひいおじいちゃん、球根を扱うおじいちゃん、そしてポット苗を扱う父の姿を見てきたので、『いずれ自分も植木に関わる仕事をするのだろうな』と思っていました。」

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秀之さんは専門学校を卒業後、花屋に就職。代々植木を扱う『千木屋』の家に生まれた秀之さんにとって、植物に関する仕事に就くのは自然のなりゆきだった。そんな秀之さんに転機が訪れたのは、20歳の頃。専門学校時代の友人から『いいカフェがあるから、遊びに来なよ』と言われ、栃木県・黒磯にある『1988 CAFE SHOZO』を訪れた。このカフェとの出会いが、秀之さんの人生を大きく変えることになる。

「オーナーさんがとても面白くて、カフェだけでなく通り沿いの空いている場所を雑貨店や洋服屋にして“人が集まるまち”を作っていました。それを見たときに、『人が集まる場所としてよく出来ているな』と思ったんです。たとえ魅力があっても、観光資源が少ないことで人が集まらない地域って結構あるんですよね。黒磯もそうだったはずなのですが、見事に人を呼び込むことに成功していました。これを見たときに、自分が住んでいるところでも同じようなことをやりたいと思ったんです。」

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秀之さんは26歳から約2年間、黒磯のカフェで修行した。そして植木屋だった『千木屋』を『senkiya』とし、人が集まるような場作りを始めたのだった。

「『千木屋』は植木屋という大きな括りこそありましたが、代々みんな別々のことをやっていたので、父から反対されることはありませんでした。後になって高校の友人に教えてもらったのですが、僕は高校生のときに『同級生と商店街のようなものを作りたい』という夢を語っていたようです。僕自身はすっかり忘れていたのですが、黒磯のカフェを見たときにきっと高校時代の夢とリンクしたのでしょうね。」

思いに共感してくれる人とともに、“新町”を盛り上げたい

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妻の雅子さんは、senkiyaを始めるまでは販売の仕事をしていた。秀之さんとは何度も『1988 CAFE SHOZO』を訪れ、いずれこのような場所を作りたいという想いを聞いていたのだという。

「勢いで始めてしまったので、あまり不安に感じる暇もありませんでしたね。なるべく早くsenkiyaを始動させたかったので、設備投資が比較的少なくて済む雑貨店から始めることにしました。お店には自分が実際に使ってみていいなと思ったものを置き、使い方を説明して納得した状態で買っていただけるような店を作ろうと思いました。最初にお客様が商品を購入してくださったときのことは、今でもはっきり覚えています。今でもたまに来てくださる方なんですけど、通りすがりにうちを見つけて洋服を買ってくださったんですよね。」

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秀之さんと雅子さんは、雑貨店をする傍らでカフェスペースの改装工事をするという忙しい日々を送った。

senkiyaの周辺は昔、築城に合わせて移住してきた人たちが作った新しい町であることから地元では“新町”と呼ばれている。2人が目指したのは、自分たちの思いに共感してくれる人とともにこの新町を盛り上げること。2009年に雑貨店をオープンしてから約9年が経過した現在、senkiyaはカフェや雑貨店、菓子店を営んでいる。さらに敷地内には、senkiyaにゆかりのある作家や若手作家が作品を発信する『gallery tanabike』や不定期に音楽にまつわるイベントが開催される『okatte』など、senkiyaが目指す世界観に共感した人たちがさまざまなスペースを開いている。

「店に来てくださったおばあちゃんが今度は娘さんを連れて来てくださって、最終的にはお孫さんも含めて3世代で来店してくださることもあります。こういう風に、お客様が新しいお客様を連れて来てくださるのは、本当に嬉しいことです。」

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笑顔で語る雅子さん。この話を聞くと、senkiyaが雑貨店をオープンしてから現在に至るまで、あたかも順風満帆に進んできたように思えるかもしれない。しかし、“人が集まるまち作り“を進めるには多くの苦労があった。後編では、高橋さん夫婦が直面した困難や、商いの楽しさ、そして今後の展望を伺う。

後編はこちら

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senkiya
埼玉県川口市石神715
Tel : 048-299-4750
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(つなぐ編集部)
写真:小沼祐介