後払いとは?導入時の注意点やメリット、デメリットを解説

ネットショップの商品は自分の目で実物を確認してから代金を支払いたい、と思うお客様は少なくありません。このようなお客様に人気の決済方法が、後払いです。文字通り、商品を受け取った後に支払う決済方法で、国内の後払い決済サービス(BNPL)市場規模は推計1兆820億円(2021年度)、2026年度には約2兆円に拡大することが予測されています。

参考:EC決済サービス市場に関する調査を実施(2023年3月29日、株式会社矢野経済研究所)

後払いでは、商品の到着後にお客様が代金を一括で支払うのが基本的な流れでした。ところが最近では、手数料の負担を心配することなく分割払いが選べる「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター、以下BNPL)」も後払いの一種として登場し、アメリカやヨーロッパで人気を集めています。米調査会社によれば、アメリカでのBNPL取引額は2022年で756億ドル(約8.3兆円)になる見通しで、前年比で77.3%も増えているようです。

参考:後払い決済市場規模見通しは2022年756億ドル、2024年1,121億ドル、米民間調査(2022年07月01日、日本貿易復興機構(ジェトロ))

国内でもペイディを筆頭にBNPLを提供するサービスが登場しており、サービス提供事業者の増加や認知度の向上が進むことで、今後海外のようにブームを巻き起こすことが期待されています。

このような流れのなかで、後払いに対応しておくべきかと疑問を抱く事業主や、BNPLについてもっと詳しく知りたいと思う事業主もいるかもしれません。この記事では後払いの概要を紹介しながら、大きな可能性を秘めたBNPLについても触れていきます。

目次


後払い決済とは

後払い決済とは、購入した商品を受け取った後に代金を支払う決済方法で、主にオンラインショッピングの決済方法として親しまれています。

基本的な流れとしては、商品受け取った後、指定の方法で期日までに代金を支払います。払込用紙をコンビニエンスストアや銀行、郵便局などに持ち込んで支払う方法が主流でしたが、最近ではLINE Payやネットバンキングによる銀行振込なども選べるようになっており、スマートフォンさえあればどこからでも支払いを完了させられます。代表的なサービスには、「NP後払い」や「あと払いペイディ」などがあります。

また、決済アプリなどを通して、実店舗での買い物を翌月払いにできる仕組みも登場しはじめています。例でいうと、「メルペイあと払い」や「PayPayあと払い」などです。

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いずれの場合も商品購入時には支払いが発生しないため、消費者にとっては手元の現金が足りなくても商品を購入できる便利な支払方法だといえます。

ネットショップや実店舗で後払い決済に対応するには、初期費用、導入費用、月額利用料、決済手数料などがかかります。

また、その場で支払いが発生しない点や後日支払う点などでは、クレジットカード決済と似ていますが、後払い決済は基本的にクレジットカードのない人でも利用できる決済方法として分けて説明されることが多いようです。

後払い決済とBNPLの違い

BNPLは「Buy Now Pay Later(バイ・ナウ・ペイ・レイター、今買って、あとで払う)」の略語で、近年誕生した新たな後払い決済方法です。前章で説明した後払い決済との一番の違いは、分割払いができる点です。

これまで親しまれてきた後払い決済は支払期日を多少後ろ倒しにできても、基本的には一括払いでした。BNPLでは、分割手数料の負担なしに、分割して代金を支払うことができます。分割払いにはつきものだった手数料をなくしたことが、消費者がBNPLに魅力を感じる大きなポイントです。また、クレジットカードを作るときのような与信審査がほとんどないのも大きな特徴です。サービスによっては簡単な審査もありますが、クレジットカードの与信審査と比べると簡素であることから、クレジットカードが作れない層・作りたくない層でも使える可能性があります。

支払方法は後払い決済と同様、コンビニ払いや口座振替、銀行振込が利用できるようです。

また、後払い決済同様、ネットショップや実店舗の事業者には手数料の負担があります。

消費者が後払いを利用するメリット・デメリット

財布と相談することなく、欲しいものを手に入れられる手段ともいえる後払い決済。消費者が感じるメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

消費者が後払いを利用するメリット

クレジットカードがなくても使える

クレジットカードを作るにはさまざまな条件をクリアする必要があります。審査を通過しなければいけなかったり、年齢制限があったりすることから、クレジットカードが作れないこともあります。

後払い決済なら誰でも利用することができます。審査がない、もしくは簡素なことが多く、収入や年齢が妨げになることも少ないでしょう。

簡単に利用できる

後払い決済を利用するには、ネットショップの購入画面に表示された決済手段から「後払い決済」をクリックするだけです。たとえばクレジットカード決済だと、氏名や番号などの情報を入力する必要があるため、なるべく人目がない場所を選びたくなりますが、後払いならこのような心配もいりません。

不正利用の心配がない

昨今の不正利用のニュースの影響を受け、ネットショップでクレジットカード決済を利用したことで情報が流出したらいやだな……などと心配になる人もいるかもしれません。後払い決済ならこのような情報の入力は不要なため、安心して決済をすることができるでしょう。

消費者が後払いを利用するデメリット

支払いに手間がかかる

支払方法によっては、期日までにコンビニエンスストアやATMなどに足を運ぶ必要が出てきます。支払いに必要な払込用紙を自宅に忘れた、入金情報のメールが見つからないなどの理由で、支払いがどんどん遅れてしまう可能性があります。支払いに手間がかかることを煩わしく感じる人もいるでしょう。

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限度額がある

後払い決済サービスには基本的に利用上限額があります。たとえば後払い決済サービスの大手として知られるNP後払いでは、上限額の55,000円(税込)を満たすと一時的に使えなくなるそうです。入金期日を毎回きちんと守り続けると限度額が上がることもありますが、一定額を超えた買い物には利用できないことに不便さを感じる人もいるかもしれません。

参考:NP後払いの上限金額とは何ですか?(株式会社ネットプロテクションズ)

後払いが選べないこともある

すべてのネットショップが後払いに対応しているとは限りません。実店舗で後払い決済を利用したい場合も、同じことがいえます。このように後払いを使いたいのに選べない場面に遭遇するとストレスを感じることがあるかもしれません。

事業者が後払いを導入するメリット・デメリット

後払いを導入することは、事業者にはどのようなメリット・デメリットをもたらすのでしょうか。

事業者が後払いを導入するメリット

客層が広がり、売上拡大につながる

最も大きなメリットは客層が広がることでしょう。後払い利用に関する調査によると、20代から60代のどの年代でもネットショップの決済方法として後払いがトップ3に入っていたことから、一定のニーズがあることが伺えます。また、ジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社の調査からは、15歳から19歳が他の年代と比べて後払い決済をよく利用していることがわかっています。後払いを好んで利用する層も囲えるようになることは、売上拡大につながるといえるでしょう。

参考:
【EC決済の後払い利用調査】中高年・シニア層で高い利用率。支払い時の安心感が後押し(2023年2月2日、ネットショップ担当者フォーラム)
【2022年版|ネットショッピング利用状況と決済手段に関する調査】希望する決済手段がない場合、そのECサイトでの購入を見送る方は6割を超える(2022年7月13日、ジャックス・ペイメント・ソリューションズ株式会社)

カゴ落ち対策になり、機会損失が防げる

たとえばネットショップでクレジットカード決済を利用する場合、有効期限やカード番号などの入力が必要になるでしょう。クレジットカードが手元になければ、購入者は情報を入力できず、購入を諦めてしまうこともあるかもしれません。このように購入を検討したにも関わらず決済完了に至らないことを「カゴ落ち」といいます。後払いなら支払方法に「後払い」を選択するだけで購入手続きを終えられるので、クレジットカード決済で起こり得るカゴ落ちを防ぐことができます。

業務負担が少ない

後払い決済を導入すると、入金処理や支払いの催促などは基本的に後払い決済サービスが担当します。つまり、事業者は「入金を待つだけでいい」ということになります。このような細かな作業に手間をかける必要がないことはメリットだといえるかもしれません。

事業者が後払いを導入するデメリット

代金を回収できない可能性がある

商品が購入者の手元に届いた後に支払いが行われるため、「支払期日を失念してた」「払込用紙をなくした」などを理由に、代金が支払われないまま商品在庫だけが減っていったらどうしよう……という不安が頭をよぎるかもしれません。

このようなリスクを減らすには後払い決済サービスを導入する前に、未回収リスク保証を提供しているか、利用者の与信審査はしているか、未払いが続いている人に対して利用を停止する措置はあるか、などを確認しておくといいでしょう。

コストがかさむ

後払い決済を導入すると、決済手数料はもちろん、サービスによっては初期費用や月額利用料もかかります。

特に前章でも触れた「未回収リスク保証」を提供しているサービスだと、数千円から数万円ほどの月額利用料がかかることもあるようです。予算があまりないビジネスだと、気軽に導入しにくいかもしれません。

限度額が低い

消費者のデメリットにも挙げた通り、多くの後払い決済サービスには利用上限額が設定されています。宝飾品や家具など1回の決済額が高額になる商品を販売している場合には、後払い決済サービスの限度額では支払えない可能性があります。

国内の後払い市場

後払い決済サービス(BNPL)の国内市場規模は、2021年度で推計1兆820億円、2026年度には約2兆円に拡大することが予測されています。

参考:EC決済サービス市場に関する調査を実施(2023年3月29日、株式会社矢野経済研究所)

2002年から株式会社ネットプロテクションズが「NP後払い」を提供していることから、後払い決済自体は20年前から存在している決済方法です。しかしながら、サービスの多様化が顕著に進みはじめたのはここ数年のことでしょう。

たとえば「後払い決済とは」でも説明したように、以前までは後払い決済はネットショッピング向けの決済方法でした。ところが最近ではネットショッピングのみならず、実店舗でも後払い決済を選べるようになっています。主にQRコード決済サービスが提供している方法で、アカウント内に残高がなくても、アカウントをクレジットカードや銀行口座と紐付けていなくても、支払時期を翌月に繰り越せるというものです。

また、近年話題を呼んでいるのが「BNPL」です。国内ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、BNPLサービスの旗手ともいえるペイディでは、すでに分割手数料無料の3回・6回・12回払いを実現しています。

参考:
Paidy、2022年のショッピングトレンドを発表(2022年12月23日、Paidy)
Paidyとは?後払い決済で急成長中のユニコーン企業に注目(2022年1月25日、日経ビジネス)

日本のBNPL市場はまだ発展途上だと思うかもしれません。ただ、アメリカに視点を移してみると、BNPL大手の貸付額は2019年では20億ドル(約2,200億円)でしたが、2022年になると242億ドル(約2.6兆円)にまで膨らんでいます。このような急速な広がりを見ると、国内でもBNPLが後払いの常識になる日もそう遠くはないかもしれません。

参考:
Paidy、2021年お買い物傾向を発表「どこでもペイディ」の登場で日常使いがさらに進む(2021年12月21日、株式会社Paidy)
日本におけるBNPLの成長性について(2023年1月、広報誌「ファイナンス」)

後払いを導入するには〜ネットショップ編〜

後払いは、主にネットショップで利用される決済方法です。そのため導入するには、後払いに対応したネットショップを構築する、あるいは既存のネットショップに後払い決済機能を付け加えるといったステップを踏むことになります。

また、デメリットの部分でも触れたように、後払い決済には代金未回収のリスクがあります。未回収リスク保証があるサービスを利用すると、決済手数料のほかに月額利用料がかかったりとコストが膨らみがちです。コストがあまり割けない事業主にとっては、導入しにくい決済手段かもしれません。

後払いの導入にまだ踏み切れない場合、まずは利用者の多いクレジットカード決済に対応したネットショップから始めてみてはいかがでしょう。より低コストではじめられる可能性があります。たとえばSquareなら、クレジットカード決済が受け付けられるネットショップを無料ではじめることができます。コストをかけずに売上拡大が狙える、うれしいサービスです。

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後払いを導入するには〜店頭編〜

店頭で後払い決済を受け付ける方法はまだあまり多くはありませんが、一番近しい方法としてクレジットカード決済に対応しておくことはできるでしょう。クレジットカード決済を受け付けるようになると、後払い決済と似たメリットが受けられるようになります。

たとえばクレジットカード決済には、購入単価を上げる効果があります。銀行系カード会社の業界団体の調査によれば、クレジットカードによる支払額は現金と比べて2倍近く多いそうです。

参考:クレジット利用額、現金の1.7倍(2018年2月27日、日本経済新聞)

そのうえクレジットカードの利用限度額は後払い決済よりも基本的に高く、最低でも10万円、設定によっては100万円以上使えることもあります。利用限度額に達してしまい購入ができない……という場面も後払い決済と比べると圧倒的に少ないでしょう。

また、最近ではPayPayをはじめ、QRコード決済サービスが後払いを提供していることもあります。たとえば「PayPayあと払い」ではアプリ内の残高がゼロでも、クレジットカードや銀行口座が紐付けられていなくても、当月分の支払いを翌月払いにできる機能です。このようにPayPayをはじめさまざまなキャッシュレス決済方法に対応した決済サービスを導入しておくと、図らずも後払いにも対応できるかもしれません。

参考:PayPayあと払い(PayPay)

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後払い決済は、手元にお金がなくても商品を手に入れられる、消費者にとって便利な決済方法です。導入するメリット、デメリットをもとに、ネットショップや店舗での導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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執筆は2023年5月18日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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